第1章 開発態勢の整備
§1 機構と活動状況

1−5 民間産業

 民間の企業も原子力開発に対して積極的な動きをみせており,31年度には原子力関係会社がグループをつくつて発電,アイソトープの利用に応ずる態勢をとつていたが,32年度においては日本原子力発電株式会社(第3部第1章参照)が11月設立されたのをはじめ,住友原子力研究所,三菱原子力工業,日本原子力事業など原子力専門の会社が設立されるようになつた。日本原子力産業会議の調査によると,民間会社で原子力専門の部課を設置しているものは合計約90社,その他現在直接原子力業務をおこなつているところを合計すると約250社に達する。他方民間産業の科学者,技術者の数は約3,000名に達するものと想定される。さらに民間から原子力関係で,海外に留学したものは32年度末までに合計46名であり,33年度には約50名(大半は原子炉関係)の派遣が予定されている。いわゆる原子力5グループも32年度に加入会社の増大,機構の改革等により充実拡大がはかられている。
 またグループにとらわれない共同研究会の活動も活発である。原子力保険の引受機構として日本原子力保険プールの設置準備もすすめられている。
 日本原子力産業会議は,以上の原子力に関連する会社または団体を会員とし,原子力に関する総合的な調査研究,知識の交流,意見の調整統一をはかることを目的として31年3月に設立された団体であるが,その会員数も32年度末には754に達し,産業会議発足当時の2倍以上になつた。
 原子力産業会議は,五つの常設委員会ならびに特別委員会等を通じて原子力開発上の諸問題に関して産業界の意見をとりまとめて見解を発表している。日本原子力発電株式会社の設立に際して民間方式による経営形態をつよく支持し,また,日英一般協定,原子力発電の経済性,災害補償,発電用原子炉開発のための長期計画,放射線障害防止法の政令,府令等に関し意見を発表している。
 なお,日本原子力平和利用基金が,ひろく世界各国との情報,教育,技術の交換をおこない,相互の平和利用を促進させることを目的として32年6月設立され,国内各地における原子力平和利用の講演と映画の会,展覧会等の開催および同基金の作成になるスライドの上映,図書・資料の頒布等により,中央および地方において原子力の知識の普及をおこなつている。


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