第6章 廃止措置及び放射性廃棄物への対応
6-1 原子力施設の廃止措置
東京電力株式会社(東京電力)福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所や研究開発施設等のうち運転期間を終えた施設等の多くが廃止措置に移行することが決定されています。廃止措置は、安全を旨として計画的に進めるとともに、施設の解体や除染等により発生する放射性廃棄物の処理・処分と一体的に進めることが必要です。
原子力委員会の「原子力利用に関する基本的考え方」(2023年改定)では、基本目標として「放射性廃棄物の処理・処分を含めた廃止措置を、計画性をもって、着実かつ効率的に進める」としています。事業者や研究機関等は、廃止に伴う措置の実施方針をあらかじめ公表するとともに、廃止を決定した施設については原子力規制委員会による廃止措置計画の認可を得て廃止措置を開始するなどの取組を進めています。
6-1-1 廃止措置の概要と安全確保
6-1-1-1 廃止措置の概要
通常の実用発電用原子炉施設等の原子力施設の廃止措置では、第1段階(解体準備)として運転を終了した施設に存在する核燃料物質等を搬出し、放射性物質による汚染の除去を行います。次いで、第2段階として周辺設備、第3段階として原子炉領域設備、第4段階として施設建屋等について順次、解体・撤去を行います。これら廃止措置で生じる放射性廃棄物は、放射能のレベルに応じて適切に処理・処分します。
国際原子力機関(IAEA1)では、各国の廃止措置経験等に基づき、廃止措置の方式を「即時解体」と「遅延解体」の二つに分類しています(表 6-1)。以前は「密閉管理(長期間にわたり、放射性汚染物質を耐久性のある構造物に格納しておく方法)」も廃止措置の方法の一つとされていましたが、現在では、事故を経験した原子力施設等の例外的な措置と捉えられています2。
表 6-1 IAEAによる廃止措置等の方式の分類 方式 概要 即時解体 ・・遅延解体 ・・(出典)内閣府作成
6-1-1-2 廃止措置の安全確保
原子力事業者等は、廃止措置に当たって「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)に基づき廃止措置計画を定めて原子力規制委員会の認可を受けます。原子力規制委員会は、廃止措置中の安全確保のため、施設の維持管理方法、放射線被ばくの低減策、放射性廃棄物の処理等の方法が適切なものであるか審査します。また、事業者は、その事業(発電用原子炉の運転等)を開始しようとするときは、施設の稼働停止から廃止へのより円滑な移行を図るため、廃棄する核燃料物質によって汚染された物の発生量の見込み、廃止措置に要する費用の見積り及びその資金調達方法等、廃止措置の実施に関し必要な事項を定める「廃止措置実施方針」をあらかじめ作成し公表することが原子炉等規制法によって義務付けられています。
原子力施設は、運転から廃止措置の各段階に応じ、あるいは施設の規模や使用形態等により、内在するリスクが大きく異なります(図 6-1)。安全性を確保しつつ円滑かつ着実に廃止措置を実施するため、IAEAの安全要件3では、作業の進展に応じて変化するリスクレベルに応じて最適な安全対策を講じていく考え方(グレーデッドアプローチ)を提唱しています。原子力規制委員会においても、2024年度の業務計画の一つとして、より実効的なグレーデッドアプローチを検討しつつ核燃料施設等の審査を行うことを挙げています。
注:IAEA, Safety Assessment for Decommissioning, Safety Reports Series No. 77, IAEA (2013), Annex I, Part A Safety
Assessment for Decommissioning of a Nuclear Power Plantに基づき株式会社三菱総合研究所が作成図 6-1 原子力施設のリスクレベルの変化イメージ(出典)株式会社三菱総合研究所,廃止措置プラントのリスク管理1章「グレーデッドアプローチ」導入に向けて(2020年)
6-1-2 廃止措置の方針と費用措置
6-1-2-1 廃止措置の円滑化に向けた方針
2024年12月に、中部電力株式会社浜岡原子力発電所1号機及び2号機において国内初となる原子炉領域の解体撤去の申請が認可され、2025年3月に2号機原子炉圧力容器上蓋の解体が開始されました。今後、これまでの国内の商用原子炉では実績のない廃止措置作業が順次本格化し、将来的には、複数の原子力発電所において同時並行で進行することが見込まれています。
原子力委員会は原子力利用に関する基本的考え方において、廃止措置に向けた重点的取組を示しました(図 6-2)。
原子力関係閣僚会議が2023年に決定した「今後の原子力政策の方向性と行動指針」では、「2020年代半ば以降に原子炉等の解体作業が本格化することが見込まれる中、我が国における着実かつ効率的な廃炉を実現するため、廃炉に関する知見・ノウハウの蓄積・共有や必要な資金の確保等を行うための仕組みを構築する。また、クリアランス4対象物のフリーリリースを見据えた理解活動を推進するとともに、福井県等の自治体関係者を含むリサイクルビジネスの組成と連携・協働する」とし、廃止措置の円滑化に向けた取組をまとめています(表 6-2)。また、第7次「エネルギー基本計画」(2025年2月閣議決定)では、使用済燃料の再処理を始めとする核燃料サイクル、円滑かつ着実な廃炉、高レベル放射性廃棄物の最終処分といったバックエンドへの対応はいずれも原子力を長期的に利用していくに当たって重要な課題であるとしています。図 6-2 「原子力利用に関する基本的考え方」で示された廃止措置に係る重点的取組(出典)内閣府作成
