第1章 開発態勢の整備
§1 機構と活動状況

1−4 放射線医学総合研究所

 本研究所は,前年度の報告でのべたように,32年7月,科学技術庁の附属機関として発足したが,その主要な任務は科学技術庁設置法のさだめるとおり,(1)放射線による人体の障害ならびにその予防,診断,治療に関する調査研究,(2)放射線の医学的利用に関する調査研究,(3)これらの分野における技術者の養成訓練の三つである。すなわち,原子力開発利用にともなう放射線障害防止対策の研究,およびエツクス線のほかアイソトープその他のあたらしい放射線源による放射線を積極的に医学面に利用する研究の両面とさらにこれらの現業にたずさわる医師,技術者等の再教育あるいは養成訓練を目的とするものであり,国内的にはこの方面の中心機関となり,また,国際的にも,最大許容量の決定,放射能による環境汚染問題等,原子力の開発利用の推進にともなつて寄与すべき点は大きいものと期待される。
 本研究所は発足以来,機構の整備,人員の充実,施設の建設,整備,研究業務の推進等につとめている。
 なお研究所の建設地は,32年10月,千葉市黒砂町の約20,000坪の国有地に決定した。
 研究所施設は建物としては,本部棟,一般研究棟,アイソトープ実験棟,放射線照射棟,エツクス線棟,病院棟,養成訓練合宿所,看護婦宿舎,その他動物舎,温室等が予定されており,研究施設としては,ベータトロン,フアンデグラフ等の放射線発生装置をはじめCo60照射室,ガンマルーム,中性子線源室等の設置を計画している。
 32年度は定員40名,予算額約1億4,000万円,その他国庫債務負担額約4億5,000万円をもつて出発し,33年5月,約6,000坪の施設について第1期工事が着手された。
 研究面では,32年度は,第1基礎,第2基礎,障害,環境衛生の各研究部が設置され,まず,放射線障害に関する基礎的な問題のうち,緊急を要する研究課題にとりくみ,漸次,生物,遺伝関係の研究へとすすみ,また技術部や養成訓練部を拡充し,関係国立試験研究機関,大学等との協力のもとに研究をすすめている。


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