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原子力委員会委員就任にあたって

藤波 恒雄



 4月に原子力委員に任命されてからはや1ケ月がたちました。

 原子力をとりまく諸情勢が一層複雑困難なこの時機に、新長期計画の策定など重要案件をかかえる原子力委員会の仕事に委員の一員として参画することは、私にとって誠に任の重いことであると思っています。

 今まで各所で経験してきたことをもとに、また広く各方面の御意見など勉強して、少しでもお役に立つよう努力するつもりです。

 このところ「原子力30年の歴史」や「原子力の将来ビジョン」に類する資料を読む機会が多いのですが、原子力開発もよくここまで進展してきたものだという感を深くすると同時に、多くの懸案問題が依然として、中途の段階で手間取っていることが分ります。

 世界的経済情勢の変動、チェルノブイル原発事件のショック等もあり、これからの各国の原子力政策は、それぞれの国情によって多様化してくると思われます。

 われわれは我国なりに、長期的観点から原子力エネルギーのもつ役割を位置づけ、腰を据えて着実にその研究、開発、利用を進めるべきであると考えます。

 一人歩き出来る足腰の強い原子力の基盤を作らねばなりませんが、研究開発の成果と経験を効果的に実用に結びつけるためには、よくいわれる「産・学・官の協力」は重要な問題だと思います。そして、その実をあげるためには、相互の理解と信頼の上に立った、血の通った協力関係を打ち立てる努力が肝要と思います。同時に、いわば官・官協力、各省庁間の関係も、より一層の協調が望まれるところです。

 何れにしても、これからの原子力開発の推進方策は簡単容易なものではないと思われます。大方の忌憚のない御意見、お知恵をお寄せいただければ幸いです。


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