第1章 開発態勢の整備
§1 機構と活動状況

1−3 原子燃料公社

 原子燃料公社は原子燃料公社法にもとづき,31年8月核原料物質の開発,核燃料物質の生産ならびに管理を目的として予算1億円および定員100名をもつて発足し,第1着手として,人形峠,倉吉および三吉鉱山の探鉱に着手したが,32年度においては,約6億5,000万円の予算をもつて,さらに探鉱の規模を増大するとともに,製錬工場の建設準備,原子燃料試験所の建設等をおこなつた。
 探鉱については,31年度に引き続き,人形峠,倉吉および三吉鉱山に対する探鉱を継続するとともに,あらたに通商産業省地質調査所の調査により有望と判定された岩手県北上地区,宮城県気仙沼地区,山形県鶴岡地区,岐阜県黒川地区,岡山県南部地区,山口県防府北方地区,鹿児島県垂水地区等に対して地質鉱床精査,物理および地化学探鉱,試錐等をおこなつた。とくに人形峠鉱山については探鉱の進捗にともない,鉱量品位とも優勢であることが判明したので,重点を本鉱山にむけて探鉱を実施した。製錬については,敷地を日本原子力研究所の南側,茨城県那珂郡東海村にさだめ,さしあたり,選鉱製錬に関する基礎試験,分析等をおこなうため原子燃料試験所基礎試験室を完成した。
 これよりさき,公社は精製還元に関する中間試験工場の建設のため,製錬担当理事が欧米各地を歴訪し各国の製錬技術を調査した結果,公社の製錬方式としてはオークリツジ国立研究所で確立されたイオン交換,電解還元等をくみあわせたあたらしい方式を採用することが適当であるとの結論をえた。この問題については原子力委員会の原子燃料専門部会において審議がおこなわれ,この新方式の採用を適当とする旨の報告がおこなわれた。
 公社では本中間試験工場を33年末までに完成することとし,これに必要な技術導入,建設契約の準備,機器類の発注などの措置を推進した。
 以上の事業規模の拡大と並行して,人員増加,社内機構整備が逐次おこなわれた。すなわち,開発担当理事1名をあらたにむかえて役員の充実をはかるとともに年度末定員は前年度より120名増加して220名とし,開発準備室および製錬準備室をそれぞれ開発部および冶金部に昇格した。さらに人形峠出張所,気仙沼駐在員事務所,東海製錬所建設事務所および東海製錬所を事業の進捗にみあわせて新設した。


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