表 6-2 廃止措置の円滑化に向けた取組 ⅰ) ・・ ⅱ) ・・・注:Japan Power Demonstration Reactor(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の動力試験炉)
(出典)原子力関係閣僚会議,今後の原子力政策の方向性と行動指針(2023年)
円滑かつ着実な廃炉の推進に向け、使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO5)が全国の廃炉の総合的調整、研究開発や設備調達等の共同実施、廃炉に必要な資金管理等の業務を担っています6。NuROが行うこれらの業務に必要な費用に充てるため、原子力事業者は、毎年度、拠出金(廃炉拠出金)をNuROに納付することが義務付けられています(図 6-3)。2024年度は、廃炉拠出金の年度総額を原子力事業者10社合わせて約430億円とすることが、各社の拠出金率と併せて、経済産業大臣により認可されました。また、廃炉を実施する原子力事業者の請求に応じてNuROがその費用を支払うことになっています。なお、英国などでも我が国と同様に第三者機関に拠出金を納付することで廃止措置費用を確保しています。
図 6-3 廃止措置の円滑化に係る制度概要(出典)資源エネルギー庁,原子力政策に関する直近の動向と今後の取組,第37回総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会原子力小委員会[資料1](2023年)を基に内閣府作成
また、原子力発電には、事故炉の廃止措置にあたっての資金確保や原子力損害賠償のように、市場原理のみに基づく解決が困難な課題があります(図 6-4)。このため事故炉の廃止措置については、これを行う原子力事業者に対し必要な資金を原子力損害賠償・廃炉等支援機構に積み立てることが義務付けられています。
図 6-4 自由化の下での財務・会計上の課題への対応の基本的な考え方(出典)総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力システム改革貫徹のための政策小委員会,電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめ(2017年)を基に内閣府作成
6-1-2-2 原子力機構における研究開発施設等の廃止措置への取組
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(原子力機構)は、廃止措置、廃棄物処理・処分及び核燃料物質の管理の長期にわたる見通しと方針を取りまとめた「バックエンドロードマップ」を2018年に公表しました。同ロードマップには、今後約70年間を3期に分け、現存する原子炉等規制法の許可施設7の79施設(2018年12月時点)を対象に、バックエンド対策の方針と共に、必要な費用の試算が示されています8。また、原子力機構の廃止措置を合理的に進めるために本部組織と拠点が連携し、優先的に進める施設を設定した上で廃止措置を進めています。
6-1-3 廃止措置の状況
6-1-3-1 原子力発電所の廃止措置
我が国では、2025年3月末時点で、特定原子力施設として規制される福島第一原子力発電所の6基を除き、実用発電用原子炉施設51基のうち18基の廃止措置計画が認可されています9。このうち、原子炉領域を解体する第3段階にあるのは2基、周辺設備を解体する第2段階にあるのは5基です(図 6-5)。
図 6-5 原子力発電所の廃止措置の状況(2024年10月)(出典)資源エネルギー庁,放射性廃棄物対策に係る最近の取組状況,第41回総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会[資料2](2024年)
6-1-3-2 研究開発施設等の廃止措置
原子力機構の施設や、東京大学や立教大学等の研究炉、民間企業の研究炉において、廃止措置が進められています。
原子力機構の施設の廃止措置のうち特に規模の大きな施設として、高速増殖原型炉もんじゅ、新型転換炉原型炉ふげん及び東海再処理施設の廃止措置が挙げられます。
もんじゅは、2016年の原子力関係閣僚会議において廃止措置に移行することが決定され、2018年度よりおおむね30年間の廃止措置が進められています。廃止措置の第一段階として2022年までに燃料体を炉心から燃料プールに取り出す作業を終了しました。2023年度からの第二段階においては、水・蒸気系等発電設備の解体作業等が実施されています。
ふげんは、原子炉建屋内の設備・機器の解体撤去作業を進めています。また、2031年度に使用済燃料の搬出を完了する計画として、フランスの事業者との契約に基づいて輸送容器の製造や各種許認可等の必要な手続を進めています。また、原子炉本体の解体に向けて、原子炉本体の解体技術や解体に必要な設備を設置するための技術の検討を進めています。
東海再処理施設は廃止措置に70年を要する見通しであり、リスク低減の観点から、まずは高レベル放射性廃液のガラス固化処理を最優先で進めています。また、新規制基準を踏まえ高レベル放射性廃液を取り扱う施設の安全対策を進め、2025年3月に完了しました。ガラス固化処理については、溶融炉内への白金族元素の堆積に伴う溶融炉の加熱性能の低下が確認されたため2022年に一旦作業を終了しました。その後、溶融炉底部の構造を改良した新型溶融炉への更新に向けた取組を進めており、2026年度第3四半期からの運転再開に向けて工程を管理していくこととしています。
文部科学省及び原子力機構は、今後のバックエンド対策や費用の試算精度の向上に関する助言を受けることなどを目的として、IAEAのレビューサービスARTEMIS10を2021年に受け入れました。これは、原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物に関し2014年に開始された総合的レビューサービスであり、我が国で初めて実施されました。同レビューの報告書は、原子力機構がバックエンドロードマップを作成したことを評価した上で、廃止措置の更なる改善のための提言と助言を示しました。
