第15回 長期計画策定会議
資 料 第 8 号 

平成12年11月8日

長期計画案に対する意見への対応(案)

  

 第1部 原子力の研究、開発及び利用の現状と今後の在り方

  

 第2部 原子力の研究、開発及び利用の将来展開


 本資料は、「長期計画案に対する意見の概要」をさらに分野ごとに要約し、これに対する対応案を記したもの。
 なお、要約した意見末尾の【 】内の数字は、当該意見に類似する意見の件数を示す。また、意見の右の欄の数字は、「長期計画案に対する意見の概要」中の「集約意見番号」に対応する。

 

 第1部 原子力の研究、開発及び利用の現状と今後の在り方

 

 【原子力科学技術の発達】(長計案4~6頁)

・欧米の脱原子力発電に対し、日本が異なる路線を選択する理由を分かりやすく提示してほしい【5】1-1
・「欧米諸国の脱原発政策の主張と動向」を資料に詳しく記載してほしい【3】1-2
・エネルギーセキュリティを原子力発電の歴史と絡めて論じていることを評価する【1】1-3

 長期計画策定会議においては、我が国のエネルギー供給における原子力発電の位置付けについて、国内外の原子力発電を巡る状況等を踏まえた上で調査審議しました。世界の状況については長期計画案5頁にその概要を記載しているとおりスウェーデン、ドイツ等における脱原子力の動きや、フランスにおける高速増殖炉「スーパーフェニックス」の閉鎖といった動きが見られますが、その背景としては、米国スリーマイルアイランド原子力発電所事故、旧ソ連チェルノブイル原子力発電所事故等による安全性への懸念に加えて、省エネルギーや再生可能エネルギー導入促進の機運の高まり、脱原発・反原発を掲げる政党の政権参加等の事情があげられます。また、米国では、既設の原子力発電所は他の電源に比べて経済性の面で十分競合している状況ですし、アジア地域においては、原子力発電の導入や規模拡大を考えている国もあります。このように原子力を巡る状況は各国のエネルギーを取り巻く様々な要因に左右されるところが大きいのが現状です。
 それらを認識した上で、我が国におけるエネルギー供給を考える場合、我が国は欧米諸国と異なり送電線やパイプラインによって近隣諸国とエネルギーを融通しあえる状況にない島国であり、国内にエネルギー資源が乏しいという地理的・資源的条件を踏まえることが重要で、また、エネルギー供給に当たっては、エネルギー消費に伴う環境負荷を最小限に抑えることが重要ですが、そのためには最大限の省エネルギーを推進するとともに相対的に環境負荷の少ないエネルギー源の導入を促進する必要があることが議論されました(長計案7頁)。これに加え、省エネルギーや再生可能エネルギーについての評価を行った上で(長計案8~10頁)、原子力発電の特性と課題を吟味し(長計案10~12頁)、結論として我が国としては、「省エネルギー、再生可能エネルギーの量的及び質的な特性を踏まえた利用等を、様々な規制的及び誘導的手段を通じて最大限推進していくことが必要である。それと並行して、エネルギー資源の乏しい我が国のおかれた地理的・資源的条件を踏まえ、また、将来の不透明さを考慮すれば、既に国内総発電量の3分の1を超える電力を供給し、エネルギー自給率の向上とエネルギーの安定供給に寄与してきた原子力発電を引き続き基幹電源に位置付け、最大限活用していくことが合理的である」(長計案12頁)との結論が導かれています。
 なお、頂いた意見を踏まえ、我が国と各国の状況が異なること及び各国における原子力発電の現状のみならず、将来展望についても固有の事情が違うことをわかりやすく表現する観点から、長計案5頁について、「このように原子力発電の現状と将来展望については各国各様で、それぞれの国と地域のエネルギーを取り巻く各国の固有の事情の相違によるところが大きい。」と修文します。

  

 【エネルギー供給を考えるに当たって】

  ○エネルギー供給全般(長計案7~9頁)

・エネルギー供給の中における原子力の位置付けを検討するに際しては、数十年あるいは数百年先まで視野に入れる必要がある【1】2-1
・原子力ありきではなく原点に立ち戻って総合的な検討をすべきであり、原子力を見直す発想が必要【23】2-2
・エネルギー政策を具体的、定量的に議論した上で、原子力の役割を明らかにすべき【5】2-3
・燃料電池等の最新の技術情報に基づき長期計画案を見直すべき 【2】2-4
・分散型電源、コージェネレーションの推進や、燃料電池、エネルギー貯蔵技術、メタンハイドレード等などの研究開発を重点に取り組むべき【7】2-5
・原子力、省エネ、再生可能エネルギーが脱化石燃料として相反する ものではないこと強調すべき【2】2-6

 今回の長計案の策定にあたっては、今なぜ原子力を選択するのかということについて、様々な角度から、原子力開発利用の原点に立ち返って徹底した議論を進めました。その過程においては、原子力発電の特性と課題について幅広く議論するとともに、省エネルギーや再生可能エネルギー、天然ガスなどの原子力以外のエネルギーについても評価を行いましたが、その際には、省エネルギーや再生可能エネルギーの現状と見通しなどについての具体的、定量的なデータも提出され、また、エネルギー専門家から最新のエネルギー技術に関する知見についてもご意見を伺いながら審議が行われました。
 我が国のエネルギー供給を考えるに当たっては、エネルギー消費に伴う環境負荷を最小限に押さえることが課題の一つであり、とりわけ、二酸化炭素などの温室効果ガス排出削減への対応が重要です。そのためには、省エネルギー推進のための多面的な努力と並び、化石燃料を原子力や再生可能エネルギーに転換すること、また、当面の対策として燃料を石油から天然ガスに転換を図っていくなどの対策が必要であると認識されています(長計案7~8頁)。これらの考えからも分かるように、省エネルギーの推進、再生可能エネルギー、原子力への転換は、温室効果ガス排出抑制策として、それぞれ相反する手段ではなく、総合的に考えるべきです。
 また、我が国のエネルギー供給を考えるに当たってのもう一つの課題は、国民生活を支えるために必要なエネルギーを安定的に確保することです。その際、我が国のおかれた地理的・資源的条件も踏まえると、主要エネルギー資源の輸入先の多様化、備蓄体制の整備、石油代替エネルギーへの転換が重要となります(長計案7頁)。この、エネルギーの安定確保の観点に加え、上述の環境負荷低減の観点を踏まえれば、ご指摘のとおり、エネルギー源を特定の種類に依存することは適切でなく、将来の不確実性等に備え、各供給源をその特性に応じてバランスよく整備しなければならないと認識しています。また、長期的観点から、新たなエネルギー技術の研究開発を進め、多様な可能性を追求していくことも重要です(長計案8頁)。

 原子力の位置付けを検討するに際しては、数十年あるいは数百年先まで視野に入れる必要があるとのご意見がありましたが、原子力に限らず、我が国のエネルギー供給を考えるに当たっては、時間軸的な視点が重要になります。例えば、省エネルギー及び再生可能エネルギーについては、様々な手段を通じて最大限に推進していくことが必要ですが、大きな役割を期待するためには時間を要するということに留意すべきです。エネルギー選択に当たっては、将来の可能性を十分考慮することは当然ですが、現在おかれている状況に対する認識を忘れるべきではないとの立場も踏まえ、「既に国内総発電量の3分の1を超える電力を供給し、エネルギー自給率の向上とエネルギーの安定供給に寄与してきた原子力発電を引き続き基幹電源に位置付け、最大限に活用していくことが合理的である」との判断に至ったものです(長計案12頁)。もちろん、省エネルギーや再生可能エネルギーは大きな可能性を有しており、長期的観点から、その可能性を引き出すための研究開発を進めることは重要であることも指摘されています(長計案8頁)。

 分散型電源、コージェネレーションの推進や、エネルギー貯蔵技術、燃料電池、メタンハイドレードなどの研究開発に重点的に取り組むべきとのご意見がありましたが、策定会議におきましても、長期的視点から、ご指摘の技術を含めた多様な技術的可能性を追求することは重要であると認識し、その旨は長計案8頁に記述されています。特に、コージェネレーションは分散型エネルギー供給システムとしても注目されていることを考慮し、その旨を以下のとおり修文します。(長計案8頁)
 「分散型エネルギー供給システムとしてのメリットを有するコージェネレーション・・・」

  

  ○省エネルギー(長計案8~9頁)

・大量消費・大量生産の経済を反省し持続可能な社会を目指すべき【12】2-7
・最大限の省エネルギーをすれば脱原発は可能である【2】2-8
・今後は省エネを柱として、原発の役割を見直すべき【14】2-9
・省エネルギーこそ全力を注ぐべき【9】2-10
・我々のライフスタイルを見直す必要がある。例えば自動販売機はこ れほど必要はないのではないか。【12】2-11
・まず、国民一人一人が電力消費を減らすべき【3】2-12
・持続可能な社会を確立すればエネルギー消費は激減する。その点を 踏まえた計画にすべき【1】2-13
・省エネへの国の啓蒙等の取組が不十分なのではないか【2】2-14
・省エネは既に十分やっており、更なる省エネを前提とするのは誤り ではないか【1】2-15

 長計審議においては、省エネルギーに関して数多くの議論が行われました。その結果、我が国が地球温暖化防止京都会議(COP3)において受け入れた温室効果ガスの排出量削減目標を達成するという観点及び我が国の社会を持続可能な発展を実現できる循環型社会に変革していくとの観点から、省エネルギーを推進することの必要性については、ほぼ意見の一致を見ました。
 政府の現行の長期エネルギー需給見通し(1998年6月)では、2010年度における省エネルギー量は、家庭部門の総エネルギー消費量に相当する原油換算5,600万klを目標としており、この目標を達成するために政府は、産業部門においては、エネルギー使用の合理化の徹底、関連技術開発の推進、エネルギー多消費工場のエネルギー使用合理化に関する将来計画提出の義務づけ等を、民生部門においては、トップランナー方式の導入による特定機器の省エネルギー目標の設定、住宅や建物の断熱、待機電力の節減、さらには人々のライフスタイルの変革の呼びかけ等を、運輸部門では、自動車の燃費の改善強化を図るほか、クリーンエネルギー自動車の普及促進、物流交通対策の推進等の対策を図るなど、既に大きな努力が払われているところです。
 我が国は、石油危機を契機に、積極的に省エネルギーに取り組んだ結果、我が国のGDPあたりの最終エネルギー消費量は、欧米諸国に比べて低い水準にありますが、民生、運輸部門では一貫してエネルギー需要が伸び続けていること、産業部門では近時の経済不況等により省エネルギー投資の低迷が見込まれることから、今後の省エネルギーの進展については困難が予想されています。
 以上のような状況を踏まえ、我が国の社会を持続可能な発展を実現できる循環型社会に変えていくことが重要であるとの認識の下、長計案では「大量生産、大量消費型の経済社会を見直し、資源の効率的利用と再利用のための技術とシステムの整備充実を図り、人々のライフスタイルの在り方をこの社会にふさわしいものに変革することが不可欠である。このため国はこれらの実現に向けて様々な施策を着実かつ継続的に進めていかなくてはならない」としています (長計案9頁)。しかし、省エネルギーを積極的に推進すべきとするご意見が数多くありましたことを踏まえ、この部分に続く記述を含め、将来の省エネルギーの可能性に対して否定的と受け止められることのないよう以下のとおり修文します。
 「これには設備の更新、大きな意識改革等を要する場合も多く、効果が現れるまでに時間を要することに留意しておかなくてはならないが、国はこれらの実現に向けて国民の協力と参加を求めつつ様々な施策を着実かつ継続的に進めていかなくてはならない。しかし、これには設備の更新、大きな意識改革等を要する場合も多く、効果が現れるまでに時間を要することに留意しておかなくてはならない。

 国民一人一人が電力消費量を減らすべきであるといった、人々のライフスタイルの在り方に関するご指摘ですが、長計案では「人々のライフスタイルの在り方をこの社会(持続可能な発展を実現できる循環型社会)にふさわしいものに変革することが不可欠である。このため国はこれらの実現に向けて様々な施策を着実かつ継続的に進めていかなくてはならない」と、その重要性を指摘しています(長計案9頁)。もちろん、これらの実現に当たっては、国民の協力と参加が不可欠であることから、ご意見を踏まえ、長計案9頁にその趣旨を追記することに致しました。また、長計案8頁の記述で、転換すべき「ライフスタイル」の考え方により正確性を持たせる観点から、「エネルギー多消費型のライフスタイル」と修文します。

 最大限の省エネルギーをすれば脱原発は可能である、あるいは持続可能な社会を確立すればエネルギー消費は激減するため、その点を踏まえた計画にすべきとのご意見ですが、策定会議では、我が国のエネルギー供給における原子力発電の位置付けを議論するに当たり、原子力発電の特性と課題について評価するとともに、省エネルギー、再生可能エネルギーなどの原子力以外のエネルギー源についても総合的に評価した結果、我が国の社会を持続可能な発展を実現できる循環型社会に変えていくために諸取組が必要であると考えつつも、「設備の更新、大きな意識改革等を要する場合も多く、効果が現れるまでに時間を要することに留意」(長計案9頁)すべきであることを指摘しています。したがって、長計案では「省エネルギー、再生可能エネルギーの量及び質的な特性を踏まえた利用等を、様々な規制的及び誘導的手段を通じて最大限に推進」することと並行して、「エネルギー資源の乏しい我が国のおかれた地理的・資源的条件を踏まえ、また、将来の不透明さを考慮すれば、既に国内総発電量の3分の1を超える電力を供給し、エネルギー自給率の向上とエネルギーの安定供給に寄与してきた原子力発電を引き続き基幹電源に位置付け、最大限に活用していくことが合理的である」とされています(長計案12頁)。

 

  ○再生可能エネルギー(長計案9~10頁)

・原子力からは撤退し、欧米の動向などを参考として、クリーンで安全な風力、太陽光等の再生可能エネルギーを推進するべき【122】2-16
・自然エネルギー等を一層普及させるためには国民のある程度の負担も必要【3】2-17
・ピーク時対応には太陽光がより経済的である【1】2-18
・再生可能エネルギーが過小評価されすぎているのではないか【2】2-19
・原子力の予算を再生可能エネルギーにまわすべき【9】2-20
・再生可能エネルギーはクリーンであるが、経済性、安定性などの問題点により、原子力の代替は困難である。【10】2-21
・再生可能エネルギーのメリット、デメリットを比較できるようにすべき【1】2-22

 今回の長計案の策定にあたっては、例えば、再生可能エネルギーでどれだけのエネルギーがまかなえるのかなど、他のエネルギーの特徴等をもよく検討した上で、エネルギーとしての原子力の必要性や位置付けについて広く国民に明らかにしていくとの基本的立場に立って審議が行われました。
 その中でも、水力、太陽光、風力発電といった再生可能エネルギーについては、各エネルギーの特徴、現状と見通しなどについて、精力的に審議を行いました。長計案の9頁から10頁にかけて、ほぼ1ページを費やして、個別のメリット、デメリットを上げて評価しており、また47頁にはそれらを分かりやすく表にまとめた参考資料を添付しています。再生可能エネルギーが過小評価されているのではないかとのご意見がありましたが、ここでは現時点で最も合理的と考えられるデータ、当該分野の専門家の意見を基に評価が行われました。
 ご指摘のあった太陽光発電のピーク時対応の電源としての可能性についても評価しており、その旨は長計案9頁に記述されています。また、太陽光発電の記述(長計案9頁)については、小規模分散型電源としてのメリットを有する点を踏まえて以下のとおり修文します。
 「自家需要としてのを賄う太陽光発電を除いて、大規模な導入は容易ではないが使われ始めた段階である。」
 それらを総合的に踏まえた結果、長計案では、「再生可能エネルギーに関しては、今後、さらに、分散型エネルギーとしての特長を生かして利用を進めることに対して、中長期的観点に立って最大限の努力を払いつつ、合理的導入を図ることが必要である」と認識されています。しかし、同時に、「当面は、水力を除いて、補助的水準を超える役割を期待するのは難しいのが実状である」との評価されています(長計案10頁)。

