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大型構造機器実証試験ループ(HENDEL)本体部の完成について



日本原子力研究所

 日本原子力研究所は、石油に代る新しいエネルギー源として、熱源、動力源など、その利用分野の広い多目的高温ガス炉の開発を進めているが、この程本格的高温工学実証試験を実施することができる大型構造機器実証試験ループ(HENDEL;Helium Engineering Demonstration Loop)の本体部が完成した。

 この本体部は、マザーループセクションとアダプターセクションで構成されており、ヘリウムガスを圧力40気圧、温度1,000℃の状態で、180時間運転するなど、2月下旬から延べ600時間の総合機能試験を終え、3月31日引渡しを受けたものである。

 HENDEL本体部の完成により、多目的高温ガス実験炉の高温工学実証試験が本格化し、同炉の実現に向けて一層の拍車がかかることとなった。


1 HENDELの必要性

 多目的高温ガス実験炉では、ヘリウムガスを冷却材として使用するが、高温高圧のヘリウムガスが燃料体、構造物、配管、中間熱交換器等に与える影響については、使用の経験が少いため,データが不足している。

 これらについては、各種の解析、計算、基礎試験、部分模型試験等を実施し、その結果を反映させながら実験炉の設計を進めている。

 しかし実験炉に組み込む前に、実験炉と同じ条件下で大規模モデルを使って、構造物、機器等の実証試験を行うことが、実験炉の安全性、健全性、基本的性能を確認する上で不可欠である。

 このため、実験炉とほぼ同じ条件の高温高圧ヘリウムガス(実験炉とほぼ同規模)を供給できる大型の試験装置としてこのHENDELの建設を行った。

2 HENDELの構成

 HENDELは構造上大別して次の3つのセクションから構成される。

(1) 本体部
 (a) マザーループセクション

 マザーループセクションでは、試験部に温度400℃、圧力40気圧、流量0.4kg/秒もしくは4kg/秒のヘリウムガスを供給する。これにヘリウム貯蔵、精製系、計測制御系、電源などの共通補助系が含まれる。

 (b) アダプターセクション

 アダプターセクションは、マザーループセクションから供給される400℃のヘリウムガスを1,000℃まで加熱して試験部に供給するとともに、試験部から戻るヘリウムガスを冷却する。

(2) 試験部−テストセクション

 アダプターセクションあるいはマザーループセクションから高温高圧のヘリウムガスの供給を受け、実験炉を構成する主要コンポーネントの大規模モデルによる実験を行う部分である。

3 HENDELの今後の計画

(1) マザー・アダプターセクション

 この度完成したループの本体で、57年度から本格的な実証試験を開始し、57年度末にはT1試験部と結合する。

(2) テストセクション

 実験炉炉心内における冷却材の伝熱流動に関する基本データ及び炉心の主要構成要素である燃料棒、黒鉛ブロック、制御棒等に関する工学的特性を求めることを目的として「燃料体スタック実証試験部(T1)」の製作を、55年度から開始し、57年度末には完成して運転に入る。

 T1以降の試験部としては、現在次のものと考えている。

 (a) 炉内構造物実証試験部(T2

 T2は、実験炉の炉心底部の炉床構造物について、シール、断熱、支持構造、高温二重配管の安全性、炉心出口の高温ヘリウムを混合する部分(高温プレナム)におけるガスの混合状態等に関する試験を行うもので、57年度に製作を開始する。

 (b) 大流量実証試験部(T3

 実験炉の炉心は、六角柱の黒鉛ブロックを水平、垂直方向に何段も積み重ねた構造となっている。このため、T3は、炉心内の冷却材の複雑な流動分布特性を明らかにする試験を行う。

 (c) 高温機器実証試験部(T4

 T4では、実験炉の中間熱交換器、蒸気発生器、高温配管、緊急遮断弁等に関する高温、高圧ヘリウムガス中の工学的データを得る試験を行う。

 (d) このほか、将来の計画として、HENDELを使って実験炉に接続する熱利用系プラントの実証試験を行うことを検討している。

 なお、HENDELは、流量、圧力、温度の3点を総合すると、世界の最高水準にあり世界各国から注目されている。特に、中間熱交換器等の試験計画(T4)、については、米国、西独が強い関心を示し、国際協力のバーゲニングパワーの一つとなることが期待されている。


HENDEL 試験条件

HENDEL試験部の範囲

HENDEL全体基本系統図



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