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資料

原子力に関する世論調査

昭和63年1月
総理府
内閣総理大臣官房広報室



〔本概要を読む際の注意〕
1 Nは質問に対する回答者数で、100%が何人の回答に相当するかを示す比率算出の基数である。なお、特に数字を示していない場合はN=2,370人(有効回収数)である。

2 標本誤差は回答者数(N)と得られた結果の比率によって異なるが、単純任意抽出法(無作為抽出)を仮定した場合の誤差(95%は信頼できる誤差の範囲)は下表のとおりである。

 なお、本調査のように層化二段抽出法による場合は標本誤差が若干増減することもある。また、誤差には調査員のミスや回答者の誤解などによる計算不能な非標本誤差もある。

3 質問の種類を示す記号は次のとおりである。
S.Q.:  前問で特定の回答をした一部の回答者のみに対して続けて行った質問(Sub-Questionの略)
 
M.A.: 1回答者が2以上の回答をすることができる質問(Multiple Answersの略)。このときM.T.(Multiple Totalの略)は回答数の合計を回答者数(N)で割った比率であり、その値は100%を超える。
 
〔回答票〕:  回答の選択肢を列記した「回答票」を示して、その中から回答を選ばせる質問。

4 結果数値(%)は表章単位未満を四捨五入してあるので、内訳の合計が計に一致しないこともある。

5 統計表等に用いた符号は次のとおりである。
0.0:  表章単位に満たないが、回答者がいるもの
-:  回答者がいないもの
※:  調査をしていない項目
*:  回答の選択肢が長いため、その一部を省略して表章してあるもの

6 本調査で使用した原子力発電所の立地県とは、現在運転中のもののほか、建設中、計画中のものも含み、北海道、青森、宮城、福島、茨城、新潟、石川、福井、静岡、島根、愛媛、佐賀、鹿児島の計18道県である。

Ⅰ 調査の概要

1 調査の目的
 我が国では、原子力の開発利用に着手して80年を迎えている現在、原子力及び原子力発電所に対する国民の意識を調査し、今後の原子力発電の円滑な推進を図るための参考とする。
2 調査項目
 (1)原子力についての認識等
 (2)チェルノブイル原子力発電所の事故
 (3)原子力発電の認識
 (4)原子力発電の安全性
3 調査対象
 (1)母集団 全国20歳以上の者
 (2)標本数 3,000人
 (3)抽出方法 層化2段無作為抽出法
4 調査時期
 昭和62年8月27日~9月6日
5 調査方法
 調査員による面接聴取
6 調査実施委託機関
 社団法人 中央調査社
7 回収結果
 有効回収数(率) 2,370人(79.0%)

〔参考〕本概要で結果を引用した過去の世論調査


Ⅱ 調査結果の概要

1 原子力についての認識等

(1)原子力についての知識
 原子力に関することについてどの程度知っているか聞いたところ、「原子力発電も、蒸気の力でタービンをまわして発電するという点では火力発電と同じしくみになっている」は40.1%、「私達は、普通でも大地や宇宙などから放射線を受けている」は65.8%、「万が一の原子力発電所の事故に備え、地震などの時と同様に法律に基づき緊急医療、緊急避難などの対策がとれるようになっている」は37.6%、「原子力発電の燃料であるウランは、再利用することができる」は43.5%の者が「知っている」と答えている。(図1)

図1 原子力についての知識(「知っている」と答えた者の割合)


ア 原子力発電のしくみ
 「知っている」と答えた者は、性別では男性が女性の約3倍、年齢別では40~50歳代で多くなっている。(図2-ア)

イ 自然界の放射線
 「知っている」と答えた者は、都市規模別では都市規模が大きくなるほど、性別では女性より男性、年齢別では低年齢になるはど多くなっている。(図2-イ)

ウ 原子力防災体制
 「知っている」と答えた者は、都市規模別では都市規模が大きくなるほど多くなる傾向にあり、性別では女性より男性、原子力発電所の立地別では非立地県より立地県で多くなっている。(図2-ウ)

エ ウランの再利用
 「知っている」と答えた者は、都市規模別では東京都区部、性別では男性が女性の約2倍、年齢別では30・50歳代、原子力発電所の立地別では非立地県より立地県で多くなっている。(図2-エ)

図2 原子力についての知識(「知っている」と答えた者の割合)


