第15回 長期計画策定会議 議事概要(案)

1.開催日時:2000年11月8日(水)16:00~19:00

2.開催場所:ホテルフロラシオン青山「ふじ」

3.出席者
委   員:那須座長、森嶌座長代理、秋元委員、石橋委員、太田委員、長見委員、桂委員、河瀬委員、神田委員、熊谷委員、近藤委員、下山委員、鈴木委員、鷲見委員、住田委員、竹内委員、妻木委員、都甲委員、鳥井委員、村上委員、吉岡委員、
分科会座長:前田座長、永宮座長、久保寺座長、佐々木座長
原子力委員:藤家委員長代理、依田委員、遠藤委員、木元委員
科学技術庁:中澤原子力局長、伊藤原子力調査室長、牧野原子力利用計画官
通商産業省:藤富審議官、入江原子力発電課長

4.議題
(1)原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(案)について (2)その他

5.配付資料
資料1第14回長期計画策定会議議事概要

資料2長期計画案に対する意見募集および「ご意見を聞く会」の結果について

資料3長期計画(案)に対する意見の概要

資料4「ご意見をきく会」での意見の概要

資料5「ご意見をきく会」-議事録-

資料6原子力の研究、開発および利用に関する長期計画(案)によせられた意見

資料7意見への対応方針(案)

資料8長期計画案に対する意見への対応(案)

資料9長期計画意見反映版(案)

 ・長期計画への国民意見反映に関する意見

6.議事の概要

(1)開会について

  ○那須座長より、本日の審議事項について説明があった。

  ○那須座長より、本日御欠席の澄田委員に代わり、原子力発電関係団体協議会の会長県の島根県から江口副知事に出席をいただいている旨、紹介があった。

  ○事務局より、本日の配付資料の確認があった。

(2)原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(案)について

①意見募集と「ご意見をきく会」の結果について

 ○事務局より、資料2に基づき説明があった。

②長期計画案に対するご意見への対応方針について

 ○森嶌座長代理より、資料7に基づき、意見への基本的な対応方針について説明があった。

③対応案についての審議

 ○那須座長より、審議の進め方について、発言があった。

 ○主な質疑応答及び関連する意見は以下のとおりである。

 【分野1から分野11の審議】

(石橋委員)
  • 第一分科会関連の情報公開について、いただいた意見の中に双方向での議論の必要性や、リスクコミュニケーションの必要性について述べたものがあった。原発は危険だからやめるべきという意見も多いが、今後はリスクコミュニケーションの考えが、理解促進のためにぜひとも必要と考える。
  • 意見の中で、情報公開といっても信用できないというものや、企業秘密の問題についても触れているものがある。私も以前提案したが、情報公開をチェックする第三者機関が必要と思う。
  • 情報公開とは言っているが、本当に適切に情報公開されているかについて根強い不安があり、これに応えるためには、チェック機能は必要であり、どこかに修文案を入れることも考えられる。

(近藤委員)

  • 意見の全体を読んで印象に残っているのは二つ。一つは、従来の不安感の表明という情緒的な反対理由からシステムの信頼性に対する疑念や、原子力技術に対しての人間の制御の可能性ということに対する疑いという、論理的なものになった。したがって、このレポートは原子力を信頼できるシステムにしていくんだ、あるいは技術の制御の可能性についても確かなものにするべく臨むし、臨まなければならないのだということをきちんと伝えることが必要である。
  • もう一つが風力といった再生可能エネルギーあるいはリサイクルに対する意見で、これについては第1部でもかなり書いていると思う。修正をするとすれば、データ的な補足をすることではないか。
  • 風力などについては、我々がネガティブな表現をする意図は、何もないわけであって、どんどんやってくれと言いたいくらいである。そこの所は誤解のないように修文して欲しいが、これ以上各エネルギーについて議論することはバランス上必要ないと思う。

(神田委員)

  • 資料8の第27頁、11-3あたりの意見であるが、今回、原子力の事故がたまたま長計の最中に起きたために、何でも規制強化という流れがある。これは誠に遺憾で、どこもかしこも同じように強化していくのが良いという意見が、国民の意見にもある。たとえば年に4回も保安検査をやると決めておきながら、相変わらず長期サイクル運転はできなくて1970年代の状況に日本だけが留まって、とにかく検査づめにあっていると感じる。
  • 長計の説明をアメリカでしたときに、アメリカで長期サイクルを採用することによって、新たに原子炉を19基つくったのと同程度の効果があったということを非常に強調していた。
  • 私の意見としては、8月の時には特に言わなかったが、その後色々な所で説明をしているときに感じたことだが、第29頁の原子力発電の着実な展開というところで、長期サイクル運転ということにもう少しウェイトをおいて書いていただけるとありがたい。

