資料編
1 我が国の原子力行政体制
我が国の原子力の研究、開発及び利用(原子力利用)は、1956年以来、「原子力基本法」に基づき、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に自主的に推進されてきています。また、これを担保するため原子力委員会、原子力規制委員会、原子力防災会議が設置されています。
原子力委員会は、原子力利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため、内閣府に設置され、原子力利用に関する事項(安全の確保のうちその実施に関するものを除く)について企画し、審議し、及び決定することを担当しています。
原子力規制委員会は、原子力利用における安全の確保を図るため、環境省の外局として設置されています。
原子力防災会議は、内閣総理大臣を議長として、政府全体としての原子力防災対策を進めるため、関係機関間の調整や計画的な施策遂行を図る役割を担う機関として内閣に設置されています。
また、関係行政機関として、総務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省等があり、原子力委員会の所掌事項に関する決定を尊重しつつ、原子力行政事務が行われています。
このように、原子力行政機関は「推進行政」と「安全規制行政」を担当する機関が分離されています。
東電福島第一原発事故前後の原子力行政の体制
(出典)内閣府作成
2 原子力委員会
原子力委員会は、「原子力基本法」及び「原子力委員会設置法」(当時)に基づき、原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的運営を図る目的をもって、1956年1月1日、当時の総理府に設置されました(「国家行政組織法」第8条に基づく審議会等)。国務大臣をもって充てられた委員長と4名の委員(両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命)から構成され、設置時は、正力松太郎委員長、石川一郎委員、湯川秀樹委員、藤岡由夫委員、有澤廣巳委員の5名でした。なお、同年5月に科学技術庁が設置され、それ以降、委員長は科学技術庁長官たる国務大臣をもって充てることとされました。
1974年の原子力船「むつ」問題を直接の契機として設けられた原子力行政懇談会の報告を参考とし、原子力行政体制の改革・強化を図るため、1978年7月に「原子力基本法等の一部を改正する法律」が公布されました。この改正により、推進と規制の機能が分割され、複数の省庁にまたがる規制を一貫化し、責任体制の明確化が図られました。同時に、従来の原子力委員会が有していた安全の確保に関する機能を分離して、新たに安全の確保に関する事項について企画し、審議し、及び決定する原子力安全委員会が設置され、行政庁の行う審査に対しダブルチェックを行うこととするなど、規制体制の整備充実が図られました。
2001年1月には、中央省庁等改革により、原子力委員会が内閣府に設置されることとされました。それまで科学技術庁長官たる国務大臣をもって充てられていた委員長については、委員と同様に両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命することとされ、学識経験者が委員長に就任することとなりました。
その後、2011年3月に発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所(東電福島第一原発)事故を踏まえた安全規制体制の見直しにより、独立性の高い原子力規制組織である原子力規制委員会が2012年9月に設置され、原子力安全委員会の事務を含む原子力委員会が担ってきた事務の一部が原子力規制委員会に移管されました。
さらに、東電福島第一原発事故により原子力を巡る環境が大きく変化したことを踏まえ、原子力委員会の在り方の見直しのための有識者会議が開催され、2013年12月に報告書「原子力委員会の在り方見直しについて」が取りまとめられました。同報告書を踏まえ、2014年12月に「原子力委員会設置法の一部を改正する法律」が施行されました。これにより、原子力委員会の所掌事務は、原子力利用に関する政策の重要事項に重点化することとし、形骸化している事務を廃止・縮小するなどの所要の処置が講じられ、委員長及び委員2名から構成される新たな体制で原子力委員会が発足しました。
原子力委員会委員(2024年3月末時点)
原子力委員会委員長 上坂充
(元 東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授)
安全でサステナブルな原子力のために全力を尽くします。将来の原子力のため、人材育成が重要と考えます。原子力発電・放射線応用を含めた広い、かつ若い世代が夢を持てる原子力をわかりやすく説明していきます。原子力委員会委員 直井洋介
(元 日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター長)
脱炭素社会の構築に向け、原子力の役割は重要になってきています。原子力エネルギーを利用する上で、安全(Safety)、核セキュリティ(Security)、核不拡散(Safeguards)、いわゆる3Sの確保がとても大切です。原子力の利用と3S確保のために尽力します。原子力委員会委員 岡田往子
(東京都市大学理工学部客員教授)
高純度材料中の極微量なウラン及びトリウムの分析法の開発を行ってきました。3.11以降は火山性内陸湖沼の群馬県赤城大沼湖水中の放射性セシウムの動態研究を行っています。また、長年、初等中等教育向けの放射線教育や理工系女性研究者・技術者を増やす活動に力を注いできました。原子力分野で活躍する女性を増やす方策を考えていきたいと考えております上記のほか2022年9月より、青砥紀身参与、畑澤順参与が会務に参画。
3 原子力委員会決定等
(1) 声明・見解・談話等(2023年4月~2024年3月)
年月日 件名 2023.11.7 ロシアによる包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准撤回について(原子力委員会委員長談話) 2024.2.27 電気事業者等から公表されたプルトニウム利用計画について(見解) 2024.3.21 使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更について(見解)
(2) 原子炉等規制法等に係る諮問・答申(2023年4月~2024年3月)
諮問年月日 答申年月日 件名 2023.4.11 2023.5.10 四国電力株式会社伊方発電所の発電用原子炉の設置変更許可(3号原子炉施設の変更)について 2023.5.17 2023.6.8 京都大学複合原子力科学研究所の原子炉設置変更承認(研究用原子炉の変更)について 2023.5.24 2023.6.14 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構大洗研究所(南地区)の原子炉設置変更許可(高速実験炉原子炉施設の変更)について 2023.8.30 2023.9.20 東北電力株式会社女川原子力発電所の発電用原子炉の設置変更許可(2号発電用原子炉施設の変更)について 2023.9.13 2023.10.11 東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所の発電用原子炉の設置変更許可(6号及び7号発電用原子炉施設の変更)について 2023.9.20 2023.10.19 日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更許可について 2023.10.25 2023.11.15 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構大洗研究所(北地区)の原子炉設置変更許可[HTTR(高温工学試験研究炉)原子炉施設の変更]について 2023.11.22 2023.12.12 日本原子力発電株式会社東海第二発電所の発電用原子炉の設置変更許可(発電用原子炉施設の変更)について 2023.11.29 2023.12.21 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構新型転換炉原型炉ふげんの新型転換炉原型炉施設の原子炉設置変更許可について 2023.12.20 2024.1.23 九州電力株式会社川内原子力発電所の発電用原子炉の設置変更許可(1号及び2号発電用原子炉施設の変更)について 2023.12.20 2024.1.23 九州電力株式会社玄海原子力発電所の発電用原子炉の設置変更許可(3号及び4号発電用原子炉施設の変更)について 2024.1.17 2024.2.14 リサイクル燃料貯蔵株式会社リサイクル燃料備蓄センターにおける使用済燃料の貯蔵の事業の変更許可について
4 2020年度~2024年度原子力関係経費(当初予算)
5 我が国の原子力発電及びそれを取り巻く状況
(1)我が国の原子力発電所の状況(2024年3月時点)
(注)BWR:沸騰水型軽水炉
PWR:加圧水型軽水炉
ABWR:改良型沸騰水型軽水炉
APWR:改良型加圧水型軽水炉
ATR:新型転換炉
FBR:高速増殖炉
GCR:黒鉛減速ガス冷却炉
(出典)一般社団法人日本原子力産業協会「日本の原子力発電炉(運転中、建設中、建設準備中など)」、原子力規制委員会「廃止措置中の実用発電用原子炉」等を基に内閣府作成
(2) 我が国における核燃料物質在庫量
① 原子炉等規制法上の規制区分別内訳
(出典)第7回原子力規制委員会資料3 原子力規制庁「我が国における令和5年度(2023年)の保障措置活動の実施結果」(2024年)
② 供給当事国区分別内訳
(出典)第7回原子力規制委員会資料3 原子力規制庁「我が国における令和5年度(2023年)の保障措置活動の実施結果」(2024年)
③ 2022年における国内に保管中の分離プルトニウムの期首・期末在庫量と増減内訳
(出典)第25回原子力委員会資料第2号 内閣府「令和4年における我が国のプルトニウム管理状況」(2023年)
④ 2022年における我が国の分離プルトニウムの施設内移動量・増減量及び施設間移動量
(出典)第25回原子力委員会資料第2号 内閣府「令和4年における我が国のプルトニウム管理状況」(2023年)
⑤ 原子炉施設等における分離プルトニウムの保管等の内訳(2022年末時点)
(出典)第25回原子力委員会資料第2号 内閣府「令和4年における我が国のプルトニウム管理状況」(2023年)
⑥ プルトニウム国際管理指針に基づきIAEAを通じて公表する2022年末における我が国のプルトニウム保有量
(出典)第25回原子力委員会資料第2号 内閣府「令和4年における我が国のプルトニウム管理状況」(2023年)
(3) 核兵器不拡散条約(NPT)締約国とIAEA保障措置協定締結国(2024年3月時点)
(出典)国際連合軍縮部ウェブサイト「Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons」、IAEAウェブサイト「Safeguards agreements」、「Status List」、「Status of the Additional Protocol」、「List of Member States」、「Board of Governors」等を基に内閣府作成
(4) 原子力関連年表(2023年4月~2024年3月)
- 2023年
月日 国内 国際 4.1
- 福島県富岡町の復興拠点の避難指示が午前9時に解除
- 政府が福島国際研究教育機構(F-REI)を設立
米国で約30年ぶりの新規炉であるボーグル原子力発電所3号機が送電開始 4.5 国際原子力機関(IAEA)が東電福島第一原発から発生する多核種除去設備(ALPS)処理水の安全性レビュー(2回目)について報告書を公表 4.6 中国核工業集団公司(CNNC)とフランス電力(EDF)が低炭素エネルギー開発に関する覚書に署名 4.10 英国と韓国の両政府が原子力を含むクリーンエネルギーの開発加速やエネルギー供給の確保に向けた協力姿勢を示す共同宣言を発表 4.11 カナダのカメコ社とウクライナのエネルゴアトム社がウクライナの原子力発電所用の燃料をカナダで加工するための協定に署名 4.12 ハンガリーとベラルーシが、両国におけるロシアの新型原子炉「VVER-1200」プロジェクトに関する協力覚書を締結 4.13 ポーランドのPEJ社が同国初の大型原子炉建設に向けて、原則決定の発給を気候環境省に申請 4.14
- ポーランドのKGHM社が米国ニュースケール社製小型モジュール炉(SMR)の国内建設に向け、原則決定の発給を気候環境省に申請
- ロシアのロスアトム社と極東・北極圏開発公社がサハ共和国におけるロシア製SMRの建設に関する協力協定に調印
4.15 ドイツの最後の原子力発電所であるイザール原子力発電所2号機、ネッカー原子力発電所2号機、エムスラント原子力発電所の3基全てが永久閉鎖 4.16
- G7の気候・エネルギー・環境相会合で、5か国(日本、カナダ、フランス、英国、米国)が原子力は「エネルギー・セキュリティを確保できる安価かつ低炭素なエネルギー」との認識を示した閣僚共同声明を採択
- 同会合後に5か国が核燃料協定の締結を発表
4.17 カナダのニューブランズウィック州とサスカチュワン州の両政府がSMRの建設を念頭に置いた協力の強化で合意し、了解覚書を締結 4.18
- カナダ原子力安全委員会(CNSC)がテレストリアル社の一体型溶融塩炉のベンダー設計レビューのフェーズ2を完了
- カナダのアルバータ州政府と韓国原子力研究院が韓国製SMRの同州内での建設に向けて了解覚書を締結
4.20 米国ウルトラセーフ・ニュークリア社と韓国の現代エンジニアリング社及びSKエコプラント社がSMRを動力源とする水素製造施設の建設で提携 4.21
- 韓国水力原子力及びサムスン重工業とデンマークのシーボーグ社が、シーボーグ社の小型溶融塩炉技術を搭載した浮体式原子力発電所を開発するコンソーシアムを設立
- ロシア原子力規制当局がサハ共和国に同国初の陸上設置型SMRを建設する許可を付与
- ウクライナのエネルゴアトム社が米国ホルテック社製SMR「SMR-160」の初号機プロジェクトの実施に向け、同社と協力協定を締結
4.22
- 中国で海陽原子力発電所4号機の建設が開始
4.25 関西電力が原子力規制委員会に高浜発電所3、4号機の40年超運転に係る認可申請を実施 4.28
- 「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」の改定を閣議決定
- 原子力関係閣僚会議で「今後の原子力政策の方向性と行動指針」を決定
5.1 福島県飯舘村に設定されていた避難指示の一部が、午前10時をもって解除 フィンランドでオルキルオト3号機が営業運転を開始 5.3 西村経済産業大臣とフランスのエネルギー移行大臣が日本とフランスの原子力協力を深化させるための共同声明に署名 5.4
- 米国ウェスティングハウス社(WH社)が同社製大型炉「AP1000」の電気出力を30万kWに縮小したSMR「AP300」を発表
- IAEAがALPS処理水の安全性レビューに関する第5報告書を公表
5.8 原子力機構、京都大学、福井大学が「もんじゅ」サイトの新試験研究炉の計画を着実に進めるために協力協定を締結 5.9 米国原子力規制委員会(NRC)がニューメキシコ州における使用済燃料集中中間貯蔵施設建設計画に対し、建設・操業許可を発給 5.10 米国ヘリオン・エナジー社がマイクロソフト社と約5年後の供給開始を見込んで核融合発電による電力供給契約を交わしたと発表 5.11 米国ダウ社がX-エナジー社製小型高温ガス炉「Xe-100」の建設地点として、テキサス州のシードリフトを選定 5.12 日本政府らがALPS処理水の現状に関する韓国政府向け説明会と在京外交団等向けのテレビ会議説明会を開催 カナダ原子力公社(AECL)、カナダ原子力研究所(CNL)、グローバルファーストパワー社がマイクロモジュラー炉(MMR)実証炉の立地点として、AECLチョークリバー研究所のスタッフ用駐車場を選定したと発表 5.13 ベラルーシのベラルシアン原子力発電所2号機が初併入 5.16
