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原子燃料工業株式会社東海製造所における核燃料物質加工事業の許可について(答申)


53原委第486号
昭和53年9月1日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和53年2月20日付け53安(核規)第42号(昭和53年7月31日付け53安(核規)第215号一部補正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 原子燃料工業株式会社の昭和53年2月13日付け東許第53-1号(昭和53年7月18日付け東許第2号一部補正)による核燃料物質の加工の事業に関する許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第14条第1項各号に規定する許可の基準に適合していると認める。

 なお、各号の基準の適用に関する意見は別紙のとおりである。

(別紙)

 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第14条第1項各号に規定する許可の基準の適用に関する意見

 1 加工の能力

 今回の許可により、わが国の軽水炉用燃料の加工の能力は、約40t-U/年増加することになるが、わが国における軽水炉用燃料の需要見通しからみて、申請のとおり許可をしても、これにより国内加工事業者の加工の能力が著しく過大になることはないと認める。

 2 技術的能力

 当該事業者は、核燃料加工に関しては、20年に近い経験を有し、製造、技術部門の他に環境管理、品質保障部門があり、臨界管理、放射線管理、核燃料工学等の専門知識を有する技術者約100名(核燃料取扱主任者の免状を有する者24名を含む)を擁しており、今回の申請に係る軽水炉燃料に関してもすでに国内原子力発電所に納入の実績もあるので、当該事業を適確に遂行するに足りる技術的能力があるものと認める。

 3 経理的基礎

 今回の許可に必要とされる資金は、出資会社からの借入れにより調達される計画であり、その確保に見通しはあり、当該事業を適確に遂行するに足りる経理的基礎があるものと認める。

 4 災害の防止

 別添の核燃料安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告のとおり当該加工施設の位置、構造及び設備は、核燃料物質による災害の防止上支障のないものと認める。

(別添)

昭和53年8月21日
原子力委員会
   委員長 熊谷太三郎殿
核燃料安全専門審査会
会長 山本 寛

原子燃料工業株式会社東海製造所における核燃料物質加工事業の許可に係る安全性について

 当審査会は、昭和53年2月21日付け53原委第94号(昭和53年8月1日付け53原委第456号で一部補正)をもって、審査を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

Ⅰ 審査の結果

 原子燃料工業株式会社東海製造所における核燃料物質加工事業の許可に関し、同社が提出した「核燃料物質の加工の事業に関する許可申請書」(昭和53年2月13日付け申請、昭和53年7月18日付け一部補正)について、「加工施設の安全審査指針」に基づき審査した結果、「Ⅲ審査の内容」に示すとおり、本加工事業の許可に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。

Ⅱ 申請の内容

 本申請は、原子燃料工業株式会社が、同東海製造所として、濃縮度4%以下の二酸化ウラン粉末から、軽水炉用燃料集合体を製作(以下「主工程」と言う)するため、以下のとおり核燃料物質の加工施設を新設するものである。なお、本加工施設には、主工程の他にウランスクラップから二酸化ウラン粉末に再生加工する工程(以下「スクラップ再生加工工程」と言う)も設置する。

 1. 事業の概要

 東海製造所は、沸騰水型(以下「BWR型」と言う)及び加圧水型(以下「PWR型」と言う)軽水炉燃料集合体を年間40ton U生産する能力を有し、取扱う核燃料物質は、濃縮度4%以下の濃縮ウラン、天然ウラン及び劣化ウランである。

 加工の工程は、二酸化ウラン粉末から燃料集合体まで製作する主工程と、ウランスクラップを二酸化ウラン粉末に再生するスクラップ再生加工工程から成る。

 また、主工程には、二酸化ウラン粉末に中性子毒物を混合し、これを篩別、焼結等の工程を経て中性子毒物入りペレットを編成するまでの工程もある。

 加工の概要は以下のようになる。

(1) 主工程

 二酸化ウラン粉末に潤滑剤等を混合し、グリーン・ペレットに成型し、還元ガス雰囲気内において予備焼結及び焼結を行って、焼結ペレットとする。焼結ペレットを研磨・洗浄後、外観検査等を行って、被覆管に挿入し、燃料棒とする。

