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大気中に放出された放射性物質拡散の即時予測システム開発に関する研究 運輸省気象研究所
気象研究所では、原子力施設の安全対策の一環として、万一の事故に際し、放射性のガスあるいは粒子状物質が環境大気中に放出された場合を想定し、現場の気流および拡散パラメータの実測と気象情報をもとに、数時間ないし1日くらい先までの放射性物質の大気中での移流径路と濃度分布を予測する計算モデルの開発を進めている。この計算モデルは原子力研究所等で別途開発されている放射線量計算モデル、人体影響評価モデル等と結合されて、原子力施設周辺の住民を守る総合安全システムとして活用されることになっている。 安全対策には、まず原子力施設の担当者が現場で即座に使える簡略モデルが用意され、その予測結果で重大と判断されたときは行政中軸の計算センターで精密モデルを用いて本格的に予測計算をし、住民への情報伝達や防災措置を講ずる根拠を与える手順が計画されている。このうち、簡略モデルは現場の限られた実測点のデータから統計的手法によって対象地域内の全メッシュの現況の表現及び数時間先までの予測計算を目的としており、ミニコンピュータによって処理される。一方、精密モデルは地表面の起伏や熱特性をインプットとして、非静力・非弾性条件のもとで運動方程式と拡散方程式の数値解を求めるもので、大型電子計算機の使用を前提としている。またこれらのモデルのインプットとなる広域気象データや対象領域内の実測データの収集処理法も検討され、実用検証のための現地実測と風洞実験も並行して行われている。 原子力施設には何重にも安全対策がほどこされ、高濃度の放射性物質が環境大気中に放出される機会は皆無に近いが、周辺の環境の安全対策の用意もまた必要である。このシステムは他の有害化学品を扱う施設や危険な細菌を扱う施設の安全対策にも適用できる。 |
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