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関係機関

第35回IAEA総会について

科学技術庁

1.日程:平成3年9月16日(月)~9月20日(金)
2.場所:オーストリア、ウィーンのホフブルク宮殿会議場
3.参加国:加盟国112か国のうち93か国から総勢約600名が参加、我が国からは

山東 昭子 科学技術庁長官(原子力委員会委員長)

林 政義 原子力委員会委員

遠藤 哲也 在ウィーン国際機関日本政府代表部特命全権大使

太田 博 外務省大臣官房審議官

石田 寛人 科学技術庁原子力局長

末広 恵雄 通商産業省資源エネルギー庁長官官房審議官

谷 弘 科学技術庁原子力安全局次長

らが出席

4.主要議題審議結果概要

(1) 全般的概要
 ① 今次総会は、保障措置の整備・強化、原子力安全問題等IAEAの直面する重要課題について原子力分野での国際協力推進の中心的専門機関としての立場から地道な掘り下げた議論が行われ、総じて有意義な総会であった。
 ② 今次総会の議長には、ラテン・アメリカ地区よりサンタナ・ブラジル原子力委員会委員長が選出された。
 ③ 我が国政府を代表して山東大臣が演説を行い、原子力平和利用の前提である国際的な核不拡散体制の維持・強化の重要性を訴えるとともに、IAEAの活動を重視し今後とも可能な限りの協力を継続して行くとの姿勢を内外にアピールした。(総会第1日目、サウディ・アラビア、米国に引き続き3番目に代表演説を行った)。
 ④ 今次総会では、イエメン、エストニア、ラトヴィア、リトアニアの4共和国の加盟申請が異議なく承認され、IAEA加盟国は116か国となった。

(2) 個別事項
 ① 保障措置の整備・強化
 保障措置制度の整備・強化については、イラクの保障措置協定違反問題を契機として関心が高まってきたところであるが、今次総会においては、我が国、豪等西側諸国が共同提案国となった、保障措置制度の整備・強化策について早急に結論を出すべきであるとの内容の決議案が採択された。

 ② 原子力安全問題
 原子力安全問題については、最近の東ヨーロッパ各国における旧型ソ連原子炉の安全性についての関心の高まり、更には今次総会直前の9月2日から6日まで行われた原子力安全国際会議の結果等を受けて活発な議論が展開された。その結果、原子力安全に関する国際取極について今後検討して行くこと等を盛り込んだ決議案が採択された。

 ③ 財源問題
 財源問題については、途上国グループであるG77側より上記の二つの問題に今後IAEAの活動、ひいては予算面においても重点が移され、その結果、G77側が重視する技術協力活動に対する比重が相対的に低下することを懸念する意見が出された。具体的にはG77諸国側より、前述の保障措置関連決議に対抗する形で技術協力活動の重要性について言及した決議案(特に技術協力活動が保障措置活動とのバランスについて言及)が提案され、議論の末、妥協的な内容の決議案が採択された。(1992年度予算(決議ベース):約2億米ドル(約250億円))

 ④ 政治問題
 政治問題については、例年イスラエル、南アフリカ(以下「南ア」という。)の核脅威に対する非難決議が採択されてきているが、今次総会では南アの核不拡散条約加盟、IAEAのフル・スコープ保障措置協定の署名という新しい動きがあったため、従来にない動きが見られた。
 即ち、南アについては、従来の南アの核脅威を非難するとの決議に替わり、南アをめぐる最近の動きを踏まえ南アの保障措置協定の早期実施等を求めるマイルドな内容の決議が採択された。
 イスラエル関係については従来と同様のイスラエル非難決議が採択されたのに加え、「中東地域における保障措置の適用」と題する決議が新たに採択されたのが注目される。右決議は中東における非核地帯設立のコンテクストの中で中東地域の全ての国がIAEAフル・スコープ保障措置を受け入れることを要請するものであり、前述のイスラエル非難決議との関連で、今後の動向が注目される。

 ⑤ その他
 山東大臣は、原子力分野での世界各国の有力者が集まるIAEA総会出席の機会を利用して、米、仏、独等の各国代表及びIAEAブリックス事務局長と会談を行い、右関係国及びIAEA事務局との相互理解の促進、関係強化をはかった。

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