(森嶌座長代理)

  • 今日の会議の趣旨は、国民の意見をどのように取り入れるかということなので、そのような方向で発言していただきたい。

(住田委員)

  • 女性からの、新エネについてもっと推進するべきであるとか、省エネについてもっと努力するべきだという意見については、非常に実感のこもったものとして受け止めたが、今近藤委員が言われたように我々策定会議の委員もそういう心で審議に加わったのだということが、この文章に表れていないとしたら少し表現を工夫してもらいたいと思う。心がそうであったということは国民の皆さんにも解ってもらえればありがたい。
  • 反対派の方の意見として、抑制するとか、長期的には撤退するとか色々なニュアンスがあると思うが、やはり情報公開が一番の基本であるということが意見からもくみ取れる。そういう点からすると、情報公開についてはもっときちんとした形で保証すべきだとの意見もあったので、そのあたりの責任の所在についてはいろいろあると思うが、もう少し強い調子で修文できないかと思う。情報公開については国は説明責任があるわけだから、今後ともその責任ないしは責務を果たしていくべきであるというような感じで少し強調して、明記してもらえればと思う。

(吉岡委員)

  • どのような総括的方針で国民意見を反映させるかについて、森嶌座長代理と意見の相違があるので若干説明したい。1000件以上の意見が寄せられたというのは原子力委員会始まって以来のことで、国民に感謝しなければならないが、それをどう反映させるか、委員の一人一人がまず考えなければいけないと思う。まず、多くの委員の総括的意見を聞き、その上で個別の項目について議論すれば良いと思う。
  • 私は、国民意見のほとんどにより、計画案が不信任を受けたようなものだという印象を受けた。私の配布した資料の2,3枚目に示したように、長計案で示されたような政策判断の基礎データとか、結論に至る判断プロセスがどうもうさんくさいというような意見が多い。特に、提言されている路線が他の選択肢との比較においてベストであるという証明がされていないという意見を国民が抱いているような印象を受ける。それと日本だけがなぜ続けるのかについてのローカルな事情を考慮した説得的な説明がなされていないと国民が考えているように思う。また、具体的数値を消しすぎではないかという国民意見も多かった。出せるものは出して良かったのではないかと思う。
  • これに対して我々はどうするべきかというのが重要だが、先程森嶌座長代理が言われた、策定会議の方針を変えずに対応するという意見については賛成である。結論を変えずに表現を変えることによって、もう少し説得できるように表現上の工夫がなされるべきではないかと思う。次回までに修文案を用意したいと考えている。これだけの批判を受けながら、何もしないというのはまずいであろうというのが、私の結論である。
  • 資料9第8頁の「原子力利用は抑制すべき」という表現が気になった。原子力発電だけでなく、高速増殖炉やプルサーマル、再処理についても国民から、やめるべきだという意見が多く出されている。原子力利用という表現ではなく、原子力発電と核燃料サイクル開発利用と2つに分けたうえで、さらに抑制ではなく中止というように修正してはどうか。
  • 原子力教育の記述については問題が若干あると思う。原子力そのものを取り上げるのではなく、総合エネルギー教育とその一環としての原子力教育という観点から書くべき。
  • 付表の確認可採埋蔵量については、定義を明確にすべき。資源論は時代遅れであり、それに固執しているという誤解を国民に与えれば、報告書への信頼が損なわれる。

(佐々木第五分科会座長)

  • 第五分科会に関するところは意見も少ないので、全体がよく見える。資料8は意見に対して全てに答えているわけではなく、答えてあるところも必ずしも十分親切な答え方をしているとは言えない部分もあるので、修文する時間的な余裕が欲しい。

(長見委員)

  • 原子力発電の位置付けというところに非常に疑問を持たれているので、その辺をもう少し丁寧に書き込む必要があると思う。
  • 経済性についても、資源エネルギー庁の出した数値が根拠となっているが、その辺が一般の国民としては不満があるのではないかと思う。もう少し解析する必要があるという気がする。