 次に、原子力についての知識アからエのうち1つでも知っていると答えた者(1,802人)に、原子力についての知識を何から得たかと聞いたところ、「テレビ、ラジオを見聞きして」をあげた者が80.9%となっており、次いで「雑誌、週刊誌を読んで」(29.5%)、「人から聞いて」(14.4%)などとなっている。(複数回答)(図3)

図3 原子力についての知識は何から(原子力についての知識で
1つでも知っていると答えた者に、複数回答)


(2)「原子力の日」及び「科学技術週間」の周知
 「原子力の日」や「科学技術週間」があることを知っていると答えた者は34.6%(「どちらも知っている」21.9%+「原子力の日は知っている」10.0%+「科学技術週間は知っている」2.8%)で3人に1人となっており、「原子力の日」を知っていると答えた者は31.9%(「どちらも知っている」+「原子力の日は知っている」)、「科学技術週間」を知っていると答えた者は24.6%(「どちらも知っている」+「科学技術週間は知っている」)となっている。

 「原子力の日」や「科学技術週間」を知っていると答えた者は、性別では女性より男性、原子力発電所の立地別では非立地県より立地県で多くなっている。

 前回の調査結果と比較すると、「どちらも知らない」と答えた者が増加している。(図4)

図4 「原子力の日」や「科学技術週間」の周知

(3)原子力について知りたいこと
 原子力について知りたいことはどのようなことか聞いたところ、知りたいことがあると答えた者は77.1%と約4人に3人が答えており、その内容としては「放射線(能)の人や環境への影響」(35.8%)、「原子力発電所の安全体策」(32.3%)、「放射性廃棄物の処理・処分対策」(29.4%)などとなっている。(複数回答)(図5)

図5 原子力について知りたいこと(複数回答)

 都市規模別では、「人や環境への影響」は人口10万以上の市、「発電所の安全対策」、「防災体制」は東京都区部、「放射線の種類としくみ」は10大市で多くなっている。

 性別では、「発電所の安全対策」や「廃棄物の処理・処分」は女性より男性、「人や環境への影響」や「原子力の必要性」は男性より女性で多くなっている。

 年齢別では、「人や環境への影響」や「廃棄物の処理・処分」は低年齢になるほど多く、また、「特に知りたいことはない」は高年齢になるほど多く、60歳以上では3人に1人となっている。

 原子力発電所の立地別では、「発電所の安全対策」や「廃棄物の処理・処分」は非立地県より立地県、「原子力発電所のしくみは」立地県より非立地県で多くなっている。(表1)

表1 原子力について知りたいこと(複数回答)
2 チェルノブイル原子力発電所の事故

(1)事故の周知
 昨年(昭和61年)4月にソ連のチェルノブイル原子力発電所で事故が起こったことを「知っている」と答えた者は92.9%、「知らない」と答えた者は7.1%となっている。(図6)

図6 原子力発電所事故の周知


 「知っている」と答えた者は、都市規模別では都市規模が大きくなるほど、性別では女性より男性、年齢別では50歳未満で多くなっている。(図7)

図7 チェルノブイル原子力発電所事故の周知(「知っている」と答えた者の割合)


 次に、チェルノブイル原子力発電所の事故を知っていると答えた者(2,201人)に、その事故が職場やまわりでどの程度話題になったかを聞いたところ、「話題になった」と答えた者は64.1%(「非常に話題になった」16.8%+「ある程度話題になった」47.3%)で約3人に2人となっており、「話題にならなかった」と答えた者は35.9%(「あまり話題にならなかった」28.0%+「全然(全く)話題にならなかった」7.9%)となっている。(図8)

図8 事故はどの程度話題になったか(事故を知っていると答えた者2,201人に)


 都市規模別では、「話題になった」と答えた者は10大市や人口10万以上の市、「話題にならなかった」は町村に多くなっている。(表2)

 年齢別では、「話題になった」と答えた者は30・40歳代、「話題にならなかった」は50歳以上に多くなっている。

表2 事故はどの程度話題になったか(事故を知っていると答えた者2,201人)


(2)原子力発電所に関する説明等の見聞き
 チェルノブイル原子力発電所の事故後に、原子力発電所に関する説明や解説を見聞きしたことが「ある」と答えた者は56.2%、「ない」と答えた者は43.8%となっている。(表3)