- 北米最大の鉄鋼メーカーであるニューコア社がニュースケール社製SMRの導入に向けて同社と了解覚書を締結
- 米国エネルギー省(DOE)とカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)がSMR の安全な管理で両者間の協力強化に係る文書に調印
5.18 米国オクロ社が商業用の同社製マイクロ高速炉「オーロラ」を2基建設する立地点としてオハイオ州の南部を選定し、「オハイオ州南部の多様化イニシアティブ」と土地の利用に関する合意文書を締結 5.20 米国国務省が日本、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)の官民パートナーとともに、ルーマニアが進めている米国ニュースケール社製SMRの導入計画に共同で最大2億7,500万ドルを提供すると発表 5.23 ポーランド国家原子力機関がGE日立ニュークリア・エナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」がポーランドの関係法に基づく安全要件に適合していることを確認 5.24 国際原子力規制者会議がSMRの包括的な設計評価と許認可を効率的かつ効果的に進めていくため、グローバルな方式で積極的に取り組む方針を示した共同声明を発表 5.25 ポーランド初の大型原子炉として「AP1000」を建設予定のWH社とベクテル社の企業連合が、ポーランドのPEJ社を交えた3社間協力の主要原則について合意 5.31
- 「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」が成立
- 同法改正により「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律」が「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施及び廃炉の推進に関する法律」に名称を変更
- IAEAが「ALPS処理水の放射性核種分析における第1回目の分析機関間比較結果」に関する報告書を公表
- スロバキア電力が国内で稼働中の4基のロシア型PWR(VVER)向け燃料供給を確保するためフランスのフラマトム社と了解覚書を締結
- パキスタン原子力規制庁がカラチ原子力発電所の3号機の運転許可を付与
6.1 日本政府らがALPS処理水の現状に関する太平洋諸島フォーラム事務局及び専門家との対話を実施 WH社がマイクロ炉の宇宙利用を視野に宇宙用輸送サービス機器開発企業のアストロボティック社と了解覚書を締結 6.2 「福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案」が成立
- ALPS処理水の海洋放出に関するIAEAの包括レビューミッションが全日程を終了
- カナダのOPG社がポーランドで「BWRX-300」の建設を計画しているOSGE社を追加支援するための基本合意書に調印
6.6 令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)が閣議決定 6.7
- WH社とフィンランドのフォータム社が「AP1000」と「AP300」をフィンランド及びスウェーデンで建設する可能性を共同で探るための了解覚書を締結
- 中国科学院の上海応用物理研究所が実験用トリウム溶融塩炉「TMSR-LF1」の運転許可を取得したと発表
6.8
- 米国と英国が民生用原子力分野での高次の政府間連携協力を含む両国間の協力強化の枠組み「大西洋宣言」を発表
- OECD閣僚理事会が原子力分野におけるジェンダーバランスの改善に関する勧告を採択
6.9 フュージョンエネルギーなど、官民連携で推進していく9つの分野別戦略を盛り込んだ「統合イノベーション戦略2023」が閣議決定 DOEが使用済燃料集中中間貯蔵施設を地元の合意を得ながら建設していくために13のプロジェクト・チームに合計2,600万ドルを交付すると発表 6.12 スロバキア政府がSMRの国内建設を目指してスロバキア電力を始めとする複数のエネルギー分野の関係機関・企業と協力覚書を締結 6.13 ルーマニア国営原子力発電会社がルーマニアを含む中・東欧の全域で、米国ニュースケール社製SMRを建設していくために関係6社間の了解覚書を締結 6.14 WH社がブルガリアのコズロドイ原子力発電所における「AP1000」の建設に向け、KNPP-NB社と基本設計契約を締結 6.15
- NRCがケイロス・パワー社のフッ化物塩冷却高温炉実証炉「ヘルメス」の建設許可について、安全面の評価審査を完了
- ベルギーのトラクテベル社が、EDFが中心となって進めているSMR「NUWARD」開発への協力を強化・延長するためNUWARD社と枠組み協力協定を締結
6.20 CNNCとパキスタン原子力委員会がパキスタンのチャシュマ原子力発電所5号機(華龍一号)を48億ドルで建設する協定に署名 6.21 フランスのアシステム社とスペインのイドム社、スロバキアの原子力研究所がエンジニアリング合弁事業体「原子力エンジニアリング・アライアンス社」を設立 6.22 ノルウェーのノルスク・シャーナクラフト社がSMRの建設に向けてフィンランドのTVOニュークリア・サービシズ社から支援を受けるために基本合意書を締結 6.26 日本政府らがALPS処理水の取扱いに関する韓国政府向けテレビ会議説明会を開催 6.30 インドのカクラパー原子力発電所3号機が営業運転を開始 7.4
- IAEAがALPS処理水の取扱いの安全性に係るレビューを総括するIAEA包括報告書を公表
- 韓国産業通商資源部が国際的な次世代SMRの市場を韓国が主導するため、官民の総力を統合した「SMRアライアンス」を設立
7.5
- カナダのオンタリオ州政府がブルース・パワー社の既存敷地に最大4800MWeの新たな原子力施設を建設するための事前開発作業を開始すると発表
- WH社が開発中のマイクロ炉「eVinci」について、CNSCに対し、最初の事前設計レビューに関する書類を提出したと発表
7.7 原子力規制委員会が東京電力に福島第一原発のALPS処理水の海洋放出に係る設備について使用前検査終了証を交付 オンタリオ州政府がOPG社と協力して、ダーリントン発電所敷地内に追加の「BWRX-300」を3基、計4基の計画と認可を開始すると発表 7.11 ポーランドの気候環境省が、PEJ社が計画する同国初の大型炉建設について原則決定を発給 7.12 資源エネルギー庁が三菱FBRシステムズ提案の「ナトリウム冷却タンク型高速炉」を概念設計対象に、将来的にその製造・建設を担う中核企業として三菱重工業を選定 7.13
- ポーランドの気候環境省がKGHM社のニュースケール社のSMRをベースにした発電所を建設する計画を承認
7.14
- フランス大統領とインド首相が両国間の原子力協力をSMRと先進的モジュール炉の分野にも拡大する共同声明を発表
- 韓国の大宇建設がポーランドの建設会社ERBUD社と国内で原子力発電所の建設を含む新規プロジェクトを実施する覚書を締結
- 韓国産業通商資源部がポーランドのワルシャワでビジネスフォーラムを開催し、原子力など複数分野における両国企業の協力に向けた33件の了解覚書を締結
7.17 スロバキアのヤビス社が「AP1000」や「AP300」を建設する可能性を探るためWH社と2件の了解覚書を締結 7.19 日本原子力研究開発機構(原子力機構)と英国国立原子力研究所(NNL)のチームが英国の高温ガス炉実証炉プログラムの基本設計を行う事業者として採択
- 米国エナジー・ノースウエスト社がワシントン州内で「Xe-100」を最大12基建設するため、Xエナジー社と共同開発合意書に調印
- EDFが「NUWARD」の建設に向け予備的な許認可手続を開始
7.21 東芝エネルギーシステムズがUAEのNAWAHエナジー社とバラカ原子力発電所向けサプライチェーンの強化とネットゼロに向けた覚書を締結 7.25 資源エネルギー庁が高温ガス炉実証炉開発事業を担う中核企業として三菱重工業を選定 7.27 原子力委員会が「令和4年度版原子力白書」を決定 7.31
- 米国ジョージア・パワー社が米国初の「AP1000」であるボーグル原子力発電所3号機が営業運転を開始したと発表
- 米国の無炭素電力プロジェクト(CFPP)社が米国初のSMRをアイダホ国立研究所内で建設するため「限定工事認可」をNRCに申請
- 中国の国務院常務会議が寧徳原子力発電所5、6号機、石島湾・栄成拡建Ⅰ期原子力発電所1、2号機、徐大堡原子力発電所1、2号機の3サイト計6基の建設計画を承認
8.1 米国のボーグル原子力発電所2号機に濃縮度が最大で6%の次世代型事故耐性燃料の先行試験用燃料集合体を装荷する計画をNRCが承認 8.2 関西電力の高浜発電所1号機が発電を再開し、国内2基目の40年超運転を開始 8.3 欧州連合(EU)、ノルウェー、アイスランドが東電福島第一原発事故以降に日本産食品に課してきた輸入規制を撤廃 8.7 日本政府らがALPS処理水の取扱いに関する韓国政府向けの2回目のテレビ会議説明会を開催 8.9 スウェーデン放射線安全庁が原子力の利用拡大に伴い規制の枠組みや法整備など必要となる前提条件の特定調査を終えて最終報告書を気候・企業省に提出 8.19 カナダ政府がサスカチュワン州でサスクパワー社が進めているSMRの導入計画に対し最大7,400万カナダドルを提供すると発表 8.22 福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策に関する関係閣僚会議でALPS処理水の海洋放出の開始時期は「気象・海象条件に支障がなければ8月24日を見込む」ことを決定
- ポーランドのPEJ社が同国初の大型原子炉となる「AP1000」の建設サイトとして正式な承認を得るため「立地決定」申請書をポモージェの知事に提出
- ロシアのレニングラード原子力発電所2号機の廃炉に向けた燃料の取り出しを完了
8.24
- 東京電力がALPS処理水の海洋放出を開始
- 西村経済産業大臣がALPS処理水の海洋放出後の海水や魚のトリチウム濃度の分析結果の公表とともに、地元水産業の風評影響に備えた対応や漁業者らの生業の継続支援に取り組むとの談話を発表
8.25 スロバキアのヤビス社が国内でフランス製の大型炉やSMRの建設が決定した場合にEDFとの協力の基盤となる「枠組み協力協定」を同社と締結 8.27 環境省が実施しているALPS処理水に係る海域モニタリングについて、放出開始後の1回目の迅速分析結果を公開 8.28 米国オクロ社が「オーロラ」に装荷するHALEU燃料の製造施設建設に向けた協力でセントラス・エナジー社との協力拡大のため新たな了解覚書を締結 8.30 エジプト初となるエルダバ原子力発電所の建設計画について、エジプト原子力庁が原子力・放射線規制機関から4号機の建設認可を取得 9.4 日本政府は中国が日本産水産物の全面輸入停止を世界貿易機関(WTO)に通報したことを受け、即時撤廃を求める反論書面をWTOに提出 9.7
- 原子力機構とNNLが、包括的な高温ガス炉技術に係る協力覚書及び英国高温ガス炉実証炉プログラムの基本設計に係る実施覚書を締結
- 中部電力がSMR開発で米国ニュースケール社に出資を行うことを決定し、国際協力銀行が保有する一部株式の持分譲渡に関する契約を締結
世界原子力協会とUAE首長国原子力会社が「ネットゼロ原子力」イニシアティブを共同で設立 9.8 IAEAが東電福島第一原発近くの海水を独自にサンプリングして分析した結果、トリチウム濃度が日本の運用限界以下に留まっていることを確認したと発表 9.10 ウクライナのエネルゴアトム社が国内で稼働するVVER全15基のうち、リウネ原子力発電所1、2号機に、初めてWH社製燃料を装荷 9.11 UAEの首長国原子力会社とオーレン・シントス・グリーン・エナジー社が将来的に複数のSMRをポーランドとその他の欧州地域で協力して建設していくための了解覚書を締結 9.12
- ウクライナのエネルゴアトム社が「AP300」の導入に向けて、WH社と了解覚書を締結
- 米国ホルテック社が永久閉鎖となったパリセード原子力発電所を再稼働させるため、子会社を通じてウルバリン電力協同組合と長期の売電契約を締結
- 韓国の現代E&C社がポーランドでの新規原子力発電所建設プロジェクト推進に向け、ポーランドの建設産業雇用者協会や国立原子力研究センターなどと協力覚書を締結
9.18 日本とIAEAがALPS処理水放出の継続監視と安全評価に関する協定に署名 英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)がサイズウェルC原子力発電所建設プロジェクトに対し、民間部門からの投資募集プロセスを開始すると発表 9.19 カナダのアルバータ州がオイルサンド回収事業へのSMRの適用可能性調査に対して700万カナダドルを助成すると発表 9.20 関西電力の高浜発電所2号機が発電を再開し、国内3基目の40年超運転を開始 9.27 ポーランドのPEJ社が同国初の大型原子力発電所建設に向けてWH社とベクテル社の企業連合とエンジニアリング・サービス契約を締結 9.29
- 資源エネルギー庁が日本原子力産業協会と共同で原子力サプライチェーンの維持・強化を目的とした「原子力サプライチェーンプラットフォーム」のウェブサイトを公開
- 政府が東電福島第一原発事故に伴う帰還困難区域への住民帰還に向け、福島県の大熊、双葉両町が申請した「特定帰還居住区域」の計画を認定
10.3 フィンランドのヘレン社が同社の供給地域にSMRで無炭素な電力を供給するためにステディ・エナジー社と基本合意書を締結 10.5 東京電力がALPS処理水の2回目の海洋放出を開始 IAEAの専門家が2回目の海洋放出の対象の処理水中のトリチウム濃度が国の運用限界をはるかに下回っていることを確認 10.6 米国ホルテック社がパリセード原子力発電所の再稼働を目指し運転認可の再交付をNRCに申請 10.9 英国ニュークレオ社が小型鉛冷却高速炉の商業化に向けて、イタリアの機器製造企業であるトスト・グループと協力・投資協定を締結 10.10 フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社がオルキルオト原子力発電所1、2号機の運転期間を少なくとも10年延長し約70年とする可能性の分析調査を開始 10.11 米国セントラス・エナジー社がHALEU燃料を実証製造するため、HALEU製造用カスケードでウランの濃縮役務を開始 10.12 英国シェフィールド・フォージマスターズ社が米国X-エナジー社が英国内で計画している「Xe-100」建設に協力するため、同社及びキャベンディッシュ・ニュークリア社と協力覚書を締結 10.16
- IAEAの海洋環境研究所の専門家が10月23日までの日程で東電福島第一原発周辺の海洋試料を採取し分析を行う調査を開始
- カナダ政府とノバスコシア州及びニューブランズウィック州の両政府がSMR等の活用を含めた政策を共同で進めていくとの声明を発表