(石橋委員)

  • 長計の在り方で、具体的な数値目標が無いという意見が非常に多くあった。従来の長計は原子力事業計画書のようなものであったと思う。原子力委員会の使命は、原子力基本法で原子力政策を計画的に遂行することと、その政策を民主的に運営することになっている。第2次大戦の敗戦と冷戦下で、原子力基本法ができてから45年が経ったが、今は裁判官の任命に国民が関与するような時代となり、社会は大きく変わった。第一分科会がつくられたのもそのような背景がある。私としては原子力政策を行政機関が民主的に運営していくことに大きく軸足を移した長計も必要であると考える。

(那須座長)

  • 今の件に関して、確かに従来の長計というのは予算のための数字を固めるとされていたのであるが、今回の長計は、むしろ哲学をきっちり固めていこうというつもりで始めたし、今振り返って確かにそれで良かったのだと、議長として認識している。

(太田委員)

  • 何をいつまでにいくらのお金をかけてつくるのか、これが計画だと思うので、日本国の原子力平和利用の基本的な考え方というようなタイトルに変えるべきではないかと思う。あるいは副題を付けるかしないと、大勢の方が内容を見て、これが計画とは思わないのではないか。

(近藤委員)

  • 方針論、つまり数字がないことについても、信頼の問題に関わることであるが、今日長計とはこういうものなんだということを合意しても、そう読まれていないことについての対策をどうするかということがここで議論されるべきである。修正案で従来とは違うということを読みとってもらえるかということが、ポイントだと思う。もう少し、読み手にわかるようにする工夫をしてはどうか。
  • 長計案が国民から信頼されていないとの吉岡委員の指摘に関連して、その理由は、分量が限られている故にデータが十分でないというこの紙の持つ欠点が問題なのか。それとも現在の原子力システムに対する問題提起なのか、後者であればこの資料を差しかえても解決できる話ではない。むしろ現在我々のシステムが困難を抱えているとの認識を示し、それをいかに解決するかの方針を決意表明することではないかと思う。その意味では、私はここに書いてあるエレメントについては長く時間をかけて議論しただけあって、それなりに書くべきことは書いていると思う。

(鳥井委員)

  • 今の話題と関連して、今度の長計がこういう格好でまとまったということは大変賛成である。これを具体的な施策にどうやって落としていくのかということがあると、解ってもらえるのではないかと感じる。

(住田委員)

  • 計画の用語の関係で、今までこの長計に関わってきた方は数値目標が出てこないことに違和感があるような意見が出たが、私は政府の他の計画と比べても、計画だからといって必ずしも数値目標を入れる必要はないのではないかと感じる。あれば解りやすいと思うが、しっかり足元を固めようという段階であればそれでよいと思う。

(吉岡委員)

  • 今まで数値目標に関する話がずいぶんなされてきて、皆さん一致してこれ以上に具体的なものは不要だということであり、私の意見も全く一致するところであるが、60何名もの方の意見が出たので議題にしなければということで意見書を出した。
  • ただし、原子力発電の規模について適切な供給割合を維持していくという、現状維持か拡大かさえ解らない表現が一箇所あるので、あれはほっといて良いのかという疑問はある。
  • 信頼性ということを近藤委員から言われたので補足をすると、原子力政策あるいは原子力事業全体が信頼を失っている。それを回復するにはあらゆる場面でとにかく信頼がなければどうしようもない。原子力開発利用を拡大するにしても、維持するにしても、縮小するにしても、信頼を得ることが第一であり、それを回復する手だてとして、長計だけきれい事を書いてもしょうがないとも考えられるが、長計でもがんばるんだという姿勢をとりたいと思う。

(那須座長)

  • 吉岡委員から、これだけの反対があったではないかとの話があった件について、意見の中には単に反対と書いてある意見もあり、理屈がどこまで出ているのかわからないので、数字だけにおののくことはないが、そういう方がいらっしゃることについては、我々は謙虚に受けてとめて、原子力をやっていかなければならないと思う。

(森嶌座長代理)

  • 私がどのような考えでこの修文案を出したかについては、冒頭に説明したとおりであり、その意味で審議の進め方が拙速であるとの吉岡委員の指摘は当てはまらないことは、吉岡委員にも理解いただけたと思う。つまりこの修文案で終わりということではなく、策定会議の場で議論していただきたいということであり、本修文案をどう扱うかについてご意見をいただきたい。

