昭和32年版

原 子 力 白 書
     
昭和33年12月

原子力委員会
 

はしがき

 わが国の原子力の平和利用が年をおつて充実しつつあることは,誰しもが認めるところであろう。かつては松林におおわれた砂丘にすぎなかつた東海村には,今や原子炉をはじめ最新の機器を備えたわが国の原子力センターがうちたてられ,また,人形峠をはじめ,全国にわたつてウラン探査もすすめられている。さらにアイソトープの利用は,診断,治療等医学面における著しい普及をはじめ,理,農,工の各分野において日一日とわれわれの身近なものとなりつつあり,実用規模の発電用原子炉の導入も具体的日程に上つてきている。
 しかしながら,わが国の原子力平和利用の現状は,将来に予測される発展からみれば,今なお胎動期にあるといえよう。原子力委員会はこの胎動期にあつて,わが国の原子力開発の基調となるべき政策について常に慎重な検討を行つてきたのであるが,この政策に誤りなきを期するためにも,世界の大勢に照らしつつわが国原子力利用の歩みきたつたあとを顧みることはきわめて大切なことである。原子力委員会は,この趣旨において昭和32年度を中心とした第2回の原子力年報を公刊する次第である。

昭和33年12月

原子力委員会委員長  
国務大臣 三木 武夫
 

 
目   次

序説
 
〔第1部〕 原子力の開発態勢
 
第1章 開発態勢の整備
 
§1 機構と活動状況
   1−1 原子力委員会と原子力局
   1−2 日本原子力研究所
   1−3 原子燃料公社
   1−4 放射線医学総合研究所
   1−5 民間産業
§2 関係法令の整備
   2−1 核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の施行
   2−2 放射線障害防止法とその施行の準備
   2−3 放射線障害防止の技術的基準に関する法律の制定
§3 予算
   3−1 32年度予算の特徴
   3−2 33年度の予算編成方針とその特色
§4 計画
 
第2章 国際協力
 
§1 一般協定の交渉
   1−1 交渉の方針
   1−2 交渉の経緯
   1−3 協定の内容
§2 国際原子力機関の発足と活動
   2−1 第1回総会まで
   2−2 第1回総会の開催
   2−3 事務局の充実と理事会の開催
§3 国際会議
   I 国際連合放射線影響調査科学委員会
   II ユネスコ主催放射性同位元素国際会議
   III 日米原子力産業合同会議
 
〔第2部〕 原子力技術の振興
 
第1章 概説
 
§1 原子力技術の研究開発の分担
§2 32年度における原子力技術開発の段階
 
第2章 日本原子力研究所における研究
 
§1 概説
§2 原子炉の設置
§3 基礎研究の実施
§4 原子炉開発試験研究
§5 工学的研究
§6 保健物理の研究ならびに放射線管理
§7 その他
 
第3章 民間および国立研究機関における研究
 
§1 概説
§2 原子炉
§3 燃料および燃料要素
§4 再処理および廃棄物処理
§5 減速材,反射材,冷却材
§6 原子炉およびその付属装置に必要な材料およびその加工
§7 放射線測定器および放射線監視装置
§8 その他
§9 核融合の研究
 
第4章 科学者,技術者の養成
 
§1 概説
§2 原子力関係科学者および技術者の国際交流
§3 国内におけるアイソトープ技術者の養成
§4 大学における原子力関係科学者および技術者の養成
 
〔第3部〕 実用化への努力
 
第1章 原子力発電
 
§1 エネルギー需給と原子力発電
§2 原子力発電の経済性
§3 発電用原子炉開発のための長期計画
§4 発電用原子炉導入の気運
§5 発電用原子炉の受入体制
 
第2章 核燃料
 
§1 わが国における核燃料の需給
§2 わが国における核原料資源の探鉱
§3 原子燃料公社の製錬計画
 
第3章 アイソトープ
 
§1 概説
§2 使用状況
§3 利用と研究
§4 利用の促進
 
第4章 原子力船
 
§1 原子力船と造船,海運
§2 原子力船開発上の問題点
§3 原子力船の開発
 
第5章 原子力の障害と安全
 
§1 概説
§2 放射能調査
§3 動力用原子炉の安全
 
附表
   年表