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巻頭言

原子力委員会委員就任にあたって

門田 正三



 原子力委員会が発足して満30年という記念すべき年に、はからずも同委員会委員に任命され、大変光栄であると思っています。

 原子力の開発利用は広範な技術の集積の上に進められる巨大プロジェクトであり、技術には門外漢の私がその重責を果たしうるか、そして電源開発株式会社の総裁としての職務と両立しうるかと随分考えましたが、技術的側面とは別の観点から原子力開発利用推進政策を見る必要がある、週2回の会議出席でよいなどなど、周囲の人達の勧めもあってお引受けした次第です。

 従来、原子力については、東京電力(株)で16年、電源開発(株)で3年余、電気事業の経営者としての眼でみてきた積もりですが、この度原子力委員として、関係各省庁の担当の方々から現状と課題を伺ってみて、関連分野の裾野の広さ、政策判断に必要な知識の幅の大きさに驚いている次第です。週2回の委員会だけでなく、各種専門部会、懇談会等にもできるだけ参加し、官産学の各界の皆様の御意見を拝聴しつつ、自己啓発に努めているところでありますが、この10月、電源開発(株)が新生電発として再出発するのを機に、私も総裁を退任いたしますので、一層、原子力委員としての仕事に打ち込めると考えています。

 過去30年の原子力開発利用は、軽水炉を中心とした原子力発電分野のみならず、放射線利用等の面でも目覚ましい発展をとげ、今や原子力は国民生活に不可欠の存在となってきております。この時期に起こったソ連のチェルノブイル原子力発電所の事故は、大変不幸な出来事ではありますが、正に巨大技術に対する警鐘として謙虚に捉え、いろいろな角度から検討を行って、我が国の原子力開発利用の一層の発展のために生かして行くことが必要でありましょう。

 現在実施中の原子力開発利用長期計画の見直しに当たって、安全の確保を従来にも増して重要視すべきことは勿論のことですが、産業化の問題、基礎研究の維持、国際協力等々、いづれも21世紀を展望して長期的に極めて重要な課題であり、厳しい財政環境の中で原子力委員会の強力な指導性が求められていると考えています。私は、企業経営者としてのこれまでの経験を生かして、これらの課題に取り組み、原子力委員としての責務を果して行きたいと考えています。

 いづれにいたしましても、関係省庁、電気事業者のみならず、色々な機関に携わる皆様の御意見を伺いたいと考えています。なにとぞ御指導と御鞭撻をお願い申し上げます。

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