10.17 米国航空宇宙局がモジュール式マイクロ原子炉を開発中のウルトラセーフ・ニュークリア社と、地球と月の間の宇宙領域の探査で用いる核熱推進エンジンの開発契約を締結 10.20 原子力規制委員会が実施しているALPS処理水に係る海域モニタリングについて、放出開始後の1回目のモニタリング結果を公開 10.23 DOEが国内でマイクロ原子炉を開発中のWH社、ウルトラセーフ・ニュークリア社、ラディアント社と、総額390万ドルの基本設計・実験機設計契約を締結 10.25 米国X-エナジー社が先進的マイクロ原子炉の商業化に向けた支援を得るためDOEと協力協定を締結 10.31 原子力機構、三菱重工業、三菱FBRシステムズ、米国テラパワー社が2022年1月に締結した覚書を高速炉の実証計画を含むよう拡大 11.1 原子力規制委員会が九州電力の川内原子力発電所1、2号機について、運転開始から60年までの運転期間延長を認可 ベラルーシの原子力発電所の2号機が営業運転を開始 11.7 原子力委員会がロシアによる包括的核実験禁止条約の批准撤回について委員長談話を発表
- 欧州委員会(EC)がEU域内でSMRの建設を加速し、堅固なSMRサプライチェーンを確立するため、「欧州SMR産業アライアンス」を設置すると発表
- オランダのULCエナジー社が同国内で進めている英国ロールス・ロイスSMR社製SMRの建設計画に、同国のBAMインフラ・ネーデルランド社が加わり、3社が基本合意書に調印
11.8
- ベルギー原子力研究センター、イタリアの経済開発省新技術・エネルギー・持続可能経済開発局及びアンサルド・ヌクレアーレ社、ルーマニア国営原子力技術会社、WH社の5者が鉛冷却高速炉方式のSMR建設を加速することで、了解覚書を締結
- 米国のユタ州公営共同事業体(UAMPS)とニュースケール社が同社製SMRの初号機建設を目指した「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」の打切りを発表
- DOEとDESNZが核融合エネルギーの実証と商業化を加速するための新たな戦略的パートナーシップを発表
- DOEの同位体プログラムとQSAグローバル社がイリジウム192の国内生産を開始するための共同製品開発契約を発表
11.10 ノルウェーのハルデン自治体とノルスク・シャーナクラフト社、エストフォル・エネルギー社がハルデンでのSMR建設の実現可能性を探るため、共同でハルデン・シャーナクラフト社を設立 11.13 ロシアのノリリスク・ニッケル社がノリリスク産業地区における電力供給源としてSMRの利用可能性を探るためロスアトム社と合意文書に調印 11.15 経済産業省中小企業庁がALPS処理水の海洋放出に伴う輸出先の国又は地域における輸入規制措置等の影響を踏まえたセーフティネット保証2号を発動 米国ウルトラセーフ・ニュークリア社がフィリピンで1基以上のMMRを建設する可能性を探るためマニラ電力と協力協定を締結 11.16 スウェーデン政府が原子力発電所の新設に向けたロードマップを公表 11.20 もんじゅサイトに設置する新たな試験研究炉に係る第1回コンソーシアム会合を開催 11.24 ポーランド気候環境省が、PGE PAK原子力エネルギー社が同国内で計画している韓国製大型炉建設プロジェクトに対し原則決定を発給 11.27 カナダのサスカチュワン州政府が「eVinci」の州内建設に向けて、サスカチュワン研究評議会に8,000万カナダドルを交付すると発表 11.29 三菱重工業が、原子力機構が実施主体として推進する試験研究用原子炉の設計、製作及び据付けを実施する主契約企業に選定され、原子力機構との間で基本契約を締結 スウェーデン議会が現在の稼働原子炉数の制限を撤廃する法案を承認 11.30 福島県富岡町の小良ヶ浜地区・深谷地区内の特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、県内6町村に設けられた復興拠点の避難指示解除が完了 12.1 米国ホルテック社が同社製SMR「SMR-300」をパリセード原子力発電所敷地内で建設すると発表 12.2 COP28で日本、米国、英国、フランス、カナダなど22か国が、パリ協定の目標達成に向け、世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させる宣言文書に署名 12.5
- COP28で「ネットゼロ原子力」イニシアティブが発起人となり、2050年までに原子力発電設備容量を3倍にする目標に向け最善を尽くすことを誓う「Net Zero Nuclear Industry Pledge」が、世界120社・機関の賛同を得て署名
- UAE首長国原子力会社がSMRやマイクロ原子炉の導入に向けてGEH社、テラパワー社、WH社の各社と協力覚書を締結
- OECD/NEAがネットゼロへ向けSMR導入を加速させるイニシアティブ「Accelerating SMRs for Net Zero」を発表
- 米国国務省が米国製先進的原子炉システムの輸出・建設を促進するため、米国輸出入銀行を通じた財政支援策を講じると発表
12.6 中国国家能源局がモジュール式高温ガス炉の実証炉HTR-PMが商用運転を開始したと発表 12.7
- 英国原子力規制局(ONR)が「SMR-300」の包括的設計審査を開始したと発表
- ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー社が国内6地点における合計24基の「BWRX-300」建設計画に、気候環境省が原則決定を発給したと発表
12.11 UAE首長国原子力会社がSMRやマイクロ原子炉など、先進的な原子炉技術を開発している米国と英国の企業3社と協力覚書を締結 12.12
- IAEAが東電福島第一原発近傍における海水・海底土や福島県の水産物の採取による海洋モニタリングに関する2022年報告書を公表
- トルコのアックユ原子力発電会社が、トルコ原子力規制庁が同国初の商業炉となるアックユ原子力発電所1号機の起動許可を発給したと発表
- NRCが「ヘルメス」に対し、第4世代原子炉としては初の建設許可を発給すると発表
12.13
- ベルギーのエンジー社がドール4号機とチアンジュ3号機の運転期間を2035年まで10年延長する計画の諸条件についてベルギー政府との最終合意文書に調印
- カナダのニューブランズウィック州政府が新しいエネルギー戦略の中で2035年までに州内のポイントルプロー原子力発電所内で合計60万kWのSMRを建設すると表明
12.17 ウクライナのエネルゴアトム社がフメリニツキー原子力発電所5号機として「AP1000」を建設するため、WH社と原子炉系統の購入契約を締結 12.19 スウェーデン気候・企業省が原子力の大規模な拡大政策を円滑に進めるため原子力分野におけるフランスのエネルギー移行省との長期的協力に関する意向宣言書に署名 12.20 環境省が福島県大熊町と双葉町の特定帰還居住区域で初の除染作業を開始 12.21 韓国で4基目となる「APR1400」を採用した新ハヌル原子力発電所2号機による送電を開始 12.27 原子力規制委員会が東京電力の柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案に伴う特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令を約2年8か月ぶりに解除
- 2024年
月日 国内 国際 1.7 英国政府が3億ポンドを投じてHALEU燃料の製造計画を立ち上げると発表 1.9 英国のEDFエナジー社が今後3年間で13億ポンドを投じて運転中の5サイト計9基の運転期間を延長することを発表 1.16 政府が東電福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域の避難指示解除を可能にする「特定帰還居住区域」を福島県浪江町に設定 1.17 米国X-エナジー社がCNSCによる「Xe-100」に対する「ベンダー設計審査」で主要部分の第1、第2段階が完了したことを発表 1.23 原子力機構と電力中央研究所、三菱重工業、三菱FBRシステムズ、米国アルゴンヌ国立研究所が高速炉の金属燃料等に関する共同研究契約に合意 1.24 電力広域的運営推進機関が脱炭素電源への新規投資を促進する新たな入札制度「長期脱炭素電源オークション」の初回応札を開始 1.25 GEH社が英国における「BWRX-300」開発に対してDESNZから総額3,360万ポンドの補助金を獲得したことを発表 1.30 復興庁が浪江町に設置したF-REIの施設整備の指針となる「施設基本計画」を策定 IAEAがALPS処理水に関し、海洋放出開始後初となるIAEA安全性レビューミッションの報告書を公表 2.6 ECが欧州で2030年代初頭までにSMRの展開を加速することを目的に「欧州SMR産業アライアンス」を設立 2.8 WH社が英国のコミュニティ・ニュークリア・パワー社と「AP300」の4基建設で合意したことを発表 2.12 米国とブルガリアがコズロドイ原子力発電所の新設計画などの原子力プログラムの実施で政府間協定を締結 2.20 インドでカクラパー4号機が送電を開始 2.21 フランスの経済・財務・産業及びデジタル主権相とブルガリアのエネルギー相が、原子力建設計画、SMR、欧州サプライチェーン開発などの原子力分野で二国間協力を構築する意向表明書に署名 2.29 カナダ政府がブルース発電所敷地内に4,800 MWeの原子炉を建設する可能性を調査するために5,000万カナダドルの支援を発表 3.1 米国のボーグル原子力発電所4号機が送電開始 3.4 インド原子力省が同国初の高速増殖原型炉「PFBR」で燃料装荷を開始したと発表 3.12 齋藤経済産業大臣がIAEAのグロッシー事務局長と会談し、ALPS処理水の海洋放出の安全性及びIAEAによる安全性レビューについて議論 3.14 ロシアでレニングラード第2原子力発電所3号機が着工 3.18 ケニア国営企業の原子力発電・エネルギー機構が今後5年間の原子力開発計画の指針となる「2023-2027年戦略計画」を発表 3.21 IAEAとベルギー政府が原子力に特化した史上初の首脳会議である「原子力エネルギー・サミット」を開催 3.23 UAEでバラカ原子力発電所4号機が送電を開始 3.27 DOEがパリセード原子力発電所の再稼働に向けホルテック社に対して15.2億ドルを上限とする条件付融資保証を決定 3.28 原子力機構が高温工学試験研究炉で安全性実証試験に成功
6 世界の原子力発電の状況
(1) 世界の原子力発電の状況(2024年4月時点)
(注1)原子力発電比率は、総発電量に占める原子力による発電量の割合。
(注2)WNAの集計によるデータであり、5(1)「我が国の原子力発電所の状況(2024年3月時点)」に示した日本原子力産業協会のデータに基づく表の基数と整合しない部分がある。
(出典)世界原子力協会(WNA)ウェブサイト「World Nuclear Power Reactors & Uranium Requirements」を基に内閣府作成
(2)世界の原子力発電所の運転開始・着工・閉鎖の推移(2010年以降)
(注1)2013年に建設が開始された米国の4基のうち2基は、その後建設が中止された
(注2)中:中国、印:インド、露:ロシア、日:日本、伯:ブラジル、仏:フランス、韓:韓国、パキ:パキスタン、独:ドイツ、英:英国、加:カナダ、米:米国、瑞典:スウェーデン、バングラ:バングラデシュ、西:スペイン、台:台湾、瑞西:スイス
(出典)日本原子力産業協会「世界の最近の原子力発電所の運転・建設・廃止動向」、IAEA-PRIS(Power Reactor Information System)を基に内閣府作成
(3) 世界の原子力発電所の設備利用率の推移
(出典) IAEAウェブサイト「Power Reactor Information System (PRIS)」を基に内閣府作成
(4) 世界の原子炉輸出実績
輸出元の国名 炉型 輸出先の国・地域名(最初の原子炉の運転開始年) 米国 沸騰水型軽水炉(BWR) イタリア(1964)、オランダ(1969)、インド(1969)、 日本(1970)、スペイン(1971)、スイス(1972)、 台湾(1978)、メキシコ(1990) 加圧水型軽水炉 (PWR) ベルギー(1962)、イタリア(1965)、ドイツ(1969)、スイス(1969)、日本(1970)、スウェーデン(1975)、韓国(1978)、スロベニア(1983)、台湾(1984)、ブラジル(1985)、英国(1995)、中国(2018) 英国 黒鉛減速炭酸ガス冷却炉(GCR) イタリア(1964)、日本(1966) フランス GCR スペイン(1972) PWR ベルギー(1975)、南アフリカ共和国(1984)、韓国(1988)、中国(1994)、フィンランド(2022) カナダ カナダ型重水炉(CANDU炉) パキスタン(1972)、インド(1973)、韓国(1983)、アルゼンチン(1984)、ルーマニア(1996)、中国(2002) ドイツ PWR オランダ(1973)、スイス(1979)、スペイン(1988)、ブラジル(2001) 加圧水型重水炉 アルゼンチン(1974) スウェーデン BWR フィンランド(1979) ロシア(旧ソ連) 黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(RBMK) ウクライナ(1978)、リトアニア(1985) ロシア型加圧水型軽水炉(VVER) ブルガリア(1974)、フィンランド(1977)、アルメニア(1977)、スロバキア(1980)、ウクライナ(1981)、ハンガリー(1983)、中国(2007)、イラン(2013)、インド(2014)、ベラルーシ(2020) 中国 PWR パキスタン(2000) 韓国 PWR アラブ首長国連邦(2020) (出典)IAEA「Country Nuclear Power Profiles 2022」、「Power Reactor Information System (PRIS)」を基に内閣府作成
(5) 世界のMOX燃料利用実績(2024年1月1日時点)
(出典)一般財団法人日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」(2024年)
(6) 世界の高レベル放射性廃棄物の処分場
注1: 処分量は、異なる時期に異なる算定ベースで見積もられている可能性や、処分容器を含む値の場合がある
注2: 現行の法律では、処分地はネバダ州ユッカマウンテン、処分実施者はエネルギー長官と定められている
(出典)資源エネルギー庁「諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について」(2024年)を基に内閣府作成
(7) 世界の低レベル放射性廃棄物の処分の状況
注1: 一部はSTUKが管理中
注2: 国に譲渡された一部の廃棄物についてSTUK がオルキルオト低中レベル放射性廃棄物処分場(VLJ)にて貯蔵
注3: 拡張計画が2021年12月に承認
注4: 操業中の廃棄物はカメコ社とオラノカナダ社が管理中
注5: 商業活動起源
注6: クラスAのみ
注7: 原子力法第11条e.(2)に定義される廃棄物(ウラン鉱滓等)
(出典)公益財団法人 原子力環境整備促進・資金管理センター「諸外国における放射性廃棄物関連の施設・サイトについて」(2024年)を基に内閣府作成
(8) 北米
① 米国
米国は、2024年3月時点で94基の原子炉が稼働する、世界第1位の原子力発電利用国であり、2022年の原子力発電比率は約18%です。2023年7月には、ボーグル原子力発電所3号機が商用運転を開始。4号機も2024年3月に送電網に接続されました。