 なお、風力発電等の再生可能エネルギーを積極的に推進すべきとのご意見が多数あったことから、この部分の記述に対して否定的と受け止められることのないよう以下のよう修文します(長計案9頁)。
 「また、これらの不安定な電源が系統の最低負荷容量に対して一定の割合を超える場合は電力系統側に安定装置が必要となることも、コスト増大要因として指摘されている。しかしながら、立地点の風況調査を丁寧に実施して特性にあった風車を選択すると同時に、単機出力を1,000kW程度に大型化するなどの経済性追求努力を重ねつつ、その規模を拡大していくことが期待されている。なお、これらの不安定な電源が系統の最低負荷容量に対して一定の割合を超える場合は電力系統側に安定装置が必要となることも、コスト増大要因として指摘されている。

 欧米の動向を参考にして、再生可能エネルギーの導入を図り、原子力からは撤退すべきとのご意見ですが、再生可能エネルギーを始めエネルギー選択に当たっては、各国の国情を十分考慮することが重要です。再生可能エネルギーに関しては、水力資源や風況など自然条件、社会条件の違いがあることに留意する必要があります。長計審議においては、我が国の国情を踏まえた再生可能エネルギーについての評価、省エネルギーや天然ガス、原子力の特性および課題についての評価に加え、エネルギー資源に乏しい我が国のおかれた地理的・資源的条件、将来の不透明性などを総合的に考慮した結果、再生可能エネルギーについては「量及び質的な特性を踏まえた利用等を、様々な規制的及び誘導的手段を通じて最大限に推進していくことが必要」と判断し、原子力発電については「引き続き基幹電源に位置付け、最大限に活用していくことが合理的」とされています(長計案12頁)。

 なお、再生可能エネルギーの普及にあたっては、今後とも、様々な規制的及び誘導的手段を通じて最大限に推進していくことが必要されており、そのための具体的施策について、関係各所において検討されていくことが期待されます。自然エネルギーの普及には国民のある程度の負担も必要とのご意見ですが、現在、電気事業者により導入が進められているグリーン電力基金を通じて、自然エネルギーの導入に個人として貢献することも可能となっています。

 また、原子力の予算を再生可能エネルギーにまわすべきとのご意見もありましたが、国の予算については国会の議決を経て決定されるものでもあり、策定会議としてエネルギー関係予算について具体的に提言を行うことは適切ではないと考えられます。

 

 【原子力発電の特性と課題】

  ○供給安定性(長計案10頁)

・ウラン濃縮等は海外依存していることなどから核燃料の供給体制は 脆弱であるとの認識に立つべき【2】3-1
・ウラン資源はFBRの実用化を仮定しなければ長期供給安定性はな いのではないか【2】3-2

 原子力発電は、短中期的には、「他のエネルギー源に比べて燃料のエネルギー密度が高く備蓄が容易であるという技術的特徴を有し、加えてウラン資源は石油資源に比べて政情の安定した国々に分散していることから、供給安定性に優れている」という特徴を有しています。一方、長期的には、ウラン資源といえども他の化石燃料と同様に、その資源賦存量の観点から供給が不安定になる可能性がありますが、長計案においては、「将来、高速増殖炉等によってウランをより高い効率で利用できる技術が実用に供されれば、原子力発電は、より一層長期にわたって安定的にエネルギーを供給できるようになる可能性があり、将来ともに人類にとって必要なエネルギーを供給する上で有力な技術的選択肢の一つとなる」とされています(長計案10頁)。この点等を踏まえ、高速増殖炉サイクル技術については、「不透明な将来に備え、将来のエネルギーの有力な選択肢を確保しておく観点から、着実にその開発に取り組むことが重要である」と指摘されています(長計案13~14頁)。

 ウラン濃縮等は海外依存していることなどから、核燃料の供給体制は脆弱であるとの認識に立つべきとのご意見ですが、我が国が海外から輸入しているウラン濃縮役務は、米国、仏国など、政情が安定し、我が国と友好関係にある国からのものがほとんどであり、また、国内においても六ヶ所ウラン濃縮工場が稼働していることから、その供給が脆弱であるとの認識には立っておりません。ただし、当面の間供給能力過剰で推移すると予想されているウラン濃縮役務市場も、中長期的に見れば不安定になることも想定しておくことは重要と認識しており、現在稼働中の六ヶ所ウラン濃縮工場については、安定したプラント運転の維持及び経済性の向上に全力を傾注することが期待されています(長計案28頁)。

 

  ○環境適合性と放射性廃棄物(長計案10~11頁)

・原子力は二酸化炭素排出量が少ないなど環境負荷が少ないとされているが、本当なのか【7】3-3
・原子力発電の廃熱による温暖化を考慮すべきではないか【2】3-4
・地球温暖化問題について原子力発電の利用とエネルギー利用効率の向上とを比較すべき【1】3-5
・石油や天然ガスの発電での廃棄物は限りなくゼロではないか【1】3-6
・他の産業等で発生した廃棄物と放射性廃棄物の毒性や量についてフェアに評価すべき【2】3-7

 原子力発電は、発電過程で、温室効果ガスである二酸化炭素を排出することはないという特色を有しています。一方、原子力発電においても、発電所の建設や、燃料となるウランの濃縮、使用済燃料の再処理、放射性廃棄物処分などのプロセスを通じて、二酸化炭素を排出しますが、その量は、他の火力発電を通じて排出される二酸化炭素の量と比べるとわずかです。各発電方式に対して、原料の採掘から建設、輸送、精製、運用(実際の発電)、保守等のために消費される全てのエネルギーを対象とした二酸化炭素排出量の試算によれば、石炭火力の約45~90分の1、LNG火力の約30~60分の1,太陽光の約3~5分の1、風力の約2~3分の1程度と試算されています。

 火力発電が二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物による環境影響を考慮する必要があるのに対し、原子力発電では放射性物質による環境影響を考慮することが必要です。放射性廃棄物に関しては、「長期間にわたって放射能が生活環境に影響を及ぼさないように、適切に管理し処分することが必要」ですが、現在、低レベル放射性廃棄物については既に埋設処分が開始されており、また、高レベル放射性廃棄物については、地下数百メートル以深の安定した地下に埋設する「地層処分」を行うこととしています。後者については、2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定され処分事業の実施主体が設立されたところであり、今後、処分地選定等が進められることとなっています(長計案10頁)。なお、高レベル放射性廃棄物処分については、安全性を含め本資料の33頁に詳しく説明しています。

 地球温暖化問題について原子力発電とエネルギー利用効率の向上とを比較すべきとのご意見ですが、長計案では、地球温暖化防止京都会議(COP3)において我が国が受け入れた温室効果ガスの削減目標を達成するためには、各種エネルギーの利用効率の向上を図るなど省エネルギーを推進するための多面的な努力を行うと同時に、化石燃料を二酸化炭素の排出の少ない原子力や再生可能エネルギーに転換することや、当面の対策として燃料を石油から天然ガス等に転換を図っていくことなどの対策が必要であると指摘されています(長計案8頁)。すなわち、省エネルギーの推進、再生可能エネルギー、原子力への転換は、温室効果ガス排出抑制策として、それぞれ相反する手段ではなく、総合的に取り組むべきものです。

 原子力発電の廃熱による地球温暖化を考慮すべきではないかとのご意見ですが、地球温暖化は、大気中の二酸化炭素等の温室効果ガスが増加することにより、太陽からの入射エネルギーと、地球からの放射エネルギーのバランスが崩れることによって引き起こされるものですが、人類が消費しているエネルギーは、太陽から放射され地球に吸収されるエネルギーの1万分の1程度であり、そのうちの約7%を占める原子力エネルギーの利用に伴って発生する廃熱が、それ自体地球温暖化に寄与するとは考えられません。なお、原子力発電の熱効率が最新鋭の火力発電に比べて若干低いことは事実(原子力:33~34%、最新鋭火力:40~50%)ですが、原子力発電所と同様、火力発電所からも発電に伴って廃熱は発生します。

 他の産業等で発生した廃棄物と放射性廃棄物の毒性や量についてフェアに評価すべきとのご意見がありましたが、放射性廃棄物はその発生量が相対的に少なく、その観点からは比較的容易に扱いうるものですが、放射能を帯びており、その最終処分は原子力発電を進めるに当たって最重要課題の一つです。また、処分に当たってはその放射能が生活環境に影響を及ぼさないようにすることが必要と指摘されています(長計案10頁)。

 なお、これらの点をより明確にするため、以下のとおり修文します(長計案10~11頁)。

 「原子力発電は、他のエネルギー源に比べ同じエネルギーを取り出す場合に発生する廃棄物の量が少なく貯蔵スペース等の面で比較的容易に取り扱うことができるという特徴を有している一方で、これらは放射能を帯びており、その最終処分は原子力発電を進める上で最重要課題の一つである。」

 「高レベル放射性廃棄物は長期間にわたって高い放射能が持続するために、その放射能に起因する影響人類の生活する環境にもともと存在する自然放射線による影響に比べ大きくなることがない影響を及ぼさないように長期にわたってその安全性を確保することが必要となる。」

  

  ○経済性(長計案11頁)

・原子力のコストは安いとされているが地域振興費、放射性廃棄物の処理費、廃炉費用等を加えれば本当は高いのではないか【16】3-8
・他の電源と比べ遜色がないというだけでなく、原子力であればここまで経済性を向上させることができると主張してもらいたい【1】3-9
・原子力のコストの低減を最優先にすべき【3】3-10
・電力自由化が進めば原子力の発電コスト面での優位性は薄れるのではないか【4】3-11

 長計案における原子力発電の経済性に関する記述は、通産大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会原子力部会に提出された資料(1999年12月)に基づいています。この資料によると、運転年数を40年間、平均設備利用率を80%等として試算した場合、原子力発電の発電単価は5.9円/kwhとなり、他の電源と比べて遜色のない結果となっています(長計案46頁資料)。
 なお、この試算に当たっては、発電所の建設費、運転・修繕費、燃料費(ウラン精鉱、濃縮、再処理などを含む)に加え、高レベル放射性廃棄物の貯蔵、処分費用、その他廃棄物の処理処分費用、廃炉に伴って発生する費用等も考慮に入っており、その点が分かるよう添付の資料を修正します。
 また、この試算における発電コストは、発電所で電気を発生するために必要な直接的経費を対象としており、電源三法交付金等の政府予算は算入すべき性質のものではないとの考え方に基づいています。特に、電源三法交付金は公共用施設の整備を通じて、発電所周辺地域住民に還元されていることから、これを「発電に要する費用」として扱うことは適当でないと考えられます。地元協力金については、地元産業の育成・振興等の観点から支払われ、立地地域毎に異なるため、試算には織り込まれていません。
 「ご意見をきく会」で原子力発電単価の試算値と電力会社による公表値が異なるとのご指摘がありましたが、ここで用いた数値は、標準的な電源の発電原価を比較することを目的として試算されたものであり、運転年数を40年間、平均設備利用率を80%など、ある一定の現実的と考えられる条件を仮定して算出されたものです。したがって、これとは異なる条件のもとで算出された数字とは当然異なります。
 原子力発電は、これまでの国及び民間事業者による技術開発の成果も踏まえ、民間事業者において行われています。今後とも「経済的効率性を追求する民間事業であることのメリットをいかしつつ、安全確保を大前提に原子力発電事業の円滑な推進」が図られることが期待されています(長計案22頁)。

 エネルギー供給に当たっては経済的効率性を追求するという民間事業であることのメリットを活かす観点から、現在、既に、民間事業者にゆだねられ、国は長期的観点からエネルギーの安定供給や環境保全といった公益の実現を図る方策を講じることとされています。原子力発電や核燃料サイクル事業についても、このような国、民間の役割分担の考え方に立って進められています。
 電力自由化と原子力発電についてのご意見ですが、一般に、あらゆる事業には何らかの経済リスクが伴いますが、原子力発電や核燃料サイクル事業についても、民間事業者はこれらの経済リスクを含め、総合的な経営判断に立って事業を進めているところです。

  

 【我が国のエネルギー供給における原子力発電の位置付け】(長計案12頁)

・原子力は安全性、放射性廃棄物などの点で問題がある。欧米の脱原発の動向などを見習い、今後は脱原発を進めるべき【302】4-1
・国民のコンセンサスが得られるまで原子力発電所を増設すべきではなく、原子力以外のエネルギーを国民が考える時間(原子力モラトリアム)を作ってほしい【15】4-2
・原子力を次世代代替エネルギーまでのアプローチとすることが必要【2】4-3
・原子力は必要なエネルギーの確保、地球環境維持等のため必要。今後も原子力を着実に進展させるべき【53】4-4
・原子力発電は電源の一つに過ぎず、国を挙げて押し進めるべきではない【3】4-5

 長計策定会議においては、原子力発電に対して「一旦大規模な事故が起きると放射能汚染被害及びその社会的影響が甚大であるところから、人類は果たして原子力という巨大技術を安全に管理できるのかといった不安」や「欧米諸国において原子力開発が停滞しており、その中に脱原発を掲げる国もあること」、「原子力発電に伴って生じる高レベル放射性廃棄物の処分対策の遅れや、後世代にわたる人の健康影響への懸念などから、我が国がこれ以上の原子力発電や核燃料サイクルの推進に取り組むことに懸念を抱く人が多くなっている。」 (長計案6~7頁)との現状認識に立って、今なぜ原子力を選択するのかということについて、様々な角度から、原子力開発利用の原点に立ち返って徹底した議論が行われました。その過程においては、原子力発電の特性と課題について明らかにするとともに、例えば、再生可能エネルギーでどれだけのエネルギーがまかなえるのかなど、他のエネルギーの特徴等をもよく検討した上で、エネルギーとしての原子力の必要性や位置付けについて広く国民に明らかにしていくとの基本的立場に立って審議が行われました。
 また、原子力発電の特性と課題について検討した結果、原子力発電には供給安定性、経済性に優れ、発電過程で温室効果ガスである二酸化炭素などを排出することがないという特徴があるとともに、放射性廃棄物を発生すること、人々の安全性に対する不安感が大きいこと、核不拡散への配慮が必要であることなどの課題が指摘されました(長計案10~12頁)。
 これらの問題に対しては、国際社会と一体となって核不拡散の努力を進めるとともに、安全確保のための取組を強化し原子力施設の安定かつ安全な運転を達成し、放射性廃棄物の適切な処理及び処分の実施に向けて継続的に取り組むことで、エネルギー供給等原子力に期待される役割を着実に果たしていくことが重要です。さらに、その際、技術開発の成果を適時適切に取り入れ、安全性、信頼性をより高めるための不断の努力と同時に、原子力が常に社会に対して開かれた存在であるための努力を怠らず、国民の原子力に対する信頼の醸成を図っていくことが重要であることを指摘しています(長計案20~22頁)。
 なお、これからの原子力政策を進めるに当たっての安全確保と防災への具体的取組、放射性廃棄物の処理及び処分に向けての具体的取組については、それぞれ、長計案16頁、23~24頁、30~33頁に詳述しています。
 我が国も欧米の脱原発の動向を見習うべきとのご意見ですが、世界の原子力開発の状況を見ると、いわゆる先進国を中心に原子力発電所の新増設が停滞傾向にある一方で、中長期的に高い経済成長とそれに伴うエネルギー需要増が予想されているアジア地域では、原子力発電の導入やその規模の拡大を考えている国もあります。このように原子力発電の現状についてはエネルギーを取り巻く各国の固有の事情により異なります(長計案5頁)。
 他方、我が国のエネルギー供給を考えるに当たっては、我が国が欧米諸国と異なり、送電線やパイプラインによって近隣諸国とエネルギーを融通し合える状況にない島国であること、国内にエネルギー資源が乏しく、そのほとんどを海外に依存しているという地理的・資源的条件を踏まえた対策を講じることが重要であると指摘されています。
 したがって、長計案では、これらの条件を踏まえつつ、将来の不透明さを考慮した結果、我が国においては、省エネルギー、再生可能エネルギーの量的及び質的な特性を踏まえた利用等最大限に推進していくとともに、原子力発電を引き続き基幹電源に位置付け、最大限に活用していくことが合理的であるとしています(長計案12頁)。