原子力委員会は2019年に、「日本原子力研究開発機構における研究開発施設に係る廃止措置について(見解)」を取りまとめました。その中で、全体像の俯瞰的な把握、規制機関との対話、合理的な安全確保、廃止措置にかかる経験や知識の継承、人材育成、廃棄物の処理計画と廃止措置との一体的な検討等の取組の必要性を指摘した上で、今後の進捗や対応状況について適宜フォローアップしていくこととしています。6-2 放射性廃棄物の処理・処分
原子力委員会が策定する原子力利用に関する基本的考え方では、基本目標に「放射性廃棄物は、現世代が享受した原子力による便益の代償として実際に存在していることに鑑み、現世代の責任として、原子力関係事業者等は、その処理・処分を着実に進める。また、処分場確保に向けて、発生者責任の原則の下、原子力関係事業者等の取組が着実に進むよう、国としても関与していくべきである。」と掲げています。原子力利用により放射性廃棄物を発生させた現世代の責任として、放射性廃棄物の処分を着実に進めていく必要があります。
6-2-1 放射性廃棄物の処分の概要と安全確保
6-2-1-1 放射性廃棄物の処分の概要
IAEAの安全要件11では、放射性廃棄物の発生は可能な限り抑制することとされており、廃棄物発生の低減、当初意図されたとおりの品目の再使用、材料のリサイクル、それらの手段が適用できない場合には放射性廃棄物として処分、という順位で検討されます。
我が国において放射性廃棄物12は、高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物に大別されます。低レベル放射性廃棄物には、原子力発電所から発生する発電所廃棄物、再処理施設及びMOX13燃料加工施設から発生するTRU廃棄物14、ウラン濃縮施設及びウラン燃料加工施設から発生するウラン廃棄物、大学や研究機関、医療機関等における原子力のエネルギー利用、放射線利用、関連する研究開発から発生する研究施設等廃棄物があります。高レベル放射性廃棄物15は、使用済燃料の再処理に伴い発生する放射能レベルの高い廃棄物です。
これらの放射性廃棄物について、含まれる放射性核種の種類と量に応じて適切に区分した上で、トレンチ処分、ピット処分、中深度処分、地層処分に区分して処分するという方針の下に取組が進められています(図 6-6)。
処分方法のうち、トレンチ処分は地表から深さ70m未満の浅地中に定置して覆土する処分方法です。ピット処分は浅地中にコンクリートピット等の人工構築物を設置して埋設する処分方法です。中深度処分は地表から深さ70m以深の地下に設置された人工構造物の中に埋設する処分方法です。地層処分は人間の生活環境から十分離れた安定な地層中(地表から300m以深)に処分する方法です。また、放射線による障害の防止のための措置を必要としない放射能濃度のものについては、再利用又は一般の産業廃棄物として取り扱うことができる「クリアランス制度」の運用も行われています16。
図 6-6 放射性廃棄物の種類と処分方法(出典)内閣府作成
6-2-1-2 放射性廃棄物処分の安全確保
我が国では、放射性廃棄物の処分事業を行おうとする者は原子力規制委員会の許可を受ける必要があります。このため、必要な安全規制等の枠組みの整備が進められています(表 6-3)。原子力規制委員会は、ウラン廃棄物を含む全ての原子力施設から発生する廃棄物を対象とした第二種廃棄物埋設(浅地中処分(ピット処分及びトレンチ処分)及び中深度処分)の規制基準を2021年までに整備しました。中深度処分に関しては、2022年に第二種廃棄物埋設の廃棄物埋設地に関する「中深度処分の廃棄物埋設地に関する審査ガイド」の一部改正が行われました。なお、中深度処分の廃棄物埋設地の設計プロセスに係る審査ガイド案については、立地条件や詳細な施設設計が明らかになった時点で策定することになっています。
表 6-3 放射性廃棄物等に係る制度状況
(出典)内閣府作成
研究施設等廃棄物の発生源は多岐にわたることから、発生する放射性廃棄物を規制する法律も、原子炉等規制法、放射性同位元素等の規制に関する法律(放射性同位元素等規制法)、医療法等にまたがります。2017年の放射性同位元素等規制法の改正により、許可届出使用者及び許可廃棄業者は、特例として、放射性同位元素等の廃棄を原子炉等規制法に基づく廃棄事業者に委託できることとされ、原子炉等規制法と放射性同位元素等規制法の間で処理・処分の合理化が図られました。また、放射性廃棄物に含まれる重金属等の有害物質の安全規制の在り方について検討が行われています。
地層処分の規制に関しては、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(2015年閣議決定)で、「原子力規制委員会は、概要調査地区等の選定が合理的に進められるよう、その進捗に応じ、将来の安全規制の具体的な審査等に予断を与えないとの大前提の下、概要調査地区等の選定時に安全確保上少なくとも考慮されるべき事項を順次示すことが適当である。」とされています。これを受けて、原子力規制委員会は、2022年に「特定放射性廃棄物の最終処分における概要調査地区等の選定時に安全確保上少なくとも考慮されるべき事項」(考慮事項)(図 6-7)を決定しました。
図 6-7 「考慮事項」の概要(出典)原子力発電環境整備機構(NUMO),地層処分レポート(2022年9月号)(2022年)
6-2-1-3 処分場確保の状況
我が国の処分場確保の状況や処分実施主体は表 6-4のとおりです。発電所廃棄物等の処分実施主体は原子力事業者等、研究施設等廃棄物の処分実施主体は原子力機構となっています(処分実施主体が未定の処分方法を除く)。現在操業している放射性廃棄物の処分場として、実用発電用原子炉施設の操業中に発生した、放射能レベルが比較的低い低レベル放射性廃棄物を処分する日本原燃株式会社(日本原燃)の浅地中ピット処分場があります。