(那須座長)

  • 近藤委員のお話で、風力や自然エネルギーの事などについて、触れ方が少し弱いとのご指摘があったが、そういった趣旨の意見と受け取ってよろしいか。

(近藤委員)

  • そのような認識でこれを読み取った方が多かったということに対して、ここでは資料を追加し、また、風力に関する評価について文章が不適切な故か、本来の趣旨と異なって読み取られていると思われるところについて、文章の順序を入れ替え、「いろいろ問題はあるが、がんばってやりましょう」という書き方にしたという修文案に対しては、適切な修正だと考える。

(鳥井委員)

  • 長期計画案に副題を付けてはどうかという意見があったが、賛成である。

(那須座長)

  • 副題についてはずいぶん考えたが、良い案がなく考えあぐねているところである。

(森嶌座長代理)

  • 副題については、これまでにも策定会議の場で何回か議論をしてきたと思う。パブリックコメントに付す前にも、案があれば出していただきたいとお願いしたが、結局なかったというのが現状である。

(太田委員)

  • 以前、副題について案を提出している。また、具体的な数字の記載について、策定会議委員の中で違和感がないとしても、例えば、個人的には新聞社の方にこれでは計画と言えないという指摘も受けているし、大勢の方がそのように見ると思う。法律上の問題があるのかもしれないが、副題を付けないと義務を果たした気にならないので、ご配慮願いたい。

(那須座長)

  • 副題を考えるのはやぶさかでないが、さんざん考えても良い案が見つからず、また、妙な副題を付けるとかえって難しい問題があるという気がしている。
  • 森嶌座長代理から話しがあったように、原子力の長期計画というものを、その趣旨に基づき書いたが、その趣旨についてよくわからない、あるいは書き足りないということがあれば、ご意見をいただき修文をするつもりでいる。

 

 【分野12から分野19の審議】

(那須座長)
  • 時間が多少押しているので、分野12から分野19まで通してご審議をお願いしたい。
  • また、本日の審議で出された宿題については、森嶌座長代理にお願いし修文案を見直したいと思う。

(妻木委員)

  • 資料9の第33頁の高レベル放射性廃棄物処分の記載について、前回の策定会議で、国の役割、事業者の役割及び実施主体の役割ということについて、三位一体で取り組むべきというコメントをした。
  • 資料9では、コメントを反映して修文されていると思うが、しかしその修文の内容が、今一歩という感じを持っている。
  • 総合エネルギー調査会の原子力部会で、高レベル放射性廃棄物関係については、既に審議され具体化されているのであるから、できれば文言を原子力部会の表現に合わせて欲しい。
  • 例えば第34頁2行目のところで、「処分地の選定を実施主体と一体になって行うべき」とあるが、国と電気事業者及び実施主体を分けているように読めてしまう。

(那須座長)

  • 総合エネルギー調査会の原子力部会の文章を、別途確認することとする。

(吉岡委員)

