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原子力施設のデコミッショニングに関する調査(Ⅱ)の概要 原子力調査資料室
この調査は、原子力施設の使命及び目的を達成後にとるべき措置について、昨年度に引続き、欧米主要国の現状について調査し、わが国の現状に照らし合わせて、今後の原子力施設の設計及び建設の推進に必要な資料を作成することを目的としたものであり、昭和54年度科学技術調査資料作成委託調査費により、日本原子力研究所に委託して調査したものである。53年度に引続き日本原子力研究所ではこの委託調査を実施するため「デコミッショニング研究委員会」を設置し、次のような調査事項について取りまとめた。 (1) 原子力施設のデコミッショニングのケーススタディ(軽水炉及び核燃料関係施設のデコミッショニング計画及び考え方)
(2) デコミッショニング関連法規制の調査(米、英、西独、仏、加)
(3) 欧米主要国の原子力施設のデコミッショニング実施状況及び関連文献の調査
この調査を進めるにあたり、デコミッショニング研究委員会では次の4つの専門部会を設置して、それぞれ下記の項目について調査検討することとした。
以上の各専門部会の調査検討内容の概要は以下のとおりである。 各国の状況
米国では、エネルギー省所轄の遊休施設が486(1976年現在)あり、これらの施設を87のプロジェクトに分類し、1980年度から約4億1600万ドル(1979年ドル)の予算で20年にわたり実施する具体的計画を立てている。OECDでは1978年の会議で今後20~25年間に約45基の原子力発電所がデコミッショニングされると見込み、詳細研究のため650万ドルの支出を認めている。英国では現在密閉管理中のDounreayの高速炉DFRを解体することとして評価検討を行っており、Windscaleの改良ガス炉WAGRについても解体を予定している。西独ではNideraichbachの重水減速ガス冷却炉、LingenのBWR、GundremingenのBWRの3基が稼動を停止し何れもデコミッショニングの対象になっている。フランスでは、原子力発電による発電計画を推進する一方ではデコミッショニングの研究開発も遠隔操作用機器の開発を積極的に行っている。スェーデンでは、Agesta原子力発電所を用いてデコミッショニングのための除染技術開発の国際協力計画を推進することをOECDの場で提案している。 デコミッショニング関連法規制
米、英、西独、仏、加について調査整理した。米国が最も進んでいると言われているが、デコミッショニングという観点からでは必ずしも法規制が体系的に整備されているわけではないので、現在、見なおしが進められている。実施上の規制面では現行法規制をどう適用していくかゞ重要であり、①従事者及び一般公衆の安全、②財政上の適格性、の2点に最も重点を置いている。また、計画及び設計段階からもデコミッショニングし易いような設計を考慮するよう要請されるようになってきている。 他の国においては許可の変更(西独、仏)あるいは許可の取消し(英、加)等の措置により処理されているようである。 第1図 デコミッショニング方式選定のフロー図 ![]() コスト評価
今までに行われた多くのデコミッショニングコスト算定にもとづいて、デコミッショニングコストと熱出力との関係から500MWt以上の動力炉についてオーバーオールスケーリングファクター(OSF)を次のように導き出している。 OSF=0.2352+2.173×10-4($/MWt)
放射能インベントリーの評価
デコミッショニング計画及び解体工法の策定、また従事者の被曝低減対策及び廃棄物量の推定等のために重要な因子であり、炉心、反射体・生体遮蔽体中の性子束の計算法及び放射能インベントリの計算手法について述べている。 デコミッショニング計画書作成の要点
デコミッショニング作業が高線量率及び高濃度空気汚染環境で行われる可能性が高く、長期間にわたり続行され、一般公衆及び従事者の安全碓保を第一として綿密な計画書を作成する必要があるので、諸留意点及び手順について述べている。 解体技術
国内技術の現状調査に主眼を置きながら最新の資料をもとにして、デコミッショニングの調査検討のガイドとして役立てることを目的としてまとめている。デコミッショニング方式については、すでに種々の方式が分類定義されているが、特に米国の方式の体系を検討し、方式選定の基本となる考え方、各方式の特徴、具体的ケーススタディ例を調査するとともに、わが国軽水炉への適用についても検討している。デコミッショニング方式選定のフロー図及びデコミッショニング方式の定義と特徴を第1図及び第1表に示す。 解体工法及び解体機器