 見聞きしたことが「ある」と答えた者は、都市規模別では10大市や人口10万以上の市、性別では女性より男性、年齢別では30歳代で多くなっている。

表3 原子力発電所に関する説明等の見聞き


 チェルノブイル事故の周知との関連では、事故を知っている者では見聞きしたことが「ある」と答えた者が5人に3人、事故を知らない者では見聞きしたことが「ない」と答えた者が9割を超えている。(図9)

図9 原子力発電所に関する説明等の見聞き
×チェルノブイル事故の周知


 原子力について知りたいこととの関連では、見聞きしたことが「ある」者に知りたいことがあると答えた者が多く、特に「放射線(能)の人や環境への影響」、「原子力発電所の安全対策」、「放射性廃棄物の処理・処分対策」などは見聞きしたことが「ない」者より「ある」者で多くなっている。(表4)

表4 原子力発電所に関する説明等の見聞き
×原子力について知りたいこと


(つづき)


 原子力発電についての不安・心配との関連では、見聞きしたことが「ある」者に不安・心配に思うことがあると答えた者が多く、特に「事故や故障などで放射線(能)が漏れるから」、「放射線(能)が人体や子孫に影響を与えるから」、「廃棄物の保管や処理・処分などから」は見開きしたことが「ない「者より「ある」者に多くなっている。(表5)

表5 原子力発電所に関する説明等の見聞き
×原子力発電についての不安・心配


(つづき)

 次に、事故後に原子力発電所に関する説明等を見聞きしたことがあると答えた者(1,331人)に、見聞きしたのは何を通してか聞いたところ、「マスコミの一般報道」をあげた者が92.6%と圧倒的に多く、次いで「政府による広報」(8.3%)などとなっている。(複数回答)(図10)

図10 原子力発電所に関する説明等の見聞きは何から


3 原子力発電の認識

1)現在及び今後の主力発電
 我が国では現在、何が主力発電になっていると思うか聞いたところ、「石油による火力発電」と答えた者が39.5%で最も多く、次いで「水力発電」(27.9%)、「原子力発電」(17.3%)となっている。
 また、今後何が主力発電になると思うかでは、「原子力発電」と答えた者が60.6%で最も多く、次いで「太陽光発電」(10.7%)、「石油による火力発電」(7.4%)となっている。

 過去の調査結果と比較すると、現在の主力発電では「原子力発電」と答えた者が増加し、「石油火力発電」と答えた者が減少している。

 また、今後の主力発電では「原子力発電」と答えた者が増加し、「太陽光発電」と答えた者が減少している。(図11)

図11 現在及び今後の主力発電


ア 現在の主力発電
 性別では、「石油火力発電」は女性より男性で多くなっている。

 年齢別では、「石油火力発電」や「原子力発電」は低年齢になるほど、「水力発電」は50歳代に多くなっている。

 原子力発電所の立地別では、「水力発電」や「原子力発電」は非立地県より立地県にやや多くなっている。

 事故後に原子力発電所に関する説明等の見開きの有無との関連では、「石油火力発電」や「原子力発電」は見開きしたことがない者よりある者に多くなっている。

イ 今後の主力発電
 性別では、「原子力発電」は女性より男性で多く、「太陽光発電」や「水力発電」は男性より女性でやや多くなっている。(表6)

 年齢別では、「原子力発電」は40歳代、「太陽光発電」は低年齢になるほど多くなっている。

 原子力発電所の立地別では、「原子力発電」は非立地県より立地県、「太陽光発電」は立地県より非立地県で多くなっている。

 事故後に原子力発電所に関する説明等の見聞きの有無との関連では、「原子力発電」は見聞きしたことがある者で3人に2人となっている。(表6)
表6 現在及び今後の主力発電
(2)原子力発電の今後の割合
 現在我が国では、総発電電力量の約27%が原子力にって発電されており、今後この割合を増やしていく計画になっているが、このことについてどう思うか聞いたところ、「積極的に増やしていくほうがよい」は6.7%、「慎重に増やしていくほうがよい」は50.1%で2人に1人」、これ以上増やさないほうがよい」は23.2%、「現在より減らしていくほうがよい」は4.5%、「現在動いているものも止めたほうがよい」は1.8%となっている。(図12)