  • 寄せられた意見を全部読んだが、ちょっと目を通した段階で、どう修文に入れるかについての詳しい検討ができていないので、次回の策定会議前までに1週間程度の時間的猶予を頂きたい。
  • 資料9の第15頁について、「地理的、資源的条件」という表現については、それにローカルな地質学的条件を加えるべきという趣旨の意見が、少なからず出されていると思う。
  • 特に、「ご意見をきく会」の東京会場では、高さ50mの津波が来たらどうするのかという議論がなされたが、津波はともかく地震、あるいは地質の脆さについては当然多くの指摘があり、国民の間でも懸念されていることなので、もう少し大きな扱いをすべきと思う。これは第15頁だけではない。
  • 重要なことは、核燃料サイクルと「もんじゅ」をどうするかということだと思う。「もんじゅ」に関しては、第三分科会において再三にわたり、メリットとデメリットの比較を示した上で、今の長期計画案で勧告されているような路線で良いという結論を導くような記述の形式にすべきと言ってきたが、必ずしも明確な形では比較が示されていないので、もう一工夫必要だと思っている。数日以内に案を提出したい。
  • 「もんじゅ」は費用がかかるし危険が伴うが、その評価を第三分科会自体でほとんどやっていないので、策定会議で責任を持たなければいけなくなってきていると思っている。危険と費用の評価を含めて説得力のある「もんじゅ」の運転再開の説明を作らなければならない。今の路線をやるというような前提の下に作文してみることはできないかと考えている。
  • 参考資料の核燃料サイクルの図表についても、いろいろ不十分な点がある。一つは、第53頁の「2010年過ぎまでのプルトニウムの回収と利用」の表は、ちょっとひどいのではないか。これは収支表とはおそらく言えない。原子力委員会が、かなり曖昧ではあったが原子力白書に収支表を示したことがあり、それなりに足し算ができるような表になっていた。1992年か1993年だったと記憶しているが、それは画期的な事で大きな前進であったと思っている。第53頁の収支表では納得してもらえないと思う。
  • 第55頁の「もんじゅ」における研究開発項目については、出典が第三分科会報告書資料より作成とある。確かに第三分科会報告書に本図は載っているが、別に第三分科会でこれを承認したわけではない。これは、核燃料サイクル開発機構が、自分の計画として作成した資料であって、これについてはいろいろ議論があり、一定期間の運転をした上でもんじゅの措置を判断するという結論になった。一定期間とはどれほどの年数なのかといった疑問を抱く読者が、本図を見ると十数年という印象を受けるかもしれないが、期間についての合意は必ずしも得られていない。したがって、資料の出典は、核燃料サイクル開発機構作成のものであると分かるように変更できないか。

(佐々木第五分科会座長)

  • 私が先程申し上げたことは資料7の項目16にあたり、ここで申し上げるべきところだった。資料8について感じたことは、ご意見に対する答えが、必ずしも十分にかつ丁寧、親切でないのではないかということであり、他の項目にも当てはまるかもしれないという懸念をもって申し上げた。
  • 意見に応えつつ、長期計画案の報告書を修文することはきわめて大事なことであるが、同時に資料8というのは意見に対して直接答えるわけだから、意見を述べられた方は、どういう形で答えてあるかということには大変関心があるので、資料8というのは極めて重要ではないかと思って発言した。

(鈴木委員)

  • 項目の14番の「高速増殖炉サイクル技術の研究開発のあり方と将来展開について」の部分について、多くの方から意見が寄せられた。意見の多くは高速増殖炉サイクルに関する経済性、安全性、将来の見通し、さらに「もんじゅ」の運転再開についてであったと思う。
  • 私の受けた印象では、現在の案のままでは、もんじゅ事故以降の一連の出来事に対する反省が十分盛り込まれていない部分があるのではないかということである。
  • 第三分科会の議論では、これらのことについてかなりの時間を割いて議論、検討したと記憶している。具体的には、第三分科会では最後に提言ということでまとめてある。その中の②として直接言及して提言の一つに掲げたつもりである。
  • この点に関し、長期計画の現在の案では、国民社会と原子力、いわゆる第一分科会、あるいは第二分科会との関連もあり、「もんじゅ」を中心とした技術開発に特有な問題と言えないものも多く、いわば表現としてより一般的に書かれていることも、そのように読まれてしまう原因のような気がする。したがって、若干表現を考え直してみる必要がある。
  • それに関連するが、吉岡委員からも指摘のあった経済性、あるいはメリット、デメリットについて、なおまだ疑問が残るというご意見に対しては、これも第三分科会において、与えられた期間の中である程度の議論はしている。例えば経済性についていえば、現在想定される中で、どの程度研究開発に費用を要するかについてのデータも出していただいた。また、コストベネフィットの問題についても、吉岡委員ご自身も、それなりのお考えで、第三分科会の報告書中での記述の仕方について案をお示しいただいたが、それをどう取り入れるかについて分科会で議論した結果、客観性、あるいは定量性の部分で、分科会報告書の中にも取り入れるのは難しいという結論に至った経緯がある。それらの経緯を踏まえこの長期計画案の中では、高速増殖炉サイクル技術については、将来の技術的選択肢であるとの位置付けをしたわけである。そのことを改めて確認しておく必要がある。
  • 資料9の中で多くの意見を反映するという原案が出ているわけであるが、私はおおよそこの内容でよいと思う。ただ具体的には、第36頁から37頁にかけての「もんじゅ」に関わる記述において「所期の目的を達成することが必要である」というのが最後の結びになっているが、何のために必要なのかがこのままでは読みとりにくくなっている。大事なのは、長期計画案に書かれている文章は、唐突にこのような結論に至ったのではなく、一連の議論の過程を経てこのようになったものであることを、明確に文章として記述すべきである。
  • なぜ運転再開かということについては、ここは高速増殖炉サイクル一般というより、「もんじゅ」に特有なことになるのであるが、これは直接的には第37頁の上から10行目の部分と同時に第36頁の5-2項の最後の箇所が、なぜ「もんじゅ」の運転再開をできるだけ早期にかつ優先的に行うべきかに関わるところなので、改めて表現を考えるべきである。
  • 第37頁の上から数行付け加えた部分は、この文章は「必要だから必要である」となっている。大事なことは、立地地域をはじめ広く社会の理解を得るということと、「もんじゅ」については研究開発の段階の炉であることをはっきり述べることであり、文章の構成もそうすべきである。