 燃料棒は、X線検査、ヘリウムリーク試験、外観及び寸法検査等の試験・検査を行った後、燃料棒表面の清浄化のために、電解研磨を行う。

 次に、燃料棒と支持格子等の部品を用いて燃料集合体に組立てる。組立て後の燃料集合体について外観・寸法等の検査を行った後、輸送容器に梱包、出荷する。

(2) スクラップ再生加工工程

 再生加工の方法は、スクラップを焙焼して八三酸化ウラン粉末とし、硝酸に溶解して硝酸ウラニル溶液とした後、重ウラン酸アンモニウム(ADU)沈澱物に転換し、乾燥、焙焼、還元の工程を経て二酸化ウラン粉末とする。

 2 加工施設の概要

(1) 位置

 本加工施設は、茨城県那珂郡東海村の南部で、海岸より内陸部約2kmに位置し、海抜約30mの台地上約144,000m2の敷地に設置する。

(2) 建家

 加工工場は、平家建て(一部2階建て)、延べ床面積約2,500m2であり、主体及び屋根は、鉄筋コンクリート造り、一部鉄骨造りとする。

 廃棄物倉庫、機械棟、高圧ガス貯蔵庫1及びボイラー棟は、平家建て、延べ床面積は、それぞれ約710m2、約200m2、約120m2及び約30m2であり、主体は鉄骨造り、屋根は鉄骨スレートぶきとする。

 危険物倉庫は、平家建て、延べ床面積約30m2であり、主体はコンクリートブロック造り、屋根は鉄骨スレートぶきとする。高圧ガス貯蔵庫Ⅱは、平家建て、延べ床面積約25m2であり、主体はコンクリート造り、屋根は鉄骨スレートぶきとする。他に事務棟、守衛所等を設置する。

(3) 化学処理施設、成型施設、被覆施設及び組立施設

 化学処理施設は、ウランスクラップを二酸化ウラン粉末とするための施設であり、主な設備及び機器としては、溶解槽、精製設備、ADU生成槽、濾過機、乾燥機、焙焼炉、還元炉等がある。

 成型施設は、二酸化ウラン粉末を二酸化ウランペレットとするための施設であり、主な設備及び機器としては、混合機、篩別機、プレス、予備焼結炉、焼結炉、研磨洗浄装置、外観検査装置、スタック編成装置、スタック押入装置、スタック乾燥装置等がある。

 被覆施設は、二酸化ウランペレットを被覆管に挿入し、燃料棒とするための施設であり、主な設備及び機器としては、挿入溶接機、X線検査装置、電解研磨装置等がある。

 組立施設は、燃料棒を組立てて燃料集合体とするための施設であり、主な設備及び機器としては、集合体組立装置、集合体検査装置、集合体梱包装置等がある。

(4) 貯蔵施設

 貯蔵施設は、原料(二酸化ウラン粉末等)、ペレット及び燃料集合体を保管するための貯蔵設備と、工程途上にある硝酸ウラニル溶液、ペレット等及び燃料棒を保管するための一時保管設備から成る。

 貯蔵設備としては、原料貯蔵棚、ペレット貯蔵棚、燃料集合体保管棚があり、貯蔵能力は、それぞれ貯蔵容器608個(約25㎏UO2/個)、12.6tonU、BWR型燃料集合体80体(PWR型燃料集合体40体相当)である。