米国では、シェールガス革命により2009年頃から天然ガス価格が低水準で推移していることや、連邦政府や州政府の支援も背景に再生可能エネルギーによる発電が拡大していることも背景として、原子力発電の経済性が相対的に低下しています。こうした状況は電気事業者の原子力発電の継続や新増設に関する意思決定にも影響を及ぼしています。連邦議会では、原子力発電に対しては、共和・民主両党の超党派的な支持が得られています。2021年1月に就任した民主党のバイデン大統領は、気候変動対策の一環として先進的原子力技術等の重要なクリーンエネルギー技術のコストを劇的に低下させ、それらの商用化を速やかに進めるために投資を行っていく方針です。高速炉や小型モジュール炉(SMR)等の開発にも積極的に取り組み、エネルギー省(DOE)が「原子力分野のイノベーション加速プログラム」(GAIN)や「先進的原子炉実証プログラム」(ARDP)等を通じて開発支援を行っており、多数の民間企業も参画しています。連邦政府の支援も受け、ニュースケール・パワー社が開発しているSMRは原子力規制委員会(NRC)による設計認証を受け、2023年1月に連邦官報において設計認証規則が公表されています。また、低濃縮ウラン及び高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)供給のロシアへの依存の脱却を図るために、議会において、国内燃料供給を確立するための議論が進められています。さらに、バイデン政権では、米国内にとどまらず原子力分野における国際協力も進められています。2021年4月には、国務省が気候変動対策の一環として国際支援プログラム「SMR技術の責任ある利用のための基礎インフラ」(FIRST)を始動しました。同年11月に国務省が公表した、原子力導入を支援する「原子力未来パッケージ」では、米国の協力パートナーとして、ポーランド、ケニア、ウクライナ、ブラジル、ルーマニア、インドネシア等が挙げられています。
米国における原子力安全規制は、NRCが担っています。NRCは、我が国の原子力規制検査の制度設計においても参考とされた、稼働実績とリスク情報に基づく原子炉監視プロセス(ROP)等を導入することで、合理的な規制の実施に努めています。2019年1月には、NRCに対し予算・手数料の適正化や先進炉のための許認可プロセス確立を指示する「原子力エネルギーイノベーション・近代化法」(NEIMA)が成立しており、規制の側からも既存炉・先進炉の開発を支援する取組が進むことが期待されています。また、産業界の自主規制機関である原子力発電運転協会(INPO)や、原子力産業界を代表する組織である原子力エネルギー協会(NEI)も、安全性向上に向けた取組を進めています。
既存の原子力発電所を有効に活用するため、設備利用率の向上、出力の向上、運転期間延長の取組も進められています。連邦議会では、2021年11月に成立したインフラ投資・雇用法において、経済的な困難によって運転中の原子力プラントが早期閉鎖するのを防ぐための運転継続支援プログラムが導入され、2022年8月に成立したインフレ抑制法には、運転中のプラントを対象とした税制優遇措置が盛り込まれています。運転期間延長については、2019年12月にターキーポイント原子力発電所3、4号機が、2020年3月にピーチボトム2、3号機が、2021年5月にサリー1、2号機が、NRCから2度目となる20年間の運転認可更新の承認を受け、80年運転が可能となりました1。このほか、2024年3月末時点で、ノースアナ1、2号機、ポイントビーチ1、2号機、オコニー1、2、3号機、セントルーシー1、2号機、モンティセロ、サマー、ブラウンズフェリー1、2、3号機について、NRCが2度目の運転認可更新を審査中です。
1977年のカーター民主党政権が使用済燃料の再処理を禁止したことを受けて、米国では再処理は行われておらず、使用済燃料は事業者が発電所等で貯蔵しています。最終処分場については、民生・軍事起源の使用済燃料や高レベル放射性廃棄物を同一の処分場で地層処分する方針に基づき、ネバダ州ユッカマウンテンでの処分場建設が計画され、ブッシュ共和党政権期の2008年6月にDOEがNRCに建設認可申請を提出しました。2009年に発足したオバマ民主党政権は、同プロジェクトを中止する方針でした。2017年に誕生したトランプ共和党政権は一転して計画継続を表明しましたが、2018から2021会計年度にかけて連邦議会は同計画への予算配分を認めませんでした。バイデン政権下で公表された2022会計年度から2025会計年度にかけての予算要求でも、ユッカマウンテン計画を進めるための予算は要求されていません。
② カナダ
カナダは世界有数のウラン生産国の一つであり、世界全体のウラン鉱石採掘量の約15%を占めています。カナダでは、2024年3月時点で19基の原子炉がオンタリオ州(18基)とニューブランズウィック州(1基)で稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約13%です。原子炉は全てカナダ型重水炉(CANDU炉)で、国内で生産される天然ウランを濃縮せずに燃料として使用しています。
州政府や電気事業者は、現在や将来の電力需要への対応と気候変動対策の両立手段として原子力利用を重視しており、近年は、既存原子炉の改修・寿命延長計画を進めています。オンタリオ州では10基の既存炉を段階的に改修する計画で、2020年6月にはダーリントン2号機、2023年7月には同3号機が改修工事を終え、運転を再開しました。また、2022年2月に同1号機、2023年7月には同4号機の改修工事が開始されています。さらに、オンタリオ州では原子炉の新増設の動きもあります。2023年7月にオンタリオ州政府は、約30年ぶりとなる大型炉(最大480万kW分)をブルース原子力発電所で建設するため、ブルース・パワー社と準備作業を開始すると発表しました。
一方で、カナダはSMRの研究開発に力を入れています。2018年11月には、州政府や電気事業者等で構成される委員会によりSMRロードマップが策定され、SMRの実証と実用化、政策と法制度、公衆の関与や信頼、国際的なパートナーシップと市場の4分野の勧告が提示されました。ロードマップの勧告を実現に移すために、2020年12月には連邦政府がSMR行動計画を公表しました。同計画では、2020年代後半にカナダでSMR初号機を運転開始することを想定し、政府に加え産学官、自治体、先住民や市民組織等が参加する「チームカナダ」体制で、SMRを通じた低炭素化や国際的なリーダーシップ獲得、原子力産業における能力やダイバーシティ拡大に向けた取組を行う方針です。SMR行動計画の枠組みで出力30万~40万kWの発電用SMRベンダーの選定を進めていたオンタリオ・パワー・ジェネレーション社は、2021年12月に、米国GE日立ニュークリア・エナジー社(GEH社)のBWRX-300を選定したことを公表し、2022年10月には、安全規制機関であるカナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可申請を提出しました。オンタリオ・パワー・ジェネレーション社は、早ければ2028年にカナダ初の商業用SMRとして完成させ、さらに3基のSMRを追加で建設することを目指しています。また、2022年6月にはサスカチュワン州のサスクパワー社も、建設するSMRとしてBWRX-300を選定したことを公表しています。こうした取組のほか、カナダ原子力研究所(CNL)は、同研究所の管理サイトにおいてSMRの実証施設建設・運転プロジェクトを進めています。さらに、CNSCは、事業者による建設許可等の申請に先立ち、予備的な設計評価サービスであるベンダー設計審査を進めています。
カナダでは、使用済燃料の再処理は行わず高レベル放射性廃棄物として処分する方針をとっており、使用済燃料は原子力発電所サイト内の施設で保管されています。地層処分に関する研究開発は1978年に開始され、1998年には、政府が設置した環境評価パネルが、地層処分は技術的には可能であるものの社会受容性が不十分であるとする報告書を公表しました。このような経緯を踏まえ、2002年には「核燃料廃棄物法」が制定され、処分の実施主体として核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立されました。NWMOが国民対話等の結果を踏まえて使用済燃料の長期管理アプローチを提案し、政府による承認を経て、同アプローチに基づく処分サイト選定プロセスが進められており、2024年3月時点ではオンタリオ州の2自治体(イグナス、サウスブルース)を対象として現地調査が実施されています。2024年秋には、この2自治体のうちから1か所が、好ましいとされるサイトとして選定される予定です。
(9) 欧州
欧州連合(EU)では、欧州委員会(EC)が2019年12月に、2050年までにEUにおける温室効果ガス排出量を実質ゼロ(気候中立)にすることを目指す政策パッケージ「欧州グリーンディール」を発表しました。これに基づき、2021年6月に「欧州気候法」が改正され、2030年までの温室効果ガス排出削減目標が、従来の1990年比40%減から55%以上減に強化されました。
温室効果ガスの排出削減方法やエネルギーミックスの選択は各加盟国の判断に委ねられており、原子力発電の利用方策について、EUとして統一的な方針は示されていません。しかし、EUでは数年間の検討を経て、2023年1月1日に、気候変動適応・緩和などの環境目的に貢献する持続可能な経済活動を示す「EUタクソノミー」に原子力に関する活動を含める規則が発効されました。この規則では、原子力を持続可能な経済活動と認定するに当たって、2050年までの高レベル放射性廃棄物処分場操業に向けた詳細な文書化された計画があること、全ての極低レベル、低レベル、中レベル放射性廃棄物について最終処分施設が稼働していること等の条件が設けられています。
また、ECは、低炭素エネルギー技術開発及び域内の原子力安全向上の側面から、原子力分野における技術開発を推進する方針を示しています。これに基づき、EUにおける研究開発支援制度である「ホライズン2020」の枠組みにおいて、EU加盟国の研究機関や事業者等を中心に立ち上げられた研究開発プロジェクトに対し、資金援助が行われてきました。2021年からは、後継となる「ホライズン・ヨーロッパ」の枠組みでの取組が行われています。
2023年3月にはECが、ロシアによるウクライナ侵略等の影響によるエネルギー価格高騰への対策及び低炭素エネルギーの普及拡大支援を目的とした電力市場改革法案を発表し、同年12月に、欧州議会・理事会が同法案の最終案で合意しました。同法案では低炭素電源に対し、加盟国政府が財政的な支援を行う場合のルール等を定めています。対象となる低炭素電源には、再生可能エネルギーに加え、原子力発電も含まれます。同法は2024年中に最終的に成立する見込みです2。
① 英国
英国では、2024年4月時点で9基の原子炉が稼働中であり、原子力発電比率は約14%です。
1990年代以降は原子炉の新設が途絶えていましたが、北海の油田・ガス田の枯渇や気候変動が問題となる中、英国政府は2008年以降一貫して原子炉新設を推進していく政策方針を掲げています。2022年4月に公表された「英国エネルギー安全保障戦略」では、長期的には2050年までに原子力発電設備容量を2022年時点の3倍となる最大2,400万kWに増強し、原子力発電比率を25%に引き上げるとしています。また、短・中期的目標として、2030年までには最大8基の原子炉建設を承認するとしています。2024年1月に公表された「民生原子力:2050年へのロードマップ」では、2030年から2044年までの間の5年ごとに300万kWから700万kWの導入を目指すことを掲げています。さらに、後述するサイズウェルC原子力発電所建設計画に続く大型炉建設についても検討するとしています。
2024年3月時点では、フランス電力(EDF)と中国広核集団(CGN)の出資により、ヒンクリーポイントC原子力発電所(欧州加圧水型原子炉(EPR)2基)の建設が進められています。EDFは2024年1月に工期延長と建設費増大を発表し、1号機の運転開始は2030年頃になると見込まれています。また、EDFと英国政府の出資により、サイズウェルC原子力発電所(EPR,2基)の建設が計画されています。同計画は当初EDFとCGNが出資していましたが、2022年11月に政府が6億7,900万ポンドを出資し、50%の株式を取得することでEDFと合意しました。これを受け、CGNは出資を引き上げることになりました。英国政府は2024年内に最終投資決定を下すことを目指しています。なお、EDFとCGNはブラッドウェルB原子力発電所(華龍一号2基)の建設も提案しています。2022年2月には、華龍一号の包括的設計評価(GDA)が完了し、設計が規制基準に適合していることが認証されました。なお、GDAとは、英国で初めて建設される原子炉設計に対して、建設サイトを特定せずに安全性や環境保護の観点から規制基準への適合性を認証する制度です。GDAによる認証を受けた場合も、実際に建設するためには別途許認可を取得する必要があります。
英国政府はEPRのような大型炉以外にも、SMRや先進モジュール炉(AMR)の建設も検討しており、そのための技術開発支援や規制対応支援を実施しています。英国政府は2023年7月に新たな原子力プロジェクトの実施を推進する独立した責任機関であるグレート・ブリティッシュ・ニュークリア(GBN)を立ち上げました。SMRに関して、GBNは2029年までに最終投資決定を下すことができる技術を対象に、プロジェクトを支援するとしています。2023年10月には、政府支援対象の候補として6社3の設計が選定されました。2024年春に政府は6社から支援企業を決め、2024年夏までに契約を締結する予定です。AMR開発については、高温熱利用と水素製造の観点から高温ガス炉に着目しており、2030年代初頭までに高温ガス炉実証炉の建設を目指しています。高温ガス炉の研究開発を支援するために英国政府はAMR研究開発・実証プログラムを実施しており、2022年9月には、6件のプロジェクトを対象に、実現性の検討や概念設計、潜在的なエンドユーザーに関する検討等を支援するフェーズAが開始されました。2023年7月には、最大5,500万ポンドを提供して規制レビュープロセスに進めるようにすることを目指すフェーズBが開始され、2件のプロジェクトが採択されました。また、原子力機構は、2022年9月より英国国立原子力研究所(NNL)によるチームの一員としてAMR研究開発・実証プログラムへ参画しており、両機関間において、2023年9月には、高温ガス炉技術に係る協力覚書と英国高温ガス炉実証炉プログラムの基本設計に係る実施覚書を、2024年4月には、英国高温ガス炉燃料開発プログラムの燃料製造技術開発に係る実施覚書とライセンス契約を締結しました。
このような政府による支援が行われる一方で、原子炉新設は民間企業によって実施されるため、巨額の初期投資コストを賄うための資金調達が大きな課題となります。ウィルファサイトでの新設を計画していた日立製作所が2020年9月にプロジェクトから撤退したことも、英国政府による資金調達支援の協議の難航が要因の一つでした。こうしたことを受け、2022年3月に、新たな資金調達支援策として、規制機関が認めた収入を事業者が確保できることで投資回収を保証する規制資産ベースモデル(RABモデル)を導入するための法律が制定されました。同年11月には、サイズウェルCサイトにおける建設計画にRABモデルを適用することが決定されました。
英国では、1950年代から2018年11月まで、セラフィールド再処理施設で国内外の使用済燃料の再処理を行っていました。政府は2006年10月、国内起源の使用済燃料の再処理で生じるガラス固化体について、再処理施設内で貯蔵した後で地層処分する方針を決定しました。2018年12月には政策文書「地層処分の実施-地域との協働:放射性廃棄物の長期管理」を公表し、地域との協働に基づくサイト選定プロセスを新たに開始しました。2021年11月には、カンブリア州コープランド市(当時)中部において、自治体組織の参画を得ながら地層処分施設の立地可能性を中長期的に検討するための組織である「コミュニティパートナーシップ」が英国内で初めて設立されました。2024年3月末時点では計3か所でコミュニティパートナーシップによる検討が進められています。コープランド中部コミュニティパートナーシップでは、地域が地層処分施設に適しているかどうかを理解する作業の一環として、西カンブリア沖で飛行機による航空調査が2023年10月から行われました。