(村上委員)

  • 第15分野について意見を述べたい。資料8の第44頁であるが、今回の長期計画の特徴の一つは、原子力科学技術の多様な展開ということで、指針が述べられていることだと思っているが、時間の関係もあり、「ご意見をきく会」ではあまり議論がされなかったのは事実である。寄せられた意見に応える意味で、この多様な展開についてはもう少し書き加えるべきであり、準備もしているので詳細については別途提出したい。

(下山委員)

  • 国際社会と原子力の調和というところのご意見を拝見したが、一応意見はこれまでの議論で網羅されいると思う。ただ「核廃絶に向かって努力する」という言葉が報告書にない。どこかに日本としては国の政策としても頑張っていくのだという表現があってもよいのではないか。ただ「核廃絶」という言葉にはいろいろな意味で問題があると思うので、例えば資料8の第49頁にあるような「今後とも核兵器のない世界の1日も早い実現に向けて」という表現でもよいので、どこかに明記すべきではないか。

(近藤委員)

  • 核燃料サイクル関係について、非常にたくさんのご意見をいただいたところである。一つは、要すればリサイクルは止めなさいという意見に対し、資料8の文章を本体に取り入れ、「かくなる意見はあるがこう考える」という記載が許されるのであれば、コミュニケーションが可能になると思うが、スペースの問題もあり、そうもいかない。
  • 代替案としてA案、B案あるが我々はこう考えるという選択の結論に至るプロセスを明示することが、コミュニケーションをとる上で重要な手段であるが、限られたスペースの中ではむしろ選択路線の妥当性に力を入れて書くことになり、それがある意味では、消化できず理解不能というある種の悪循環に陥っているところをどうするかが問題である。
  • ここでの提案は資料9第14頁にサイクル関連の記述があるが、問題点としてはここで拾って書いて、もう一つ全体としては一生懸命やりますと書いている。また、高速炉のことについてであるがむしろ全体としても読めるので、適切な評価をしながら前進するということでご理解をいただきたいというまとめ方である。リサイクルをしないで直接処分がいいのだというご提案に、いわばノーメンションでリサイクル路線について、頭から突っ込んでいくということに対して、この資料8の第28頁のようなゆとりのある文章が書けるならば良いと思う。
  • プルサーマルについても多くの意見をいただいた。多くは止めろというご意見であるが、これについては第二分科会でも議論をし、それを踏まえて「経済性については向上の余地があるが・・・」というような言い方で、問題の認識を持って進むということで、ここはこういうリスポンスで既に十分との理解が得られないものかとの感想を持っている。プルサーマルについては、これ以上の議論を、ゼロからやり直すことはできないと思う。
  • プルトニウムバランスの巻末の表が読みにくいというご指摘について、これについてはもともと第二分科会の文章に記述されているが、文章にするのとは、ニュアンスがだいぶ違うので、表にするならもう少し工夫してもよいのではないか。
  • 廃棄物についてもたくさんのご意見をいただいているが、要すれば「地層処分技術が確立されていないので、処分と決めずして管理すべき」というご意見である。あるいは先ほどの地震の問題も含めてそのようなご提言があるということだと思う。これについても、いろいろな案があるということを書いて、それについての高レベル放射性廃棄物処分懇談会の議論の経緯をフォローする方法もあるが、このスペースでは無理である。その過去の経緯を踏まえての認識がここには書いてあると理解すべきで、ここですべての議論を集約するというのは無理である。ここに至るまでのさまざまなレポートがあるということは踏まえつつ、それについて改めてパラグラフを起こすということは難しいという感じを持っている。以上が、第二分科会関連で気になった点である。
  • 「ご意見をきく会」で、地理的条件で50メートル、350メートルの津波についての意見を交わし、さすがにそのような津波はおかしいということになった。地震についても日本全体について地震国だと丸くくりするのが適切かどうかについては、かならずしもそうではないということである。この地理的問題のコンテキストはエネルギーに関したものであり、ここに地質学的構造云々を書き込むところではないと考える。地震についての心配は十分に理解しており、安全基準の適正化ということで方針として読めるようにするのが適切ではないか。