 国民のコンセンサスが得られるまで原子力発電所を増設すべきではなく、原子力以外のエネルギーを国民が考える時間(モラトリアム)をつくるべきとのご意見ですが、上述のとおり、長計案では、種々の条件を総合的に踏まえた結果、原子力発電を引き続き基幹電源に位置付け、最大限に活用していくことが合理的であると判断しており、原子力発電の安全性と放射性廃棄物の処理および処分に対する取組を継続しながら、我が国のエネルギー供給システムを経済性、供給安定性に優れ二酸化炭素の排出量が少ないものとするという観点から、状況の変化に応じつつ、電源構成に占める原子力発電の割合を適切なレベルに維持していくことが必要であるとされています(長計案12頁)。

 原子力発電は電源の一つに過ぎず、国を挙げて推進すべきでないとのご意見ですが、我が国のエネルギー供給を考えるに当たっては、エネルギーの安定供給の確保やエネルギー消費に伴う環境負荷を最小限に抑えることが課題であり、これらの観点を踏まえると、我が国においては、主要エネルギー資源の輸入先の多様化、備蓄体制の整備及び省エネルギーの推進、化石燃料の原子力や再生可能エネルギーへの転換、当面の対策として燃料の石油から天然ガスへの転換など、数多くの対策が必要となります(長計案7~8頁)。長計審議においては、原子力発電に加えて、省エネルギーや再生可能エネルギー等、他のエネルギーの特徴と課題について個々に検討を行い、その結果、長計案では省エネルギーや再生可能エネルギーについては、その量及び質的な特性を踏まえた利用等を最大限に推進していくことが必要であり、原子力発電については引き続き基幹電源に位置付け、最大限に活用していくことが合理的であるとしています(長計案12頁)。即ち、長期的観点からエネルギー安定供給の確保や環境保全といった公益の実現を図る観点から、省エネルギーや再生可能エネルギーの推進も原子力発電と同様に重要であるとの認識に基づいており、原子力発電のみを特別視しているわけではありません。

 原子力発電は次世代代替エネルギーまでのアプローチとすべきとのご意見もありました。将来の不透明さ等を考慮すれば、「長期的観点から、省エネルギー技術、燃料電池等の研究開発に加えて、原子力や再生可能エネルギーについてより大きな可能性を引き出す技術の研究開発や、さらに、二酸化炭素回収技術等の実用化の可能性を追求するための研究開発を進め、将来の社会における新しい価値観に立ったニーズや新たな制約の出現に備えて、創造力をもって多様な可能性を追求していく」ことは当然重要でありますが、供給安定性、経済性に優れ、発電過程で二酸化炭素を排出しないという原子力発電の特徴はエネルギー供給を考える上でも十分考慮されるべきものです。(長計案8頁)。
 なお、海外の動向に触れつつ、原子力発電に対する不安や懸念を指摘する意見が数多く寄せられたことから、長計案7頁の記載を以下のとおり修正する。
 「また、原子力発電に伴って生じる高レベル放射性廃棄物の処分対策の遅れや、後世代にわたる人の健康影響への懸念に加えて、欧米諸国において原子力開発が停滞しており、その中に脱原発を掲げる国もあること、地球温暖化防止策として再生可能エネルギーを導入するという機運が高まっていることから、我が国もこれ以上の原子力利用は抑制すべきと考える人が、さらに、原子力発電に伴って生じる高レベル放射性廃棄物の処分対策の遅れや、後世代にわたる人の健康影響への懸念などから、我が国がこれ以上の原子力発電や核燃料サイクルの推進に取り組むことに懸念を抱く人が多くなっ増えている。」

  

 【信頼の確保】

  ○政策決定過程への国民参加(長計案17~18頁)

・コンセンサス会議、国民投票、住民投票など、国民の意見を政策へ反映させるためのしくみが必要である【16】5-1
・国会などの場で議論し結論を出し国民のコンセンサスを得るべき【4】5-2
・原子力に関して国民間での議論を活発にして国民のコンセンサスを得るべき【4】5-3
・「ご意見をきく会」、「放射性廃棄物シンポジウム」や討論会をもっと増やすべき【2】5-4

 長計審議においては、政策決定過程における合意形成とそのプロセスの在り方、原子力施設の立地住民意見の反映など多様な検討が行われました。原子力委員会では、「もんじゅ」事故を契機として、他の行政機関に先駆けて、政策決定過程における国民の参加を進めてきており、今回の長計策定に当たっての国民からの意見募集やご意見をきく会を開催しているところですが、長計案では、「今後とも、国民の多様な意見を踏まえて原子力政策決定を行っていくために、政策案に対する国民の意見を広く求めるなど、政策決定過程に対して国民の参加を促すとともに、国は政策決定に関し、様々な機会を活用して説明責任を果たすことが重要である。」とされています。また、「これらのプロセスは社会情勢の変化に応じて柔軟に見直す必要がある」ことも併せて指摘されています。また、原子力政策円卓会議は、様々な人の意見を取りまとめて政策提言を形成していく機能を果たしてきましたが、広く国民の意見を汲み上げて原子力政策に反映していくという観点から、円卓会議に続く新たな意見集約の場の在り方を検討することが提案されています(長計案17~18頁)。
 住民投票については、地域住民の意見を直接政策等に反映することができるとの評価がある一方で、間接民主主義を前提とする地方自治との整合性、国の役割とされる事項を対象とすることの合理性等を巡り様々な意見があり、住民投票が地域における公共政策の決定に役立つか否かについては、対象事項、争点の設定が住民投票に馴染むか否か等について十分な議論が行われるべきであり、現状では原子力施設の立地に関連する住民投票については検討されるべき様々な課題を有しているとの第一分科会の結論を踏まえ、長計案で住民投票についての記述はありませんが、原子力発電所等の立地に当たっては、「今後とも地域住民との対話の場等を通じて、地域住民が立地に関連して直接意見を表明することができる機会を設けること」の重要性について指摘されています (長計案18頁)。また、政策決定過程への国民参加に関連して、長計案17~18頁では「国民一人一人がエネルギーや原子力について考え、判断するための環境を整えることが重要」であり、このため、「対話を基本とする双方向のコミュニケーション」などが重要であるとされています。

 原子力長期計画と国会審議についてのご意見ですが、長計は「原子力基本法」及び「原子力委員会及び原子力安全委員会」に基づき原子力の研究、開発及び利用に関する事項について企画し、審議し、及び決定することを任務としている原子力委員会で決定するものですが、原子力の問題は、国民生活、経済活動等の様々な分野に深く関連する重要な政策課題であることから、国民の代表である国会の場を含め様々な場で活発に議論されることは重要です。

 

 第2部 原子力の研究、開発及び利用の将来展開

  

 【原子力の研究、開発及び利用に当たって】

  ○国と民間の役割の基本(長計案22頁)

・原子力発電を基幹電源として位置付けるなら国がリーダーシップを発揮すべき【5】6-1
・国の資金で発電用原子炉を建設し、また、すべての原子力発電所を国が買い取り国有とすべき【1】6-2
・原子力発電、六ヶ所サイクル施設、高レベル放射性廃棄物の最終処分も民間事業者自らの責任で行うことをはっきりさせるべき【3】6-3
・国は原子力利用と安全確保等の研究開発の推進とその支援体制を構築すべき【1】6-4
・民間の活動の誘導の施策を国が講じる場合は少なくとも国会の決議が必要【2】6-5
・電力自由化の流れの中で原子力開発の在り方について触れられていないのではないか【1】6-6

 我が国では、経済的効率性を追求するというメリットをいかす観点からエネルギー供給を民間事業者にゆだね、国は長期的観点からエネルギー安定供給といった公益の実現を図るべく、これらの事業を誘導する施策を適切に講じていくことが基本であり、長計案12頁では原子力発電については、エネルギーの安定供給に寄与し、また、我が国の二酸化炭素排出量の削減に大きな役割を担っていることから、引き続き基幹電源に位置付け最大限に活用していくことが合理的であるとしています。
 このため、国はこのような役割を担う原子力発電を含む原子力開発利用について、その基本方針を明らかにし、安全規制や事業の円滑な実施を図るための国際的枠組みの整備、国民の理解を求め、民間の自主的な活動に伴う原子力発電の規模が、原子力発電の果たすべき役割を踏まえた目標を達成するものとなるよう、状況に応じて誘導することが重要な役割である指摘されています。同様に国は六ヶ所サイクル施設を始め民間が主体的に取り組んでいるサイクル事業についても、その円滑な推進が図られるよう所要の措置を講じていくことの必要性が述べられています(長計案22頁)。
 また、国は将来における有力なエネルギー選択肢としての原子力の潜在的可能性を探索し、実用化を目的とする研究開発についても積極的に取り組むこととされています(長計案22頁)。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分を含め、放射性廃棄物の安全な処理及び処分は、これを発生させた者の責任においてなされることが基本ですが、特に放射性廃棄物の処分事業は長期間にわたる事業であることから、国はこれらの処理及び処分が安全かつ適切に行われるよう所要の措置をとることが必要であるとされています(長計案30頁)。

 なお、国がこれら民間の事業活動について誘導措置を講ずる場合、様々な手段がありますが、一般に、法律、予算、税制の手段を通じて国がこのような措置をとる場合には、国会の審議を経て行われることとなります。

 長計審議においては、我が国だけではなく自由化の進んでいる海外の事例についても参照しながら、電力自由化の時代における原子力の研究開発利用に関する在り方について、国と民間の役割が如何にあるべきかとの活発な議論が行われました。これまで国は、電力の安定供給を確保するため、電気事業者に地域独占を許す一方、供給義務を課すなどの規制を行い公益の担い手としての経営を要請してきました。その後の制度改正により、競争原理を導入して電力事業の効率化を促して電力価格を低減させ、我が国産業の国際競争力強化をもたらすことを期待し、大口需要家への電力小売りが自由化され、3年後を目途にその効果を検証し自由化実施の範囲、制度等の見直しが行われることとなっています。
 このような状況を踏まえた上で議論が行われた結果、国は、長期的観点からのエネルギーの安定供給の確保や地球環境問題に係る国際的約束を果たすために必要な対応方針を明確に示して、国民の理解を求めるとともに、民間の自主的な活動により事業化されている原子力発電事業については、その規模が、原子力の果たすべき役割を踏まえた目標を達成するものとなるよう、国が状況に応じて誘導することが必要とされ、この様な趣旨が長計案22頁に示されています。

 なお、以上に述べたように国と民間の役割分担の考えを明確化するため、エネルギー供給に関する長計案7頁の記述を以下のとおり修文します。
 「我が国においては経済効率性を追求するという民間事業のメリットを最大限にいかす観点からエネルギー供給を民間事業にゆだねているがしつつ、国は、長期的観点からエネルギーの安定供給の確保や環境保全といった公益の実現を図る方策をべく、これらの事業を誘導する施策を適切に講じていくことが必要である。」

  

 【安全確保と防災】(長計案16~17頁、23~24頁)

・JCO事故について、規制側の責任を明確化し、住民の徹底的なアフターケアを実施し、得られた教訓を安全文化の定着化につなげる具体的記述を追加すべき【17】7-1
・原子力産業、特に現場におけるモラルを高め、安全体制を充実させるべき【19】7-2
・原子力安全委員会を始めとして、行政における安全対策・チェック機能を充実させるべき【17】7-3
・原子力に対する安全性評価・リスク評価を充実させるべき【7】7-4
・原子力の安全性を高めるための対策や安全性向上ための技術開発が必要【14】7-5
・地震・津波等の天災、航空機や隕石の落下などに対する安全性についての具体的記述を追加すべき【4】7-6
・コスト削減ばかりを追求する姿勢は誤っており、若干コストが高くとも安全性をしっかりと確保するべき【1】7-7
・原子力の事故が起きた場合を想定して防災体制を強化させるべき【26】7-8
・原子力の危険・防災マニュアルを配布し、事故が起こった場合に想定される被害を国民に説明すべき【4】7-9
・事故発生時、迅速な対応を図るとともに、事故情報と危険回避対策を早急に住民に周知させる仕組みを構築し、不安除去に努めるべき【6】7-10
・原子力利用を進めるに当たっては安全確保が大前提【17】7-11

 原子力発電については、その潜在的的危険性から廃止すべきとの意見を数多く頂きました。原子力発電所では、大量の放射性物質を内蔵することから、事故、トラブルに備えて、重層な安全設計と安全管理の体制が取られています。他方、チェルノブイル事故における被害の深刻かつ重大さ、また、ウラン加工工場臨界事故の体験から、人々の原子力の安全性に対する不安感は大きいことも事実です。このため、「国及び事業者は、事故原因の徹底究明に基づき再発防止策を講ずることはもとより、安全性向上のための技術開発の努力を怠らず、安全確保に最優先で取り組んでいくとともに、万一の事故発生に備えて災害対策を整備しておくことが重要」です(長計案11頁)。以下、その具体的対策について、ウラン加工工場臨界事故の教訓を踏まえた対応を含め、長計案の考え方を説明します。

 長期計画の策定においては、審議開始直後にウラン加工工場臨界事故がおきたことから、原子力安全及び防災に関して多くの時間を割いて審議が行われました。ウラン加工工場臨界事故の教訓として、国の安全規制のあり方、万一の事故の際の災害対策のあり方に加え、事業に従事するすべての関係者のより高い安全意識に基づく安全管理体制を確立し、安全教育の徹底を図ることの重要性等が、策定会議をはじめ関係方面から指摘されました。これらの指摘に対しては、これまでに、「事業者の保安規定の遵守状況の検査、安全教育の義務化等を内容とする原子炉等規制法の改正、原子力災害対策特別措置法の制定、原子力安全委員会の事務局機能の強化等」が進められており、今後は、「国及び事業者は、これらの取り組みの実効性を確実なものとしていくとともに、「安全を最優先させるという「安全文化」の考え方を組織内はもとより、原子力界全体に浸透、定着させること、一人一人が安全確保の最前線にいるとの自覚と責任感をもって業務に当たることが、原子力の安全に対する国民の信頼確保にとって不可欠」であります(長計案16~17頁)。その際、安全性を犠牲にした経済性はありえず、安全性と経済性の両立を目指すべきことは当然です。

