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第1回日・IAEA JASPAS合同委員会の結果について 原子力安全局保障措置課
昨年11月の対IAEA保障措置技術支援協力計画(JASPAS)の発足に関する日本国政府とIAEAの書簡交換に基づき、第1回日・IAEA JASPAS合同委員会が次のとおり開催された。 1. 会合期日及び場所
昭和57年7月1日~2日
東京 外務省 国際会議室 2. 出席者
3. 主要結果 (1) JASPAS年次報告書のレビュー
JASPASの進めてきた9プロジェクトに関し、日本側から年次報告書(Annual Reports)及び今後の活動計画書を提出し、年次報告書については、IAEAは、本年9月までにコメントを日本に送付することとなった。 継続する6プロジェクトについての今次会合における了解事項は、以下のとおりである。 (プロジェクト81-1) 電子シール及び遠隔モニタリングシステムの開発
今後、タンパーレジスタンス(妨害操作に対する抵抗性)の向上等のため、IAEAの専門家も含めたデモンストレーションテストを実施していく。 (プロジェクト81-5) 高分解能γスペクトロメータによるプルトニウム同位体分析システム
Kエッジ濃度測定システムと組み合わせて新しいシステムとし、1984年後半までにルーチンコースへ移行すべく進める。 (プロジェクト81-6) ポータルモニターとの組み合わせによる封じ込め・監視システム
本年3月から第2段階の実証試験をIAEAも含めて進めていく。 (プロジェクト81-7) 遠隔連続検認(RECOVER)システム
IAEAのRECOVER実証試験の支援及びRECOVERシステムの地域使用のための改良を中心に行ない、今後の計画は関係者で良く検討をしつつ進める。 (プロジェクト81-8) 自動検証機能付ファイバーオプティックシール
今後は、IAEAへの情報の提供、専門家の招へい(1983年)等により情報交換を行ない、他の国のIAEA保障措置技術支援協力計画と不要な重複がないよう進めていく。 (プロジェクト81-9) サーフィス・シール(熱収縮性フィルムシール)
今後、タンパーレジスタンスの向上を中心に開発を進める。 (2) JASPAS最終報告書のドラフトのレビュー
今次会合において終了する3つのプロジェクトについての最終報告書(Final Reports)のドラフトを日本側が提出し、IAEAは、本年9月までにコメントを日本に送付することとなった。 この3つのプロジェクトについての今次会合における了解事項は、以下のとおりである。 (プロジェクト81-2) 使用済燃料受入区域における監視システム
35mmサーベイランスカメラの開発は中止。燃料集合体の番号確認のための水中テレビカメラシステムは、ルーチンコースヘの適用が可能。移動プールの監視カメラシステムについては、動燃が独自に改良を進める。 (プロジェクト81-3) エレクトロマノメーターシステム
動燃とIAEAの較正方法に一部相違はあるが、ルーチンユース化が充分可能であり、JASPASを終了させルーチン化を進める。 (プロジェクト81-4) Kエッジ法によるプルトニウム濃度測定システム
JASPASを終了させ、ルーチンユースへ移行する。 (3) 新規プロジェクトの提案
(3.1) 日本側から、以下の6テーマを1982年から、JASPASの新規プロジェクトとして追加する計画であるとの提案を行った。 ① レジンビード法による試料収去及び分析技術の開発
実施機関:動燃事業団
主な内容:再処理工場の使用済燃料溶解液からの試料収去を微小な樹脂粒を用いた吸着法を採用することによって効率化する。このため、試料収去及び分析の実証試験を行う。 ② プルトニウム製品区域におけるモニタリングシステムの開発
実施機関:動燃事業団
主な内容:再処理工場のプルトニウム製品を取り扱う区域において、バルブ、ポンプ、液位計等の各種信号をモニターし、コンピュータで管理記録するシステムを開発する。このための実証試験、ソフトウェアの開発等を行う。 ③ ELMO8mmサーベイラスカメラの開発
実施機関:動燃事業団
主な内容:撮影時間が長く、査察官の操作性、フィルムのレビューがより容易に伝えるカメラシステムを開発する。 ④ 保障措置データの即時解析及び新しいソフトウェアの開発
実施機関:日本原子力研究所
主な内容:日本原子力研究所のデータ評価チームが、IAEAの査察データの即時解析サービスを行う。また、ソフトウェアの開発を行う。 ⑤ 保障措置評価のための同位体相関技術の開発
実施機関:日本原子力研究所
主な内容:再処理工場の使用済燃料溶解液の測定に同位体相関技術を適用し、そのためのデータ収集、解析システムを開発する。 ⑥ 人形峠ウラン濃縮工場における保障措置実証試験
実施機関:動燃事業団
主な内容:UF6シリンダーの重量測定システム、即時ウラン在庫量調査のためのロードセルシステム、ポータルモニターシステム、熱収縮性フィルムシール等ウラン濃縮工場における保障措置機器の実証試験を行う。
IAEAは、これらの提案を歓迎し、日本側はIAEAの希望も考慮しつつ、これらのプロジェクトを推進していくこととなった。 (3.2) IAEA側からは、上記の日本側提案6プロジェクトに加えて、次の3テーマについてもJASPASで推進してほしい旨の希望が示された。 ① 動的計量管理技術のデモンストレーションテスト
再処理工場における動的計量管理のコンピューターシミュレーション等のデモンストレーションテストをJASPASに組み入れてほしい。 ② チェレンコフ光観測用監視装置
使用済燃料から出るチェレンコフ光の観測が通常の照明下でも可能な監視装置の開発をJASPASに組み入れてほしい。 ③ 自動化学分析装置
ウラン、プルトニウムの自動化学分析装置の開発をJASPASに組み入れてほしい。 これに対し、日本側は、①、②については、近い将来JASPASに組み入れたいと考えている旨、伝えたが、③については、詳細な検討が必要であり、現時点では、JASPASに組み入れる意図がないが、情報交換には適宜応じてゆく旨答えておいた。 (4) JASPAS実施手続き
JASPASを日、IAEA間の円滑な協力のもとに実施していくための「実施手続き」(Administrative Procedures for JASPAS)について、日本側のドラフトを基に検討した結果、以下の事項について実施手続きを合意した。 ① プロジェクトの番号のつけ方
② プロジェクトの終了と開始
③ 各種レポートの作成手続
④ 無償の専門家(cost-free-experts)の派遣
⑤ 装置等の保管
⑥ 旅費等の支払い方法
4. 次回会合
次回は、1983年の適当な時期に、第4回日・IAEA保障措置合同委員会と連携して、ウィーンで開催する。 5. 今後のJASPASの推進にあたって考慮すべき事項
今回の第1回日・IAEA JASPAS合同委員会における議論を通じて、IAEA側のJASPASに対する期待が非常に大きいことが明らかとなった。 特に、東海再処理工場における核物質自動計量システム等の新しい技術の世界に先駆けたルーチンユースヘの移行、人形ウラン濃縮パイロットプラントにおける実証試験など、現実的・実際的な技術の開発、また、NVD用アダプター、長時間サーベイランスカメラ等日本が得意とする精巧な技術分野での日本のIAEAへの協力が期待されている。 このようなIAEAの期待を受け、我が国は、JASPASを推進し、保障措置の効率化を進めつつ、我が国の核不拡散に対する姿勢についての信頼をかち得ていくという基本方針に鑑み、今後ともIAEAのニーズと我が国の得意とする技術分野を勘案しつつ、JASPASを推進していくことが大切であると考えられる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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