表 6-4 我が国における処分場確保の状況 発生源 処分方法 処分場確保の状況 処分実施主体 実用発電用
原子炉施設地層処分 未定注1 原子力発電環境整備機構(NUMO) 中深度処分 未定 未定 ピット処分 設置済み・操業中
(操業中に発生する放射性廃棄物のみ)日本原燃株式会社 トレンチ処分 未定 各原子力事業者 研究開発関連施設
(研究開発施設、
大学、医療機関、
民間企業等)地層処分 未定 未定 中深度処分注2,3 未定 国立研究開発法人
日本原子力研究開発機構ピット処分 未定 トレンチ処分 未定 注1:注2:注3:(出典)内閣府作成
6-2-2 高レベル放射性廃棄物の処理・処分
6-2-2-1 高レベル放射性廃棄物の処分方針
使用済燃料の再処理に伴い発生する放射能レベルの高い廃液は、ガラス原料と融かし合わせてキャニスタと呼ばれるステンレス製容器の中で固め、ガラス固化体にします(図 6-8)。ガラス固化体は高レベル放射性廃棄物に分類され、含有する放射性物質の崩壊熱により製造直後の表面温度が200℃を超えるため、発熱量が十分小さくなるまで専用の貯蔵施設で30年から50年間程度保管されます。
図 6-8 ガラス固化体の例(出典)高レベル放射性廃棄物,資源エネルギー庁ウェブサイト(2024年)
高レベル放射性廃棄物及び一部の低レベル放射性廃棄物(地層処分対象TRU廃棄物)は、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(最終処分法)により、地下300m以上深い安定した地層中に最終処分(地層処分)することとされています(図 6-9)。同法に基づき、最終処分事業の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO17)が設立されるとともに、処分地の選定プロセスが定められました。2023年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」の改定が閣議決定され、特定放射性廃棄物を発生させた現世代の責任として将来世代に負担を先送りしないよう、その対策を確実に進めることが不可欠であるとし、最終処分の実現に向け、政府一丸となって、かつ政府の責任で取り組んでいくことが示されました。また、同基本方針では「今後の技術その他の変化の可能性に柔軟かつ適切に対応する観点から、基本的に最終処分に関する政策や最終処分事業の可逆性を担保すること」とされています。
最終処分に必要な費用については、2000年以降、廃棄物発生者である発電用原子炉設置者等から処分実施主体であるNUMOへ納付され、その拠出金は、公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センターにより資金管理・運用されています。
図 6-9 地層処分の仕組み(出典)NUMO,高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会説明資料(2025年2月)
6-2-2-2 高レベル放射性廃棄物の最終処分事業を推進するための取組
高レベル放射性廃棄物の処分地選定に当たっては、既存の文献により過去の地震履歴等を調査する「文献調査」、ボーリング等により地上から地下の状況を調査する「概要調査」、地上からに加え地下施設を設置した上で地下環境を詳細に調査する「精密調査」といった段階的な調査を行うことが最終処分法により定められています(図 6-10)。
図 6-10 処分地選定のプロセス(出典)NUMO,高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会説明資料(2023年)
文献調査は、段階的な調査における最初の調査で、地域固有のデータ等に基づき評価していく法令上のプロセスとなっています。文献調査の流れは図 6-11のとおりです。
図 6-11 文献調査の流れ(出典)NUMO,地層処分に関する文献調査について(2023年)を基に内閣府作成
原子力委員会は、2015年の最終処分関係閣僚会議を受け、国民理解の醸成や科学的有望地の検討等の取組の進捗について評価を行っています。また、地層処分の仕組みや我が国の地質環境等について分かりやすく示すため、経済産業省は、客観的なデータに基づいて火山や断層といった地層処分に関して考慮すべき科学的特性を4色で塗り分けた「科学的特性マップ」(図 6-12)を2017年に公表しました。
図 6-12 科学的特性マップ(出典)資源エネルギー庁,科学的特性マップ
なお、このマップはそれぞれの地域が処分場所としてふさわしい科学的特性を有するかどうかを確定的に示すものではありません。処分場所を選定するには、科学的特性マップには含まれていない要素も含めて、法律に基づく3段階の調査(処分地選定調査)をしていく必要があります。
NUMOは、サイト調査の進め方、安全な処分場の設計・建設・操業・閉鎖、閉鎖後の長期間にわたる安全性確保に関し、これまで蓄積されてきた科学的知見や技術を統合し、サイトを特定しない一般的なセーフティケース18として説明した「包括的技術報告:我が国における安全な地層処分の実現-適切なサイトの選定に向けたセーフティケースの構築-(レビュー版)」を2018年に公表しました。これは、今後事業の進展に応じて作成されるサイト固有のセーフティケースの基盤として活用していくとされています。また、一般社団法人日本原子力学会特別専門委員会及び経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA19)によるレビューを受け、技術的な信頼性を確認しています。