 安全確保における国、事業者の責任に関して、長計案では、「国は、国民の生命と財産を守る観点から、厳格な安全規制を行う責務」を有し、安全確保の第一義的責任を有する事業者は、「自主保安活動によって、安全確保の実効性を上げるとともに、経営責任者が安全を最優先させる考えを組織内全体に徹底させる」ことが重要であるとしています。また、国、事業者は「常に最新の科学技術的知見を安全規制に反映させるとともに、安全確保に必要な科学技術的基盤を高い水準に維持」するため、「原子力安全委員会が決定する安全研究年次計画に沿って、関係機関の連携を図りつつ研究を着実に推進すること」が必要であると述べています。

 防災に関しては、原子力安全委員会のウラン加工工場臨界事故調査委員会報告等も踏まえ審議が行われ、「安全確保のためにいかなる取組がなされたとしても、事故発生の可能性を100%排除することはできない」との前提に立って、災害対策が整備されなくてはならないこと、また、防災訓練の実施をはじめ、「住民の理解を得つつ、国、地方自治体、事業者が連携協力して原子力災害対策特別措置法の実効性を確実なものとするよう努める」ことの必要性を指摘しています(長計案24頁)。さらに、事故発生時に迅速かつ正確な情報を住民に伝えることや、原子力活動に伴うリスクについても広く国民に説明していくことの重要性については、「情報公開のあり方」(長計案24頁)、「情報提供のあり方」(長計案24頁)の中で触れられています。

 地震、津波等の天災、航空機落下事故等に際しての原子力施設の安全性についての評価は、個々の施設の設置に当たっての安全審査の中で、厳格に審査が行われています。   

  

 【情報公開と情報提供】(長計案17頁、24~25頁)

・原子力に関しては、事故も含めて、隠すことなく迅速に情報提供すべき【25】8-1
・国民の原子力に関する知識、理解を高めるため、情報提供を進めるべき【29】8-2
・電力消費地である都市部の人々に、もっと積極的に情報提供すべき【2】8-3
・立地地域の住民に対する情報提供をもっと充実させるべき【3】8-4
・国民に対する情報提供の方法をもっと工夫すべきであり、具体的に教科書、テレビ等による啓発活動の実行計画を示してほしい【18】8-5
・公開されたデータを複数の専門家がチェックする機関の設置が必要【1】8-6
・マスコミには、国民に対して原子力に関する情報を分かりやすく、しかも正確に伝えてほしい【7】8-7
・国民の中に「原発は安全」という認識を植え付けるようなPRは止めるべき【3】8-8

 情報公開及び情報提供については、国民一人一人が正確な知識をもち、原子力を自らの問題と捉えて判断を行う上で、また、原子力に対する国民の信頼を確保するために重要な問題です。特に国民の原子力に対する不安や不信の主な要因が原子力関係事故とこれに伴う隠ぺい、虚偽報告等の不祥事や「国や事業者は、自らにとって不都合な情報を十分に公開していないのではないかという疑念が存在すること、さらに放射線や原子力施設での事故に関する知識、情報が国民に十分分かりやすく説明されていないことなども踏まえて、情報公開や情報提供の在り方について検討がなされました(長計案6~7頁)。その結果、長計案では、「国、事業者は、明確な情報開示の基準に基づいて、通常時、事故時を問わず、適時に的確で信頼性の高い情報公開を行うこと」が求められています。また、情報提供に当たり、「①タイムリーであり、②専門家でなくとも分かりやすく、③情報の受け手側の多様なニーズを踏まえることが必要」であること、「マスメディアが考え、判断するのに必要な素材、要素を的確に提供するよう努める」ことが必要であるとされています(長計案17、24、25頁)。

 また、情報提供に当たっては、「原子力活動の便益、意義はもとより、原子力活動に伴うリスクについて、自然放射線や身の回りの他のリスクを含め広く国民に説明する」ことが重要であることも指摘しています(長計案25頁)。

  

 【原子力に関する教育】(長計案25頁)

・国民が原子力に関心をもち議論ができるように、原子力に関する教育が必要【8】9-1
・原子力に関する教育は必要であり、それを学校教育の中で行っていくべき【16】9-2
・原子力に関する教育を行っていく上で、その方法を工夫する必要がある【14】9-3
・総合的学習では現場の教師はエネルギー問題への関心が低く、原子力問題を避けてとおる風潮があるのではないか【1】9-4
・原子力に関する教育は、「総合的な学習の時間」ではなく、正規の各教科に組み入れることが必要【2】9-5
・原子力に関する教育は、推進側とともに脱原発側の資料・情報の提供、研修が必要【3】9-6
・計画案中の「理解増進」はプロパガンダに過ぎず、教育の基本と相反するのではないか【1】9-7
・地方自治体などで原子力に携わる原子力に従事するものの教育と人材育成について記載してもらいたい【1】9-8

 原子力の問題について、国民一人一人が自らの問題として考え、判断する能力を養うためには、青少年の発達段階に応じ、原子力に関する教育を充実することが重要であるとの認識の下、また、原子力政策円卓会議の提言でもその必要性が指摘されていることも踏まえ、第一分科会で種々の議論が行われました。この審議の中では、原子力についてはエネルギー、環境、科学技術、放射線等の多様な観点から体系的かつ総合的にとらえることが重要であること、「総合的な学習の時間」の活用を含めた学校教育での原子力問題の取り上げ方、教える立場に立った情報や教材の提供、学校教育を終えた後に人々が原子力やエネルギーについて学ぶ機会を設けることの重要性等、幅広い議論が行われ、それらの議論を踏まえた原子力教育の在り方が、長計案25頁に記述されています。

 なお、「総合的な学習の時間」のみならず各教科における原子力に関する教育を充実させるべきとのご意見を踏まえ、長計案25頁において体系的な原子力エネルギーに関する教育カリキュラム開発の必要性等について以下の修文します。
 「原子力に関する教育は、エネルギー、環境、科学技術、放射線等の観点から、体系的かつ総合的にとらえることが重要であ。このため、各教科における学習の充実とともに新しい学習指導要領において新設された「総合的な学習の時間」等活用することが有効である。このため、原子力エネルギーに関する体系的な教育カリキュラムの開発、教育関係者の原子力に関する正確な資料や情報の提供、教員への研修の充実、さらに、教員が必要な時に適切な情報や教材等が提供されるよう教員、科学館、博物館、原子力関係機関、学会等をつなぐネットワークの整備等の支援策を講じていくを図ることが重要である。また、原子力やエネルギー問題については、学校のみならず、施設の見学等の体験的な学習や、科学技術に関する理解増進のための方策の一環としての取組を充実させることも重要である。」

  

 【立地地域との共生】(長計案18頁、25~26頁)

(安全関係) 
・共生のためには、安全運転を優先し、安全性を確立・実証し、住民に不安を与えないことが必要【3】10-1
・安全性について疑問を持たざるを得ない。原子力発電を人間が完全に制御することはできず、共生などあり得ない【1】
(地域振興関係)
10-2
・地域社会と積極的に関わっていくことや地方分権の時代にふさわしい地域の健全な発展に寄与するような施策が必要【3】10-3
・交付金制度の見直しや地域性を重視した広域的な振興策など、国は地元支援策を具体的に提示し、恒久的財源を確保するなど、国策に協力している地元に対して、責任を持って地域振興に貢献すべき【8】10-4
・地域住民の不安解消のためには、雇用の創出など経済的保障が必要 【1】10-5
・金のばら撒きが民心を荒廃させ原発中毒にする。「地域振興」の名の下、多額の交付金をばらまくような手法は通用しない【8】
(消費地との関係等)
10-6
・地元の人は使わない電気のために不安な生活を余儀なくされており、大都市でなく地方に立地する根拠を明示しなければ理解は得られない【2】10-7
・地元住民はもとより、電力消費地である都市住民を巻き込んでの広範な議論が必要【1】10-8
・エネルギー問題はもっと真剣に考えるべきで、地域の利益に左右されるものではない。地元住民も電気の受益者であることを忘れてはならない【1】10-9
・いわゆる迷惑施設は都市部にも多々存在し、地域振興策は抜本的に考え直すべき【1】10-10
・周辺住民は「共生」などとは考えておらず、原子力施設は大都市に建設すべき【7】
(情報公開、国及び自治体の責任)
10-11
・地域住民の不安解消等のためには、原発の建設と運営に関する透明性の確保と情報公開が必要であり、住民・自治体に対して、プラス・マイナス十分な正確な情報を公開すること【3】10-12
・地方自治体も責任を分担することが必要であり、地方行政や住民との連携のあり方などの課題についても記載すべき【3】10-13

 立地地域との共生のためには、何よりも原子力施設の安全確保や災害対策が適切になされていることが必要です(長計案25頁)。このため、国及び事業者は、長計案23頁に述べられているような安全確保への取組に最善の努力を払うべきであること、さらに万が一の事故発生に備えて十分な災害対策を整備すべき旨指摘しています。
 長計案では、原子力施設の運転を通じて事業者と地域社会がともに発展し、共存共栄することが重要であるという「共生」の考え方を示しています。地域振興に関して頂いた様々なご意見については、いずれも同様の意見や認識が、長計審議の場を通じて各委員から提示され、これらを踏まえて、長計案では、原子力施設の立地による地方自治体の財政、地域の雇用等への影響を評価しつつも、立地を契機として、「立地地域が主体となってビジョンを構築するとともに、国においては、このような地域の新たな発展の方向を有効かつ積極的に支援するような振興策を検討」することにより、長期的、広域的、総合的な発展につなげていくことが重要であり、国の「電源立地促進策について、このような視点も踏まえ、より地域の発展に役立つよう常に見直すことが必要である」とされています(長計案26頁)。

 立地地域と電力消費地に関するご意見ですが、長計案では、原子力施設の円滑な立地のためには、まず、電力の消費者である国民がエネルギー問題の現状についての理解に立って、電源の立地に対する理解を深めることが重要であることを指摘し、そのためには、電力の供給を受けている電力消費地の住民と立地地域の住民の相互交流を国、事業者が充実させることを提案しています(長計案25頁)。

 情報公開については、長計案24~25頁の「情報公開と情報提供」においてご指摘の趣旨を含む記述がされていますが、立地地域の住民の不安に応えていくためには、適切な情報公開や情報提供が不可欠であること、また、「共生」の意味を明確にする観点から、長計案18頁を以下のとおり修文します。
 「立地後は、原子力施設が安全に運転されることが当然の前提となるが、立地地域の住民の理解と協力を得るためには、適切な情報公開や情報の提供により住民の安全性に対する不安の解消に努めるとともに、事業者と地域社会が共に発展し共存共栄するという「共生」を目指し、地域の発展のため地方自治体の主体性を尊重しながら、国、地方自治体、事業者の三者がそれぞれ適切な役割分担を図りつつ、相互に連携、協力して取り組むことが重要である。」

 また、国、地方自治体の役割等に関し長計案では、地方自治体においては、地域発展のためのビジョンの構築等に取り組むとともに、原子力と地域社会の「共生」をめざし、国、地方自治体、事業者の三者がそれぞれ適切な役割分担を図りつつ、相互に連携、協力して取り組むことが重要であるとしています (長計案18頁)。

  

 【原子力発電の着実な展開】(長計案27頁)

・原子力の着実な発展のため、プラントの効率の向上、寿命の延長などに取り組んでいく必要がある【2】11-1
・運転開始後相当の年限を経ている原発プラントは速やかに廃炉すべき【3】11-2
・「定期検査の柔軟化や長期サイクル運転、熱出力を基準にした運転制限への変更等」の検討は安全規制の強化と逆行するのではないか【2】11-3
・専門家による第三者チェック機関は原子力利用の展開を図る上で不可欠【1】11-4

 運転開始後相当年数を経ているいわゆる高経年プラントの安定運転の維持は、エネルギーを安定的に供給する上で重要です。これまでのところ運転年数の増加によりトラブルが増加する傾向は認められていませんが、今後は、10年ごとに行われる定期安全レビュー等の機会に、国内外の高経年プラントの経験を踏まえて、機器や素材の経年変化を早期に検出する点検活動を重点的に実施するとともに、その結果に基づいて適切な予防保全活動を行っていくことが重要であり、その趣旨が長計案には記載されています(長計案27頁)。

 安全規制に関する活動はリスクを管理する活動であることから、その活動は論理的に一貫していて、明確でかつ相互に整合的であることが求められます。原子力施設の安全性を定量的に把握し、規制活動をより効果的かつ効率的で透明にしようとする取組が諸外国においてなされており、我が国においてもそのようなリスク評価技術の進歩を踏まえ、現在の十分低いリスクを有意に変えない範囲で、合理的な安全規制の在り方について絶えず検討して、実現を図っていく必要があります。定期検査の柔軟化や長期サイクル運転、熱出力を基準にした運転制限への変更等も、このような趣旨の下での検討課題であると、長計案では記載されています(長計案27頁)。
 なお、以上のような考え方を踏まえ、長計案27頁「合理的な安全規制」という表現について誤解を避ける観点から「効率的かつ効果的な安全規制」と修文します。

 長計審議では、国は国民の生命と財産を守る観点から厳格な安全規制を行う責務を有しておりその責任を全うしていくことはもちろんですが、具体的な規制の方法については、これを効果的かつ効率的に行っていくため、事業者の原子力施設の運転管理活動や機器、燃料製造工程の品質保証活動を監査・評価する業務に、専門的知識を有する民間の第三者認定機関を一層活用していくことが重要であるとの議論があり、その趣旨が長計案では記載されています(長計案27頁)。

  

 【核燃料サイクル事業】(長計案12~14頁、27~30頁)

  ○使用済燃料の再処理

・技術的・経済的な困難、核拡散、放射性廃棄物、プルトニウム需給の不明確さ、安全性等の問題があるため、使用済燃料のリサイクルはやめるべき【61】12-1
・FBR開発がつまずいておりリサイクル政策は見直すべき【2】12-2
・エネルギー源の長期安定確保等の観点から核燃料サイクルは必要【21】12-3
・使用済み核燃料は再処理と限定するのではなく、選択肢としてワンススルーの道を開けておくべきでそのための研究開発を行っていくべき【6】12-4
・再処理・プルトニウム利用を民間に強制すべきではない【3】12-5
・第二再処理工場の計画及び立地が決まらないと余った使用済燃料は、海外に再処理を依頼することになるのではないか【1】12-6

 使用済燃料を再処理するか直接処分(ワンススルー)するかについては、各国がそれぞれの国情に応じて選択しているところであり、これまで、資源の乏しい我が国としては、将来にわたるエネルギー資源の安定確保、放射性廃棄物の環境への負荷の低減の観点から使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム等を貴重なエネルギー資源として有効利用する「核燃料サイクル」を政策の基本としてきています。これまでの様々な研究開発の成果を踏まえつつ、国は、民間事業者にこの基本的考え方に沿って活動することを求め、民間に適切な投資を求めてきました。その結果、現在、民間事業者により国内において事業活動が展開されつつあります。
 使用済燃料を再処理しプルトニウムを利用することについては、技術的・経済的な困難、核拡散、放射性廃棄物、プルトニウム需給の不明確さ、安全性等の観点から再処理以外の選択肢も検討すべきであるとの意見もありましたが、核燃料サイクル技術は、「我が国のエネルギー供給システムを経済性、供給安定性及び環境適合性に優れたものにすることに貢献している」原子力発電の特性を一層改善し、原子力発電を人類がより長く利用できるようにする可能性を有していること、また、我が国のエネルギー供給を考えるに当たっては、その地理的、資源的条件を踏まえることが重要であることから、使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウランをエネルギー資源として有効利用していくことを基本とすることは適切と評価されています(長計案13頁)。
 なお、この趣旨を明確にするために長計案13頁の記述を以下のとおり修文するとともに、参考資料に「世界のエネルギー資源埋蔵量」の表を追加します
 「したがって、我が国がおかれた地理的、資源的条件を踏まえれば、原子力発電の特性を安全性と経済性を確保しつつ一層向上していく観点から、核燃料サイクル技術の研究開発の成果を踏まえ、使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことを基本とすることは適切である。」