 都市規模別では、「慎重に増やす」は東京都区部、「これ以上増やさない」は10大市に多くなっている。

 性別では、「積極的に増やす」や「慎重に増やす」は女性より男性、「これ以上増やさない」や「現在より減らす」は男性より女性で多くなっている。

 年齢別では、「慎重に増やす」は30歳代で多くなっている。

図12 原子力発電の今後の割合


 今後の主力発電との関連では、「慎重に増やす」は原子力が主力になると答えた者で5人に3人、「これ以上増やさない」は石油火力や水力が主力になると答えた者で多くなっている。
 事故後に原子力発電所に関するに説明等の見聞きの有無との関連では、見聞きしたことがある者ではない者より「慎重に増やしていく」と答えた者が多くなっている。(表7)

表7 原子力発電の今後の割合


4 原子力発電の安全性

(1)原子力発電に対する不安・心配
 原子力発電について、何らかの不安・心配に思うことがあると答えた者は85.9%で、その内容としては「事故や故障などで放射線(能)が漏れるから」(39.9%)、「放射線(能)が人体や子孫に影響を与えるから」(39.4%)、「廃棄物の保管や処理・処分などから」(29.7%)などとなっており、「不安・心配に思うことはない」と答えた者は8.1%となっている。(図13)

 都市規模別では、不安・心配に思うことがある者は東京都区部で多く、東京都区部や10大都市では「人体や子孫への影響」、それ以外の都市では「事故などで放射線が漏れる」をあげた者が多く、「世間一般に危険だと言われているから」や「放射線(能)についてよく知らないから」は都市規模が大きくなるほど多くなっている。

 性別では、「廃棄物の処埋・処分」、「事故などの状況をよく知らされない」、「地震などの自然災害に対する安全性から」は女性より男性、「人体や子孫への影響」、「放射線は目に見えない」、「世間一般に危険と言われている」は男性より女性で多くなっている。

 年齢別では、不安・心配に思うことがある者は30歳代で多く、「事故などで放射線が漏れる」や「原子炉やその他の施設の安全性から」は低年齢になるほど多くなっている。

 原子力発電所の立地別では、「事故などで放射線が漏れる」や「自然災害に対する安全性」は非立地県より立地県で多く、「放射線は目に見えない」、「放射線をよく知らない」、「原子力発電所のしくみがよくわからないから」は立地県より非立地県でやや多くなっている。

 原子力発電の今後の割合との関連では、積極的に増やしていくほうがよいと答えた者の4人に1人が「不安・心配に思うことはない」と答えており、また、現在動いているものも止めたほうがよいと答えた者は少数ではあるが全員が何らかの不安・心配に思うことがあり、3人に2人が「人体や子孫への影響」をあげている。

図13 原子力発電に対する不安・心配


 原子力発電所の安全性との関連では、十分信頼できると答えた者の4人に1人が「不安・心配に思うことはない」と答えており、また、信頼できないと答えた者の9割以上が何らかの不安・心配があると答えており、全然信頼できないと答えたでは2人に1人が「人体や子孫への影響」や「事故などで放射線が漏れる」をあげている。(表8)

表8 原子力発電についての不安・心配(複数回答)



(2)日本の原子力発電所の安全性
 日本の原子力発電所の安全性について「信頼できる」と答えた者は51.7%(「十分に信頼できる」4.4%+「ある程度信頼できる」47.3%)で2人に1人となっており、「信頼できない」と答えた者の32.7%(「あまり信頼できない」29.0%+「全然(全く)信頼できない」3.7%)を上回っている。(図14)

図14 日本の原子力発電所の安全性


 「信頼できる」と答えた者は、都市規模別では東京都区部、性別では女性より男性、年齢別では20・40歳代、学歴別では高学歴になるほど多くなっている。(表9)

 原子力発電の今後の割合との関連では、「信頼できる」と答えた者は割合を増やしていく意向の強い者ほど多く、積極的に増やしていくほうがよいと答えた者では4人に3人となっている。

 原子力発電に対する不安・心配との関連では、不安・心配に思うことはないと答えた者の3人に2人が「信頼できる」と答えている。また、何らかの不安・心配がある者でも2人に1人が「信頼できる」と答えており、不安・心配の内容別では「原子力発電所の数が増加しているから」、「通常時でも放射線(能)が出ているから」をあげた者で、「信頼できない」が「信頼できる」を上回っている。

 チェルノブイル原子力発電所の事故の周知との関連では、事故を知っている者では「信頼できる」と答えた者が半数を超えている。

表9 日本の原子力発電所の安全性


 事故後の原子力発電所に関する説明等の見聞きの有無との関連では、「信頼できる」と答えた者は見聞きしたことがない者よりある者で多くなっている。(表10)

