§1 放射能調査および対策研究

 核実験による放射性降下物に関する調査は,38年度にひきつづき,国立試験研究機関,都道府県衛生研究所等において実施された。実施状況の概要は,つぎのとおりである。
 環境放射能の調査のうち大気中の放射能については,雨水および地表付近の浮遊塵の全放射能測定を気象庁の各地の気象台および都道府県衛生研究所が,雨水および落下塵の核種分析を気象庁気象研究所および社団法人分析化学研究所が,またジェット機で採取した成層圏の浮遊塵の全放射能測定および核種分析を防衛庁技術研究本部がそれぞれ行なった。地上の放射能については,上水,天水,土壌等の全放射能の測定を都道府県衛生研究所が行なうとともに,社団法人分析化学研究所が核種分析を行なっており,海水および海底土については,気象庁海洋気象部および海上保安庁水路部が全放射能測定および核種分析を行なった。地表の空間線量については,理化学研究所および都道府県衛生研究所が測定を行なった。
 野菜,牛乳等の食品の放射能については,都道府県衛生研究所が試料を採取して全放射能測定を行なった後,(社)分析化学研究所等に集めて核種分析を行なった。また,農林省畜産試験場においては牛乳(原乳)の核を行なった。海産生物については,水産庁東海区,西海区,日本海区の各水種分析産研究所で採取し,全放射能を測定した後,東海区水産研究所に集め核種分析を行なった。
 人体の放射能については,全身の放射能測定,人骨,臓器,尿の核種分析を科学技術庁放射線医学総合研究所(放医研)が行なった。また,血液および筋肉の核種分析を厚生省公衆衛生院が行なった。
 このようにして実施された放射能調査の結果は,「環境および食品等の放射能汚染」にとりまとめられ,内閣の放射能対策本部から定例的に発表されてきた。その概要はつぎのとおりである。
 ストロンチウム90の東京における月間降下量は,39年春以降漸次減少を示したが,10月にやや増加した後,ふたたび減少した。また,39年の1年間における降下積算量は,38年の値と比較すると半分以下になっている。
 なお,39年末までの総降下積算量は,1平方キロメートル当り62.6ミリキュリーであった。
 牛乳中のストロンチウム90の濃度は,39年後半は大体横ばい状態を示したが,前半と比較すると減少した。
 日常食からのストロンチウム90摂取量の全国平均値は,39年5,6月に今までのうちもっとも高い値を示したが,7月,8月にはやや減少した。
 水道水中のストロンチウム90は,従来どおり横ばいの状態にある。これら発表の詳細は,付録IV-7に示すとおりである。
 このような放射能対策本部発表のほか,放医研放射能データセンターで定期的に発行される英文資料(Radioactivity Survey Datain Japan)には,測定結果がすべて収録され,海外および国内の関係機関に配布された。
 一方,放射能対策研究は,主として放医研その他の国立試験研究機関において,環境,食品,人体における放射性物質の挙動,あるいは各種食品の汚染対策などに関する多くのテーマについて行なわれている。その他,38年度にひきつづき,放射能調査対策研究委託費による研究が公立および民間の研究機関に委託された。
 これら放射能調査および対策研究の成果は,39年11月,放医研において科学技術庁主催のもとに開かれた第6回放射能調査研究成果発表会において発表された。この発表会のテーマおよび研究機関は,付録IV-8に示すとおりである。


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