特に解体撤去手順についてわが国の大型軽水炉の主流であるBWR、PWRの解体撒去手順について分析・検討を行い、最も被曝量の多い、また環響への影響の大きい炉内構造物、圧力容器の解体時及び生体遮蔽の解体時に重点を置き、鋼構造物の解体工法及び解体機器の米国及びわが国の技術をサーベイしている。生体遮蔽コンクリートの解体については、米国で実証された管理爆破工法が主流となっているが、これ以外は余り検討されてないようである。わが国の一般建築物の解体技術は欧米に比べ優れている面も多く、多くの工法、機器が実用化されている。これらの技術を大型原子炉の放射化された鉄筋コンクリートの解体に適用する検討を行った結果、十分に目的を達成できる見通しが得られている。 |
第1表 最近のデコミッショニング方式の定義と特徴の要約 ![]() |
第2表 軽水炉の完全解体に伴う放射性廃棄物の発生量(試算) ![]() デコミッショニングし易い炉設計
原子力発電所の解体撤去及び安全貯蔵の研究、経験が進展するにつれて解体工法・機器の適用、工数、コスト等の分析評価から炉の設計・施工の時点から除染・解体し易い考慮をしておく必要があり、わが国における原子炉の運転保守経験から、また海外における経験・スタディ等から得られた提言等をサーベイし、考慮すべき設計上の問題点と対応策等をまとめている。 汚染除去、廃棄物処理処分、放射線安全
わが国の現状を念頭に置き、より具体的に各事項につき検討を行っている。汚染除去については放射性物質で汚染した原子炉施設の除染について、従事者の被曝低減を目的として軽水炉一次冷却系の汚染評価、化学除染に必要な設備装置、化学除染し易い構造・材質上の指摘、施設・設備機器の除染法、廃棄物のための除染法、解汚染廃棄物の除染による処分量の低減化とその効果などについて調査検討している。 廃棄物処理処分については、デコミッショニングに伴って発生する放射性廃棄物の発生量を的確に推定し、処理処分に関して詳細に検討しておくことは作業を進める上で不可欠である。また発生量の低減化施策及びその実現化のために、解体方式による放射性廃棄物発生量の変化、処理と処分に要する場所の確保、材料の選択、区分境界値を明確にすることによる発生量の低減化、新たに開発すべき処分法及び廃棄物の輸送などについて調査検討している。第2表に軽水炉の完全解体に伴う放射性廃棄物の発生量(試算)を示す。 放射線安全については、従事者及び一般公衆の放射線被曝低減を目的として行われるもので、デコミッショニング作業における放射線管理は原子炉の修理、改造工事などで従来から行われている放射線管理と本質的には異なる点はないが、高線量率及び高濃度の空気汚染の環境において作業すること、放射線防護上未経験の工法が採用されること、業種の異なる多数の外部作業者が作業に従事すること、長期にわたり各種の放射線作業が並行して進められることなど特徴的な事項が考えられる。これらの作業について被曝低減化のために被曝評価、被曝管理、放射線防護などについて検討している。 核燃料関係施設のデコミッショニングについては、再処理施設、MOX加工工場及びホットラボ等について基礎調査として全般的に検討している。 核燃料関係施設は原子炉施設と同様に使命・目的を達成した後にデコミッショニングされるが、現時点では核燃料関係施設のデコミッショニングに関する調査検討が国内外で緒についたばかりである。このため、核料燃関係施設のデコミッショニングにおける一般特性、解析事例及び今後の課題を整理するため原子炉施設との差異に力点を置きつつ次の諸項目について調査検討している。 (1) デコミッショニング方式と計画策定の考え方
(2) デコミッショニングにおける核燃料関係施設の特質
(3) 施設設計時におけるデコミッショニングヘの配慮
(4) 関連法規制及び基準の現状
(5) 事例研究
(イ) 解析例-米国NSF及び米国DOE参考用再処理工場ほか
(ロ) 経験-Eurochemic再処理工場ほか
(6) 今後の課題
なお、参考のためデコミッショニングにおける核燃料施設の特質(大型再処理工場と軽水炉との対比)及び施設設計におけるデコミッショニングの配慮について、それぞれ第3表に示す。 特に核燃料関係施設ではデコミッショニング方式が原子炉施設とやや異なり、その最終状態、転用の有無などにより種々の組合せが考えられることや超ウラン元素などの長寿命核種を取扱う施設では長期の安全管理に経済的負担が大きくなることから即時解体あるいは軽い安全管理ののち解体したのが得策であることなどが調査されている。今後の課題としては特にわが国における課題としては、大型核燃料施設のデコミッショニングまでにはまだ可成りの時間があるが、
(1) わが国における現存施設のデコミッショニングのケーススタディ
(2) 安全基準の整備-デコミッショニング特有のもの
(3) 実行可能な設計上の配慮-第2号再処理工場など
(4) 廃棄物管理-特に、減容-処分
(5) 資金計画の考え方
などを揚げている他に一般的課題についても提言している。 第3表 デコミッショニングにおける核燃料施設の特質 ![]() |
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