前頁 |目次 |次頁 | |||
貯蔵工学センターに関する調査のとりまとめ(1) 昭和63年4月 はじめに 動燃事業団が進めている貯蔵工学センター計画については、これまでに北海道天塩郡幌延町開進地区の候補地に関し、地盤のかたさや活断層の有無、地下水の状況など、自然環境についての疑問や不安が提起されてまいりました。 貯蔵工学センター計画について地元の方々のご理解をいただくためには、このような疑問や不安について具体的なデータに基づいておこたえしていくことが大切であると考え、これまで文献調査をはじめ、ポーリング調査、地表地質踏査、地下水調査、地震観測などを実施してまいりました。 この資料は、貯蔵工学センター計画に対するご理解を一層深めていただくため、これまでの調査結果についてとりまとめたものです。 ![]()
●調査の概要 地質の状況を把握するため、文献調査や地表地質踏査を行いました。地表地質踏査では、実際に地表を調査し、地表の岩石の分布やかたさ、断層などを調べました。 地表地質踏査風景 ●調査の結果〈周辺(半径30km以内)の地質と断層について〉 図-1は、文献調査に基づいて作成した周辺の地質図です。図は候補地を中心とした半径30km以内の地質状況を示しています。この図から、周辺には新第三紀および第四紀の地層が広く分布していることがわかります。これらの地層は2,400万年前以降に形成きれたものです。 ●図-1 候補地周辺の地質編纂図 ●図-2 文献に記載されている主な断層 候補地周辺には、いくつかの活断層があるとされていますが、その他のほとんどの断層は古い時代のものです。 〈周辺(数kmの範囲)の地質と断層について〉 図-3、4は周辺数kmの範囲の地質状況を、文献調査や地表地質踏査の結果に基づいてまとめたものです。 周辺の地表には、東側から稚内層、声門層、勇知層、更別層と呼ばれる地層が広く分布し、その上に恵北層、段丘堆積物、崖錐堆積物、氾濫原堆積物が分布しています。候補地の東方には大曲断層といわれる断層が位置するとされていますが、この断層については、これまで活断層研究会編「日本の活断層」(東京大学出版会、1980)などの主要な文献では活断層とされておらず、今回の地表地質踏査においても、第四紀層を切断したり変位地形を形成しているような活断層とされる事項は認められませんでした。また、周辺に大きな地すべりは認められませんでした。 ●図-3 候補地周辺地質平面図
図-5、6は、文献調査と地表地質踏査結果をもとに作成した侯補地の地質図です。 東側は標高100m程度の丘陵地帯からなり、また、西側は平坦地と緩い傾斜地からなっています。 調査の結果、候補地に活断層や地すべりはありませんでした。 ●図-5 候補地地質平面図 ●図-6 候補地地質断面図 ●表-1 地質層序表
●調査の概要 ポーリング調査によって候補地の地盤や岩盤について調べました。 ポーリング調査では、探さ約20mから50mの比較的浅いポーリング(浅層ポーリング)4本と、深さ約1.350mの深いポーリング(深層ポーリング)1本を行いました。浅層ポーリングでは地表付近の地盤のかたさを、また、深層ポーリングでは地下深くの岩盤の状況を調べました。 ポーリング調査では、岩石試料を氷り出し、試験室でさまざまな試験を行いました。さらに、ポーリング孔に測定計器をおろし、地盤や岩盤の性質を調べました。
〈浅部の地盤について〉 図-7は、探さ約20m~50mの浅層ポーリング4本の調査結果です。 図では、それぞれの深さでのN値がグラフで示されています。N値というのは、建物を建てるところの地盤のかたさを表わすのによく用いられる数値で、N値が大きいほど地盤がかたいことになります。 この調査によって、候補地には地表から10mないし20mという比較的浅いところにN値が50以上の地盤があることがわかりました。N値50以上の地盤というのは、通常、建物を建てるのに十分かたい地盤と考えられています。 ●図-7 N値の分布 ●図-8 ポーリング位置 地下の岩盤の状況を、深さ約1,350mの深層ボーリングで調べました。この結果、更別層といわれる泥岩・砂岩が約340mあり、その下に勇知層といわれる砂岩が約540m、さらにその下には声問層といわれる泥岩が約470m以上続くことがわかりました。 岩盤の密度は浅いところで1.8g/cm3程度、深いところで2.1g/cm3程度です。 弾性波速度、すなわち岩盤内を伝わる波の速さは、深いところほど速くなっています。これは、深くなるにしたがって岩盤がかたくなる様子を示しています。 また、岩盤の温度は深さとともに高くなり、最も深いところでは約450℃でした。一般には100m深くなるごとに3℃ずつ温度が高くなるといわれていますが、今回のボーリングでも同様の結果が得られました。 深層ボーリングの結果、深度約900mより深いところにある声門層といわれる泥岩(調査・研究の主な対象として考えている岩盤)は、その強さや水の通しにくさなどからみて、わが国に広く分布している新第三紀の泥岩によくみられる性質をもっていることがわかりました。 深層ボーリングの結果と地表地質踏査の結果を合わせて考えると、声問層は候補地の東側から西側へいくほど深くなると推定されます。また、南北方向(図-10の奥行き方向)には、ほぼ水平に分布していると推定されます。 このように、声問層は候補地の地下に広く、また均質に厚く分布していると考えられます。 ●図-9 深層ボーリングの結果
