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時の話題

LCT計画の実験結果について

日本原子力研究所



1.はじめに
 原研が日本を代表してIEAの大型超電導コイルに関する国際協力LCT(Large Coil Task)協定に調印(昭和53年4月)して以来約10年の歳月が経過した。この実験は米国オークリッジ国立研究所で続けられていたが、本年9月初めに成功裡に完了した。この機会にその概要、経過、主要成果について報告する。

2.LCT計画の概要
(1)枠組み

3.経緯
 −IEAによる多国間協力(参加国:日、米、EC、スイス)
 −米国3個、日、EC、スイス各1個のコイルを夫々製作
 −米国オークリッジ国立研究所で組合わせ実験

(2)特徴
 −大きなハードウェアを伴った国際協力
 −資金の移動が無い
 −独自の開発及び所有のハードウェア
 −共同実験、情報の共有

”LCT計画”の展望の主項目

年月 項目
1977年10月  IEAのLCT協定に、米国DOEとユーラトム調印
1978年4月  追って原研が日本を代表して調印
9月  さらにスイス政府が調印
1979年4月  日本LCTコイル、国内実験装置製作開始
1981年11月  日本LCTコイルの第1回実験、He漏れのため中止
1982年5月  日本LCTコイル、国内実験に成功(6個のコイルの中で一番目)
11月  日本LCTコイル、ORNL到着
1983年6月  米国GDコイル、ORNL到着
1984年1月  日本、GDコイルの予備実験、He漏れのため中止
2月  スイス・コイル、ORNL到着
4月  ユーラトム・コイル、国内実験に成功
9月  日本、GD、スイスの3個のコイルを冷凍しGDと日本コイルへの同時通電に成功
11月  ユーラトム・コイル、ORNL到着
12月  米国GEコイル、ORNL内で完成
1985年8月  米国WHコイル、ORNL到着
10月  6個のコイルの据付完了
1986年1月  6個のコイルの予冷開始
3月  6個のコイルの超電導実験開始
1987年9月  6個のコイルの超電導実験終了
10月  コイル系昇温終了、真空容器の蓋開け

(3)コイルの寸法及び実験配置



JT-60のトロイダルコイルとLCTコイルの比較



大型真空容器内に設置された6個のLCTコイル

組合わせ実験に於ける実験項目、期間、実験順序


4.主要な実験結果
(1)8T、パルス磁界印加実験の結果
 日本のコイルの核加熱負荷(模擬)及びパルス磁界印加の条件下で1/2ターンを人為的に常電導にしても約2秒で自ずと超電導状態に復帰した。

 これは優れた超電導安定性を意味している。



8テスラ発生、核加熱負荷(53mW/cm3)、およびパルス磁界印
加の条件での超電導復帰の特性カーブ

(2)拡張実験の結果
 1)定格8テスラを超える高磁界発生への挑戦


2)定格電流値を超える限界電流への挑戦

単独通電 140%

(3)コイルの構造及び冷凍方式の比較
 以上の他各コイルについて詳細なデータが取得されているが、全体の特徴を定性的にまとめ、下表に示す。

5.LCT計画の成果
(1)核融合用大型超電導トロイダルコイルを同一条件で実験する事により国際的なデータベースが確立した。

(2)ハードウェアの経験を通じて、核融合実験炉の超電導コイルの諸パラメータの具体的展望が作れるようになった。

(3)LCT計画以前、後進的であった日本の超電導コイル技術はこの計画により飛躍的に成長し、他を凌駕するようになった。

(4)ハードウェアによる国際協力の経験をへることにより、今後の国際協力の為の力強い基盤ができた。

6.おわりに
 −目下、四か国でデータ解析、評価を続けており、昭和63年9月に英文報告を出版する。この折、IEA本部にてシンポジウムを開催するよう準備が進められている。


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