 核燃料サイクルの経済性については、長計案46頁に参考に示すとおり、再処理やバックエンドの費用を含む原子力発電コストは約5.9円/kWhであり、他の電源との比較において遜色ないものであると試算されています。なおエネルギー供給に当たっては、経済性のみによって判断するものでなく、供給安定性、環境保全等様々な要素を考慮することが重要です(長計案7~8頁)。
 海外からの核拡散への懸念に対しては、プルトニウムの利用に当たって、平和利用の担保と国際的な義務の誠実な履行に加えて、利用目的のない余剰のプルトニウムを持たないとの基本的な原則を遵守し、プルトニウム利用の透明性の向上に努めることにより、国際社会の理解を得ていくこととしています(長計案26~27頁)
 核燃料サイクル施設の安全性に関してですが、これらの施設については既に国内外で操業の実績があり、また、個別施設の安全性については厳格な安全審査により確認されることとなります。核燃料サイクル施設についても他の原子力施設での安全確保同様、「安全性向上のための技術開発を怠らず、安全確保に最優先で取り組んでいくとともに、万一の事故発生に備えて災害対策を整備」しておくことが重要であります(長計案11頁)。

 海外再処理については、核燃料サイクルの自主性を確実なものにするなどの観点から、使用済燃料の再処理は国内で行うことを原則とすること、また、六ヶ所再処理工場や中間貯蔵の事業が計画に従って順調に進捗していく限り、海外再処理の選択の必要性は低いと考えられることが示されています(長計案 29頁)。なお、六ヶ所再処理工場の処理能力を上回る使用済燃料については、再処理されるまでの間、適切に貯蔵管理することとされ、1999年、発電所外の施設における使用済燃料の貯蔵を可能にするための法改正が行われ、事業者においてはその具体化に向けた準備が進められているところです(長計案 30頁)。

 以上述べたような核燃料サイクルを進めるに当たっての諸課題とその対応についてより明確にするため長計案14頁の記述を以下のとおり修文します。
 「ただし、使用済燃料を再処理し、プルトニウム利用することについては、その安全性及び核拡散への懸念や、経済性への疑問なども指摘されている。このため、プルトニウム利用を進めるに当たっては、に当たり、国際社会からの核拡散の懸念に対して理解を求めていくことや、また、プルトニウムの特性を踏まえその安全確保を図るとともに、性と経済性に優れた技術の開発に取り組み、性の両面で優れる技術の開発また、我が国の原子力平和利用堅持の理念及び体制を世界に発信しつつプルトニウム利用政策についての国際的理解促進活動を積極的に進めることが重要である。を目指すことも重要である。高速増殖炉サイクル技術の研究開発に当たっては、これらの観点を含め適時適切な評価を行い、その結果を国民に示しつつ進めていくことが重要である。そして、これらの取組を通じプルトニウム利用に対する内外の理解を得ていくよう努めることが必要である。

  

  ○プルサーマル、プルトニウム利用

・技術的な課題、核拡散の問題、経済的な問題などから、プルサーマル計画はやめるべきである【47】12-7
・なぜ多くの国でMOX利用がなされていないのかの視点に目を向けるべき【1】12-8
・余剰プルトニウム対策のためのプルサーマルは止めるべき【2】12-9
・プルサーマルでプルトニウムを利用することは資源の浪費である。(使用済燃料の形で貯蔵すべき)【1】12-10
・プルサーマルの実施に当たっては安全性を確認しながら急がずに実用化を進めてほしい【1】12-11
・資源の有効利用の観点などからプルサーマルは推進するべきである【5】12-12
・プルサーマルは事業者任せにせず国として進めていくべき【2】12-13
・プルトニウム需給バランスを明確にすべきであり、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を守るためには再処理の抑制しかない【5】12-14
・国の指導の下に進められてきた「ふげん」についても記載すべき12-15

 プルサーマルは、長計案28頁に記載されているように海外では既に1980年代から利用が本格化されたものであり、我が国でも国内における基礎研究や1980年代後半から行われた実用炉での実証試験の成果等を踏まえ、2010年までに16~18基において順次実施していくことが電気事業者により計画され、実現の緒についたところです。国においても、平成9年2月4日の閣議了解において、「現時点で最も確実なプルトニウムの利用方法であるプルサーマルを早急に開始することが必要」としたものであり、これまでプルサーマルの実施に当たって必要な安全審査や核不拡散に係る適切な措置、国民の理解を得るための安全性や意義に関する情報提供活動等が実施されています。
 このプルサーマルに関しては、長計案28頁では、「プルサーマルは、ウラン資源の有効利用を図る技術であるとともに、原子力発電に係る燃料供給の代替方式であり、燃料供給の安定性向上の観点から有用で、将来の核燃料サイクル分野における本格的な資源リサイクル時代に備えてその産業基盤や社会環境を整備することにも寄与するものであると考えられる。」との認識が示されています。また、「経済性については向上の余地があるが、こうしたプルサーマルの技術的特性、内外の利用準備や利用実績、安全性の評価を踏まえれば、我が国としては、この計画を着実に推進していくことは適切である。」とされています。

 今後のプルトニウムの利用の見通しについては、2010年頃までに海外及び国内で回収されるプルトニウムについては、当面のところプルサーマル及び高速増殖炉等の研究開発において利用される見込みですが、いただいたご意見を踏まえ、本長計案の理解の一助となるよう、巻末にプルトニウムの回収と利用に関する資料を添付します。

 「ふげん」の方針については、既に「動力炉・核燃料開発事業団の改革の方針について」(平成10年2月6日原子力委員会決定)により原子力委員会としての方針が定められているとともに、所要の期間をもって運転を終了することとなっており、長計案では特段の記述はされていません。

  

  ○天然ウラン確保、ウラン濃縮、使用済燃料中間貯蔵

(ウラン資源・ウラン濃縮) 
・日本は資源小国が故に原子力を進めているのに天然ウランの確保として、引き続き長期海外輸入を進めるのは、どうゆうことか【1】12-16
・欧州の濃縮施設が廃止される段階の対応策について検討しておくべき【1】12-17
・このまま民間主体では、技術的にあまり進展が期待できないのではないか【1】12-18
・我が国の濃縮コストは極めて高く、その対応が急務である【1】
(使用済燃料中間貯蔵)
12-19
・使用済燃料の処理について再処理に加え長期の中間貯蔵を選択肢に加えるべき【1】12-20
・国内貯蔵の方針を堅持するのかを明確にしておくべき【112-21
・使用済燃料の発生量と再処理量を踏まえた中間貯蔵の数量的なバランスを示すべき【1】12-22
・中間貯蔵施設が最終処分地にならないようすべき【2】12-23

 天然ウランについては、長計案では、当面、「引き続き適切な価格により天然ウランを調達することは可能」と考えられること、しかしながら天然ウランを将来にわたって安定的に確保することの重要性を踏まえれば、長期購入契約を軸として天然ウランを確保することが重要との認識が示されています(長計案28頁)。

 ウラン濃縮については、欧米のガス拡散プラントの老朽化等を念頭に置いて、長計案28頁では、「中長期的に見れば、ウラン濃縮役務市場の需給が不安定となることも想定しておくことが重要」との認識の下、「我が国として濃縮ウランの供給安定性や核燃料サイクルの自主性を向上させていくことは重要である。その観点から現在稼働中の六ヶ所ウラン濃縮工場については、これまでの経験を踏まえ、より経済性の高い遠心分離機を開発、導入し、同工場の生産能力を1,500トンSWU/年規模まで着実に増強しつつ、安定したプラント運転の維持及び経済性の向上に全力を傾注することが期待される。」と記述されています(長計案28頁)。

 また、ウラン濃縮の我が国における技術開発の進め方及び国際競争力に関しては、民間事業者が核燃料サイクル開発機構によるこれまでの遠心分離機の開発成果や知見、人的資源を着実に集約して有効に活用するとともに、国際市場の動向を踏まえて他国との協力をも視野に入れ、技術開発を主体的に推進することが期待されるとの認識が示されています(長計案28頁)。

 使用済燃料の中間貯蔵については、長計案30頁において、「使用済燃料の中間貯蔵は、使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的な調整を行うことを可能にするので、核燃料サイクル全体の運営に柔軟性を付与する手段として重要である。」と評価されています。国内に設置される予定の中間貯蔵施設における使用済燃料の貯蔵期間については、「再処理されるまでの間」であり、使用済燃料の所有者である民間事業者が今後決定するものですが、長計案26頁では、「使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことが基本的考え方」とされており、一定の期間の後、中間貯蔵施設の使用済燃料は再処理のため再処理工場に移されることになります。

 なお、中間貯蔵施設については、今後の使用済燃料の発生量と再処理能力が勘案され、その整備が進められることとなります。

  

 【放射性廃棄物の処理及び処分】(長計案10~11頁、30~33頁)

  ○高レベル放射性廃棄物の地層処分の是非

・放射性廃棄物は安全な処分技術が確立されていないので完全管理をすべき【41】13-1
・高レベル廃棄物は地層処分すると拙速に結論づけるべきではない【8】13-2
・30年から50年の貯蔵では処分は無理であり地層処分を急ぐべきではない【5】13-3
・原子力発電を進めていく上で、放射性廃棄物処分の問題に重点的に取り組むべき【9】13-4

 高レベル放射性廃棄物処分の問題は、原子力利用を進める上で、最重要課題のひとつです。特に高レベル放射性廃棄物の処分方法については、長年、各国及び国際機関において様々な可能性が検討されてきました。地層処分以外の処分方法として、宇宙空間への処分は事故が起きた場合のリスクが大きく、南極の氷床への処分は南極条約、海洋底又は海洋底の堆積物中への処分はロンドン条約によってそれぞれ禁止されています。また、地表において廃棄物を長期にわたって管理するという考え方は、将来の世代に廃棄物を監視する義務を課し、また、将来社会が安定で制度が維持できるという仮定に立つものであり、戦争や革命などの人間による災害にも脆弱であると考えられています。
 このように、地層処分以外の処分方法については実現にあたっての問題が多いことから、現在、我が国を含めて国際的に、最も好ましい方策として地層処分が共通の考え方になっています。
 長計案10~11頁では、「高レベル放射性廃棄物は長期間にわたって高い放射能が持続するために放射能が生活環境に影響を及ぼさないように長期にわたってその安全性を確保することが必要となる。このため、処分方式として、地下数百メートル以深の安定した地下に埋設する「地層処分」を行うことが各国で計画されている。」とされています。
 我が国においては、昭和50年代から地層処分に関する研究開発を着実に実施しており、1999年11月、核燃料サイクル開発機構は、それまで積み重ねてきた地層処分に関する研究開発の成果について、関係機関との連携によりとりまとめ、「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-」(以下、「第2次取りまとめ」という。)を作成し、原子力委員会に提出しました。これを受けて原子力委員会は、公開の審議の下これを評価し、第2次取りまとめの研究成果により、我が国における地層処分の技術的信頼性が示されていると判断できると評価しています。このような状況を踏まえ、長計案31頁では「我が国では、再処理で使用済燃料からプルトニウム、ウラン等の有用物質を分離した後に残存する高レベル放射性廃棄物は、安定な形態に固化した後、30年から50年間程度冷却のための貯蔵を行い、その後地層処分をする」こととしています。
 現在までに「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定され、この法律に基づき最終処分に関する基本方針等が策定され処分事業の実施主体が設立されるとともに、原子力安全委員会において、最終処分に係る安全規制等に関する検討が行われています。

 今後、処分事業を円滑に進めるに当たっては、国民の理解と信頼を得ることが重要ですが、このための国、事業者の取組を明確にする観点から以下のとおり修文します(長計案31頁)。
 「処分地選定に当たっては、選定の主体である実施主体だけではなく、国及び電気事業者が、適切な役割分担と相互の連携の下、それぞれの責務を果たしていくことが協力して進めることが住民の理解と信頼を得る上で重要である。このため、国は、最終処分の政策的位置付けや安全性の確認のための取組を明確にするとともに政策の説明、地域共生方策に関する制度や体制の整備などを行うことが必要であり、電気事業者は廃棄物の発生者としての基本的な責任を有することから国民の理解を得るための活動を進め、また、立地について多くの経験を有する立場から処分地の選定を実施主体と一体となって行うべきである。」

  

  ○放射性廃棄物の処理・処分に当たって

(国の責任) 
・放射性廃棄物は国が主体的に責任を負うべきではないか、責任の所 存が不明確【5】13-5
・放射性廃棄物の最終的な処理・処分についての長期にわたるトータルな政策を確立することが重要【7】
(国民の理解)
13-6
・放射性廃棄物処分問題について国民の理解を得るための取組が必要ではないか【4】13-7
・放射性廃棄物については明確でオープンな公開討論が必要ではないか【3】13-8
・放射性廃棄物を生み出し続けているという認識を持ってこの問題を考えなければいけない【1】
(廃炉)
13-9
・原子炉施設の廃止措置は設置者の責任に限定せず国の一括管理とすべき【1】13-10
・廃炉の際の合理的な解体のため基準制定への研究推進を期待する【2】13-11
・廃止になった原子力施設は解体すべきではない【1】13-12
・廃炉のエネルギー供給、コスト、環境負荷への影響とそれに対する方針を検討すべき【1】
(クリアランスレベル
13-13
・クリアランスレベルの社会的受容の確保について強調すべき【1】13-14
・クリアランスレベルは危険であり方針を撤回すべき【4】13-15
・原子力施設の解体廃棄物のリサイクル・再利用の産業基盤の早期整備を提言してもらいたい【2】
(その他)
13-16
・処分に必要な研究開発や分離変換技術の研究計画の具体化の道を示すべき【5】13-17
・地域間の公平と公正を図る等の観点から「複数の処分場」の検討もすべき【1】13-18
・高レベル放射性廃棄物も資源の一つではないか【3】13-19
・放射性廃棄物の処理・処分と放射線学的見地の関連が見えない【2】13-20
・高レベル放射生成廃棄物の処分開始時期について、閣議決定された計画における記載と表現方法の統一を図るべき【1】13-21

 放射性廃棄物の処分に当たり、国と民間の役割を考えるに当たっては、原子力委員会高レベル放射性廃棄物処分懇談会や原子力バックエンド対策専門部会でも議論されましたが、発生者責任の原則と安全性の確保を重視することが重要です。このため、長計案30頁においては、「その安全な処理及び処分は、これを発生させた者の責任においてなされることが基本であり、また、国はこれらの処理及び処分が安全かつ適切に行われるよう所要の措置をとることが必要である。」と記述しています。なお、長計案30頁の記載について「所要の措置をとる」については、その趣旨をより明確にする以下のとおり修文します
 「国はこれらの処理及び処分が安全かつ適切に行われるよう発生者等に対して指導や規制を行うなど所要の措置をとることが必要である。」

