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ROSA-Ⅳ計画の日米共同研究実施取極について 原子力局技術振興課
1 概要
日本原子力研究所(以下「原研」という。)が進めているROSA-Ⅳ計画(Rig of Safety Assessment:PWRの小口径破断による冷却材喪失事故及び過渡変化に関する安全性研究計画)に関する原研と米国原子力規制委員会(以下「USNRC」という。)との間の実施取極が本年11月に合意された。 2 経緯、背景
昭和57年5月開催されたベルサイユサミットに際して設置された技術、成長および雇用に関する作業部会において、軽水炉安全研究プロジェクトが、日本がリーダー国となって進めるべき4テーマのうちの1つとして合意された。 上記プロジェクトは、日本とECがコ・リーダーとなり、米、仏、西独、伊、ECが関心を示したものであり、その内容は熱水力挙動及び燃料挙動の2分野が特定されており、協力の方法としては共同研究の実施とそれらの成果を国際的に普及させるためのワークショップの開催となっている。 現在、共同研究に関しては、熱水力挙動分野において原研のROSA-Ⅳ計画のみが提案されている。 また、ワークショップに関しては、熱水力挙動分野は日本が、燃料挙動分野はECが責任をもって開催することとなっている。 サミットに当たって我が国は、ROSA-Ⅳ計画を各国の協力により強力に推進することが世界の軽水炉の安全確保に大きく貢献し、日本独自で実施するより研究成果の向上が図られ、又は外国の有益な研究成果が入手できるとの観点から提案したものであり、共同研究として進める基本的フレームは次のとおりである。 (1) サミットの精神にのっとり成果の国際的普及が可能になる枠組とする。 (2) 原研独自の研究計画を確保するため、協定枠組は2国間協力とする。 (3) 参加国からは計測器、研究者、関連研究成果等の提供を受け、原研からはROSA-Ⅳ計画の実験データ、解析結果等を相手国からの提供内容に応じて提供する。 ROSA-Ⅳ計画の国際協力については、上記基本的フレームに沿ってその実施主体である原研が積極的に推進してきた結果、従来からの協力経緯を基に、今般日米実施取極が合意に達したものである。この日米実施取極をひな型として、今後関心を有する各国と二国間取極を締結していく考えである。 なお、仏との協力は、本年5月に東京で開催された日仏軽水炉安全研究協力取極に基づく調整官会合での打診を受けて、昭和59年2月実質協議を行うこととなっている。 更に、西独、伊、EC等とも協議を進めていく予定である。 3 実施取極の概要
本取極は軽水炉安全研究の分野で概に締結されている旧LOFT協定(原研-USNRCS.51~S.58)、大型再冠水協力協定(原研-USNRC-BMFT(西独研究技術省)、S.55~S.60)等をベースとして、二国間協力の枠組で作成されたものである。 <取極の極要>
(1) 協力の目的:小口径配管破断による冷却材喪失事故時の熱水力挙動研究の推進のため国際協力によりROSA-Ⅳの共同研究を行う (2) 協力の種類と相手方:二国間協力USNRC (3) 計画の運営:二国間の技術グループ会合の助言を受けながら原研が実施に責任をもつ (4) USNRCの提供内容:
① 計測器、解析に必要な計算コードの貨与
② 研究者の派遣
③ RELAP5コード及びTRACコード並びに米国で行われるROSA-Ⅳ計画の実験解析に関する文書化された結果
(5) 原研の提供内容:
① ROSA-Ⅳ実験の実施
② 本研究協力を達成するのに必要な限度内で、実験データ、解析結果、計算コードの提供(USNRCからの派遣研究者のアクセス権による情報提供)
③ 日米技術グループ会合の運営
(6) 特許等の取扱い
① 派遣研究者が行った発明について
(イ) 研究者受入れ当事者は、自国及び第3国における発明に関する一切の権限を取得する。
(ロ) 研究者派遣当事者は、自国における発明に関する一切の権限を取得する。
② 伝達された情報による発明について
発明を行った当事者がすべての国における発明に関する一切の権限を取得する。
③ 実施権について
権利を取得した当事者は、他の当事者の要求により相手方当事者、政府、国民に対し、非独占的実施権を供与する。
(7) 協力期間: 4年間
<本取極の特色>
ROSA-Ⅳ計画の国際協力は、サミットの趣旨に倣い、可能な限り多くの関心を有する国に対し、その研究成果を提供できるよう留意した結果、取極中に次の条項が含まれている。 (1) 研究成果の普及
有益な確立された情報は、適切な会合において、原研及びUSNRCによって関心をもつすべての国に与えられうる。(例えば、熱水力挙動ワークショップで公表できる。) (2) 科学情報の交換
USNRCが提供した計測器、計算コードを用いて得られた実験データ、解析結果等を原研は必要に応じ第三者へ提供できる。(日米共同研究の成果を他の取極締結国へ提供できるよう配慮している。) |
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