(鳥井委員)

  • 「もんじゅ」の件であるが、資料8で全てを応えてはいないと思う。研究用の機材のコストと実用の機材のコストというのは全然違う概念であるので、そこを明確にした上で「高い」という意見に対して答えた方がよい。さらに、実用のレベルで高いのであれば誰も採用しない、止めようとなるのである。経済性の話をするのであればそこまで含めて行うべきである。

(那須座長)

  • 「もんじゅ」のコストの問題は分科会でも出ているのか。

(鈴木委員)

  • 今の鳥井委員のご指摘の点については、第三分科会の報告書に記述がある。ただ経済性についてうまい表現があれば書いてもよいが、具体的に書こうとすればするほど、この長期計画がどこまで具体的な数字を書くべきかということにも関連して自己矛盾になってしまう。

(鳥井委員)

  • 長期計画案に書けと言っているのではなく、資料8の意見の対応案に書くべきと言っている。高レベルの処分の選択肢についても、資料8には書いてある。それを長期計画案本文に書く必要はないと思う。

(吉岡委員)

  • 廃棄物の問題で資料9第12頁において、「放射能に起因する影響が元々存在する自然放射線に比べ大きくなることがないように」となっている。原案の「影響を及ぼさない」がこのように変わってしまい、ずいぶん緩んだような印象がする。元々存在する自然放射線と同程度というのは、つまり2倍までならいいよという足し算であると解釈してしまうが、本当にこれでよいのか。高レベルの寄与分も合わせて、自然放射線の誤差の範囲内に替える方がより妥当ではないか。もう少しきつめの表現にすべきである。
  • 第15頁の資源論であるが「現在知られているウラン資源」は、現在知られているのではなく、確認可採埋蔵量とすべきでこの表現は間違いである。
  • 第37頁の新しく記述した部分について、原子力委員会というのは、開発当事者からある程度独立して判断し評価をすることを、これからますます重視すべきで、その意味でこの記述は主体が不明で曖昧である。安全総点検はあくまで核燃料サイクル開発機構が行うことであり、規制は規制当局でやるべきである。ここには、社会の理解を得つつといった表現は不要である。修文については今の趣旨で後日提案する。
  • 鈴木第三分科会座長から補足していただいたコストの話であるが、年間の発電収入を差し引いた経費なども第三分科会で議論されようとしたが、立ち消えになってしまった。年間経費が幾らかかるか、改修費が幾らかかるか位のデータは出した方が、メリット、デメリットの議論に役立つのではないか。
  • 安全性が第三分科会で議論されなかったことは、残念に思っている。

(永宮第四分科会座長)

  • 「ご意見をきく会」では、第四分科会に係わることはあまり議論がなかった。核燃料サイクル、廃棄物処理処分、あるいは「もんじゅ」の高速増殖炉がハイライトだったと思うが、安全性の問題に一番国民の関心が寄せられていたと感じた。しかし、第四分科会との関連では、安全性の基盤として技術力の伝承と向上という点において関連している。これは安全性確保に関し非常に重要な側面であり、第四分科会とも関連がある。
  • 原子力科学技術は、ある意味で今より太くならなければならない側面があり、すそ野を広げる意味で加速器等の議論をした。その点は報告書に書かれている。しかし、安全性を技術力の伝承と向上という点からとらえる記述は、あまり本報告書に書かれていない。
  • 人材確保について資料9第45頁に書かれており賛成するが、やはり国民の関心は安全性にあるので、その安全性を支えるものはやはり技術であるととらえ、その辺の文章をどこかに入れられないものか。例えば人材確保に入れるのであれば、「原子力にとって安全性は最大の課題である、それを支える技術と技術力の伝承と向上は一つの大きな課題であり、そのための人材の育成・・・」といった文章を入れられないか。

