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海外主要国の原子力開発に関する調査について 海外諸国の原子力開発に関する動向を的確かつ迅速に調査・分析することにより、我が国の原子力に関する政策決定に資することを目的に、原子力委員会は(社)海外電力調査会の協力を得て、米国、フランス、西独と英国を中心とする先進国の原子力開発利用に関する動向を調査した。以下に、これら4カ国における最近の動向を記す。 米国では1984年11月の大統領選挙でレーガン氏が再選を果たした。2期目に入った同政権のエネルギー・原子力政策は、今年の9月に予定される「国家エネルギー政策」(NEPP-V)の発表を待たねばならない。1984年8月の選挙綱領を見る限り①エネルギー規制の緩和・撤廃、②DOEの解体、③原子力の推進を骨子としたものになるだろう。 1984年は年初から工事進捗率の高いユニットのキャンセルが相次ぎ、結局、合計8基がキャンセルされた。 高水準のキャンセルが続いている反面、ここ2、3年は運開設備の収獲期を迎え、1987年から原子力1億kW(ネット)時代となる見通しである。キャンセルとゼロ受注が続く厳しい経営環境にあって、原子炉メーカーは次のごとき生き残り策や政府の政策に期待している。①ハード部門の縮少、ソフト部門の拡大、②標準炉、新型軽水炉や新型増殖炉の研究開発、③原子力協力協定の仮調印(1984年3月)を行った中国その他の途上国を対象とした輸出。 なお、大統領選と日を同じくして、3州で原子力州民投票が実施された。原発資産のレートベース算入に伴う料金値上げ幅を制限するミズーリーの案件は否決されたが、低レベル廃棄物の州内処分を制限するオレゴンとサウスダコタの案件は成立した。 フランスは1974年に発表された発電電力の全原子力化政策を着実に実行し、短期間のうちに一元化された開発体制を築き上げた。1984年には総発電々力量に占める原子力発電々力量の比率は初めて50%を突破し、58.7%となった。需要の落ち込む夏場を中心に中間負荷運転に投入される設備が増えており、1984年には90万kW級PWR31基の中、28基が負荷追従運転を行った。 しかし、需要の低迷から原子力開発も今や、一つの曲り角に差しかかっている。前政権は年間発注規模を5基としていたが、ミッテラン現政権は1981年には3基に、また1984年10月には年間1基(1986年はプラス1基オプション)に各々縮小した。ただし、1990年の総発電々力量に占める原子力発電々力量の比率は70%余に据え置かれた。原子力開発を継続するに際しては、国内需要の開拓と輸出促進を前提としている。 実証増殖炉スーパーフェニックス(124万kWe)は1984年夏にナトリウムの充填を終えており、各種の試験を経て1985年末には運用する見通しである。 西独の原子力発電々力量は1983年比伸び率40.6%の927億kWhに達した。大幅に増加した理由には①1984年に4基合計503万kWeの原子力発電所が運開したことと②BWRのバックフィットと設備改良に伴う出力制限が1983年に共に終り、1984年から高稼動率で運転されたことが挙げられる。 高温ガス炉原型炉のTHTR-300は1983年9月に初臨界に達しており、1985年10月には運開する見通しである。また、高速増殖炉原型炉のSNR-300は1984年7月にナトリウムの充填が開始された。今後、各種の試験を経て、1986年12月に運転会社に引渡される予定である。 濃縮についてはウレンコ社のグロナウ遠心分離工場の建設が進み、1985年中に運用する見通しである。再処理については1985年1月の閣議了承を経て、2月4日、ドイツ原子燃料再処理会社(DWK)がバイエルン州ヴァッカースドルフに350トン・ウラン/年規模の商業用再処理工場を建設する旨発表した。廃棄物処分の分野でも大きな前進があった。すなわち、ゴアレーベンに続く第2の使用済み燃料中間貯蔵施設が7月、アーハウスにおいて着工され、また、ゴアレーベン低レベル廃棄物貯蔵施設では10月から貯蔵を開始した。 英国では設計変更や建設労働者と電気事業者との労使問題から、AGRの建設が大幅に遅延し、1977年に2基が運開した以降、新規運開は途絶えていたが、1984年には3基合計185万kWeが運開したのに続き、1985年にも同じく3基185万kWeが運開する見通しである。 1984年から1985年初めにかけて、今後の動向を左右する2つの出来事があった。一つはほぼ一年間続いた炭鉱ストの終結である。中央発電局では炭鉱ストを契機に、今後石炭火力の比率を落して行く方針を打ち出した。もう一つは2年2ヵ月に及んだサイズウエルB公聴会の完了である。中央発電局としては、1986年に政府の建設決定を得て着工し、将来はPWRのシリーズ建設を行いたい考えである。一方、国産AGRの取扱いという問題が残されている。 |
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