●調査の概要 周辺の地震の発生状況や大きさ、活断層について調べました。
地震計 計測装置 ●図-11 観測された地震波形の一例 〈地震について〉 図-12は、明治6年以降わが国の周辺で起こった被害地震の震央分布を示したものです。わが国の被害地震の多くは太平洋岸に集中し、北海道北部では地震の少ないことがわかります。 図-13は、過去の地震記録に基づいて、日本各地で100年間に1回起こるだろうと推定される地震の大きさ(100年期待値)について、地震加速度(ガルといわれる単位)で示したものです。数値が大きいほど、大きな地震にみまわれる可能性が高いことを示しています。この図によると、数値の小さい地域としては九州地方や山陰地方、それに北海道北部があげられます。 候補地の地震加速度の100年期待値は50ガル以下となっています。50ガルというのは気象庁震度階の震度Ⅳに相当し、すわりの悪い花瓶が倒れる程度の地震です。 ●図-12 被害地震の震央分布(1873年-1984) 図-15は、気象庁のデータに基づいて、昭和61年8月21日から8月31日にかけて幌延町周辺で発生した群発性地震の震央分布を示したものです。震源は候補地の北約10kmと南約12kmのところにやや集中しています。また、気象庁のデータによると、震源の深さは北側で数kmから十数km、南側では30kmから50kmとなっています。この地震活動は有感地震13回を含んだものでしたが、地震規模が小さく被害はありませんでした。 ●図-14 北海道付近の有感地震の震央分布 このなかには、昭和61年の地震のように群発性のものも数回記録されています。 しかし、その内容をみると、地震の震度はⅠからⅢがほとんどで、やや大きいものでも1968年7月17日問寒別豊神で震度Ⅴ、1975年12月25日豊富で震度Ⅳが一度ずつ記録されているのみです。 また、北海道北部における地震のマグニチュードについては5.2の中規模地震(上川支庁北部)が一度記録されていますが、これ以外は5未満の小規模な地震です。 一般的に被害を与えないような小規模地震も含め、すべての有感地震について日本各地のデータを比較してみたものが図-16です。1951年から1984年までの最近約30年間の気象庁のデータに基づいて作成したものです。 図は、左側から稚内、留萌、札幌、苫小牧、水戸、東京について、この30年間における震度ⅠからⅤまでの有感地震について合計回数を示したものです。また、これらを合計し、すべての有感地震回数についてもあわせて示しました。この図によると、有感地震回数の合計は東京約1,300回、水戸約2,000回に対し稚内では約40回、留萌で約50回と少なくなっています。 このように、小規模な地震を含めて考えても、北海道北部は地震の少ない地域ということができます。 動燃事業団では、候補地で現在も地震観測を続けていますが、観測期間中、候補地周辺を震源とする大きな地震は観測されていません。 ●表-2 最近50年の北海道北部の浅発地震(札幌管区気象台) 断層のうち、比較的新しい年代(第四紀または第四紀後期)に動いたものを一般に活断層といい、地震に関係かあるとされています。 図-17は、活断層研究会編「日本の活断層」(東京大学出版会、1980)に示されている候補地周辺の活断層です。 この文献によれば、周辺には活動性が高い活動度A級の活断層はなく、いずれも活動度B級もしくはC級の活断層です。活動度A級の活断層とは、1000年当たり平均1mから10mのずれが進行する断層で、中央構造線などでもいくつかみられます。活動度B級、C級の断層は、これにくらべ活動性が低く、1000年当たり平均1m未満のずれが進行する断層をいいます。 図-18は日本第四紀学会編「日本第四紀地図」(東京大学出版会、1987)に示されている活断層です。 これらの文献によると、候補地にもっとも近い活断層としては、約14km離れたところに問寒別東方の断層が位置するとされていますが、これら周辺の活断層については、断層の規模や候補地との距離に基づき試算した結果、候補地に特に大きな地震動をもたらすものではないことがわかりました。 ●図-17 |
|||
前頁 |目次 |次頁 |