(神田委員)

  • 多くの意見をうまく集約して、項目を区切って修文されたのは大変よいと思う。安全というのは規制を強化すれば安全が確保されるといった意見が多くあったが、規制を強化すれば安全が確保されるわけではないと思うので、その意味では表現がうまい具合に「強化したのは何と何で、何と何は充実した」と使いわけがきっちりしているのは、うまく書けていると思う。
  • 各委員の意見で気になった点の一つは、下山委員の言われた「核廃絶」が長期計画に入るかということである。長期計画は原子力の利用と研究開発であるので、無理に入れると長期計画そのものがおかしくなるかも知れないという気がする。
  • もう一つは放射線のレベルの話で誤差範囲というのは、例えば日本国内における誤差範囲から世界的な誤差範囲まで入れると、この2倍どころではない非常なバラツキがある。これは検討会でいろいろ検討を重ねた結果、このような表現になったものである。それを急に誤差範囲とすると混乱を招くと思う。この修文は、国民の意見を聞いて修文できるぎりぎりの表現と考えられる。

(下山委員)

  • 資料8第49頁のところに「国際社会と原子力の調和」とある。その下に「核軍縮と核不拡散については、長計審議では重要議題の一つとして審議され、今後とも核兵器のない・・・・」とある。核廃絶という言葉を出すかは別にして、核兵器のない世界の1日も早い実現に向けてくらいの言葉がどこかにあってもよいのではないか。

(近藤委員)

  • 5月のNPT再検討会議では、一歩進んだ表現が使われたと理解している。核廃絶は究極の目標と言われており、縛りが見あたらないところがあったが、5月の会議の決議では、もう少しある種の明確な約束という少し違ったことが国際的な合意として成立したとすれば、ある種の新しい国際的概念が合意されていることについて的確な反応をこのレポートに入れることも大事だと思う。
  • これは各委員にご相談したい事でもあるが、経済性について議論の根拠を明らかにする意味で、原子力部会での資料を入れたわけであるが、これはこれで設置許可申請書の数値と異なる等、新たな問題を引き起こしていくわけである。また、国際比較はしておらず、なぜ日本だけ原子力が安いのかということに対しても答えてない。以上のことを長期計画案に書くのは難しいと思いつつ、何かここに入れられる資料がないか探しているところである。OECD、IAEAあたりのデータがないわけではないが、なかなか専門的でうまくいかない。何か良いものがあれば、各委員からもご提案頂きたい。

(那須座長)

  • 核廃絶については、長期計画案の第1頁に、原子力の平和利用が我々の原点であると書いてあるので、それが生きていると思う。

(鈴木委員)

  • 安全性の点に関して、「もんじゅ」の事故以降の取組や基本的な考え方についてもう少し書き込んだ方がよい思うが、もう一つ大事な点は、安全性の議論は優れて専門的な議論なので、第37頁でも新たに加えられている文章の「安全規制行政機関および原子力安全委員会による厳格な安全審査を経て」ということが非常に大事である。アプリオリに安全であるということで議論をして運転再開ということは明らかにおかしい。大事なことはまず安全審査という手続きに入るべきだということ。その結果がまたしかるべき場で議論されるべきであるということである。私が「ご意見をきく会」等で承った意見の趣旨は、そこにあると思う。つまり安全性については、手順を経て確実にそれを確かめていくことが大事であるということである。

(森嶌座長代理)

  • 本日出されたご意見及び別途提出いただくご意見を踏まえ、修正案を作成したいと思う。
  • 吉岡委員においては、修文案を提出いただけるとのお約束をいただいたが、通常の「a few days」で提出をお願いしたい。
  • 鈴木委員においては、「もんじゅ」の問題について、修文案を含め検討をいただきたい。
  • 近藤委員には、核燃料サイクルについて見直しをお願いしたい。
  • 村上委員、佐々木第五分科会座長からも修文案をご提出いただけるとのことであるが、やはり通常の「a few days」で提出をお願いしたい。

 

 ○本日の審議を受けて、那須座長より発言があった。

(3)閉会について

 ○那須座長より、発言があった。

 ○事務局より、次回の日程等について発言があった。

-以上-