なお、2025年2月に閣議決定された第7次「エネルギー基本計画」において、全国のできるだけ多くの地域に地層処分事業への関心を持っていただけるよう、対話型全国説明会の開催、地方公共団体への個別訪問など国主導の働きかけを強化する方針を示しています。
最終処分の実現に向け、政府全体における連携体制の構築など、更なる取組の具体化が進められています。2023年に開催された最終処分関係閣僚会議(第9回)では、高レベル放射性廃棄物の最終処分の実現に向けた政府を挙げた取組の強化を盛り込んだ、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」の改定が閣議決定されました(図 6-13)。
図 6-13 「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」改定のポイント(出典)経済産業省,高レベル放射性廃棄物の最終処分の実現に向けた政府を挙げた取組の強化について,第5回原子力委員会[資料3-1号](2023年)
6-2-2-3 高レベル放射性廃棄物の最終処分事業の状況
科学的特性マップの公表以降、経済産業省及びNUMOによって対話型全国説明会が実施されています。こうした活動の結果、地層処分に関心を持ち自主的に勉強や情報発信に取り組むグループ(NPO20や経済団体等)が、2024年12月時点で、全国で約210団体にまで増えてきています。引き続き対話活動を通じて地域理解に取り組むとともに、全国のできるだけ多くの地域で地層処分事業について関心を持っていただき、文献調査を実施できるよう、全国での対話活動が継続されています21。
このような中、北海道の寿都町(すっつちょう)、神恵内村(かもえないむら)において、2020年からNUMOが文献調査を開始しました。文献調査に際した対話活動については、参加者の意向を最大限尊重するとともに、活動の中で出た意見を踏まえて勉強会や視察見学会を開催するなど、地層処分について多くの住民に知っていただく機会を作りながら着実に行っています。2024年2月には、寿都町及び神恵内村の文献調査報告書案がNUMOから資源エネルギー庁の審議会22に報告、公表されました。その後NUMOは、審議会の評価を踏まえた報告書修正案を作成し、最終処分法に基づく法定プロセスとして同年11月に、NUMO理事長より寿都町長、神恵内村長、北海道知事に文献調査の報告書及び要約書を手交しました23。
また、佐賀県玄海町で文献調査の受入れを求める請願書が町議会に提出され、2024年4月に採択されました。同年5月、国から文献調査の実施を求める申入れが行われ、玄海町長が経済産業大臣と面談し、国からの文献調査申入れを受諾する意向を表明しました。同年6月、NUMOは国より事業計画変更を認可され、文献調査を開始しました。
なお、長崎県対馬市では、2023年に処分場の誘致に関する請願が市議会に提出され、市議会は受入れの促進を求める請願を賛成多数で採択しましたが、最終的には市長の判断により文献調査を受け入れない意向が表明されました。6-2-2-4 高レベル放射性廃棄物の処理・処分に関する研究開発
地層処分に関する研究は、地質環境調査・評価技術、工学・設計技術、処分場閉鎖後の長期安全性を確認するための安全評価技術等の多岐にわたる分野の技術を統合し、重複を避け効率的かつ効果的に実施する必要があります。2023年に、「地層処分研究開発に関する全体計画(令和5年度~令和9年度)」が資源エネルギー庁の地層処分研究開発調整会議から公表されました。同計画では今後5年間で取り組むべき研究開発に関する基本的な考え方と進め方が定められています。
ガラス固化に関しては、原子力機構はガラス固化施設の運転を行い、ガラス溶融炉の改良等の技術開発を進めています。また、日本原燃は、現行のガラス溶融炉でのトラブル対処で得た知見を反映させた新型ガラス溶融炉の開発やガラス素材の開発を進め、実機への導入判断に向けた検討を行っています。
地層処分に関しては、NUMOにおいて、処分事業の安全な実施、経済性及び効率性の向上等を目的とする技術開発が行われています。また、原子力機構等の関係機関により、深地層の科学的研究等の基盤的な研究開発が行われています。原子力機構では、北海道の幌延深地層研究センターにおいて、「令和2年度以降の幌延深地層研究計画」に基づき堆積岩を対象とした研究開発を進めています。また、岐阜県の東濃地科学センターにおいては、地質環境の長期安定性に関する研究開発を実施しています。さらに、茨城県東海村の核燃料サイクル工学研究所において、設計や評価に活用する評価モデルやデータベース等の技術基盤整備に関する研究開発を実施しています。なお、結晶質岩を対象とした岐阜県瑞浪市の研究施設は 2019年度末で調査研究を終了し、2022年に地下施設の埋め戻し及び地上施設の撤去が完了しました。2025年3月末時点では、埋め戻し後の地下水の環境モニタリング調査等を実施しています。
また、国際協力も進められています。2019年のG20軽井沢大臣会合での合意に基づき、世界の主要な原子力利用国政府が参加する「最終処分国際ラウンドテーブル」が立ち上げられました。2020年には、OECD/NEAにより政府の役割や各国の対話活動の知見・経験・好事例、研究開発協力の方向性等が盛り込まれた報告書24が公表されています。同ラウンドテーブルの報告書で掲げられた、研究開発で国際協力を強化すべき分野の具体化に向けた議論の場として、2022年に地層処分研究開発における地下研究所共同利用に関するNEA-経済産業省国際ワークショップ25が開催されました。また、原子力機構では、幌延深地層研究センター地下研究施設を活用した幌延国際共同プロジェクトを2023年より開始しました。同プロジェクトは2028年度末までを限度として実施予定です。6-2-2-5 高レベル放射性廃棄物の保管の現状