② フランス
フランスでは、2024年3月時点で56基の原子炉が稼働中です。我が国と同様にエネルギー資源の乏しいフランスは、総発電電力量の約6割を原子力発電で賄う原子力大国であり、その設備容量は米国に次ぐ世界第2位です。また、10年ぶりの新規原子炉となるフラマンビル3号機(EPR、165万kW)の建設が、2007年12月以降進められています。2018年7月、二次冷却系の溶接部で不具合が見つかり、その対応のため試運転がほぼ1年延期されました。工期は度々延期され、2024年3月時点では2024年夏の送電開始を予定しています。2012年に発足したオランド前政権は、総発電電力量に占める原子力の割合を2025年までに50%に削減する減原子力目標を掲げ、2015年8月制定の「グリーン成長のためのエネルギー転換に関する法律」(エネルギー転換法)でこの目標を法制化しました。2017年に発足したマクロン政権も当初この方針を踏襲しましたが、温室効果ガスの排出量を増加させる可能性があるとして、減原子力の目標達成時期を2035年に先送りしました。2020年4月に政府が公表した「改定版多年度エネルギー計画」(PPE)では、2035年までに合計14基(このうち2基はフェッセンハイム原子力発電所の2基で、2020年6月末までに閉鎖済)の90万kW級原子炉を閉鎖する一方で、2035年以降も低炭素電源を確保するため、原子炉新設の要否を検討する方針も示されました。2021年10月には、送電系統運用会社(RTE)が、複数の電源構成シナリオの比較を実施した分析結果を公表しました。この分析では、2050年までにEPR14基を新設し、既存炉と合わせて40GW以上の原子力発電容量を確保するシナリオの経済性が最も高いとの評価が示されました。これを受け、マクロン大統領は同年11月に原子炉を新設する方針を示し、2022年2月には、EPRの6基新設と更に8基の新設検討を行うとともに、90万kW級原子炉の閉鎖を撤回して全て50年超運転することを発表し、2035年までの減原子力の目標を撤回しました。EPR2の建設予定地として、パンリー、グラブリーヌ及びビュジェイの各原子力発電所に隣接する敷地を選定し、EPR2をそれぞれ2基ずつ(合計6基)建設する予定とされています。今後の原子炉新設を円滑に進めるため、体制・制度面の法制化なども進められています。まず、既存原子力発電所サイト近傍での原子炉新設及び既存炉運転延長の手続迅速化を目的とした法律が2023年6月22日に交付されました。同法は公布から20年間の時限措置として、既存原子力発電所の隣接地での原子炉新設に係る都市計画法に基づく建設、工事等の認可に係る手続の免除など、原子力発電所建設に係る手続を迅速にすることを可能とする内容を含んでいます。また、政府は2022年7月、国内の全原子力発電所を所有・運転するEDFを、完全国有化する方針を示しました。政府はEDFの株式の84%を保有していましたが、残る株式の公開株式買付(TOB)を行い、2023年6月に完全国有化を完了しています。
SMRとAMRの開発について、政府は2021年10月の政府による投資計画「フランス2030」において、2030年までに合わせて10億ユーロを投じる方針を示しており、SMRについてはEDFなどのコンソーシアムが、EDFの子会社NUWARDを中心にして、同名のNUWARD SMRと呼ばれる国産炉の開発を進めています。2023年1月から基本設計段階にあり、実証炉の建設は2030年頃と見込まれています。
AMRについては、核分裂及び核融合の分野における革新的な原子炉の新しいコンセプトに取り組むスタートアップ企業を支援する「革新的原子炉プロジェクト」が進められています。このプロジェクトは、電気、熱、水素の複合的生産、核燃料サイクルの完結、放射性廃棄物の物量や放射能の低減など、フランスの原子力産業の研究開発に画期的な革新をもたらすことを目的としており、「初期概念」、「概念の検証」、「プロトタイプ」と3フェーズのステップを踏み、それぞれのステップでCEAの支援を受けることができることになっています。そして、同プロジェクトの結果からフランス政府は商業化に向けた次のフェーズを支援するとしています。2024年3月時点では、第1フェーズ「初期概念」として11社が採択されました。
燃料サイクルについては、2023年11月に公表された「エネルギー・気候戦略」(SFEC)の中で、現在の燃料サイクル戦略が2040年代まで維持されること、原子力産業界は施設のアップデートを視野に入れ、2026年末までに、2040年以降の燃料サイクルの将来像に向けた、最適な産業シナリオ、資金調達、決定までのタイムテーブルを明らかにするための作業を実施すること等が記載されています。2024年2月に開催された原子力政策評議会(CPN)では、国内での燃料の再処理とリサイクルの継続を承認し、ラ・アーグ再処理工場への大規模投資が決定されました。
燃料サイクル事業はオラノ社、原子炉製造事業はフラマトム社が、それぞれ担っています。オラノ社には、日本原燃株式会社及び三菱重工業株式会社がそれぞれ5%ずつ出資しています。また、フラマトム社の株式の75.5%をEDFが、19.5%を三菱重工業株式会社が、5%をフランスのエンジニアリング会社アシステム社が保有しています。フランス政府は原子力事業者による原子炉等の輸出を支持しています。フラマトム社が開発したEPRは、既に中国で2基、フィンランドで1基の運転が開始されているほか、フランスで1基、英国で2基の建設が進められています。
高レベル放射性廃棄物処分に関しては、2006年に制定された「放射性物質及び放射性廃棄物の持続可能な管理計画法」に基づき、可逆性のある地層処分を基本方針としています。放射性廃棄物の処分実施主体は、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が、フランス東部ビュール近傍で地層処分場の設置に向けた準備を進めています。2022年7月には政府によって、処分事業用地の収用に必要な公益宣言が交付されました。ANDRAは2023年1月に処分場の設置許可申請を行っており、操業開始は2035年頃と見込まれています。なお、地層処分場の操業は、地層処分場の可逆性と安全性の立証を目的としたパイロット操業フェーズから開始される予定です。その後、地層処分の可逆性の実現条件を定める法律が制定され、原子力安全機関(ASN)により地層処分場の全面的な操業許可に係る審査が行われます。
③ ドイツ
ドイツでは、最後に稼働していた3基の原子炉が2023年4月に全て運転を終了し、脱原子力が完了しました。
ドイツは2002年の「原子力法」改正以降、原子炉の新規建設を禁止するとともに、既存の原子炉に閉鎖までに発電可能な電力量の上限を定めることで、段階的な脱原子力を進めてきました。しかし東電福島第一原発事故後、連邦政府は「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」を設置し、倫理的側面から、原子力利用の在り方を再検討しました。同委員会は2011年5月に最終報告書を政府に提出し、「10年以内の脱原子力完了の実現」を勧告しました。この勧告に基づいた2011年8月の法改正により、各原子炉の閉鎖期日が定められ、2022年に最後の3基となるイザール2、エムスラント、ネッカー2が閉鎖されることで、ドイツは脱原子力を完了する予定でした。しかし、2022年のロシアのウクライナ侵略などを背景に、欧州で電力やエネルギー供給の状況が悪化したことを踏まえ、連邦政府は脱原子力の後ろ倒しを決定しました。複数のオプションを検討後、最終的にはショルツ首相の判断により、2022年10月に、直近の冬季の電力需要ピークへの対応として、上記の3基を2022年末に閉鎖せず、2023年4月15日まで運転延長することを決定しました。当初予定より4か月半後ろ倒しとはなりましたが、3基とも予定通り同日運転が停止されドイツにおける脱原子力が完了しました。
高レベル放射性廃棄物処分に関しては、1970年代からゴアレーベンを候補地として処分場計画が進められ地下坑道の掘削も進められましたが、2000年から2010年の調査活動凍結を経て、東電福島第一原発事故後の原子力政策見直しの一環で白紙化されました。その後、公衆参加型の新たなサイト選定プロセスにより、複数の候補地から段階的に絞り込みを行う方針が決定されました。この方針を受け、「発熱性放射性廃棄物の処分場サイト選定法」が制定され、2017年に新たなプロセスによるサイト選定が開始されました。同法では、2031年末までに処分場サイトを確定することを目標として定めています。処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)は2020年に、文献調査を基に地質学的な基準・要件を満たす90か所のサイト区域を選定しました。なお、当初の候補地ゴアレーベンは、この90か所に含まれませんでした。BGEは2022年12月に、これらのサイト区域から絞り込みを行い、2027年にいくつかのサイト地域を提示できる見込みであると発表しました。その上でBGEは、法律上の期限(2031年)の達成は現実的ではないとして、スケジュールの再検討と具体化が必要との考えを示しています。
④ スウェーデン
スウェーデンでは、2024年3月時点で6基の原子炉が稼働中であり、原子力発電比率は約30%です。
スウェーデンにおける原子力政策は、国民投票の結果や政権交代により何度も転換されてきました。1980年の国民投票の結果を受け、2010年までに既存の原子炉12基(当時)を全て廃止するとの議会決議が行われましたが、代替電源確保のめどが立たない中、2006年に政府は脱原子力政策を凍結しました。2014年10月に発足した社会民主党と緑の党の連立政権は一転して脱原子力政策を推進することで合意しましたが、2016年6月には、同連立政権と一部野党が、既存サイトにおいて10基を上限としてリプレースを認める方針で合意しました。その後、2022年9月の総選挙を受けて10月に、穏健党、キリスト教民主党及び自由党の代表で構成される連立政権が発足し、スウェーデン民主党も加えた4党の政策協定が公表されました。協定では、エネルギー政策の目標を、従来の再生可能エネルギー100%から、原子力を含む非化石エネルギー100%に変更することが示され、2023年6月、スウェーデン議会は、2040年までに目標を実現することを決議しました。このほかにも4党の協定では、電気料金の高騰も背景に原子力発電について、安全に運転されている限り発電を行う権利を保障すること、廃止済みのリングハルス1、2号機の運転再開について調査を行うこと、既存の原子炉があるサイト以外の場所での建設を認め、基数も10基という上限を撤廃することなどが示されています。さらに、新規原子力発電所の建設を迅速に進めるための許可手続の検討やSMRの導入のために必要な規制の整備についての提言も本協定に含まれています。
スウェーデンでは、使用済燃料の再処理は行わず、高レベル放射性廃棄物として地層処分する方針です。使用済燃料は、各発電所で冷却された後、オスカーシャム自治体にある集中中間貯蔵施設(CLAB)で貯蔵されています。地層処分場のサイト選定は段階的に進められ、2001年にエストハンマル自治体が、2002年にオスカーシャム自治体が、それぞれサイト調査の受入れを決めました。サイト調査や地元での協議等を経て、2009年6月には立地サイトとしてエストハンマル自治体のフォルスマルクが選定されました。使用済燃料処分の実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は2011年3月に同サイトでの立地・建設の許可申請を行いました。原子力施設を建設するためには、「環境法典」に基づく土地・環境裁判所の事業許可と、「原子力活動法」に基づく放射線安全機関(SSM)の建設・運用許可の二つの許可が必要となります。2018年1月、土地・環境裁判所とSSMは政府に対して審査意見書を提出し、許可の発給を勧告しました。土地・環境裁判所の審査意見書に基づくSKB社からの補足資料提出などを経て、2022年1月に政府は、SKB社の地層処分事業計画を承認し、地層処分場の建設・操業の許可を決定しました。今後、処分場の建設、試験操業、通常操業のそれぞれの開始に先立ち、SSMが安全性の精査を行う予定です。2023年4月には11日間にわたりIAEAのARTEMISミッションが実施され、放射性廃棄物及び使用済燃料の管理に関するレビューが行われました。レビュー報告書では、スウェーデンの地層処分概念と設計を高く評価しています。
⑤ フィンランド
フィンランドでは、2024年3月時点で5基の原子炉が稼働中であり、原子力発電比率は約35%です。
政府は、気候変動対策やロシアへのエネルギー依存度の低減を目的として、エネルギー利用の効率化や再生可能エネルギー開発の推進と合わせて、原子力発電も活用する方針です。この方針に沿って、ティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は国内5基目の原子炉となるオルキルオト3号機(EPR、172万kW)の建設を2005年5月に開始しました。当初、2009年の運転開始が予定されていましたが、工事の遅延により大幅に遅れて2022年3月に送電網に接続されました。給水ポンプのひび割れにより中断していた試運転が同年12月に再開され、営業運転は2023年4月に開始されました。TVOはオルキルオト1号機及び2号機の運転寿命延長(60年を超えて少なくとも10年)と出力増強(それぞれ8万kW)を計画しており、それらに伴う環境影響評価プログラムを作成し経済雇用省へ提出しました。また、国内6基目の原子炉として、フェンノボイマ社がハンヒキビ原子力発電所1号機の建設を計画しており、2015年9月から建設許可申請の審査が行われていました。しかしながら、ロシアのウクライナ侵略後の2022年5月に同社は、プラント供給契約を締結していたロスアトムのフィンランド法人であるRAOSプロジェクト社のプロジェクト実施の遅延を理由として、RAOSプロジェクト社との契約を解除したことを公表しています。
フィンランドは、高レベル放射性廃棄物の処分地が世界で初めて最終決定された国です。地元自治体の承認を経て、政府は2000年末に、地層処分場をオルキルオトに建設する方針を決定しました。2003年には地下特性調査施設(オンカロ)の建設が許可され、建設作業と調査研究が実施されてきました。その後、地層処分事業の実施主体であるポシバ社が2012年12月に地層処分場の建設許可申請を行い、政府は2015年11月に建設許可を発給しました。また、2020年代の操業開始に向け、ポシバ社は2021年12月に地層処分場の操業許可申請書を政府に提出しました。2022年12月には最初の処分坑道が完成しています。なお、オンカロは、将来的には処分場の一部として活用される計画です。
⑥ スイス
スイスでは、2024年3月時点で4基の原子炉が稼働中であり、原子力発電比率は約36%です。
2011年3月の東電福島第一原発事故を受けて、「改正原子力法」が2018年に発効され、段階的に脱原子力を進めることになりました。改正原子力法では、新規炉の建設と既存炉のリプレースを禁止していますが、既存炉の運転期間には制限を設けていません。また、従来英国及びフランスに委託して実施していた使用済燃料の再処理も禁止となり、以降発生する使用済燃料は直接処分されることになりました。なお、法的な運転期限はありませんが、ミューレベルク原子力発電所については、運転者が経済性の観点から閉鎖する方針を決定し、2019年12月に閉鎖されました。
