第2章 核燃料
§3 原子燃料公社の製錬計画

 原子燃料公社は,茨域県那河郡東海村に敷地をさだめ,原子燃料試験所,精製還元中間試験工場および関連附帯施設よりなる製錬所を建設することとし,32年度において,その準備をおこなうとともに一部の建設を完了した。

I 原子燃料試験所

 原子燃料試験所は基礎試験室および応用試験室よりなつている。基礎試験室は,選鉱・製錬の試験,原料・中間製品・製品の検定および分析,その他中間試験工場および応用試験設備の試験および運転に必要な各種試験をおこなうことを目的として,12月建物を完成し,各種試験設備を整備しつつ,一部操業を開始した。
 応用試験室は,基礎試験において検討された各種工程の応用試験を目的として,とりあえず鉱石1日処理3屯の規模の選鉱および粗製錬(浸出および濃縮工程)施設を建設することとし,33年12月完成を目標に,目下建設の準備中である。

II 精製還元中間試験工場

 金属ウラン日産30キログラムの精製還元をおこなう施設であつて,本格的な生産設備の設計および運転に必要な実際的諸資料をうるとともに,35年未に完成予定の国産第1号原子炉に燃料の一部を供給することを目的として建設の準備がすすめられ,33年未までに完成の予定である。
 本工場の製錬方式は,米国,オークリツジ国立研究所において確立された新方式を採用しており,その技術は米国より導入されたものである。

III 技術導入の経緯

 核燃料の開発は,原子力利用の基本事項であつて,製錬技術は,国内ウラン資源の開発とあいまつて,早急な開発が要請されていた。このため,原子燃料公社において,製錬に関する中間試験工場を建設することとしたが,当時,海外のウラン製錬技術は殆ど機密化されていたので,国内技術を開発して建設することとした。しかしながら,その後海外のウラン製錬に関する技術が逐次機密解除されてきたので,国内における試験研究の推進と並行して,海外技術の検討をおこなうこととした。
 このため,原子燃料公社は製錬担当理事を先進諸国に派遣して,海外技術を検討させた結果,米国オークリツジ国立研究所において研究開発された新しい製錬方式が,技術的に在来法より一段と進歩し,かつ経済的にも有利な方式であることを認め,公社が建設する精製還元中間試験工場は,その方式を採用することが適当であるという結論をえた。
 原子力委員会においては,これを原子燃料専門部会に諮問した結果,新方式の採用を了承するとともに,これに伴う技術導入の必要性を承認した。
 公社においては,Weinrich Associates ChemiCal Engineers設計事務所に設計を依頼することとし,32年9月,技術導入に必要な外貨割当をうけ,精製還元中間試験工場建設の準備に着手した。

IV 新製錬方式の特長

 新方式によるウラン精製還元工程の概要は(第2-4図)のとおりである。在来法に比較して,本方式の特長とする点は(第2-8表)のとおりである。


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