 一時保管設備としては、精製ウラン溶液貯槽、ペレット等の保管棚、燃料棒の保管棚があり、最大貯蔵能力は、それぞれ300㎏U、3.7tonU、3,564本である。

(5) 廃棄施設

 (i) 気体廃棄施設

 気体廃棄施設は、地上約20mの排気筒、排気ダクト、フィルタボックス、スクラバー、排風機等から構成される。

 排気筒及び排風機室は、鉄筋コンクリート造りとし、排気ダクト及び排風機は鉄製とする。

 排気系統としては、部屋排気系統と設備からの局所排気系統があり、部屋排気系統には浄化リサイクルする系統を付設する。

 (ii) 液体廃棄施設

 液体廃棄施設は、工場建家内に設置された廃液処理設備及び建家外に設置された排水処理設備から構成される。

 廃液処理設備は、ステンレス鋼及び合成樹脂製であり、廃液貯槽、中和槽、沈澱処理設備から構成される。

 排水処理設備は、防水加工された鉄筋コンクリート製であり、排水貯槽2基、沈澱処理槽1基、下水ポンド2基等から構成される。

 (iii) 固体廃棄施設

 固体廃棄施設は、廃棄物倉庫内に設置され、クレーン及び保管棚から構成される。

 固体廃棄物の保管能力は、200lドラム缶換算約1,500本とする。

(6) 放射線管理施設

 個人被ばく管理用設備としては、ハンドフットクロスモニタ、螢光光度計等を備え、施設管理用設備としては、エアスニッファ、エリアモニタ、ダストモニタ等を備える。

また、モニタリングポスト及び風向・風速計を備える。

(7) その他の施設

 その他の施設として、ディーゼル発電機等の非常用電源設備、消火装置、火災自動警報装置等の防火設備、検査計量設備等を設置する。

Ⅲ 審査の内容

 本加工施設の新設にあたっては、以下のとおり適切な配慮がなされているので、新設に伴う安全性は確保されるものと判断する。

 1 加工施設の安全性

(1) 立地

 (i) 気象

 本加工施設の設置場所である東海村の気温は年間平均約13℃、年間降雨量は1,000~1,600㎜、風向は北西及び北東からの風が多く、風速は月別平均風速で約2m/secであり、大気安定度はD型が最も高い発生頻度を示している。

 (ii) 地盤

 地質は、表土よりローム層、粘土層及び砂層の順に続き、地表より8~10m以深から少なくとも20mまでは、N値50以上の砂層であり、加工工場等の構造物はこの砂層に杭で支持させることとしている。

 (iii) 水理

 加工施設の用水は、本敷地の南東約1kmの取水地で取水する井戸水及び村営水道水を使用することとしている。

 敷地内の雨水は、雨水調整池に一旦貯留し、排水量を制御しながら、敷地南側を流れる南新川に排出することとしている。なお、本敷地は、海抜約30mの台地であり、近くの南新川等の河川の洪水によって、影響を受けることは考えられない。

 (iv) 地震及び津波

 茨城県地方における地震の100年震度期待値は150gal程度であり、建物等の耐震設計においては、これを十分配慮することとしている。

 また、本敷地は、海抜約30mの台地であることから地震による津波の被害を受ける可能性はない。

 (v) 社会環境

 本敷地の周囲1km以内に、加工施設に影響を及ぼすような工場等の施設はなく、また、西方約300mに位置する住宅団地(戸数約300戸、人口約1,000人)以外は、人口は希薄である。

(2) 建家

 (i) 耐震性

 加工工場は、鉄筋コンクリート造りと鉄骨造りの部分とで構成され、いずれも水平震度0.25により得られる地震荷重に耐えられる構造とするとともに、それらの接続部において相互に干渉しないような構造とすることとしている。

 廃棄物倉庫、機械棟、危険物倉庫、高圧ガス貯蔵庫Ⅰ及びⅡ、ボイラー棟は、鉄骨造りであり、水平震度0.2により得られる地震荷重に耐えられる構造とすることとしている。

 加工工場、廃棄物倉庫、機械棟、高圧ガス貯蔵庫Ⅰ及びⅡは、基礎杭でN値50以上の砂層に支持させることとしている。

 (ii) 耐火性

 加工工場及びその他の主要な建物の主体は鉄筋コンクリート造りまたは鉄骨造りとし、その他の部分は、不燃材または難燃材で構成することとしている。

 (iii) 負圧管理

 スクラップ湿式処理室、ペレット加工室Ⅰ及びⅡ、原料貯蔵室等の非密封のウランを取扱う区域は、給排気設備によって組立室等の密封状態のウランを取扱う区域より負圧に維持することとしている。

(3) 設備及び機器

 (i) 耐震性

 硝酸ウラニル溶液の精製設備、プレス、焼結炉、X線検査装置、集合体検査装置、集合体保管棚等の主要な設備及び機器は床にボルトで固定する等により、水平震度0.3により得られる地震荷重に耐えられる構造とすることとしている。また、貯蔵棚等には、ウラン粉末容器等の落下防止機構を設けることとしている。

 さらに、ダクトは天井、壁に支持金具により支持し、水平震度0.3により得られる地震荷重に耐えられる構造とすることとしている。なおダクトは溶接構造とし、補強アングルを設け、接続部はフランジ接合とすることとしている。

 (ii) 耐火性

 焼結炉、還元炉等は鉄鋼及び耐熱材等で構成し、加工施設内の他の設備及び機器についても鉄鋼等の不燃材、難燃材で構成することとしている。

 (iii) 負圧管理

 非密封のウランを取扱う混合機、篩別機、プレス等の設備には、フード等を設け、その内部を室内より負圧に維持することとしている。

 また、停電時にも、非常用電源が作動し局所排気系統の排風機の運転を継続することとしている。

 2 火災防止対策及び爆発防止対策

(1) 火災防止対策

 「1 加工施設の安全性」で既述のとおり、施設及び設備は、鉄筋コンクリート、鉄鋼等の不燃材を主体として構成され、火災の発生及び拡大のおそれは少ないと考えられるが、さらに次のような火災防止対策を施すこととしている。