放射性廃棄物に関しては、1978年の「原子力法に関する連邦決議」により、既存原子力施設の運転継続や新規発電所の認可に際し、放射性廃棄物が確実に処分可能であることが条件とされました。実施主体の放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が実施した地層処分の実現可能性に関する調査等を踏まえ、1988年に連邦政府は、スイス国内における安全な地層処分場の建設が可能であると確認されたとする評価を示しました。地層処分場の選定手続は2008年に開始され、3段階で候補地の絞り込みが進められています。第1段階では2011年に6か所の候補が選定され、第2段階では2018年に、チューリッヒ北東部、ジュラ東部及び北部レゲレンの3エリアに絞り込まれました。現在、最終の第3段階にあり、2022年9月にNAGRAは、地層処分場サイトの最終候補として北部レゲレンを提案しました。提案によれば、同サイトには高レベル放射性廃棄物(高レベルガラス固化体と使用済燃料)だけでなく低中レベル放射性廃棄物も処分されます。2029年には、計画の大枠に対する政府による概要承認が行われる見込みです。なお、概要承認の発給を不服とする国民投票が実施される場合には、2031年頃にサイト選定に関する結果が確定する見込みです。2023年12月に連邦評議会は、NAGRAが2021年に提出していた地層処分場の閉鎖までの全体計画と長期的な安全性を確保するための基本的な手順を含む廃棄物管理プログラムを承認しました。なお、原子力法により、NAGRAは5年ごとに最新の廃棄物管理プログラムを国に提出する義務があります。
⑦ イタリア
イタリアでは、1986年のチョルノービリ原子力発電所事故により原子力への反対運動が激化した後、1987年に行われた国民投票の結果を受け、政府が既設原子力発電所の閉鎖と新規建設の凍結を決定しました。その結果、イタリアでは原子力発電所の運転が行われていません。
電力供給の約10%以上を輸入に頼るという国内事情から、産業界等から原子力発電の再開を期待する声が上がったため、2008年4月に発足したベルルスコーニ政権(当時)は、原子力発電再開の方針を掲げて必要な法整備を進めました。しかし、2011年3月の東電福島第一原発事故を受けて、国内世論が原子力に否定的な方向に傾く中で、原子力発電の再開に向けて制定された法令に関する国民投票が実施された結果、原子力発電の再開に否定的な票が全体の約95%を占め、政府は原子力再開計画を断念しました。
一方、世界的に脱炭素化に向けた検討が進む中、2023年5月に議会が代替クリーンエネルギー源として原子力の検討を承認し、原子力発電導入に向けた動きがみられます。
⑧; ベルギー
ベルギーでは、2024年3月時点で5基の原子炉(全てPWR)が稼働中であり、原子力発電比率は約46%です。
2003年には脱原子力を定める連邦法が制定され、新規原子力発電所の建設を禁止するとともに、7基の原子炉の運転期間を40年に制限し、原則として2015年から2025年までの間に全て停止することが定められました。
その後も、脱原子力の方針を維持しつつも、電力需給の安定性確保の観点から、原子炉の閉鎖時期の見直しが議論されていました。7基のうち、2015年に閉鎖予定であったドール1、2号機及びチアンジュ1号機の合計3基は、閉鎖による電力不足の可能性が指摘されたこと等を受けて、法改正により閉鎖期限が10年後ろ倒しされ、2025年まで運転を継続することが可能になりました。2021年12月に政府は、2025年までに既存炉7基を全て閉鎖することで原則合意しましたが、最も新しいドール4号機とチアンジュ3号機については、エネルギー安定供給を保証できない場合に限り2025年以降も運転継続の可能性を残しました。さらに、2022年3月に、ロシアによるウクライナ侵略等の地政学的状況を踏まえ、化石燃料からの脱却を強化する観点から、政府は両基の運転を10年間延長することを決定しました。2023年1月には両基の現在の運転者であるエレクトラベル社と、運転延長に際し、政府と同社が法人を設立して両基を共同運営することなどで合意しました。さらに、2023年6月には、エレクトラベル社の親会社であるエンジー社とベルギー政府はドール4号機とチアンジュ3号機の運転延長の条件を定めた中間合意書に署名をしました。そして2023年12月にエンジー社とベルギー政府は、ドール4号機とチアンジュ3号機の運転期間を2035年まで10年延長する計画について、最終合意に至っています。合意書には2025年11月に両機の運転再開に向け最善を尽くすこと、放射性廃棄物の取扱いに係る費用の確認などが含まれています。
ベルギーでは、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物を、同一の処分場で地層処分することとされており、1970年代から研究開発が進められています。1980年代には、モル地域に広がる粘土層に設置した地下研究所(HADES)を利用した研究開発が開始されました。2022年12月には、これらの放射性廃棄物を自国内で地層処分する方針とその実施に向けての手続を規定した王令が制定されました。なお、ベルギーは使用済燃料の再処理をフランスの再処理会社に委託していたため、ガラス固化体と使用済燃料の2種類が高レベル放射性廃棄物として扱われています。
⑨ オランダ
オランダでは、2024年3月時点で1基の原子炉が稼働中であり、原子力発電比率は約3%です。稼働中の唯一のボルセラ原子力発電所(PWR)は、1973年に運転を開始した後、2006年には運転期間が60年間に延長され、2033年までの運転継続が可能となりました。なお、政府は発電所の寿命を2033年以降も延長する可能性について調査しています。
1960年代から1970年代にかけてオランダでは2基の原子炉が建設されましたが、1960年代初頭に大規模な埋蔵量の天然ガスが発見されたことや、チョルノービリ原子力発電所事故後の世論の影響等を受け、1986年に原子力発電所の新規建設プロジェクトが凍結されました。原子力発電所の建設は法的に禁止されていませんが、それ以来、政権交代等による政策の転換もあり、原子炉の建設は行われていません。しかし、カーボンニュートラル達成に向けて温室効果ガスを排出しないエネルギー源の必要性が高まる中、2021年12月、第4次ルッテ新政権は、2025年までの政策方針をまとめた合意文書において、既存のボルセラ原子力発電所の運転継続と原子炉2基の新設を行う方針を表明しました。さらに政府は2022年12月月、2基の新設のサイトとしてボルセラを挙げ、2024年1月から実現可能性調査を行う予定です。また、既設炉の2033年以降の運転継続のための実現可能性調査を行うことも閣議決定しました。
放射性廃棄物に関しては、1984年の政策文書において、まずは隔離と管理から開始し、最終的に地層処分を行う方針が決定されました。放射性廃棄物は少なくとも100年間地上で貯蔵することとされており、この貯蔵期間に地層処分に関する研究を進め、2130年頃に地層処分を開始する見込みとしています。初期の研究では、オランダの地下深部にある適切な岩層(岩塩層と粘土層)において放射性廃棄物を地層処分することが可能であることが示されました。
⑩ スペイン
スペインでは、2024年3月時点で7基の原子炉(PWR6基、BWR1基)が稼働中であり、原子力発電比率は約20%です。
化石燃料資源に乏しいスペインは、1960年代から原子力発電を導入してきましたが、1979年の米国スリーマイル島事故や1986年のチョルノービリ原子力発電所事故を受け、脱原子力政策に転換しました。近年は、脱原子力を完了する前に、気候変動対策のために既存の原子炉を活用する方針です。政府は、2020年1月に「国家エネルギー・気候計画2021-2030」を策定し、温室効果ガス排出量を2030年までに1990年比で少なくとも20%削減する目標を掲げました。同計画では、目標達成のため当面は既存原子炉の40年超運転も行い、7基のうち4基を2030年までに、残りの3基を2035年末までに閉鎖するとしました。全ての原子炉は10年ごとに安全レビューを受けることが義務付けられており、その評価に基づき、通常は10年間の運転許可更新が付与されます。2021年10月に運転期間の延長が許可されたアスコ原子力発電所1、2号機を含め、2024年3月時点で、稼働中の7基のうち6基は40年を超える運転が許可されています。
スペインは、海外に委託して使用済燃料の再処理を実施していましたが、政府は1983年以降、再処理を行わない方針に変更しました。使用済燃料を含む高レベル放射性廃棄物の処分に向けて、1980年代に放射性廃棄物管理会社(ENRESA)が施設の立地活動を開始しました。しかし、自治体等による反対を受けて1990年代に中断され、政府は放射性廃棄物の最終的な管理方針の決定を延期しました。その後も、ENRESAは、花こう岩、粘土層及び岩塩層を候補地層とした地層処分に係る研究開発を続けています。現在、放射性廃棄物の管理及び原子力発電所の廃止措置は、政府によって承認される総合放射性廃棄物計画(英語名GRWP、スペイン語名PGRR)に基づき、ENRESAが行っています。最新の第7次GRWPは、計画案が2020年に公表され、草案の修正等を経て2023年12月に承認されました。第7次GRWPはGRWPとして初めて戦略的環境アセスメントの対象となり、原子力安全審議会と自治体コミュニティからの報告を受ける等パブリック・コンサルテーションが行われました。第7次GRWPでは廃棄物管理計画の前提として、2027年から2035年の間に原子力発電所の運転を停止し、運転停止から3年後に解体を開始することを想定しています。また、地層処分場の操業開始目標を2073年として、最終処分するまでの間は使用済燃料や高レベル放射性廃棄物を分散型中間貯蔵施設で中間貯蔵する計画としています。
⑪ 中東欧諸国
中東欧諸国では、2024年3月時点で、ブルガリア(2基)、チェコ(6基)、スロバキア(5基)、ハンガリー(4基)、ルーマニア(2基)、スロベニア(1基)の6か国で計20基の原子炉が稼働中、スロバキアで1基が建設中です。また、ポーランドでは原子力発電の新規導入が計画されています。なお、この地域で運転中の原子炉は、ルーマニアの2基(CANDU炉)とスロベニアの1基(米国製加圧水型軽水炉(PWR))を除き、全て旧ソ連型の炉です。
このうちEU加盟国では、EU加盟に際し、旧ソ連型炉の安全性を懸念する西側諸国の要請を受けて複数の原子炉を閉鎖しました。一方で、電力需要の増加と低炭素化、天然ガス供給国であるロシアへの依存度低減等の観点から、複数の国で原子炉の新増設や社会主義体制崩壊後に建設が中断された原子炉の建設再開等が計画されています。国際的な経済情勢の下で、EUの国家補助(State Aid)規則や公正競争に係る規則への抵触を避けつつ、いかに原子力事業に係る資金調達を行うかが大きな課題となっています。
ポーランドでは、2021年2月に、2040年までの長期エネルギー政策(PEP2040)が閣議決定されました。PEP2040には原子力新規導入のロードマップも含まれており、2033年に初号機を運転開始し、その後は、2~3年の間隔で5基の発電用の中大型炉を導入していく方針です。2021年12月には、初号機のサイトとしてバルト海沿岸のルビャトボ・コパリノが選定されました。2022年11月には、同サイトに3基の米国ウェスティングハウス社製AP1000を導入することが閣議決定され、2023年7月には気候環境省が、建設計画を承認する原則決定を行いました。さらに、2023年11月には、パトヌフ・コニン地域に韓国製の2基のAPR1400を建設する計画に対しても原則決定を行いました。さらに、産業での熱利用を想定したSMRや高温ガス炉の導入も検討しています。
(10) 旧ソ連諸国
① ロシア
ロシアでは、2024年3月時点で36基の原子炉が稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約20%です。また、4基が建設中です。稼働中の原子炉のうち2基は、2020年5月に営業運転を開始した、SMRかつ世界初の浮体式原子力発電所であるアカデミック・ロモノソフです。高速炉についても、ベロヤルスクでナトリウム冷却型高速炉の原型炉1基、実証炉1基の合計2基が稼働しています。また、建設中の原子炉のうち1基は、鉛冷却高速炉のパイロット実証炉BREST-300で、2021年6月にシベリア化学コンビナートサイトで建設が開始されました。
ロシアは、2045年までに発電電力量に占める原子力の割合を25%に高め、従来発電に用いていた国内の化石燃料資源を輸出に回す方針です。加えて、2021年10月には、2060年までにカーボンニュートラルを達成する方針を定めた政令が制定されました。原子力行政に関しては、2007年に設置された国営企業ロスアトムが民生・軍事両方の原子力利用を担当し、連邦環境・技術・原子力監督局が民生利用に係る安全規制・検査を実施しています。原子力事業の海外展開も積極的に進めており、ロスアトムは旧ソ連圏以外のイラン、中国、インドにおいてロシア型加圧水型原子炉(VVER)を運転開始させているほか、トルコやバングラデシュ、エジプト等にも進出しています。原子炉や関連サービスの供給と併せて、建設コストの融資や投資、建設(Build)・所有(Own)・運転(Operate)を担うBOO方式での契約も行っており、初期投資費用の確保が大きな課題となっている輸出先国に対するロシアの強みとなっています。なお、従来、VVER導入国に対する核燃料供給はロシア企業が中心でしたが、特にロシアのウクライナ侵略後、ウクライナを始め複数の国で、米国ウェスティングハウス社やフランスのフラマトム社といった、ロシア以外の国からVVERの燃料を調達する動きが広がっています。
また、政治的理由により核燃料の供給が停止した場合の供給保証を目的として、2007年5月にシベリア南東部のアンガルスクに国際ウラン濃縮センター(IUEC)を設立しました。2010年以降、IAEAの監視の下で約120tの低濃縮ウランを備蓄しています。
ロシアでは、原則として使用済燃料を再処理する方針であり、使用済燃料は発電所内や集中貯蔵施設で、再処理に伴い発生するガラス固化体は再処理工場のあるマヤクのサイト内で、それぞれ貯蔵されています。ガラス固化体の処分については、2011年7月に「放射性廃棄物管理法」が制定され、地層処分することが定められました。2018年以降、地層処分場のサイト決定に向けた地下研究所の建設が行われています。
② ウクライナ
ウクライナでは、2024年3月時点で15基の原子炉が稼働中であり、2021年の原子力発電比率は約55%です。
ウクライナ政府は、2017年8月に策定された新エネルギー戦略において、2035年まで総発電量が増加する中で、原子力発電比率を約50%に維持する目標を設定しました。かつては、核燃料供給や石油・天然ガス等、エネルギー源の大部分をロシアに依存していましたが、クリミア問題等に起因する両国の関係悪化もあり、2022年のロシアによる侵略以前から、原子力分野も含めてロシアへの依存脱却に向けた取組を進めていました。1990年に建設途上で中断したフメリニツキー3号機及び4号機については、両機をVVERとして完成させる計画で2010年にロシアと協力協定を締結しましたが、議会は2015年に計画の撤回及び同協定の取消しを決議しました。このほか、既存原子炉への燃料供給元の多様化や寿命延長のための安全対策等にも、欧米の企業や国際機関の協力を得て取り組んでいます。米国ウェスティングハウス社とは、2022年6月に合計9基のAP1000の建設についての契約が、2023年9月にはSMRであるAP300の建設に向けた覚書が締結されています。
なお、チョルノービリ原子力発電所では、1986年に事故が発生した4号機を密閉するため、国際機関協力の下で老朽化したコンクリート製「石棺」を覆うシェルターが建設され、2019年7月にウクライナ政府に引き渡されました。
