§3 米国原子力潜水艦の寄港

 39年8月28日,原子力委員会は,米国原子力潜水艦のわが国への寄港に関する総合的見解(付録II-7参照)を政府に申し述べた。
 このなかで,原子力委員会は,政府が米国原子力潜水艦の寄港を認める場合は,環境の安全を確保するため政府においてあらかじめ寄港地についてバックグラウンドの,測定等必要な環境調査を行ない,また,停泊水域および停泊中の潜水艦の近傍において放射能モニタリングを行なうほか,必要に応じてわが国近海の放射能を調査するなどの措置をとるべきことを述べている。
 これにもとづき,科学技術庁を中心とする関係各省庁は,米国原子力潜水艦の寄港にともなう放射能調査計画を決定するとともに,ただちにこれに必要な予算措置を講じた。
 この調査計画には,佐世保,横須賀両港周辺で行なう調査,すなわち寄港地についてあらかじめ行なうバックグラウンド調査(事前調査)およびその後に停泊水域および停泊中の潜水艦の近傍で行なうモニタリング調査(事後調査),ならびにわが国近海における放射能調査が含まれている。事後調査は,3箇月ごとの定期調査および潜水艦の入出港前後と停泊中にその周辺で行なう臨時調査とにわけられる。
 港湾周辺の調査においては,海上保安庁水路部が海水と海底土の試料を,水産庁の東海区および西海区水産研究所が海産生物の試料をそれぞれ採取し,全放射能を測定の後,厚生省公衆衛生院および(社)分析化学研究所が,それぞれ機器分析および化学分析を行なう。このほか,現地において空間線量と海水中のガンマ線量の測定が行なわれる。この測定は,水上では海上保安庁警備救難部によりモニタリングボートで,また陸上では佐世保市と横須賀市によりモニタリング・ポイントおよびモニタリング・ポストで行なわれる。
 近海の放射能調査においては,各地の水産庁水産研究所がわが国近海の海水および海産生物の試料を採取し,公衆衛生院および(社)分析化学研究所がそれぞれ機器分析および化学分析を行なう。39年11月および40年2月の米国原子力潜水艦佐世保寄港後に科学技術庁から発表されたところによれば,モニタリング・ボート等による入港後の環境放射能測定値は,入港前の値とくらべ変化は認められなかった。発表の詳細は,付録IV-11に示すとおりである。


目次へ          第7章 第1節へ