第2章 日本原子力研究所における研究
§4 原子炉開発試験研究

4−1 増殖炉の予備実験

 わが国原子力長期開発の主眼である増殖炉開発のために重水均質系の予備実験をおこない,ウラン,トリウム系の基礎データをうることを本研究の目的としているが,32年度はトリウムおよび重水について,予備実験に必要な予定数量の入手が不可能となつたので,炉心部とブランケット部とにわけて次のような実験をおこなつた。

I 常温常圧下のスラリー性状の測定
 炉心を模擬したガラス製球形容器に攪拌器をとりつけ,スラリーの攪拌効果,沈降状態を測定したがその結果二酸化ウランの沈降速度ははやく,しかも均質性は十分ではなかつた。一方トリウムスラリーの沈降速度は,おそく,均質性は,比較的容易であることがみとめられた。

II 軽水または重水中の中性子の減速距離の測定
 軽水または重水(33年2月末,ノルウエーより130kg購入)をアルミニウム製球形タンクにいれて中性子の減速距離を測定した。

III スラリー中の熱中性子拡散距離の測定に必要な装置の試作ならびにその研究>
 アルミニウム製スラリータンクおよび攪拌器よりなる装置を試作してJRR-1 の垂直熱中性子柱上にすえつけ,予備実験をした。

IV そのほかの研究
 そのほかスラリーの濃度をかえるに必要な蒸発装置および高精度の液面計の試作検討をした。

4−2 指数函数実験

 この実験はJRR-3に関する核的基礎資料をうることを目的とするのであるが,実験に必要な天然ウラン,重水の入手が予定どおりおこなわれなかつたので実験は33年度にもちこされた。しかし,この実験に必要な装置は,32年末までに完成し,性能試験をおこなつた。なお本装置による実験の予備的なものとしてカドミウム0.15%,アンチモン2.5%よりなる鉛合金を模擬燃料棒として軽水をいれたアルミニウム製外凾におさめ,これをJRR-1の熱中性子柱内に挿入して軽水格子における熱中性子の分布の測定をした。

4−3 原子炉モデルによるJRR-3の開発試験

 この実験はJRR-3 の製作を容易にするため実物大のモデル等を試作実験するもので,民間との協同研究で次のようなことをおこなつた。炉心タンク下部のプレナム室から魅料棒にいたる冷却重水を均一に分配するに必要な整流装置の検討,ならびに模擬燃料棒における冷却管の流動抵抗,および模擬燃料要素の振動等を測定した。


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