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日米核融合研究協力に関する日本原子力研究所と米国エネルギー省との実施取決めについて 日本原子力研究所
日本原子力研究所は、11月8日、米国エネルギー省との間で「核融合研究開発における協力に関する日本原子力研究所と合衆国エネルギー省との間の実施取決め」を締結した。 この実施取決めは、「エネルギーに関する日米科学技術協力協定」に基づく核融合分野の研究協力の実施に係る「政府間交換公文」及び「科学技術庁とエネルギー省との間の実施取決め」により、協力実施指定機関として指定された日本原子力研究所がエネルギー省との間で、協力の実施細目について取決めたものである。 今回の「実施取決め」の締結によって、既に順調に研究協力が進捗しているダブレットⅢ計画に加え、核融合の物理から工学技術の研究開発に及ぶ広範な分野で緊密な協力が活発に行われるものと期待される。 また、この実施取決めの附属書として、「混合スペクトル核分裂炉による第一壁及びブランケット構造材料に関する日米協力試験」も同時に締結した。 この試験は、米国テネシー州のオークリッジ国立研究所にある原子炉HFIR(High Flux Isotope Reactor)及びORR(Oak Ridge Research Reactor)を用いて、核融合炉の第一壁及びブランケット構造材料を開発するうえでも最も重要と考えられる中性子照射効果について、日米共同で試験しようとするものである。 核融合炉の第一壁及びブランケット構造材は、D-T反応で発生する14MeVの高エネルギー中性子により照射される結果、材料内に原子のはじき出し損傷及び核変換によるヘリウムの生成が同時に大きな速さで起ることが予測されている。従って、これらの材料の開発に当っては、上記の現象による材料特性の劣化を正しく評価し、構造設計及び寿命予測などに反映させることが必要である。ところが、我が国の研究炉、材料試験炉等では年間当りの中性子照射量が少なく、照射実験に非常な長期間を要することとなる。一方、HFIR、ORRの両試験炉は中性子束が大きく、現時点において上記目的を達成し得る最良の手段であると考えられる。 日米協力試験は、日米双方でそれぞれ開発した候補材料試験片を共通の試験計画の下で照射及び照射後の材料工学的試験を行い、核融合炉材料の高中性子量照射下の特性と挙動に関するデータベースを確立するとともに候補材料の耐久性を評価しようとするものである。
この試験は、当面5年間の予定で実施されるが、核融合工学技術の重要な分野である炉材料の研究開発を進めるうえで、大きな役割を果すものと期待されている。 |
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