 スクラップ湿式処理室及び同室に設置する溶媒を取扱う設備は、消防法に基づく、危険物取扱所としての基準に合致した構造とすることとしている。

 また、同室内には発火源となるような加熱設備は設置しないこととする。さらに、緊急時には溶媒を隔離することができるように、緊急溶媒貯槽を設置することとしている。

 焼結炉、還元炉等のウランを加熱する設備については、それぞれの使用条件に応じて、十分な耐熱性を有する材料を使用し、冷却水で冷却するなどの処置を施すこととしているほか、過熱を防止するため、過熱防止機構を取付けることとしている。

 その他、防火設備として消防法に基づき、消火栓、消火器及び自動火災警報装置を設置することとしている。

(2) 爆発防止対策

 焼結炉、還元炉等の水素ガスを取扱う設備は、炉内への空気の混入並びに室内への水素の漏洩による爆発を防ぐため以下の対策を施すこととしている。

 炉内への水素ガスの供給圧を保つこと及び水素ガスを燃焼させて排出することにより炉内への空気の混入及び炉外への水素ガスの漏洩を防ぐこととしている。

 また、炉内への水素ガスの供給圧の低下及び室内での水素ガス濃度を検知、警報する設備を設けることとしている。

 さらに、万一内炉の圧力が上昇した場合、炉が破損することを防ぐため安全弁等の設備を設けることとしている。

3. 臨界管理

 本施設における臨界管理は、設備ごとの取扱制限値を定め、核的に隔離されている領域内の各設備間の中性子相互作用を立体角法により解析し、核的に安全に配置することにより行うこととしている。

 取扱制限値は、設備ごとにウランの濃縮度、減速条件、反射条件、系の均一・不均一性、幾何学的形状、濃度等の核的条件を考慮して、臨界ハンドブック(TID-7016Rev.1)の勧告値により定めることを基本とし、一部核計算コードを用い、中性子実効増倍係数が0.95以下であることを確認することにより定めることとしている。核的条件の考慮に際し、濃縮度は4%、反射条件は全反射条件とし、その他の条件についても厳しい条件とすることとしている。

 すなわち、溶解槽、還元炉、混合機、篩別機、プレスNo.3、研磨洗浄装置、スタック挿入装置及びスタック乾燥装置は質量制限値を、焙焼炉、予備焼結炉、焼結炉、外観検査装置、スタック編成装置は、厚さ制限値を、精製設備は、ウラン濃度制限値を、臨界ハンドブックの勧告値を参考にして求めることとしている。また、被覆施設の設備、組立施設の設備、精製ウラン溶液貯槽を除く貯蔵施設の設備、ADU生成槽、濾過機、乾燥機、プレスNo.1及びNo.2、研磨液濾過装置は、形状制限値あるいは質量制限値を核計算コードを用いて求めることとしている。

 各設備間の中性子相互作用については、30.5cm以上のコンクリートにより核的に隔離された領域内の各設備は、水没条件においては、面間距離を30.5cm以上とすること、また、通常時においては、面間距離を立体角法により求めた制限距離以上とすることにより、中性子相互干渉による臨界を防止することとしている。

 4 放射線管理

(1) 作業環境管理

 本施設においては、スクラップ湿式処理室、ペレット加工室Ⅰ及びⅡ、原料貯蔵室Ⅰ、ペレット貯蔵室等を第1種管理区域(非密封のウランを取扱う区域)とし、組立室等を第2種管理区域(密封状態のウランのみを取扱う区域)として管理することとしている。

 第一種管理区域は、ウラン粉末を取扱う混合機、篩別機、プレス等の設備にグローブボックス、フード等を設置し、その内部を負圧に維持することにより室内の空気の汚染を防止することとしている。また室内の空気中の放射性物質濃度は、エアスニッファで監視し、床、壁等の表面の放射性物質の密度はスミア法及びサーベイメータによって定期的に測定することとしている。

