第2章 国際協力
§2 国際原子力機関の発足と活動

2−3 事務局の充実と理事会の開催

I 事務局の充実
 総会で任命されたコール事務局長は32年12月に着任し,事務局の機構は総会後の理事会において,5人の次長をおき,部をもうけ,事務局長に法律その他の3人の顧問をつけることにきめられた。19部は5人の次長(総務,査察,訓練および情報,研究およびアイソトープ,技術供与)のもとに分割配属された。

II 理事会における討議と機関の計画の進展
 第1回総会終了後11月,12月,1月及び3月にそれぞれ約10日間ずつ理事会がひらかれ,機関の計画をすすめるについて種々の議事が論議された。
1)核分裂性物質,原料物質その他の物質の受入および供給について
  米,英,ソ連などをはじめ9カ国から,種々な物質の提供の申出があつたので,これをどのようにしてうけいれ,どのようにして希望国に供給するかということについて事務局からワーキングペーパーもしめされ,継続的に議論されたが,結局受入および供給の条件をきめることが先決であるので,提供国にこれについての回答をもとめ,また機関と提供国との取極の締結をいそぐこととなつている。この場合供給する価格が問題となつている。わが国としては,くりかえし,この事業が機関のもつとも重要な仕事の一つである旨を強調し,供給の連続性を確保すること,価格を双務協定による場合よりたかくしないこと,供給条件の決定を極力いそぐこと,イエローケーキなどについては,機関との取極にも極力簡便な方法をとりできるだけはやく,実際に物質の供給を開始すべきことなどを主張,条件次第では,いつでも機関から物質をうけいれる用意ある旨言明した。

2)機関のフエローシツプについて
 25万ドルの任意寄付金によりフエローシツプ計画をおこなうことになつているが,これにくわえて多くの加盟国からフエローシツプの訓練施設と自国内でのフエローシツプ(それぞれの国が費用を負担する)の提供がおこなわれており,この2種類のフエローシツプ計画を具体的におこなうための討論と,今後の任意寄付金をうける方法についての検討がおこなわれた。この計画ははじめるのが比絞的簡単であり,しかもこれまでにもしばしばその重要性が指摘されたところでもあるので,33年9月頃を開始目標に準備がすすめられている。
 わが国からもコロンボプランの手続をとるものについて,アイソトープ利用の分野で7〜10名に6カ月間のフエローシツプをあたえるべき旨申しいれた。

3)低開発国援助のための機関の活動について
  この点に関しては低開発国援助に重点をおくべき旨総会で決議された経緯もあり,この計画に関してなにをおこなうべきかについて討議された。さしあたつては,アイソトープ利用の促進をはかること,フエローシツプ計画,コンサルタントチームの低開発国への派遣,地域的訓練センターに関する調査情報の配布などに重点がおかれることになろうが,このうち,コンサルタントについて米国が20〜30名のコンサルタントを無料で提供することを申しでたほか,多くの国から提供申しいれがおこなわれ,わが国からもアイソトープ利用またはウラン資源探査の分野で2名のコンサルタントを無料で提供することを申しでた。

4)機関の保健および安全に関する活動について
  これは機関のあらゆる計画実施の前提にもなることではあり,当初の重点的事項として指摘されていることであるので,総括的な討議がおこなわれた結果,事務局長の諮問機関として専門家会議がもうけられ,ここでさしあたつて放射性物質の取扱法がきめられることになつている。わが国の専門家もこれに参加している。

5)機関の技術的および非技術的情報に関する計画について
  情報の収集配布の方法,情報の内容などが議論された。わが国からも機関のこの仕事の重要性を強調,情報の収集配布のシステムを確立すべきことを主張した。

6)機関の科学的な諮問機関について
  この点について常設の委員会をつくるべきか,問題に応じて臨時の専門家会議をつくる方がよいかが討議され,ソ連などは前者を主張,米国,日本などは後者を主張したが3月の理事会までには結論がでなかつた。

7)機関の技術援助について
  機関が国際連合の拡大技術援助計画(EPTA)や34年度に開設される国際連合の特別基金に参加すべきか否か,機関独自の技術援助資金のみでいくべきか,地域的国際機関との連絡などが討議されたがなお事務局において研究することとなつた。


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