2022年2月には、ロシアがウクライナへの侵略を開始しました。同年2月から3月にかけて、ロシア軍は、チョルノービリ原子力発電所やウクライナ最大の原子力発電所であるザポリッジャ原子力発電所を占拠するとともに、放射性廃棄物処分場へのミサイル攻撃や核物質を扱う研究施設への砲撃も実施しました。このような事態に対し、IAEAを始めとする国際社会は重大な懸念を表明しており、ウクライナにおける原子力施設の安全や核セキュリティの確保等のための取組を進めています4。
③ カザフスタン
カザフスタンは、2024年3月時点で原子力発電所を保有していませんが、世界一のウラン生産国です。
ウルバ冶金工場(UMP)において、国営原子力会社カズアトムプロムがウラン精錬、転換及びペレット製造等を行っています。同社は、2030年までに世界の核燃料供給の3割を占めることを目標に、事業の多国籍化・多角化を図っており、UMP内のプラントにラインを増設して様々な炉型向けの燃料を製造する計画です。また、同社は、低濃縮ウランの国際備蓄にも大きく関与しています。IAEAとの協定に基づきUMPで建設が進められていたウラン燃料バンクは、2017年8月に開所した後、2019年12月までにフランスのオラノ社及びカズアトムプロムから90tの低濃縮ウラン納入が完了し、備蓄が開始されました。さらに、カズアトムプロムは、ロシアのIUECに10%出資しています。
原子力発電については、2030年までに原子力発電設備容量を150万kWとする発電開発計画が2012年に策定されました。2014年にはロスアトムとカズアトムプロムの間で設備容量合計30~120万kWの原子炉建設に係る協力覚書に署名しましたが、2015年に計画は凍結されました。その後、2022年にカザフスタン政府はアルマトイ州の建設候補地を選定し、2023年8月には原子力発電所の建設に向けた公開協議を開始することを発表しました。VVER等の大型軽水炉の導入が検討されていますが、2021年12月には、米国ニュースケール・パワー社との間で、SMR導入検討に関する覚書も締結されています。
④ その他の旧ソ連諸国
アルメニアでは、2024年3月時点で、アルメニア原子力発電所の1基の原子炉(VVER、44.8万kW)が稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約31%です。2022年1月には、原子炉増設に向け、ロシアのロスアトムが同発電所との間で覚書を締結したことを発表しました。
ベラルーシでは、2021年6月に、初の原子炉となるオストロベツ原子力発電所1号機(VVER、111万kW)が営業運転を開始しました。同発電所の建設はロシアのロスアトムが担っており、2023年11月には2号機の営業運転が開始されました。
ウズベキスタンは、原子力発電の導入に向け、2018年9月にロシアとの間でVVER2基の建設に係る政府間協定を締結しました。2030年までの運転開始を目指してサイト選定が行われており、2023年1月にはIAEAによる立地評価・安全設計レビューが完了しています。
エストニアでは、原子力発電の導入に向けた検討を行うため、2021年4月に政府がワーキンググループを設置し、2023年12月には、SMRの導入が可能であると結論付けた報告書を取りまとめました。また、同国のフェルミ・エネルギア社は、SMRの導入を目指し、複数の外国企業と協力覚書を締結しています。2023年2月には、米国GEH社のBWRX-300を選定したことを発表しました。
(11) アジア
① 韓国
韓国では、2024年4月時点で26基の原子炉が稼働中で、2022年の原子力発電比率は約30%です。また、2基の原子炉が建設中です。
2022年5月に発足した尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、文在寅(ムン・ジェイン)前政権の脱原子力政策を撤回し、原子力開発を推進する政策を打ち出しています。2022年7月の閣議では「新政府のエネルギー政策の方向性」が採択されました。その中では2050年のカーボンニュートラルに向けた「エネルギーミックスの再構築」がうたわれ、原子力については、原子力発電比率を現在の28%から2030年には30%以上に引き上げることとされました。
前政権は国内で脱原子力政策を進める一方で、輸出については国益にかなう場合は推進する方針をとっていました。尹政権も輸出を積極的に推進する方針であり、「新政府のエネルギー政策の方向性」では2030年までに原子炉10基を輸出するとの目標が示され、2023年7月には、SMR市場の国際的な競争力を高めるための、官民合同のSMRアライアンスが発足しました。
韓国電力公社(KEPCO)は、アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原子力発電所において、2012年から4基の韓国次世代軽水炉APR-1400の建設を進めてきました。1号機は2021年4月に、2号機は2022年3月に、3号機は2023年2月に営業運転を開始しました。また、3号機は2024年3月に送電網に接続されました。韓国政府はそのほかにも、サウジアラビア、チェコ、ポーランド、ブルガリア等の原子炉の新設を計画する国に対してアプローチしています。サウジアラビアとは、2015年に、10万kW級の小型原子炉(SMART)の共同開発の覚書を締結しています。ヨルダンには、熱出力0.5万kWの研究用原子炉を建設し、2016年に初臨界を達成しました。2023年7月にはポーランドと原子力分野における協力関係の強化に向けて覚書を締結しました。
高レベル放射性廃棄物の管理・処分に関しては、使用済燃料の再処理は行わないこととしています。2016年7月に「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」が策定され、中間貯蔵施設や地層処分場を同一サイトにおいて段階的に建設する方針が示されました。2021年12月に策定された「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」においても、中間貯蔵施設や地層処分場を同一サイトに建設する方針が維持されています。
② 中国
中国では、2024年4月時点で56基の原子炉が稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約5%ですが、設備容量は合計5,000万kWを超え、発電電力量では米国に次ぐ世界第2位です。また、26基の原子炉が建設中です。
原子力発電の拡大が進められており、米国ウェスティングハウス社製のAP1000やフランスのフラマトム社が開発したEPRも運転を開始しています。2021年3月には、2021年から2025年までを対象とした「第14次五か年計画」が策定され、2025年までに原子力発電の設備容量を7,000万kWとする目標が示されています。
軽水炉の国産化及び海外展開にも力を入れており、米国及びフランスの技術をベースに、中国核工業集団公司(CNNC)と中国広核集団(CGN)が双方の第3世代炉設計を統合して国産のPWRである華龍一号を開発し、2015年12月には両社出資による華龍国際核電技術有限公司(華龍公司)が発足しました。そのほか、中国の原子力事業者は、中東やアジア、南米等においても、高温ガス炉や、AP1000の技術に基づき中国が自主開発しているCAP1400等を含む各種原子炉の建設協力に向け、協力覚書の締結等を進めています。
さらに、高速炉、高温ガス炉、SMR等の開発も進められています。中国実験高速炉CEFRは2010年に初臨界を達成し、2011年に送電を開始しており、2017年には高速実証炉初号機の建設が開始されました。高温ガス炉については、石島湾発電所の実証炉(HTR-PM)が2021年12月に営業運転を開始しました。SMRについては、2021年7月に玲龍一号の実証炉の建設が開始されました。2023年6月には、トリウム溶融塩炉の実験炉TMSR-LF1が運転認可の発給を受けました。
中国では、軽水炉から発生する使用済燃料を再処理する方針であり、使用済燃料は発電所の原子炉建屋内の燃料プール等で貯蔵されています。再処理に伴い発生するガラス固化体の処分については、2006年2月に公表された「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド」に基づき、今世紀半ばまでの処分場建設を目指すこととされています。
③ 台湾地域
台湾地域では、2024年3月時点で2基の原子炉が稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約9%です。
台湾地域における原子力政策は、住民投票の結果や政権交代により、原子力政策が何度も転換されてきました。2000年に発足した民進党政権は、段階的脱原子力政策を掲げていました。その後、2008年の政権交代で発足した国民党政権は、再生可能エネルギー社会に至るまでの過渡的な電源として原子力発電を維持する方針を示し、龍門で建設中であった第四原子力発電所(改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)2基、各135万kW)の建設を継続するとともに、既存炉のリプレースや増設も検討する意向を示しました。しかし、2011年3月の東電福島第一原発事故を受け、同年6月、中長期的な脱原子力発電へと再度政策を転換し、既存炉の寿命延長やリプレースを行わないことが決定されました。
蔡英文(ツァイ・インウェン)政権(民進党)下の2017年1月には、2025年までに原子力発電所の運転を全て停止するとの内容を含む「改正電気事業法」が成立しましたが、2018年11月に実施された住民投票によりこの脱原子力条文は失効しています。しかし、2019年1月に、政府は脱原子力政策を継続する方針を発表しました。2021年7月には國聖第二原子力発電所1号機が早期閉鎖され、同年12月に実施された住民投票では第四原子力発電所の建設再開への反対意見が多数を占めました。今後、第四原子力発電所の建設や既存炉の運転延長が実施されなければ、運転認可の満了により2025年には全ての原子力発電所が閉鎖されることになります。
④ ASEAN諸国
ASEANを構成する10か国は、2024年3月時点で、いずれも原子力発電所を保有していません。しかし、気候変動対策やエネルギー安全保障の観点から、原子力計画への関心を示す国が増加しています。
ベトナムでは2009年に、2020年の運転開始を目指して原子力発電所を2か所(100万kW級の原子炉計4基)建設する計画が国会で承認されました。ニントゥアン第1、第2原子力発電所は、ロシアと我が国がそれぞれ建設プロジェクトのパートナーに選定されました。しかし、2016年11月、政府は国内の経済事情を背景に両発電所の建設計画の中止を決定し、国会もこれを承認しました。
インドネシアは、2007年に制定された「長期国家開発計画(2005年から2025年まで)に関する法律」において、2015年から2019年までに初の原子炉の運転を開始し、2025年までに追加で4基の原子炉を運転開始させる計画を示しました。しかし、ムリア半島における初号機建設計画は2009年に無期限延期となり、2010年以降は原子力発電所建設の決定には至っていません。一方で、政府は、ロシアや中国の協力を得て実験用発電炉(高温ガス炉)の建設計画を進めるなど、商用発電炉導入に向けたインフラ整備を進めています。2023年にはデンマークの企業とSMRの導入可能性の調査に関する協力覚書が締結されました。
タイは、2010年に公表した電源開発計画(PDP2010)において、2020年から2028年までの間に5基の原子炉(各100万kW)を運転開始する方針を示していましたが、東電福島第一原発事故や2014年の軍事クーデター後の政情不安等に伴い、計画は先送りされています。軍による暫定政権下で2015年に発表された電源開発計画(PDP2015)では、初号機を2035年、2基目を2036年に運転開始するとされていました。しかしながら、その後に策定されたPDP2018には、原子力発電の計画は含まれていません。2023年には、米国が原子力技術及び資機材を輸出できるようにする民生用原子力協力協定(123協定)に調印しました。
マレーシアは、2010年に策定した「経済改革プログラム」において原子力発電利用を検討し、2011年にマレーシア原子力発電会社(MNPC)を設立しました。2021年と2022年に原子炉各1基を運転開始することを目標としていましたが、2018年9月にマハティール首相(当時)が行った演説では原子力利用の可能性を否定しています。
emsp;フィリピンでは、ドゥテルテ大統領(当時)が2020年7月に大統領令第116号を発出し、原子力政策の再検討や長期的な発電オプションとして原子力を利用する可能性の検討が必要であるとの認識の下、国家原子力計画の策定に向けた省庁間委員会の設置を指示しました。2021年12月に省庁間委員会が提出した報告書を踏まえ、2022年2月には大統領令第146号を発出し、エネルギーミックスに原子力を加える国家原子力計画を承認しました。同大統領令は省庁間委員会に対し、1986年の完成後も運転しないままとなっているバターン原子力発電所(62万kW)の利用や、他の原子力利用施設の設置について検討することを求めました。なお、バターン原子力発電所については、2017年11月にロシアのロスアトムとの間で修復を含むプラント状態の技術監査に係る協力覚書に署名したものの、大統領は、まずは周辺住民の意見を聴取すべきであるとの見解を表明しています。また、フィリピン政府とロスアトムは、2022年1月に、SMRの検討を進めるための予備的な実現可能性調査に関する共同行動計画を策定しました。2023年には、同国最大の配電会社であるマニラ電力と米国のウルトラセーフ・ニュークリア社(USNC)の間で、フィリピンで小型高温ガス炉MMRの導入可能性を検討するための協力協定が締結されました。
⑤ インド
インドでは、2024年4月時点で23基の原子炉が稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約3%です。このうち17基が国産の加圧重水炉(PHWR)、2基が沸騰水型軽水炉(BWR)、2基がVVER、2基がCANDU炉です。また、7基の原子炉が建設中です。
原子力発電の利用については、急増するエネルギー需要を賄うために拡大する方針です。また、インドは、2021年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に際して、2070年までのカーボンニュートラル達成を目指すことを宣言しました。2022年11月に公表された「インドの長期低炭素開発戦略」では、2032年までに原子力発電の設備容量を現在の3倍にすることや、SMRの導入に向けた取組を進めていくことなどの方針が示されています。2023年5月に改定された国家電力計画(2022年から2032年までが対象)では、2022年時点で約700万kWの原子力容量を、2032年3月までに1,968万kWとする計画が示されています。
核兵器不拡散条約(NPT)未締約国であるインドに対しては、従来、核実験実施に対する制裁として国際社会による原子力関連物資・技術の貿易禁止措置が講じられており、専ら国産PHWRを中心に原子力発電の開発を独自に進めてきました。しかし、2008年以降に米国、フランス、ロシア等と相次いで二国間原子力協定を締結したことにより、諸外国からも民生用原子力機器や技術を輸入することができるようになりました。既に運転を開始しているロシアのVVERに加え、2018年にはフランスからのEPR導入について枠組み合意が結ばれました。2023年にはフランスとの原子力協定をSMRとAMRの分野に拡大する共同声明が出されました。また、2023年6月の米国との首脳会談で発表された共同声明では、AP1000の建設を進めていくことが確認されました。