表10 日本の原子力発電所の安全性



 次に、日本の原子力発電所は「信頼できる」と答えた者(1,225人)に、その理由を聞いたところ、「日本の技術は優れているから」が46.0%で最も多く、次いで「日本では十分な安全対策がとられているから」(34.4%)、「過去に日本ではこのような事故が起きていないから」(23.3%)などとなっている。

 また、日本の原子力発電所は「信頼できない」と答えた者(774人)の理由としては、「人的ミスは起こり得るから」が49.1%で最も多く、次いで「過去に事故が起きていないといってもいずれ起こる可能性はあると思うから」(39.9%)、「実際に日本でも故障や小さな事故が起こっているから」(32.6%)、「日本の炉が安全とは言いきれないから」(32.0%)などとなっている。(複数回答)(図15)

図15 日本の原子力発電所が信頼できる・信頼できない理由
(日本の原子力発電所の安全性で信頼できる、
信頗できないと答えた者に、複数回答)


ア 日本の原子力発電所が信頼できる理由
 都市規模別では、「技術が優れている」は東京都区部、「過去に事故が起きていない」や「ソ連とは炉の型が違うから」は10大市で多くなっている。

 性別では、「技術が優れている」や「十分な安全対策」、「ソ連と炉の型が違う」は女性より男性、「過去に事故が起きていない」や「日本は安全だと言われているから」は男性より女性で多くなっている。

 年齢別では、「技術が優れている」は50歳以上、「過去に事故が起きていない」は30・40歳代、「外国に比べ故障などの発生率が低いから」は20歳代、「ソ連と炉の型が違う」は低年齢になるほど多くなっている。

 原子力発電所の立地別では、立地県では「十分な安全対策」、非立地県では「技術が優れている」をあげた者が多くなっている。

 原子力発電の今後の割合との関連では、「技術が優れている」は積極的に増やしていくほうがよいと答えた者、「十分な安全対策」は慎重に増やしていくほうがよいと答えた者に多くなっている。

 原子力発電に対する不安・心配との関連では、「技術が優れている」は不安・心配に思うことがある者よりない者、「過去に事故が起きていない」は不安・心配に思うことがない者よりある者で多くなっている。

 事故後に原子力発電所に関する説明等の見聞きの有無との関連では、「技術が優れている」や「ソ連と炉の型が違う」は見聞きしたことがない者よりある者、「過去に事故が起きていない」や「安全だと言われている」は見聞きしたことがある者よりない者で多くなっている。

 日本の原子力発電所の安全性との関連では、「技術が優れている」や「十分な安全対策」はある程度信頼できると答えた者より十分に信頼できると答えた者で多くなっている。(表11-ア)

イ 日本の原子力発電所が信頼できない理由
 都市規模別では、「いずれ起こると思う」や「日本の炉が安全とは言いきれない」は11大市、「人的ミス」や「実際に小さな事故が起きている」は人口10万以上の市に多くなっている。

 性別では、「実際に小さな事故が起きている」は女性より男性、「日本でも起こると言われている」は男性より女性で多くなっている。

 年齢別では、「人的ミス」や「実際に小さな事故が起きている」は30歳代、「いずれ起こると思う」は20・30歳代、「日本の炉が安全とは言いきれれい」は40歳代、「日本の技術も不十分」は50歳代で多くなっている。

 原子力発電所の立地別では、「人的ミス」や「いずれ起こると思う」は非立地県より立地県で多くなっている。

 事故後に原子力発電所に関する説明等の見聞きの有無との関連では、「人的ミス」や「実際に小さな事故が起きている」は見聞きしたことがない者よりある者で多くなっている。(表11-イ)

表11 日本の原子力発電所が信頼できる・信頼できない理由
(日本の原子力発電所の安全性で信頼できる、
信頼できないと答えた者に、複数回答)

ア 信頼できる理由

イ 信頼できない理由

Ⅲ 調査票

原子力に関する世論調査

昭和62年8月

Q1〔回答票1〕あなたは、「原子力の日」や「科学技術週間」を知っていますか。この中ではどうでしょうか。
(21.9) (10.0) (2.8)   (65.4)
(ア) (イ) (ウ) (エ)
どちらも知っている 「原子力の日」は知っている 「科学技術週間」は知っている どちらも知らない


