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核融合研究開発の動向に関する調査について


 核融合分野における研究開発に関する動向を適確に調査、分析することにより、我が国の核融合研究開発に関する政策決定に資することを目的に、原子力委員会は(社)日本原子力学会の協力のもとに、核融合の炉心プラズマ閉込め及び工学技術に関する動向について調査を行った。

 炉心プラズマ閉込めの研究については、昭和59年9月に開催された第10回プラズマ物理及び制御核融合研究国際会議で発表された最新成果を中心にして、各種プラズマ閉込め方式に関して調査を行ったところ、トカマク方式が近い将来に臨界プラズマ条件を達成するレベルに最初に到達することは確実とみられるが、その他の閉込め方式においても相当の進展があった。トカマク方式においては、プラズマの密度、温度、閉込め時間及びベータ値等で種々の装置の最高値を採れば、すでに核融合炉心に必要な条件は達成されている。また、同方式をさらに改良するために、定常運転、高効率化及び不純物制御等で研究が進んでおり、科学的データベースがさらに豊富になった。他の方式では、無電流プラズマの研究(ヘリオトロン等)、端損失の抑制(ミラー)及び10g/cm3までの圧縮(慣性閉込め)等、各々進展があった。これら各方式の研究の進展の中で、共通する科学的現象に数多くの進展があることが明らかになり、今後相互に密接な連けいを保ちつつ研究を進めることが重要である。今後、炉心プラズマの研究は、大型トカマク装置による核融合の科学的実証を主軸に、トカマクの改良及び他方式固有の研究とそのトカマク改良への寄与を目指した進展が図られることとなろう。

 工学技術の研究開発については、磁気閉込め核融合炉に必要な課題が明らかになり、実験炉実現の目標も具体的になった。炉構造、ブランケット、材料、超電導コイル、トリチウム、遠隔操作、加熱、電源、制御及び慣性閉込め固有技術等について現状を分析したところ、トリチウム関連技術を除けば諸外国と比肩しうるレベルにあるが、総合的にみれば我が国の工学技術は重点指向的である。磁気閉込め方式の工学技術には共通する要素が多く、今後計画的な研究開発を着実に推進すれば、現在想定されている実験炉レベルの工学技術の達成は可能と思われる。

 核融合研究開発の今後の動向については、現在の大型トカマク装置(JT−60、JET及びTFTR)が、新たな段階を画しつつあり、各国ともに次期装置計画を中心に、今後の計画を検討しつつある。次期装置については、いずれもトカマク方式を採用しており、D−T燃焼・自己点火炉心装置を指向している。米国の計画は、現在かなり流動的であり、短時間燃焼のみの装置を検討している。ECは改良トカマク方式により、炉技術の実証も考慮している。ソ連は、ウラン・ブランケットを組込んだハイブリッド炉を建設し、これを通じて炉技術の進展を図ろうとしている。

 我が国における今後の核融合研究開発は、上記のような現状及び動向を踏まえて、開発目標を明確にするとともに、国全体のコンセンサスを得る努力を続けながら開発戦略を立案することが重要となろう。さらに今後の研究開発の進展に伴なって、分担・相互協力体制を一層強化する必要があり、炉心プラズマの閉込め及び工学技術の動向把握に基づいて、次期大型装置計画の考え方を確立する一方で、研究開発基盤の充実や国際協力による補完にも配慮することも必要であろう。


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