 また、ご指摘にあるとおり、放射性廃棄物処分を進めるに当たっては、国民の理解と信頼を得ることが不可欠です。長計案では、放射性廃棄物の問題が 21世紀に持ち越される状況であることを認識した上で、放射性廃棄物の適切な処理及び処分の実施に向けて継続的に取り組むこと、安全性、信頼性をより高めるための不断の努力と同時に、原子力が常に社会に対して開かれた存在であるための努力を怠ってはならず、このような取組を通じて国民の原子力に対する信頼の醸成を図っていく、としています(長計案20頁)。なお、行政庁においては国民の理解と信頼を得るため、放射性廃棄物シンポジウムが開催されています。

 原子力施設の廃止措置については、放射性廃棄物がその発生者の責任で処分されるべきことと同様に、その施設の設置者の責任において、安全確保を大前提に、地域社会の理解と支援を得つつ進めることが重要であり、その跡地は原子力発電所用地として引き続き有効利用することが期待されるとしています (長計案33頁)。また、長計審議においては、原子力施設の廃止措置に関し、現状では未解決の技術的課題はないものの、一層合理的かつ効率的な廃止措置が可能となる技術については、引き続き技術開発を実施することが望まれる、との議論がありました。

 廃止措置に伴い発生する廃棄物のうちクリアランスレベル以下の廃棄物については、放射性物質として扱う必要のないものであり、一般の物品と同じ扱いができるものですが、長計審議においては、関係者及び国は、社会のクリアランスレベルに関する理解を深めていくことが必要であるとの指摘がなされた上で、合理的に達成できる限りにおいて、基本的にリサイクルしていくことが重要であるとしています(長計案33頁)。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の進捗に伴い、長計案10頁の記述を以下のとおり修文します。
 「2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」制定によってされ、この法律に基づき最終処分に関する基本方針等が策定され処分事業の実施主体が設立されたところであり、その制度的枠組みが整備され、今後、この法律の下で処分事業の実施主体の設立、今後、処分地の選定等のプロセスが進められることとなる。なお、原子力安全委員会においては、最終処分に係る安全規制等に関する検討が行われているところである。

 また、上記に続く長計案11頁の最終処分の実施に係る記述に関し、主体者を明確にする観点から以下のとおり修文します。
 「この最終処分の実施に当たって国や実施主体等の関係者は、深地層の科学的知見等を蓄積するとともに、国民との間で対話を重ね、国民の理解と協力を得ながら地層最終処分を着実に進めることが必要である。」

 同様に、長計案31頁の記述の関し、最終処分の時期、国の関与等に関し、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき策定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」の記述との整合性及び頂いた意見を踏まえ、以下のとおり修文します。
 「「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき策定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」(2000年10月2日)によれば「平成40年代後半を目途として開始する」とされている。その発生時期とその後の冷却期間を考慮して、2030年代から遅くとも2040年代半ばまでには処分を開始することを目途とする。
 処分地選定に当たっては、選定の主体である実施主体だけではなく、国及び電気事業者が、適切な役割分担と相互の連携の下、それぞれの責務を果たしていくことが協力して進めることが住民の理解と信頼を得る上で重要である。このため、国は、最終処分の政策的位置付けや安全性の確認のための取組を明確にするとともに政策の説明、地域共生方策に関する制度や体制の整備などを行うことが必要であり、電気事業者は廃棄物の発生者としての基本的な責任を有することから国民の理解を得るための活動を進め、・・・(中略)・・・国及び関係機関は、最終処分の安全規制、安全評価のために必要な研究開発や深地層の科学的研究等の基盤的な研究開発及び地層処分技術の信頼性の向上に関する技術開発等を積極的に進めていくことが必要である。」

 また、長計案33頁の処分場の検討に関する記述について、誤解を避けるため、以下のとおり修文します。
 「その取組を進めるに当たっては、発生源別に処分場を用意して処分することだけでなく、処分の合理性を追求する観点から、同一の処分場において複数の処分方法による処分を実施することや、処分方法が同じ廃棄物を発生源の違いによらず同一の処分場に処分することも検討することが必要である。」

  

 【高速増殖炉サイクル技術の研究開発の在り方と将来展開】
 (長計案12~14頁、26~27頁、33~35頁)
  ○高速増殖炉サイクル技術全般

・ナトリウム取扱技術の困難性等に起因する安全性、経済性、プルト ニウム増殖に伴う核拡散の問題、高速増殖炉の実用化には多額な研究開発費が必要であること、欧米先進諸国の高速増殖炉開発からの撤退などから判断して、高速増殖炉の開発は中止すべき【29】14-1
・酸性雨・地球温暖化などの環境問題に対応し、エネルギー資源小国であるが故に考えなければならない資源節約型のエネルギーとして高速増殖炉は有意義であり、今後も継続的に開発を推進するべき【13】14-2
・高速増殖炉については基礎研究を積み重ねるべきでありその実用化を急ぐべきではない【8】14-3
・現行の長計では高速増殖炉と新型転換炉(ATR)が中心だったが、ATRの実証炉計画はその後すぐに開発断念に追い込まれた。もんじゅも二の舞になるのではないか【1】14-4
・高速増殖炉の必要性を十分説明すべき【4】14-5
・高速増殖炉のメリットだけでなくデメリットも記載すべきではないか【1】14-6
・高速増殖炉開発は日本だけが進めていると極端な言われ方をすることがあるが、各国の高速増殖炉開発に関する取組について実状に即して語るべき【1】14-7
・MOX燃料とナトリウム冷却に限らず、代替有望技術について積極的な取組を記載すべき【4】14-8
・高速増殖炉開発における国の役割を明確にし、国家プロジェクトとして推進すべき【3】14-9

 高速増殖炉の位置づけについては、原子力委員会高速増殖炉懇談会報告書 (平成9年12月)では、「将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、高速増殖炉の実用化の可能性を追求するために、その研究開発を進めることが妥当」とされていましたが、長計案13頁においては、高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術(以下、「高速増殖炉サイクル技術」という。)を、「ウランの利用効率を飛躍的に高め、高レベル放射性廃棄物中に長期に残
 留する放射能を少なくして環境負荷を更に低減させる可能性を有するものであり、不透明な将来に備え、将来のエネルギーの有力な選択肢を確保しておく観点から着実にその開発に取り組むことが重要」と位置づけられています。また、取組に当たっては、「その技術(高速増殖炉サイクル技術)の開発のための基礎的研究と実用化に時間を要することを考慮しつつ、我が国のみならず、世界のエネルギー問題の解決にも寄与することを視野に入れ、我が国独自の長期構想の下に、その研究開発に取り組むことが重要である。」とされています (長計案14頁)。
 このように高速増殖炉の研究開発の必要性・意義については、本長計案に示されているところですが、高速増殖炉の必要性についてより具体的な記述とすべきとのご指摘の趣旨も踏まえ、長計案13頁の記述について、以下のとおり修文するとともに、各種資源の賦存量及びウランの利用効率に関するデータを参考資料に追加します。
 「また、高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術(以下、「高速増殖炉サイクル技術」という。)は、ウランの利用効率を飛躍的に高めることができ将来、実用化されれば、現在知られているウラン資源だけでも数百年にわたって原子力エネルギーを利用し続けることができる可能性や、高レベル放射性廃棄物中に長期に残留する放射能を少なくして環境負荷を更に低減させる可能性を有するものであり、不透明な将来に備え、将来のエネルギーの有力な選択肢を確保しておく観点から着実にその開発に取り組むことが重要である。」

 一方、各国の高速増殖炉関連の開発に対する取組については、長計案においては「ロシアや中国のように開発に熱心な国がある一方で、欧米諸国は、経済性あるいは政治的な理由から、一定の技術的成果を上げつつも、開発を中止したり、方針の転換を図っている。」と記述されているように多様であり、今や我が国が自ら先導的役割を担う立場に置かれています(長計案13頁)。

 高速増殖炉については冷却材であるナトリウム取扱の困難さに起因する安全性への懸念や経済性の問題、さらにプルトニウムの増殖によって懸念される核拡散の問題、多額の研究開発資金の問題等についてご意見がありました。高速増殖炉サイクル技術の研究開発に当たり、安全性や経済性の問題について、 「もんじゅ」の運転を通じてナトリウム取扱技術の確立を図るとともに、「実用化段階において、安全性の一層の追究と併せて軽水炉や他電源と比肩し得る経済性を達成するという究極の目標を設定」することとされています。また、核拡散の問題については、「核拡散につながり難い選択肢」についても開発するとともに、「プルトニウム利用に当たり、国際社会からの核拡散の懸念に対して理解を求めていく」こととしています(長計案13~14頁、34~35頁)。なお、高速増殖炉を含め、プルトニウム利用全般の安全性、経済性、核拡散性について意見が寄せられたことから、長計案13~14頁の「我が国の核燃料サイクルの意義」の部分にこれら問題への対応についての記述を追加します。
 研究開発を進めるに当たって、研究開発資金の効率化を図ることは重要です。このためには長計案34~35頁にあるとおり「競争的環境を取り入れつつ、関係機関が連携して取り組むこと」、「国内外の研究開発施設の活用」、「海外の優れた研究者の参加」など、研究開発効率の向上が図られるような環境を整備していくこととされています。また、国は「研究開発の進め方や到達度について、随時チェックアンドレビューを行う」(長計案35頁)こととされており、このようなプロセスにより研究開発資金の在り方についても広く国民に理解が得られるものとなることが期待されます。

 実用化に向けた具体的な展開については、長計案35頁において「高速増殖炉サイクル技術として適切な実用化像とそこに至るための研究開発計画を提示することを目的に、炉型選択、再処理法、燃料製造法等、高速増殖炉サイクル技術に関する多様な選択肢について、現在、核燃料サイクル開発機構において電気事業者等、関連する機関の協力を得つつ実施している「実用化戦略調査研究」等を引き続き推進」するとともに、「裾野の広い基盤的な研究開発」を行っていくこととされています。「実用化戦略調査研究」では、ご指摘の点であるMOX燃料とナトリウム冷却に限らない代替有望技術や乾式再処理技術等についても幅広く検討されています。一方、MOX燃料とナトリウム冷却を基本とする技術は、高速増殖炉サイクル技術のうち、最も開発が進んでいる」ことから、「他の選択肢との比較評価のベース」と位置づけ、「同技術(MOX燃料とナトリウム冷却を基本とする技術)の評価をまず優先して行うことが必要」との方針に基づき、増殖性能を確認する等の発電プラントとしての信頼性の実証や、大型ナトリウム機器の性能及び信頼性を実証する等のナトリウム取扱技術の確立を目指し「もんじゅ」を用いた研究開発等を着実に進めることとしています(長計案34頁)。

 高速増殖炉サイクル技術の研究開発は、核燃料サイクル開発機構を中心に、日本原子力研究所、大学、電気事業者、メーカー等の有機的連携の下に進められていきますが、国は「研究開発の進め方や到達度について随時チェックアンドレビュー」(長計案35頁)を行うことにより、柔軟かつ着実に研究開発を進めていくこととしています。

  

   ○「もんじゅ」

・経済性や安全性の観点から「もんじゅ」再開に反対する【24】14-10
・危険で、Na漏れを起こし、実用化の見通しがなく、運転に多額の経費を要する「もんじゅ」は廃炉にすべき【58】14-11
・「もんじゅ」の運転再開の必要性には客観的な根拠が必要【1】14-12
・我が国のエネルギー長期戦略、地球環境問題、Na制御技術等の技術開発のためにも、「もんじゅ」の運転を再開すべき【16】14-13
・「もんじゅ」運転再開にあたっては高速増殖炉を広く理解できるよう情報公開を進めるべき【1】14-14
・「もんじゅ」運転再開後に予想されるリスクについて予め十分検討すべきである【2】14-15
・住民投票を含む手段で、もんじゅの運転再開の是非を問うべき【2】14-16
・「もんじゅ」のナトリウム火災事故の反省と対策への記載をすべき【1】14-17
・「もんじゅ」に関して、これまでに行ってきた安全総点検、今後 運転再開に向けてのステップ等についても記載すべき【2】14-18

 高速増殖原型炉「もんじゅ」については、原子力委員会高速増殖炉懇談会報告書(平成9年12月)においては、「実用化の可能性を確度高く追求するための研究開発の場」、「動燃(現サイクル機構)の改革が確実に実施され、研究開発段階にある原子炉であることを認識した慎重な運転管理が行われることを前提に、「もんじゅ」での研究開発が実施されることを望みます。」としています。
 長計案34頁では、「原型炉「もんじゅ」については、高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核と位置付け、安全の確保を大前提に、立地地域を始めとする社会の理解を広く得つつ、早期に運転再開し、発電プランとしての信頼性の実証とその運転経験を通じたナトリウム取扱技術の確立という所期の目的を達成する。」とされており、「もんじゅ」の運転再開の意義や、研究開発の必要性については既に示しているところですが、「もんじゅナトリウム漏えい事故」以降、今日までの「もんじゅ」を巡る議論を踏まえた記述とするため、以下のとおり修文します。
 「1995年のナトリウム漏えい事故以降運転を停止している原型炉「もんじゅ」については、高速増殖炉懇談会等においても、その意義、役割等について検討がなされたところであるが、上述の高速増殖炉サイクル技術の位置付け及び研究開発の方向性を踏まえれば、「もんじゅ」は、高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核として位置付けられるものであり安全の確保を大前提に、立地地域を始めとする社会の理解を広く得つつ、早期に運転を再開し、発電プラントとしての信頼性の実証とその運転経験を通じたナトリウム取扱技術の確立という所期の目的を達成することが必要である。」

 情報公開については、長計案では、今後とも、「通常時、事故時を問わず、適時に的確で信頼性の高い情報公開を行うことが必要である。」との考えが示されています(長計案24頁)。
 「もんじゅ」のリスク検討については、事業者である核燃料サイクル開発機構はもちろんのこと、安全規制行政機関による審査、原子力安全委員会によるダブルチェックにおいても評価され、進められることとなります。
 「もんじゅ」の耐震性については、工学的に起こると考えられる地震、さらにはそれを上回る地震をも考慮した耐震設計が実施されており、安全審査において耐震安全性が十分確保されていることが確認されています。

 「もんじゅ」の運転再開に当たっては、住民投票を含めその是非を問うべき、あるいは高速増殖炉についての理解を深めるための情報提供が重要との意見ですが、運転再開に当たって、立地地域の理解を得つつ進めていくことが重要であることは当然です。なお、住民投票については、本資料の「政策決定過程への国民参加」にあるとおり、検討されるべき様々な課題を有しているとされています。

 「もんじゅ」による研究開発に当たっては、安全上の様々な不安に応え、地元の理解を得つつこれを進めることが重要であることから、長計案34頁に今後とるべき諸手続について以下の記述を新たに追加します。

 「そのためには、施設の安全性の向上を図り、立地地域を始めとする社会の理解を広く得つつ研究開発を進めることが必要であることから、安全規制行政機関及び原子力安全委員会による厳格な安全審査を経てナトリウム漏えい対策を施すとともに、安全総点検の結果を踏まえた改善措置を講じていくことが必要である。

 また、原型炉としての「もんじゅ」の位置付け、今後取り組むべき研究開発課題についてよりわかりやすくなるよう、参考資料として「もんじゅにおける研究開発項目」を追加します。

  

  ○高速増殖炉実用化に向けた展開

・実用化については明確な時期とステップを記載すべき【11】14-19
・FBR開発の目標時期がなぜ先送りされたかを記載すべき【1】14-20
・実用化の時期も示せない高速増殖炉に多額の税金を使うべきではない【2】14-21