2025年3月末時点で、国内に保管されているガラス固化体は合計2,530本です(表 6-5)。このうち、日本原燃の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで保管されているガラス固化体1,830本は、我が国の原子力発電により生じた使用済燃料をフランス及び英国にて再処理した際に発生し、返還されたものです。今後、更に英国から約300本が返還される予定です。日本原燃の再処理施設で行われたアクティブ試験26の過程で製造されたガラス固化体346本については、再処理施設のガラス固化体貯蔵建屋に保管されています。
表 6-5 高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の保管量(2025年3月末時点) 施設名 2024年3月末時点の保管量(本) 2024年度内の発生量又は受入量(本) 2025年3月末時点の総保管量(本) 備考 原子力機構
東海再処理施設354 0 354 廃止措置の過程で、施設に貯蔵されている廃液の固化を順次実施中 日本原燃再処理事業所 再処理施設 346 0 346 アクティブ試験の過程で製造されたもの 高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター 1,830 0 1,830 (内訳)
フランスから返還:1,310本
英国から返還:520本合計 2,530 0 2,530 - (出典)内閣府作成
6-2-3 低レベル放射性廃棄物の処理・処分
6-2-3-1 低レベル放射性廃棄物の処理・処分の方針
低レベル放射性廃棄物は、発生源別に、発電所廃棄物、TRU廃棄物、ウラン廃棄物及び研究施設等廃棄物27に分類されます。
原子力施設等の運転、廃止措置を通じ、様々な放射性廃棄物が気体状、液体状、固体状で発生します。気体状の廃棄物は、放射性物質の濃度に応じて、放射能が減衰した後、高性能フィルタで放射性物質を取り除き、排気中の放射性物質濃度が規制基準値以下であることを確認した上で大気中に放出します。液体状の廃棄物は、ろ過、脱塩、あるいは蒸発濃縮処理を行います。濃縮廃液はドラム缶にセメント固化し、放射性固体廃棄物として処理します。蒸発させた蒸気を凝縮した蒸留水や放射性物質の濃度が極めて低いものについては、再利用あるいは放射性物質濃度が規制基準値以下であることを確認した上で施設外に放出します。固体状の廃棄物は、可燃性、難燃性、不燃性に仕分け、その性状により、焼却処理、圧縮処理、溶融処理、セメント充填固化処理等の減容・安定化処理の後、ドラム缶等に詰められます。
低レベル放射性固体廃棄物は、含まれる放射性核種の種類と量に応じて、主に放射能レベルが極めて低い廃棄物、放射能レベルの比較的低い廃棄物、放射能レベルの比較的高い廃棄物に区分し、それぞれトレンチ処分、ピット処分、中深度処分として適切に処分される方針です。ピット処分設備の構造例を(図 6-14)に示します。
図 6-14 低レベル放射性廃棄物埋設設備の構造(ピット処分)(日本原燃 1号廃棄物埋設地)(出典)埋設事業の構造,日本原燃ウェブサイト(2025年)
6-2-3-2 低レベル放射性固体廃棄物の保管の現状
焼却処理、圧縮処理、溶融処理、セメント充填固化処理等の減容・安定化処理が行われ、ドラム缶等に詰められた放射性固体廃棄物は各原子力施設等で保管されています。2024年3月末時点の我が国における低レベル放射性固体廃棄物の保管状況は以下のとおりです。
原子力発電所等については、原子力発電所で約707,100本(200リットルドラム缶換算値、以下同様)、加工施設(ウラン濃縮施設、ウラン燃料加工施設)で約67,500本、再処理施設で約59,900本、廃棄物管理施設では1,200本が、それぞれ保管されています。
研究開発施設等については、原子炉等規制法による規制を受ける施設では約350,700本が、放射性同位元素等規制法による規制を受ける施設では約257,700本が、それぞれ保管されています。6-2-3-3 低レベル放射性固体廃棄物の処分の取組と現状
原子力発電所の運転に伴い発生する低レベル放射性廃棄物のピット処分について、日本原燃低レベル放射性廃棄物埋設センターの1号埋設施設では、各発電所からの濃縮廃液、使用済樹脂、焼却灰等をドラム缶に収納し、セメント等で固めた廃棄体(均一・均質固化体)を受け入れています(図 6-15)。2号埋設施設では、雑固体廃棄物(金属、プラスチック類、保温材、フィルタ類等)をドラム缶に収納し、モルタルで固めた廃棄体(充填固化体)を対象として受け入れています。2025年3月末時点で、ドラム缶換算で合計約37万本の廃棄体を埋設しています。今後2号埋設施設が満杯となる見込みのため、原子力規制委員会から3号埋設施設の増設等に関する事業変更許可を2021年に取得しました。3号埋設施設は2025年3月から操業を開始しています。また、日本原子力発電株式会社は、東海発電所の解体に伴い発生する極低レベル放射性廃棄物を発電所敷地内でトレンチ処分する計画で、原子力規制委員会による審査が進められています。
注:写真左から1号埋設施設、2号埋設施設図 6-15 日本原燃 低レベル放射性廃棄物埋設地(出典)埋設事業の概要,日本原燃ウェブサイト(2025年)
中深度処分については、我が国ではまだ実施されておらず、具体的な管理の内容については、今後検討することとされています。