Q2 あなたは、これからあげる原子力に関することについてご存じですか。知っている、知らないでお答えください。
知っている 知らない
(1)原子力発電も、蒸気の力でタービンをまわして発電するという点では火力発電と同じしくみになっている (40.1) (59.9)
(2)私達は、普通でも大地や宇宙などから放射線を受けている (65.8) (34.2)
(3)万が一の原子力発電所の事故に備え、地震などの時と同様に法律に基づき緊急医療、緊急避難などの対策がとれるようになっている (37.6) (62.4)
(4)原子力発電の燃料であるウランは、再利用することができる (43.5) (56.5)


〔(1)から(4)を通して「知らない」と答えた者はQ3へ〕
SQ〔回答票2〕あなたは、それらのことを何を通して知りましたか。この中からいくつでもお答えください。

(M.A.)

(N=1,802)
(6.9) (ア)原子力施設を見学して
(1.6) (イ)原子力に関する講習会や説明会に参加して
(6.9) (ウ)学校で習って
(14.4) (エ)人から開いて
(80.9) (オ)テレビ、ラジオを見聞きして
(29.5) (カ)雑誌、週刊誌を読んで
(5.9) (キ)パンフレット類を読んで
(1.9) (ク)専門書を読んで
(4.8)   その他(     )
(5.3)   覚えていない

(M.T.=158.2)



Q3〔回答票3〕わが国では、現在この中のどの発電が電力の主力になっていると思いますか。1つだけお答えください。
(39.5) (ア)石油による火力発電
(1.6) (イ)石炭による火力発電
(1.9) (ウ)天然ガスによる火力発電
(27.9) (エ)水力発電
(17.3) (オ)原子力発電
(0.6) (カ)太陽光発電
(0.2) (キ)地熱発電
(0.0)   その他(     )
(11.1)   わからない


Q4〔回答票3〕では、今後この中のどの発電が電力の主力になると思いますか。1つだけお答えください。
(7.4) (ア)石油による火力発電
(0.3) (イ)石炭による火力発電
(1.6) (ウ)天然ガスによる火力発電
(4.0) (エ)水力発電
(60.6) (オ)原子力発電
(10.7) (カ)太陽光発電
(0.5) (キ)地熱発電
(0.1) その他(    )
(14.8) わからない


Q5〔回答票4〕わが国では、現在総発電電力量の約27%が原子力によって発電されており、それはわが国で使用する全エネルギーの約10%に相当します。今後、わが国では原子力発電を増やしていく計画になっていますが、あなたはどう思いますか。この中ではどうでしょうか
(6.7) (ア)積極的に増やしていくほうがよい
(50.1) (イ)慎重に増やしていくほうがよい
(23.2) (ウ)これ以上増やさないほうがよい
(4.5) (エ)現在より減らしていくほうがよい
(1.8) (オ)現在動いているものも止めたほうがよい
(13.7) わからない


Q6〔回答票5〕あなたは、原子力発電について何か不安(心配)に思うことがありますか。あるとすればそれはどのような理由からでしょうか。この中からいくつでもお答えください。

(M.A.)

(15.7) (ア)原子力発電所のしくみがよくわからないから
(16.8) (イ)放射線(能)についてよく知らないから
(25.7) (ウ)放射線(能)は目に見えないから
(24.5) (エ)事故や故障などの状況をよく知らされないから
(20.0) (オ)世間一般に危険だと言われているから
(6.8) (カ)原子力発電所の数が増加しているから
(7.3) (キ)通常時でも放射線(能)が出ているから
(39.9) (ク)事故や故障などで放射線(能)が漏れるから
(39.4) (ケ)放射線(能)が人体や子孫に影響を与えるから
(15.4) (コ)原子炉やその他の施設の安全性から
(22.1) (サ)地震などの自然災害に対する安全性から
(29.7) (シ)廃棄物の保管や処理・処分などから
(0.4)   その他(             )
(8.1)   不安(心配)に思うことはない
(6.0)   わからない

(M.T.=277.8)



Q7 昨年(61年)の4月に、ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で事故が起こりましたが、あなたは、このことをご存じですか。
(92.9) (7.1)
知っている 知らない


→(Q8へ)


SQ〔回答票6〕この事故について、あなたの職場やまわりではどの程度話題になりましたか。この中ではどうでしょうか。
(N=2,201)
(16.8) (47.3) (28.0) (7.9)
(ア) (イ) (ウ) (エ)
非常に話題になった ある程度に話題になった あまり話題にならなかった 全然(全く)話題にならなかった