 高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術(以下、「高速増殖炉サイクル技術」という。)の研究開発の方向性は、長計案14頁において、「その技術(高速増殖炉サイクル技術)の開発のための基礎的研究と実用化に時間を要することを考慮しつつ、我が国のみならず、世界のエネルギー問題の解決にも寄与することを視野に入れ、我が国独自の長期構想の下に、その研究開発に取り組むことが重要である。」とされており、その研究開発に当たっては、「社会的な情勢や内外の研究開発動向等を見極めつつ、長期的展望を踏まえ進める必要がある。そのため、高速増殖炉サイクル技術が技術的な多様性を備えていることに着目し、選択の幅を持たせ研究開発に柔軟性をもたせることが重要である。」とされています(長計案35頁)。
 このような考え方に沿い、実用化に向けた具体的な展開についても、「高速増殖炉サイクル技術として適切な実用化像とそこに至るための研究開発計画を提示することを目的に、炉型選択、再処理法、燃料製造法等、高速増殖炉サイクル技術に関する多様な選択肢について、現在、核燃料サイクル開発機構において電気事業者等、関連する機関の協力を得つつ実施している「実用化戦略調査研究」等を引き続き推進」し、また、「核燃料サイクル開発機構、日本原子力研究所、電力中央研究所、大学、メーカー等は、国内外の研究開発施設の活用や海外の優れた研究者の参加を含め、高速増殖炉サイクル技術について裾野の広い基盤的な研究開発を行っていく。」とされています(長計案35頁)。
 さらに、高速増殖炉の実証炉の具体的計画については、「実用化に向けた研究開発の過程で得られる種々の成果等を十分に評価した上で、その決定が行われることが適切であり、実用化への開発計画について実用化時期を含め柔軟に対応していく。」とされています(長計案35頁)。
 したがって、ご指摘の点について、基本的には、既に長計案に示されたとおりですが、ご指摘の趣旨も踏まえ、長計案35頁の高速増殖炉の実証炉等の記述について、以下のとおり修文します。
 「高速増殖炉の実証炉の具体的計画については、実用化に向けた研究開発の過程で得られる種々の成果等を十分に評価した上で、具体的計画の決定が行われることが適切であり、実用化への開発計画について実用化時期を含め柔軟かつ着実に検討を進めていくに対応していく。」

  

 【原子力科学技術の多様な展開】(長計案35~38頁)

  ○研究開発分野について

・我が国が原子力開発のフロントランナーを目指すことについて、資金力等に鑑み再考すべき【3】15-1
・近視眼的ではなく、広がりのある原子力の技術開発を進めるべき【15】15-2
・加速器の研究は分離変換技術の観点からも重要【1】15-3
・加速器の研究は国際的の一本化すべき【3】15-4
・資源に乏しい我が国にとって、国際貢献の観点からも核融合の開発を進めるべき【8】15-5
・核融合研究は多くの資金を要し実用化の見通しもなくまたクリーンでもないことから撤退すべき【10】15-6
・消費地に分散配置できる小型の固有安全炉を開発すべき【6】15-7
・革新的原子炉について国が主導的に開発すべき【8】15-8
・高温ガス炉の位置付けを明示すべき【3】15-9
・トリウムサイクルについて明示すべき【2】15-10

 原子力に関する科学技術は、核融合をはじめとする新たなエネルギー技術の発展基盤であるとともに、物質・材料系科学技術やライフサイエンスの分野等における最先端の研究手段を提供するなどの大きな可能性を秘めています。我が国が原子力の研究開発を進めるにあたっては、長計案の37頁に記述されているように、「適時適切な評価を実施し、評価結果を資源の配分や計画の見直し等に反映」することとしており、コストも含めた計画の妥当性について、開発の各段階で評価を行い、計画的な推進を図ることとされています。また、ご指摘の通り、近視眼的ではなく、広がりのある研究開発を進めていくべきと考えており、その趣旨は長計案35頁に「加速器や高出力レーザーは、これらを観測手段として活用することにより物質の究極の構成要素や自然の法則を探ったり、ライフサイエンスや物質・材料系科学技術等の様々な科学技術分野の発展を支えるものである。一方、核融合や革新的な原子炉の研究開発は、将来のエネルギーの安定供給の選択肢を与え、経済、社会のニーズにこたえるものである。」と記述されています。さらに、国際貢献の面からも、原子力科学技術に関して我が国は欧米各国に比べても高い水準にあり、これを世界に向けて発信していくことは我が国の責務であるといえます。

 (加速器)
 現在我が国では大強度陽子加速器計画が提案されています。本計画は、欧州ESS計画及び米国SNS計画と並ぶ世界3大中性子源計画のひとつであり、OECD(経済協力開発機構)からの勧告に沿って推進しているものです。 「加速器の研究について国際的に一本化を図るべき」とのご意見ですが、本計画については、中性子を用いた産業利用を通じ、国際的な産業競争力を強化することにもつながることから、三極ともに国際競争として取り組んでいます。長計案においても36頁に「一般に、大型加速器計画は常に国際的競争状態におかれており」と記述されています。また、分離変換技術は、長計案32頁に「高レベル放射性廃棄物に含まれる半減期の長い放射性物質を分離し、これを原子炉や加速器を用いて半減期の短いあるいは放射性でない安定な物質に変換する技術」と記述されており、放射性廃棄物の処理及び処分に係る負担を低減する技術選択肢の一つとして期待されています。 

 (核融合)
 核融合については、長計審議において、エネルギー生産が可能になれば、炭酸ガス問題など地球規模の環境破壊の問題の解決に貢献することとなり、さらに、化石燃料や資源に乏しい日本にとって、地球的資源偏在というハンデイキャップから逃れられること、連鎖反応がなく、反応を維持する外的条件を取り去れば自動的に停止するなど安全なエネルギー資源であり、次世代エネルギーとしての長所を有していること、核融合炉はまた、放射性廃棄物の核変換、水素燃料製造、熱の工業利用、放射性同位元素製造など多彩な応用が検討されていることが指摘されました。長計案においては、このような意義を踏まえ、核融合について、基礎研究と応用目的を有する研究開発という二つの側面をもつ原子力科学技術研究において、特に、将来のエネルギーの安定供給の選択肢を与え、経済、社会のニーズにこたえるものであると位置づけられており、その研究開発の推進がうたわれています(長計案35~36頁)。
 また、ITER計画については、平成8年に原子力委員会ITER計画懇談会を設置し、その進め方について審議を行っているところで、これらの審議は、将来のエネルギー見通し、核融合の技術的実現性、我が国の核融合に関する技術的能力、研究の資源配分あるいは国際関係など幅広い視点から行っており、推進に当たっては審議の結果を踏まえて行うことの必要性が記述されています(長計案36頁)。

 (革新的原子炉)
 21世紀を展望すると、次世代軽水炉の開発とともに、革新的な原子力エネルギーシステムの開発が重要となります。すなわち、高い経済性とともに、熱利用等のエネルギー供給や原子炉利用の普及などに適した原子力システムが期待されています。革新的な原子炉の実現に向けては、革新的要素技術の研究開発を進めることが必要であり、その趣旨は長計案36頁に「炉の規模や方式にとらわれず多様なアイデアの活用に留意しつつ、国、産業界及び大学が協力して革新的な原子炉の研究開発についての検討を行うことが必要」と記述されています。

  

  ○研究開発の進め方

・大学等の研究炉は若者の教育に最適な道具であり、また中性子源をしての長期的役割を有しており、その充実を図るべき【4】15-11
・研究炉の使用済燃料の処分と廃炉の指針について明示すべき【2】15-12
・経営的にも存続が危ぶまれる私大炉について具体的対策を示すべき【3】15-13

 研究用原子炉は今後も原子炉の材料の試験や研究、理工学のためのビーム利用や分析、産業や医療における利用と人材養成や教育に大きい役割を果たすことで、原子力科学技術に貢献すると期待されています。研究炉を含め大学に期待される役割に関しては、長計案37頁に「国は、人材養成機能を有する大学の原子力基礎研究活動の維持、発展のために必要な研究資源の確保、充実に努める」と、その趣旨が記述されています。また、多様化するニーズの下、研究用原子炉のあり方について、今後検討を行っていく必要があると認識しており、その趣旨は長計案37頁に「学術研究や基礎・基盤研究、医療、人材養成等に大きな役割を果たしてきた研究用原子炉については、これらの分野における今後の役割を見定めながら、その在り方について検討を行う」と記述されています。

 研究炉の使用済燃料の取扱いについては、重要な課題であり、長計案37頁に「使用済燃料の取扱いについては、高濃縮度ウラン燃料の米国への期限内の返還を含め早急に検討を行うことが必要」と指摘されています。

  

 【国民社会に貢献する放射線利用】(長計案38~39頁)

  ○国民生活への貢献

・放射線の利用の具体的取組や計画を記載すべき【3】16-1
・放射線利用に当たっては情報公開を前提とすべき【3】16-2
・放射線は医療、工業、環境等の分野で役立っており、今後もこの分野の研究を推進すべき【7】16-3
・医療用の大掛かりな装置の開発について、費用対効果の点から疑問【2】16-4
・食品照射は安全とは言い切れず危険でありやめるべきだ【5】16-5

 放射線利用は、ご指摘の通り、医療、工業、環境等の様々な分野において、国民生活に役立っています。放射線を用いる方法は、科学的方法と比べると、有害な触媒などが不要なので環境への負荷が小さく、クリーンな手段であり、また、加熱や冷却などが必ずしも必要ではなく、しかも短時間で処理が可能なためエネルギーの消費も少なくてすむなどの特長を持っており、21世紀の社会ニーズに適した技術の一つです。このような意味から、長計案38頁では、「放射線は取扱を誤れば健康に影響を及ぼす危険な道具であるが、管理しながら使うことで社会に多くの便益をもたらし、活力を与える。したがって、国民の理解を得ながら今後も、医療、工業、農業等の幅広い分野で活用できるように、放射線利用の普及を図っていくことが重要」とされています。また、このため、「国民に放射線利用や放射線についての正確な知識をもってもらうための努力が必要である。」と指摘されています。

 食品照射については、ご指摘のような不安感を抱く人も少なくないと思われます。しかし、食品照射は、衛生的な食品を安定に供給し、腐敗による食料の損失を防ぐ殺菌技術の有力な選択肢の一つであることから、長計案38~39頁では、「社会のニーズに沿って食品照射の実用化を図るに際しては、国は消費者の自由な選択を尊重し、食品照射と他の方法とを比較し必要性や安全性についての分かりやすい情報提供を行うことが必要」としています。また、照射食品の健全性や検知技術の研究等を引き続き推進することの必要性も指摘されています。

 医療分野においては、放射線医学総合研究所における重粒子線によるがん治療の臨床試行において、他の手法では得られない治療効果があがっており長計審議でも放射線利用による効率的で患者への負担の少ない医療の重要性が指摘されました。このように、放射線による治療、診断については、大きなメリットがあることから、長計案38頁では、粒子線を含む放射線を用いた診断、治療の高度化を進めるとともに、診断、治療における健常組織への被ばく線量の低減化、新しい医療用線源や放射性薬剤の開発による診療適応範囲の拡充等の研究開発を産学官が協力して進めることが重要であると記述されています。

  

  ○放射線の生体影響と放射線防護、放射線利用環境の整備

・放射線の生体影響についてはまだまだ未解明であり、放射線の影響への言及が不十分ではないか【7】16-6
・放射線の生体影響について、様々な研究を今後も推進すべき【6】16-7
・放射線防護のルールを合理的かつ現実的な内容に見直すべき【6】16-8
・放射線に対する漠然とした不安を解消するため放射線に関する教育・PA等の推進を図るべき【9】16-9
・放射性同位元素利用の拡大と供給体制について、検討をはかるべき【2】16-10
・放射線利用に伴って発生する放射性廃棄物のための対策が必要【4】16-11

 人々が安心して放射線利用の恩恵を享受するためには、放射線の人体への影響を明らかにする必要があり、そのための研究を推進するべきと考えます。このため、長計案39頁では、「低線量放射線の人体影響については、疫学研究、動物実験、細胞・遺伝子レベルの研究、解析等、様々な研究手法を用いて、より広い視野の下で関連機関が連携を図りつつ、基礎的な研究を総合的に推進することが必要である。」と記述されています。

 また、放射線防護基準の制定は安全への信頼性を高め、安心をもたらすのに役立っています。このため、長計案39頁では、「低線量放射線の人体影響の研究や、高線量被ばくに関する研究の成果を、放射線の健康リスクの評価、合理的な防護基準の設定などに取り入れていくことが期待される」とされています。

 ご指摘の通り、放射線の人体影響に対する国民の不安が増大していることから、国は、この不安解消に向けた取り組みの充実を図ることが必要です。 放射線についての正確な知識や放射線利用の必要性、安全性及び利用の現状についての情報が、国民に広く正確に知らされることが望まれており、特に工業利用において、製品を利用する消費者が正しい情報を入手し理解できるように、製品をつくっている側(生産者)や国が努力する必要があります。また、初等中等教育用教科書に原子力・放射線の定義、性質、働きなどを、正確に記載することも必要と考えており、長計案38頁において「国民に放射線利用や放射線についての正確な知識を持ってもらうための努力が必要」と記述されています。

 放射性同位元素については、産業、医療など様々な分野で利用され、今後とも、その有用性が期待されるところです。このため、利用を拡大するための研究開発は重要であり、この趣旨は長計案38頁において「新しい医療用線源や放射性薬剤の開発による診療適応範囲の拡充等の研究開発を産学官が協力して進めることが重要」と記述しています。また、放射性同位元素の安定供給の確保は重要な課題であることから、これを明確にするために、長計案39頁に 「放射性同位元素の利用を円滑にするための供給体制等を整備することが必要不可欠である」との記述を追加します。

  

 【国際社会と原子力の調和】(長計案18~19、39~43頁)

・我が国は核兵器廃絶や核不拡散に向けて積極的に取り組むべき【19】17-1
・余剰兵器プルトニウム処分に我が国が協力すべきではない【1】17-2
・原子力先進国である我が国は積極的に国際貢献すべき【14】17-3
・世界の理解の得られないプルトニウム政策から撤退すべき【3】17-4
・放射性廃棄物の国際的な処分場や放射性物質の国際間の移動について検討すべき【6】17-5
・KEDO、旧ソ連への支援については再考すべき【2】17-6

 核軍縮と核不拡散の問題については、長計審議では主要議題の一つとして審議され、今後とも核兵器のない世界の1日も早い実現に向けて、努力を重ねていかなくてはならないし、我が国が世界の核不拡散体制の強化に果たす役割は極めて大きなものがあるとの議論がありました。
 こうした議論を踏まえ、長計案19頁では、「我が国は原子力開発の第一歩から一貫して、原子力基本法に則り、民主・自主・公開の原則の下に、原子力研究開発利用を平和利用目的に限って推進してきた。我が国は、自ら率先して原子力平和利用に専心していることにつき、非核三原則、NPTに基づく義務の完全履行の説明を尽くすのみならず、我が国にとって核武装することは利益にならないという我が国の考え方、また、国際的な管理システムによって透明性を確保してきているという我が国の実態を世界に明らかにして、我が国が非核兵器国としての立場を堅持していることを、より強力に発信していくべき」であり、核不拡散体制の維持については長計案40頁「NPTや、それに基づくIAEAによる包括的保障措置、CTBT等種々の国際的枠組み・・・の維持に加え、我が国の持つ原子力平和利用技術と人的能力をもって、核不拡散体制の強化を目指して主体的に取り組んでいく」こととされています。
 また、NPT締結国の平和利用核物質については、これまでも国際原子力機関(IAEA)が核兵器への転用を監視し、そのような事実はないことが常に確認されているところですが、現在この保障措置を更に強化するための取組がIAEAで進められているところであり、長計案40頁でも、我が国としてこの取組に積極的に参画することとされています。