研究施設等廃棄物のトレンチ処分としては、原子力機構が、動力試験炉の解体で発生した放射能レベルが極めて低いコンクリート廃棄物を対象に、敷地内で処分の埋設実地試験を行った実績があります。この施設は1997年までの埋設段階終了後、埋設地の巡視点検等を行う保全段階の管理を2025年まで継続する予定です(図 6-16)。これからの本格的な研究施設等廃棄物の処分については、政府が2008年に策定した「埋設処分業務の実施に関する基本方針」に基づき、原子力機構は、「埋設処分業務の実施に関する計画」(2009年11月策定、2025年1月最終変更)において、埋設処分業務の対象とする放射性廃棄物の種類及び量の見込み等を示しています。また、原子力機構は、バックエンドロードマップにおいて、研究施設等廃棄物の埋設事業は放射能レベルの低いトレンチ処分及びピット処分から優先的に進め、第2期(2029年度から2049年度まで)での本格化を目指すとしています。この方針に基づき、処分場所の立地対応を進めるとともに、様々な種類の放射性核種が含まれる研究炉廃棄物中の放射能評価手法の確立に向けた検討等を進めています。
図 6-16 原子力機構の埋設実地試験の様子(出典)埋設実地試験,原子力機構ウェブサイト
6-2-3-4 低レベル放射性廃棄物の処理・処分に係る課題
低レベル放射性廃棄物については、今後、廃止措置等の進展に伴い増加が見込まれることから、早期の処分実現に向けた取組が必要です。廃止措置等によって発生する蒸気発生器や給水加熱器等の大型金属廃棄物は、現状では国内に処理施設等を有さず、処理が困難な状況となっています。そのため、関連する国際条約や再利用に係る海外の実例等を踏まえた制度改正により、2023年1月から、相手国の同意を前提に有用資源として安全に再利用される等の一定の基準を満たす場合に限り例外的に輸出することが可能となりました。2023年11月には制度改正以降初めて、大型機器の金属キャスク6基がリサイクル処理のため米国に輸出されました。
なお、原子力委員会は2021年12月に見解を取りまとめ、低レベル放射性廃棄物等の処理・処分に当たっての基本的な考え方や留意すべき事項等を示しました(図 6-17)。
図 6-17 「低レベル放射性廃棄物等の処理・処分に関する考え方について(見解)」の概要(出典)内閣府作成
6-2-4 廃棄物の再利用
6-2-4-1 クリアランス制度
原子力施設等の廃止措置に伴って発生する廃材等の大部分は、放射性物質によって汚染されていない、又は放射能濃度が極めて低く人の健康への影響がほとんどないことから放射性物質として扱う必要がないものです。このうち後者については「クリアランス制度」が適用されます。クリアランス制度とは、放射能濃度が基準値(0.01mSv/年28)以下であることを原子力規制委員会が確認したものを原子炉等規制法による規制から外し、再利用又は一般の産業廃棄物として処分することができる制度です。2020年にクリアランス制度に係る規則の改正により、全ての原子力施設から発生する資材及び廃棄物(ウラン廃棄物については金属くずのみ)がクリアランス制度の適用対象となりました。さらに、2021年の規則改正により、金属くず以外のウラン廃棄物についてもクリアランス制度の適用対象に追加されました。
6-2-4-2 再利用の実績
我が国では、これまで、原子力発電所、加工施設、一部の核燃料物質使用施設等の運転及び廃止措置・解体により発生した金属くず、コンクリート破片等にクリアランス制度が適用されています。2024年5月時点で、原子力施設から発生した金属3,315tとコンクリート3,866tがクリアランス29されており、その一部は再利用されています(図 6-18)。これまでのところ、我が国では、クリアランス制度が社会に定着するまでの間は、電気事業施設や発電所内の施設で再利用するなど、電気事業者等が自主的に再利用先を限定することで、市場に流通することがないよう運用されています。福井県では、高校生も参画して、新型転換炉原型炉ふげんから発生したクリアランス金属を再利用した照明灯を、県外を含めた学校や通学路に設置するなどの取組を行っています。
今後、廃止措置の本格化に伴い、クリアランス物の発生量の増加が見込まれる中、廃止措置の円滑な推進や資源の有効利用のため、再利用先の拡大とともにクリアランス制度が社会に定着することが必要です。原子力規制庁は、2020年から「クリアランスの測定及び評価の不確かさに関する事業者との意見交換会」を開催し、不確かさの取扱いについて理解を深め規制上の検討に役立てるための具体的な議論を行っています。
図 6-18 クリアランスされた金属の再利用例(出典)着実な廃止措置に向けた取組,第22回総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会[資料8](2021年)、福井県報道発表,クリアランス製品設置マップ(2024年)
また、放射性同位元素等規制法に基づく放射性同位元素の使用施設等から発生する放射性廃棄物についても、放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして放射能濃度についての確認に係る制度が設けられていますが、実績はありません。
なお、ドイツ、英国、スウェーデン等の諸外国では、クリアランス金属に関して既に制度化されており、実際に金属の再利用が行われています。例えばドイツにおいては、クリアランス金属は一般金属と区別されることなく同じ流通ルートで再利用されていることが報告されています。コラム ~国際的なバックエンドビジネス~
海外では放射性廃棄物の処理・処分をビジネスとしている企業も存在します。
スウェーデンのCyclife Sweden社注は1980年代から放射性廃棄物処理サービスを国内外に提供しています。特に金属処理施設では、金属製放射性廃棄物を除染してクリアランス金属にした上で、一般の金属市場に流通させています。除染によって生じた2次廃棄物や、除染してもクリアランス基準を満たさない廃棄物は所有者に返還されます。
米国のEnergy Solutions社は、Cyclife Sweden社と同様の金属リサイクルサービスのほか、放射性廃棄物の輸送・処分や原子力発電所の廃止措置も行っています。同社は原子力発電所で発生した放射性廃棄物だけではなく、病院や研究機関、政府機関で発生した放射性廃棄物も引き受け、自社のClive処分場で処分しています。廃止措置事業では、運転を終了した原子力発電所を引き取り、電気事業者の代わりに廃止措置を進めています。廃止措置で発生した放射性廃棄物は、一部を除きClive処分場で処分されます。