Q8 あなたは、チェルノブイリ原子力発電所の事故以降、原子力発電所に関する説明や解説を見たり聞いたりしたことがありますか。
(56.2) (43.8)
ある ない


→(Q9へ)


SQ〔回答票7〕それはどのような形で行われたものですか。この中からいくつでもお答えください。
(M.A.)
(N=1,331)
(8.3) (ア)政府による広報
(3.1) (イ)地方自治体による広報
(5.7) (ウ)電力会社による広報
(3.2) (エ)その他原子力関係機関による広報
(92.6) (オ)マスコミの一般報道
(1.0)   その他(        )
(1.1)   覚えていない

(M.T.=114.9)



Q9〔回答票8〕ソ連のチェルノブイリで事故が起こりましたが、あなたは、日本の原子力発電所の安全性についてどのように感じていますか。この中ではでうでしょうか。
(4.4) (47.3) (29.0) (3.7) (15.7)
(ア) (イ) (ウ) (エ)
十分に信頼できる ある程度信頼できる あまり信頼できない 全然(全く)信頼できない わからない





→(Q10へ)


SQa〔回答票9〕そう思われたのはどのような理由からでしょうか。この中からいくつでもお答えください。(M.A.)
(N=1,225)
SQb〔回答票10〕そう思われたのはどのような理由からでしょうか。この中からいくつでもお答えください。(M.A.)
(N=774)
(12.2) (ア)ソ連とは、炉の型が違うから
(46.0) (イ)日本の技術は優れているから
(34.4) (ウ)日本では十分な安全対策がとられているから
(17.9) (エ)日本は安全だと言われているから
(23.3) (オ)過去に日本ではこのような事故が起きていないから
(16.9) (カ)外国に比べ故障などの発生率が低いから
(0.8) その他(   )
(2.0) わからない
(32.0) (ア)日本の炉が安全とは言いきれないから
(23.6) (イ)日本の技術もまだ不十分だと思うから
(49.1) (ウ)人的ミスは起こり得るから
(12.3) (エ)日本でも起こると言われているから
(39.9) (オ)過去に事故が起きていないといってもいずれ起こる可能性はあると思うから
(32.6) (カ)実際に日本でも故障や小さな事故が起こっているから
(1.3)   その他(   )
(1.2) わからない
(M.T.=153.6) (M.T.=192.0)


Q10 〔回答票11〕あなたは、原子力について知りたいことがあるとすれば、どのようなことでしょうか。この中ではどうでしょうか(M.A.)
(14.9) (ア)原子力の必要性
(7.8) (イ)原子力発電の経済性
(35.8) (ウ)放射線(能)の人や環境への影響
(9.2) (エ)故射線の種類としくみ
(11.4) (オ)原子力発電所のしくみ
(10.2) (カ)原爆と原子力発電の違い
(32.3) (キ)原子力発電所の安全対策
(10.1) (ク)原子力発電の現状
(17.3) (ケ)原子力発電所の故障時の実状
(29.4) (コ)放射性廃棄物の処理・処分対策
(16.1) (サ)防災体制
(0.4)   その他(       )
(18.8)   特に知りたいことはない
(4.1) わからない

(M.T.=217.8)



<フェースシート>
F1〔性〕
(47.1) (52.9)


F2〔年齢〕あなたの年齢は満でおいくつですか。
(12.2) (22.7) (22.5) (21.4) (14.2) (7.1)
20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上


F3〔学歴〕〔回答票30〕あなたが最後に卒業された学校はこの中ではどれでしょうか。(中退、在学中は卒業とみなす)
(32.9) (ア)小・旧高小・新中卒
(47.1) (イ)旧中・新高卒
(19.1) (ウ)旧高・高専・大卒
(0.9)   不明


F4〔職業〕あなたのご職業は何ですか。
    具体的に記入の上、該当番号に○をつける
    (                            )
自営者 (5.9) 農林漁業
(9.8) 商工サービス業
(1.5) 自由業
 
家族従業者 (3.2) 農林漁業
(4.5) 商工サービス・自由業
 
被傭者 (2.2) 管理職
(2.7) 専門技術職
(13.5) 事務職
(19.4) 労務職
 
無職 (25.7) 主婦
(1.3) 学生
(10.3) その他の無職


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