 部屋排気は、酸、アルカリ、有害ガス等が混入する可能性のある湿式処理室からの排気を除き、高性能フィルタで濾過した後、リサイクルすることとしているが、リサイクルする空気の放射性物質濃度は高性能フィルタの前で常時監視し、放射性物質濃度が一定値以上の場合は、関連給排気系統はワンススルーに切換えられる構造とすることとしている。

 また、外部放射線量率については、管理区域内をサーベイメータによって定期的に測定することにより管理することとしている。

(2) 個人被ばく管理

 従事者等の外部被ばく線量の測定は、フィルムバッジポケット線量計等により行うこととしている。内部被ばくは従事者等の作業環境の空気中のウラン濃度と作業時間により管理することとしており、また定期的に尿中のウラン分析を行うこととしている。

 5 廃棄物処理

(1) 気体廃棄物

 第1種管理区域のうち、スクラップ湿式処理室の部屋排気は高性能フィルタ1段で濾過し、また同室に設置される溶解槽、ADU生成槽等の酸、アルカリ溶液を扱う設備からの局所排気は、スクラバー等の空気清浄装置によって浄化した後高性能フィルタ1段で濾過し、ともに大気中に放出することとしている。

 ペレット加工室Ⅰ及びⅡ、原料貯蔵室、ペレット貯蔵室等の部屋排気は高性能フィルタ1段で濾過後、リサイクルするかまたはワンススルー方式の場合大気中に放出することとしている。ペレット加工室Ⅰ及びⅡに設置されるグローブボックス、フード等による局所排気系をもつ設備のうち、混合機、篩別機、プレス等の粉末を処理する設備からの局所排気は、高性能フィルタ2段で濾過し、予備焼結炉、焼結炉等の設備からの局所排気は高性能フィルタ1段で濾過し、ともに大気中に放出することとしている。

 排気にあたっては、ダストモニタで排気中の放射性物質濃度を監視することとしている。

 なお、本施設における排気口の放射性物質濃度は、ウランの最大取扱量を取扱うとし、粉末取扱設備からの局所排気は高性能フィルタ2段で濾過されるが、フィルタ1段で濾過されたとして計算しても、周辺監視区域外での許容濃度の約1/50となる。

(2) 液体廃棄物

 ペレット研磨液、ウラン抽出残液及びADU濾液等の工程排水は工場内に設置されている廃液処理設備により、中和、沈澱処理等を行い、また工程排水以外の液体廃棄物は直接排水処理設備に送られる。

 排水処理設備では、排水を貯留するとともに、必要があれば、中和、沈澱処理等を行い排水中の放射性物質濃度が周辺監視区域外での許容濃度以下であることを確認した後、下水ポンドより、排出することとしている。

(3) 固体廃棄物

 固体廃棄物は、ゴム手袋、ウエス、フィルタ、廃液処理に伴い生じる沈澱物等であり、年間ドラム缶約100本(200l換算)の発生が予想されるが、これらは可燃物、不燃物及びフィルタ等に分類して、鋼製ドラム缶等に封入し、廃棄物倉庫に貯蔵することとしている。

 廃棄物倉庫は、ドラム缶約1,500本(200l換算)改容可能である。

 6 事故評価

 本施設は、これまで述べたように十分な安全対策が講じられており、放射性物質の環境への放出を伴う事政が起ることは考えられないが、予備焼結炉の爆発事故が仮りに発生したとして、周辺公衆への影響を次の条件で評価している。

(1) 予備焼結炉内のウラン量は最大装荷量の150㎏Uとする。

(2) 爆発によりウラン量の1/100が室内に飛散して、高性能フィルタ1段を経て、排気口から放出されたとする。

 計算した結果、排気口における排気中のウラン濃度(3ケ月平均)は、6.0×10-14μCλ/㏄となり、周辺監視区域外における許容濃度を下まわる。

Ⅳ 審査の経過

 本審査会は、昭和53年3月6日第9回審査会において審査を行い、引き続き加工・使用部会において昭和53年4月11日、同5月9日、同5月31日、同6月15日及び同7月18日に審査を行った。さらに、部会報告書を受けて昭和53年8月21日第11回審査会において審査を行い、本報告書を決定した。

 なお、同部会の委員は、次のとおりである。

部会委員
(部会長)三島 良績 東京大学
今井 和彦 日本原子力研究所
岡島 暢夫 中部工業大学
清瀬 量平 東京大学
筒井 天尊 京都大学
松岡 理 放射線医学総合研究所
山本 寛 東京大学名誉教授
吉沢 康雄 東京大学

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