このようなバックエンドビジネスにより、資源の有効活用や放射性廃棄物の発生量低減が可能となります。また、専門的な企業が実施することで効率的に進めることが期待されます。我が国においても、福井県が原子力リサイクルビジネスとして、クリアランス集中処理事業を行う会社を嶺南地域に設立することを検討しています。注: フランスの国営企業であるフランス電力(EDF)グループがStudsvic社の放射性廃棄物処理事業を2019年に買収し、同グループ傘下のCyclife Sweden社として再編された
Energy Solutions社のClive処分場(出典)Energy Solutions, The Source, June2024, Issue 18(2024年)
脚注
- International Atomic Energy Agency
- 米国では核開発用原子力施設に適用した廃止措置を密閉管理と呼んでいる例がある
- IAEA, Decommissioning of Facilities, IAEA Safety Standards Series No. GSR Part 6, 2014.
- 第6章6-2-4「廃棄物の再利用」を参照
- Nuclear Reprocessing and Decommissioning facilitation Organization of Japan
- 国内における原子力発電所の廃止措置が本格化することを踏まえ、円滑かつ着実な廃炉の推進に向けて必要な措置を講じるために、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」によって「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律」が2023年5月に改正されたことにより、廃炉に関する業務が追加された
- 核燃料物質の取扱量が少ない「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令」第41条に掲げる核燃料物質を使用しない施設も対象
- https://www.jaea.go.jp/about_JAEA/backend_roadmap/
- 資料編5.1「我が国の原子力発電所の状況(2025年3月時点)」を参照
- Integrated Review Service for Radioactive Waste and Spent Fuel Management, Decommissioning and Remediation
- IAEA, Radiation Protection and Safety of Radiation Sources: International Basic Safety Standards, IAEA Safety Standards Series No. GSR Part 3, 2014
- 詳細は第6章6-2-3「低レベル放射性廃棄物の処理・処分」を参照
- Mixed Oxide(ウラン・プルトニウム混合酸化物)
- Trans Uranic waste:超ウラン核種(原子番号92のウランよりも原子番号が大きい元素)を含む放射性廃棄物
- 詳細は第6章6-2-2「高レベル放射性廃棄物の処理・処分」を参照
- 詳細は第6章6-2-4「廃棄物の再利用」を参照
- Nuclear Waste Management Organization of Japan
- 処分場の安全性が確かなものであることを科学技術的な論拠や証拠を多面的に駆使して説明した一連の文書
- Organization for Economic Co-operation and Development/Nuclear Energy Agency
- Non-Profit Organization(非営利団体)
- 第5章5-2-2「国による情報発信やコミュニケーション活動」を参照
- 総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会特定放射性廃棄物小委員会地層処分技術ワーキンググループ
- 2025年4月に報告書の縦覧が終了
- NEA Radioactive Waste Management Committee, International Roundtable on the Final Disposal of High-Level Radioactive Waste and Spent Fuel: Summary Report, NEA(2020年)
- NEA Radioactive Waste Management Committee, NEA and METI International Workshop on Joint Utilisation of Underground Research Laboratories for R&D Projects, Horonobe, Japan, 1-3 November 2022, NEA(2024年)
- 再処理工場では操業開始前に段階的に試験運転を行っており、アクティブ試験は通水作動試験や化学試験、ウラン試験という段階的な試験の一環として操業前の最終段階の試験として実施するもの
- 原子力機構の再処理施設から発生するもの、原子力機構及び民間のウラン燃料加工施設から発生するものを含む
- 1人あたりの自然放射線は日本平均で約2.1mSv/年。資料編8「放射線被ばくの線量比較図」参照
- 原子力規制委員会,クリアランス制度の実績, 原子力規制委員会ウェブサイト(2025年)


