 余剰兵器プルトニウムの管理・処分に関し、我が国として協力を行うべきではないとのご意見について、現在我が国が進めている協力は、ロシアで発生する余剰兵器プルトニウムをロシア国内で燃焼させるための研究開発に関する協力であり、長計案では、「核兵器保有国が第一義的には、責任をもって行うものであるが、これは核軍縮の促進と核不拡散の観点から極めて重要であり、・・・我が国としても当事国の責任と当事国以外の協力の意義のバランスを考慮しつつ、外交上の主体的な協力を行っていく」こととされています。

 原子力先進国である我が国は、積極的に国際貢献をすべきとのご指摘については、長計案21頁においても原子力分野の協力が、「我が国のみならず、将来の世界のエネルギー、環境問題の解決や、人類の知的資産の創出にも貢献し得るものである。東西冷戦の下で軍事利用とともに発達してきた原子力技術について、冷戦が終了した今こそ、非核兵器国である日本が原子力平和利用を実践し、国際社会において利用に供されるような普遍性の高い平和利用技術を開発し、世界に示していくことは、我が国の国際社会における役割としても重要な意義を有するものである。」と記されています。
 具体的に、研究開発協力については、欧米の牽引力の低下や、アジア地域における今後の原子力研究開発利用の拡大の見通しを踏まえ、これまでのキャッチアップ重視の態度から、高速増殖炉関連技術、先端的研究開発、放射性廃棄物の処分研究開発、核融合炉研究開発等の分野において、フロントランナーにふさわしい主体性のある国際協力を進めることが指摘されています(長計案 41頁)。
 また、アジア諸国との協力については、2国間の協力や、アジア原子力協力フォーラムといった多国間の協力枠組みを利用し、情報・意見交換や技術交流等、地域での関連技術レベルの向上等に寄与していくことを指摘しています。
 さらに、アジア諸国の原子力発電所建設計画への対応について、長計案42頁では、民間主体で商業ベースにより協力をすすめ、国は具体的なニーズを踏まえ、2国間協力協定等の枠組み作りに尽力することとされています。

 世界の理解を得られないプルトニウム利用政策から日本は撤退すべきとの指摘について、長計案ではプルトニウム利用政策を堅持することとしていますが、他方、インド、パキスタンの核実験やロシアにおける核物質の不法流出の懸念、更に米露2ヶ国を中心とした核軍縮の進展の遅さを鑑み、原子力の開発利用、特にプルトニウム利用政策をとっている我が国の原子力平和利用路線に対する疑念が存在することは、長計審議においても指摘されました。
 これを踏まえ、長計案19頁においては、「今後、我が国がプルトニウム利用を進めるに当たっては、平和利用の原則を厳重に確保することはもちろん、我が国が行っている平和利用の確保に係る取組に対する国際社会の理解と信頼とを得るための努力を継続することが重要」であり、「プルトニウム利用政策について、その必要性、安全性、経済的側面についての情報を明確に発信するとともに、我が国のプルトニウムの利用については、利用目的のない余剰プルトニウムを持たないという原則を踏まえて、透明性を一層向上させる具体的な施策を検討し、実施していくことが重要」であるとしています。このような趣旨をより明確にするため、プルトニウム利用政策を採ることに対する世界各国の理解を得ることの重要性について強調すべく、長計案19頁の記述を以下のとおり修文します。
 「我が国がプルトニウム利用を進めるに当たっては、平和利用の原則を厳重に確保することはもちろん、我が国が行っている平和利用の確保に係る取組について積極的に情報発信に努める等、対する国際社会の理解と信頼とを得るための努力を継続することが重要である。」

 その他、放射性廃棄物或いは使用済燃料を国際共同で管理・処分することについては、長計審議において、まず、使用済燃料の受入れを希望する適切な国があるかどうかが問題であり、受入国ではなく、送り出し国や第三国のみがイニシアティブをとって議論を進めても、構想の円滑な実現は困難であること、また、受入国は、国際社会が安心して核物質の長期貯蔵を委託できるよう政治的に安定していることはもとより、核物質管理と核不拡散努力において評価すべき実績を持つ国でなければならないことが指摘されました。その上で、使用済燃料あるいは放射性廃棄物の処分は、発生国が対応するというのが国際的な基本認識とされ、使用済燃料あるいは放射性廃棄物の安全な処分のための国際協力と国際共同貯蔵・処分計画への我が国の参画とは別問題であり、前者については前向きに対応することとし、我が国としては、使用済燃料の貯蔵技術や高レベル放射性廃棄物の地層処分についての科学的知見を共有することによって、国際社会に積極的に貢献していくべきであるとの議論がありました。

 原子力施設を持つ国は、それぞれの国が責任を持って処理、管理すべきであって、旧ソ連、北朝鮮、ウクライナ等それができない国へ資金援助すべきではないとのご指摘がありましたが、長計案42頁においても、原子力安全に関する責任は、基本的に当該原子力施設を所轄する国が負うというのが国際的な原則であることから、今後とも協力活動の効率化を図っていくことされています。
 また、KEDOプロジェクトへの出資はすべきではないとの御意見がありましたが、長計審議の中で、KEDOプロジェクトは北朝鮮の核兵器開発を封じる上で、最も現実的かつ効果的な枠組みであるとの認識が示され、長計案40頁においても、その認識の下、核不拡散への取組に対する我が国のイニシアティブ強化の一環として、当該プロジェクトへの協力を積極的に進めていくこととされています。

  

 【原子力の研究、開発及び利用の推進基盤】(長計案43~44頁)

  ○人材確保

・これからの原子力産業を支える人材の育成および確保が重要課題であり、国による具体的方策を示すべき【10】18-1
・中小企業、下請け企業の技術力の育成の観点が抜けている【1】18-2
・原子力の人材確保に関する取組を国をあげて実施すべき【3】18-3

 長計審議において、原子力産業における人材の育成・確保が重要な課題でありその対応が重要であるとの活発な議論が行われました。その対応策として、長計案43頁にあるとおり、民間は自ら企業内で教育・訓練等を行い、将来世代へ着実に技術を継承する努力行うことが期待されること、国においても、学校教育を通じて人材の養成に取り組むとともに、国の研究機関と民間との間での共同研究や人的・技術的交流を促す体制をつくり、人材・技術力の維持・継承、発展を図るよう努力することが重要とされています。また、我が国の中小企業等を含む原子力産業における技術力や人材の維持・継承は、物作りを継続していくことによって効果的に達成されるとの意見が多く出されました。この場合、国は、我が国のエネルギー供給における原子力の位置付けを明確にし、その上で、原子力産業は、自ら安全性、技術的および経済性に優れた社会が求める原子力エネルギー技術・製品を提供できるよう努力すべきであるとの議論がありました。これらを踏まえ、長計案においては、「原子力産業界においては、常に最新の技術を取り込むなどの努力を継続すると同時に、企業内での教育訓練を充実させ、それまでに蓄積された技術を企業内において発展させ、将来世代へ着実に継承する努力を行うことが期待される」とされています(長計案43頁)。

  

  ○原子力供給産業の競争力向上と国際展開

・原子力発電技術は国の戦略産業であり、国は予算配分等に積極的に関与し、外国企業の国際展開に遅れないようにすべき【2】18-4
・原子力産業による国際展開、原子力技術の移転は核拡散につながり、また危険を他国に持ち込むことになり反対である【8】18-5
・原子力エネルギーの多目的な利用により新たな原子力施設を実用化し、活性維持をはかるべき【1】18-6

 長計審議においては、今後とも原子力を基幹電源として最大限に活用していくためには、原子力産業は我が国にとって重要な産業でありこれを維持、発展させる必要があるとの議論がありました。このためには、国は我が国のエネルギー供給における原子力の位置付けを明確にし、その実現のための条件整備のあり方をまとめ、その上で我が国の原子力産業が自らこれを達成するべく努力を行うこと、また、国内活動のみならず積極的に国際展開を図りながら経営の効率化や経営体質の強化を図り、国際的なコスト競争力と技術力を維持していくことが重要です。
 この際、原子力技術が世界のエネルギーの安定供給や環境問題の解決に寄与するとの視点に立ち、単に軽水炉プラント機器の供給だけでなく、我が国で培われた安全思想とセットで国際展開することで、国際社会への責任ある貢献を果たすことに配慮することが重要です。国は、こうした民間活動の国際展開の進展に合わせ、二国間協定等による資機材移転のための枠組み作り、相手国における法整備の支援、技術協力等を行い、国際的な原子力の平和利用に関する環境整備を行うことが重要であり、以上のような趣旨が長計案44頁に記載されています。
 なお、原子力技術や資機材の輸出が核拡散につながるものではないかとの意見がありました。現在でも、平和利用担保のための国際的な枠組みの下で厳格な管理が行われていますが、その点を明確にする観点から44頁を以下のとおり修文します。
 将来、我が国の高い安全性を持つ軽水炉技術を輸出するに当たっては、当該技術が厳に平和利用に限定されることを担保しつつ、世界のエネルギーの安定供給や環境問題の解決に寄与する視点に立って、単に軽水炉プラント機器の供給だけではなく、我が国で培われた安全思想とセットで国際展開することで、国際社会への責任ある貢献を果たすよう配慮することが重要である。」

  

 【その他】

  ○長期計画策定に関して

・原子力を議論する際には、21世紀の社会を踏まえ、幅広い視点から検討すべき【9】19-1
・長計(案)は具体性に欠けるため、今後の原子力に関する数値目標、達成年度などを明示するべき、あるいは明示しない理由を明らかにすべき【35】19-2
・長計(案)は具体性が希薄であり、今後関係機関での実施計画に原子力委員会の指導性を期待する【6】19-3
・現行長計の総括が行われていない【5】19-4
・用語解説を付ける、イラストを加えるなど、読みやすさ、分かりやすさの工夫をすべき【6】19-5
・策定会議メンバーは、一般公募、厳正な抽選により選定すべきであり、座長の意志や密室の決定は不公平。長計策定方法の改善が必要【2】19-6
・意見募集についてはそのタイミング、寄せられた意見の反映方法等の面で改善すべき点がある【9】19-7
・ご意見をきく会については開催回数、会議の進め方等に問題がある【6】19-8
・長計分科会報告書の位置付けを明確にすべき【1】19-9
・総合エネルギー調査会との関係に触れるべき【1】19-10

 長期計画案に対し、具体性に欠ける、数値目標を明記すべき等のご意見を頂きましたが、長計案「はじめに」に記述されていますように、前回長期計画策定以降の諸情勢の変化を踏まえ、策定会議の方針として、今回の長期計画案では、原子力関係者のための具体的な指針にとどまらず、国民・社会や国際社会に向けたメッセージとしての長期計画の役割を重視することと致しました。このため、具体的計画について必要不可欠な数値は記述いたしましたが、例えば高速増殖炉の実用化時期のように、技術の多様な選択肢について評価を行い実用化像を絞り込むための調査研究を行っていくことが円滑な実用化のために必要である、との理由から記載されていないものもあります。
 なお、この策定方針を明確にするため長計案2頁「はじめに」を以下のとおり修文します。
 「国と民間の果たすべき役割を踏まえつつ、将来にわたって堅持し、着実に実施しなければならない理念や政策に重点をおいて記述するとともにを示すとともに、情勢の変化によって機動的に対応すべき研究開発活動等については、課題解決のための多様な選択肢を用意し、適時適切な評価により計画に柔軟性をもって取り組むとの原則を示す。」

 今回の長計審議に当たっては、策定会議の下に個別の重要課題毎に6つの分科会が設置され、詳細な議論が行われました。策定会議は、これら各分科会での議論及びその結果としての報告書を踏まえて審議を行ったところです。各分科会報告書は長計とは別のものですが、長計審議の基礎となった資料として公開されており、個別の具体的計画、数値目標等も記されておりますので、参考として頂ければ幸いです。

 原子力発電の将来の導入規模や原子力発電の割合を示すべきとのご意見を頂きました。今回の長計審議に当たっては、個別具体の計画や数値目標的なものは、必要不可欠なものに留め長期にわたって堅持すべき政策、理念を中心にまとめるという方針の下で審議を進めました。
 エネルギーとしての原子力のあり方については、他のエネルギー選択肢との比較、再生可能エネルギー、省エネルギーの潜在的可能性等について、内外の状況についてのデータ、専門家からのヒアリングを基に審議を行うとともに、本審議の途中に開始された、通商産業大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会におけるエネルギー政策全体の見直しの動きも踏まえて検討を行いました。その結果、原子力発電については、「引き続き基幹電源に位置付け、最大限に活用していくことが合理的」であり、その規模については、「我が国のエネルギー供給システムを経済性、供給安定性に優れ二酸化炭素の排出量が少ないものとするという観点から、状況の変化に応じて、電源構成に占める割合を適切なレベルに維持していく」との結論を得たところです。
 具体的な原子力発電の導入の規模については、このようなエネルギー供給に期待される原子力発電の特徴を踏まえるとともに、また、エネルギー需要全体の動向等を基に、今後総合エネルギー調査会において長期的な需給見通しの一環として検討されることと考えます。
 なお、このような長期計画策定に当たっての方針とこれを踏まえた計画の構成を明確にするため、長計案2頁「はじめに」の最後の部分を以下のとおり追加・修文するとともに、一層の読みやすさの工夫という観点から適宜参考資料を巻末に追加します
 「本長期計画では、国民・社会や国際社会に向けたメッセージを述べる第1部と、原子力研究開発利用を進めるに当たっての具体的な指針及び推進方策を述べる第2部で構成されており、また、本長期計画の内容を理解する一助になるよう、策定の基礎とした資料及び用語解説を巻末に添付した。策定会議は、本長期計画が、原子力の問題を一人一人が自らの問題として考えていただくきっかけとなり、広く国民各界各層における原子力政策に対する理解が深まることを期待する。また、本長期計画の内容を理解する一助となるよう、策定の基礎とした資料及び用語解説を巻末に添付した。

 今回の長計策定に当たり、策定会議の委員が、原子力関係者のみならず、経済界、法曹界、立地地域、マスメディア等各界の有識者から成り、その構成は従前の長期計画の審議に比べ広範多岐にわたったことは、「はじめに」(長計案2頁)に書かれているところです。

 策定会議では、原子力委員会から示された審議の進め方において、「長期計画案をとりまとめるに当たり、その内容について幅広く国民の意見を聴取するための措置を講ずるものとする」とされていることも踏まえ、長計案について意見募集と併せて全国3ヶ所で「ご意見をきく会」を開催するなど、可能な限り幅広く国民の声を反映することに努めたところであります。開催回数、開催時期、運営等について改善すべきとのご意見については、今回の経験を基に、今後の原子力委員会の活動において考慮されるべきと考えます。

  

  ○その他

 以下のご意見は、今回の長期計画策定会議の調査審議の対象外と考えられますが、今後、原子力委員会における政策の検討等に当たって参考にすべきと考えられますので、他のご意見とともに、原子力委員会へ報告致します。

・原子力委員会の在り方について【8】19-11
・エネルギー政策の審議の在り方【2】19-12
・その他【15】19-13