また、インドは独自のトリウムサイクル開発計画に基づき、高速増殖炉(FBR)の開発・導入を進めています。1985年に運転を開始した高速増殖実験炉(FBTR)については、2011年に、2030年までの運転延長が決定しました。また、上述の建設中7基のうちの1基は高速増殖原型炉(PFBR)です。
⑥ その他の南アジア諸国
パキスタンでは、2024年3月時点で6基の原子炉が稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約16%です。2014年に公開された原子力エネルギービジョン2050では、2050年までに原子力発電設備容量を約4,000万kWへと拡大する見通しが示されています。パキスタンは、インドと同じくNPT未締約国であるため、中国や米国等と二国間原子力協定を締結して核物質、原子力、資機材技術の輸入を行っています。特に中国との関係性が強く、中国の華龍一号が採用されたカラチ原子力発電所2、3号機では、2021年5月に2号機の、2022年4月に3号機の営業運転が開始されています。さらに、2023年6月には、チャシュマ原子力発電所5号機として華龍一号を建設するために中国と合意しました。
バングラデシュは、2041年までに先進国入りすることを目標とする「ビジョン2041」政策を掲げており、その一環として、電力需要の増加への対応や電気の普及率向上等のため、原子力発電の導入を目指しています。2024年3月時点で、2基(VVER、各120万kW)が建設中です。
(12) 中東諸国
中東地域では、2024年4月時点で、イランで1基、UAEで4基の原子炉が稼働中です。また、その他の国においても、電力需要の伸びを背景として、原子力発電所の建設・導入に向けた動きが活発化しています。
イランでは、ロシアとの協力で建設されたブシェール原子力発電所1号機が2013年に運転を開始しました。また、両国は2014年、イランに更に8基の原子炉を建設することで合意し、このうちブシェール2号機の建設が2019年11月に開始されています。
UAEでは、電力需要の増加により、2020年までに4,000万kW分の発電設備が必要との見通しを受け、フランス、米国、韓国と協力し原子力発電の導入を検討してきました。2020年までにバラカに100万kW級原子炉4基を建設するプロジェクトに関する国際入札の結果、2009年末に、KEPCOを中心とするコンソーシアムが建設等の発注先として選定されました。2012年に建設が開始された1号機は2021年4月に、2号機は2022年3月に、3号機は2023年2月に営業運転を開始し、4号機は2024年3月に送電網に接続されています。
トルコは、経済成長と電力需要の伸びを背景にして、原子力発電の導入を進めています。アックユ原子力発電所ではロシアが120万kW級原子炉4基を建設する予定で、1号機は2018年4月、2号機は2020年4月、3号機は2021年3月に、4号機は2022年7月に建設が開始されています。
サウジアラビアは、2030年までに16基の原子炉を建設する計画です。原子力導入に向けて、2018年7月には、2基の商用炉を新設するプロジェクトの応札可能者として米国、ロシア、中国、フランス及び韓国の事業者が選定されています。
ヨルダンは、フランス、中国、韓国と原子力協定に署名し、同国初の原子力発電所建設を担当する事業者の選定を進めていました。2013年10月にはロシアを優先交渉権者として選定し、2015年10月に原子力発電所の建設・運転に関する政府間協定を締結したものの、2018年7月にロシアからの商用炉導入計画の中止が公表されました。
(13) アフリカ諸国
アフリカでは、2024年3月時点で、唯一南アフリカ共和国で原子力発電所が稼働しています。また、その他の国においても、原子力発電所の建設・導入に向けた動きが見られます。
南アフリカ共和国では、クバーグ原子力発電所で2基の原子炉(PWR)が稼働しており、2022年の原子力発電比率は約5%です。同国では、今後の原子力導入に関する検討が続けられており、2019年10月に策定された統合資源計画(IRP2019)では、2030年以降の石炭発電の減少分をクリーンエネルギーで賄うために、SMRの導入を含めて検討を進める必要性が指摘されています。
エジプトは、ロシアとの間で、2015年11月に120万kW級の原子炉(VVER)4基の建設・運転に関する政府間協定を締結し、さらに、2017年12月にはエルダバ原子力発電所建設に係る契約を締結しました。エジプト原子力発電庁は、2021年6月に同発電所1、2号機の建設許可を、同年12月には同発電所3、4号機の建設許可を原子力規制・放射線当局に申請しました。2022年7月には1号機、同年11月には2号機、2023年5月には3号機の建設が開始されています。また、2023年8月には4号機の建設許可が発給され、2024年1月に工事が開始されました。
アルジェリアは、2027年の運転開始を目指して国内初の原子力発電所の建設を計画しており、2007年12月のフランスとの原子力協定締結を始めとして、米国、中国、アルゼンチン、南アフリカ共和国、ロシアと原子力協定を締結しています。
モロッコは、2009年に公表した国家エネルギー戦略に基づき、2030年以降のオプションとして原子力発電の導入を検討する方針です。2017年10月には、ロシアとの間で原子力協力覚書を締結しており、モロッコ国内での原子力発電導入を目的とした共同研究を開始することとしています。
ナイジェリアは、2025年までに120万kW分の原子力発電所の運転開始を目指し、2035年までに合計480万kWまで増設する計画です。同国はロシアとの間で、2009年3月に原子力協力協定を、2017年10月にはナイジェリアにおける原子力発電所の建設・運転に向けた協定を締結しています。
ケニアは、中長期的な開発計画である「Vision 2030」の中で、総発電電力設備容量を1,900万kWまで拡大する目標を掲げており、この目標の達成に向けて原子力を活用する方針です。この方針に基づき、韓国、中国、ロシアとの協力を進めています。2024年3月には国営企業の原子力発電・エネルギー機構が、今後5年間の原子力開発計画の指針となる「2023-2027戦略計画」を発表しました。同計画では、2030年から2031年に建設を開始し、2034年までに初号機の試運転開始を目指すとしています。
ガーナでは、SMRの導入に向けた検討が進められています。これに対して、我が国と米国政府が支援を行うことになっているほか、我が国と米国の企業がSMRに関する実現可能性調査を実施することになっています。また、2023年10月から11月にかけて、ガーナエネルギー省及びガーナ原子力委員会の主催で、1回目の米国‐アフリカ原子力サミットが開催されています。
(14) 大洋州諸国
大洋州諸国は、2024年3月時点で、いずれも原子力発電所を保有していません。
オーストラリアは、世界最大のウラン資源埋蔵量を有していますが、豊富な石炭資源を背景に、これまで原子力発電は行われていません。ただし、温室効果ガス排出削減の観点から、原子力発電導入の是非が度々議論されています。
オーストラリアでは、2005年の京都議定書発効後、保守連合政権下で原子力発電の導入を検討する方針が示されましたが、2007年に原子力に批判的な労働党へと政権が交代し、検討は中止されました。近年は、パリ協定の目標達成に向けた気候変動対策と電気料金高騰抑制の観点から、原子力発電導入の可能性を検討する機運が再び高まっています。2017年には、オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)が、第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)に正式加盟しました。2019年には、連邦議会下院の環境エネルギー常任委員会が政府に報告書を提出し、原子力利用に関して、第3世代プラス以降の先進炉を将来のエネルギーミックスの一部として検討すること等を提言しました。また、2020年5月に連邦政府が公表した温室効果ガス削減に向けた技術投資ロードマップでは、低炭素技術の一つとしてSMRの導入可能性に言及し、海外の開発状況を注視するとしています。その後、2022年5月の連邦議会総選挙を受け労働党が政権に返り咲いており、新政権からは原子力発電の導入について方針等は示されていません。
オーストラリアにおけるウラン輸出については、2021年に初の原子力発電所が営業運転を開始したUAEに加え、長年禁輸対象であったインド、燃料供給のロシア依存度低減に取り組むウクライナ等と協定を締結し、新興国等への輸出拡大を図っています。
(15) 中南米諸国
中南米諸国では、2024年3月時点で、メキシコ(2基)、アルゼンチン(3基)、ブラジル(2基)の3か国で計7基の原子炉が稼働中です。
メキシコでは、2基のBWRが稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約5%です。2018年に発行された国家電力システム開発プログラム(PRODESEN)2018-2032では、2029年から2031年までに1基ずつ、計3基を運転開始する計画が示されていました。しかし、2022年に公表されたPRODESEN 2022-2036では、2036年までの期間について原子力発電所の建設計画は示されていません。
アルゼンチンでは、PHWR2基とCANDU炉1基の計3基が稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約5%です。2022年2月には、アトーチャ3号機の計画について、中国との間で華龍一号の建設に係る契約を締結しました。また、その後の計画として、ロシア製VVERの建設も検討されています。2024年2月にはアトーチャ2号機の運転期間を2026年5月まで延長することが決定されました。
ブラジルでは、2基のPWRが稼働中であり、2022年の原子力発電比率は約3%です。経済不況により1980年代に建設を中断していたアングラ3号機は、2010年に建設が再開されましたが、2015年以降は建設が再度中断されています。2019年には、政府が同機の建設を再開する方針を公表し、発注事業者の選定手続などが進められており、運転開始は2029年頃と見込まれています。さらに、2022年1月に公表されたエネルギー拡張10か年計画(PDE 2031)では、新たに100万kW級原子炉の運転を2031年に開始する方針が示されました。また、核燃料工場を始めとする核燃料サイクル施設が立地するレゼンデでは、燃料自給を目的としてウラン濃縮工場が2006年から稼働しており、段階的に拡張されています。
キューバでは、1980年代に2基の原子炉が着工されましたが、提供者であった旧ソ連の崩壊に伴い建設中止となりました。キューバとロシアは、2016年9月に原子力の平和利用に関する二国間協定を締結しており、2019年には多目的照射センターの建設について合意しています。
ボリビアでは、ロシアとの協力により、研究炉1基や円形加速器(サイクロトロン)を含む、原子力技術研究開発センターが建設されています。
7 特集:「放射線の安全・安心と利用促進に向けた課題の多面性」の参考資料
放射線に関する基礎知識
参考資料1:
放射線による人体への影響
(出典)環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和5年度版)」(2024年)
参考資料2:
放射線の種類ごとのDNA損傷の程度の違い
(出典)丸善出版 東京大学工学教程編纂委員会編 上坂充、石川顕一編著「東京大学工学教程 原子力工学 放射線生物学」(2024年)
参考資料3:
組織加重係数の値
(出典)公益社団法人日本アイソトープ協会「ICRP Pub 60 国際放射線防護委員会の1990年勧告」(1990年)を基に内閣府作成
参考資料4:
ALPS処理水の海洋放出による放射線影響の評価方法
(出典)東京電力ホールディングス株式会社 福島第一廃炉推進カンパニー「多核種除去設備等処理水(ALPS処理水)の海洋放出に係る放射線環境影響評価結果(建設段階)について」(2023年)
トピック1:ALPS処理水の海洋放出
参考資料5:
トリチウム水タスクフォースの検討結果(基本要件)
(出典)多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書」(2020年)
参考資料6:
トリチウム水タスクフォースの検討結果の例(制約となりうる条件)
(出典)多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書」(2020年)
参考資料7:
国内外におけるトリチウムの年間処分量
(出典)経済産業省ウェブサイト「(参考)トリチウムの年間処分量~国内外の例~」
参考資料8:
ALPS処理水の海洋放出に対するアンケート結果
(出典)一般財団法人日本原子力文化財団「原子力に関する世論調査(2023 年度)調査結果」(2024年)
トピック2:クリアランス物の利用
参考資料9:
放射性廃棄物でない廃棄物(Non Radioactive Waste:NR)
(出典)内閣府作成
トピック3:放射線の食品・医療分野への利用
参考資料10:
我が国の輸入食品に対する照射食品のモニタリング検査数と違反件数
(出典)厚生労働省健康・生活衛生局「輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果」を基に内閣府作成
参考資料11:
我が国における突然変異直接利用品種の変異源の内訳(2020年)
(出典)第12回原子力委員会資料第1号 中川仁「放射線育種場および放射線育種」(2024年)
参考資料12:
γ線滅菌されている医療器具一覧
(出典)細渕和成「放射線滅菌の現状と展望 2.医療用具」(1997年)
原子力・放射線を含む様々なリスク源に関するリスク認識についての調査
参考資料13:
受容度や危険度を問う質問の際のリスク項目の表記
(出典)内閣府作成
参考資料14:
各リスク項目を「受け入れられない」とした理由
(出典)内閣府作成
参考資料15:
各リスク項目の普段の情報源
(出典)内閣府作成
8 第1~9章 参考資料
参考資料1-1:
1F-2050による福島県産骨材・川砂入手の状況
(出典)第6回原子力委員会 資料第1号 大阪大学大学院工学系研究科附属フューチャーイノベーションセンター インキュベーション部門 社会課題解決型グループ「東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故調査チーム「1F-2050」-経緯と進捗-」(2024年)
参考資料3-1:
EUタクソノミーにおける原子力関連活動の適格要件の概要
(出典)第37回原子力委員会資料1-2号 又吉由香「脱炭素社会への移行に向けた資本市場の取組み~EUタクソノミー適用開始等を受けた「原子力」を巡る国内外動向~」(2022年)を基に内閣府作成
9 放射線被ばくの早見図
(出典)量子科学技術研究開発機構放射線医学研究所「放射線被ばくの早見図」(2021年)
脚注
- ただし、ターキーポイント3、4号機とピーチボトム2、3号機については、環境影響評価手続上の問題が解消されるまでの間は、運転認可の有効期間を1度目の運転認可の更新で認められた期間までに変更するとの決定をNRCが行っている
- 欧州議会本会議が2024年4月11日に法案の最終版を採択。理事会がこの決定を承認すれば、法として成立する
- EDF、日立GEニュークリア・エナジー株式会社、ホルテック英国社、ニュースケール・パワー社、ロールス・ロイスSMR社及び ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー・UK社
- 第4章4-2(3)⑤「ロシアによるウクライナ侵略問題への対応」を参照
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