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四国電力株式会社伊方発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(答申) 53原委第370号
昭和53年7月4日
内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長
昭和53年5月18日付け53安(原規)第94号(昭和53年6月19日付け53安(原規)第191号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。 記
① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。 ② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。 (別添)
昭和53年6月21日
原子力委員会
委員長 熊谷 太三郎 殿
原子炉安全専門審査会
会長代理 三島 良績
四国電力株式会社伊方発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)に係る安全性について
当審査会は、昭和53年5月19日付け53原委第280号(昭和53年6月19日付け、53原委第363号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について、結論を得たので報告する。 Ⅰ 審査結果 四国電力株式会社伊方発電所の原子炉設置変更(1号原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「伊方発電所原子炉設置変更許可申請書(昭和53年3月6日付け、申請及び昭和53年6月9日付け、一部補正)」に基づけ審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。 Ⅱ 変更内容 1 燃料集合体設計の変更
本変更は、従来の燃料集合体(以下A型燃料集合体という。)と設計の異なる燃料集合体(以下B型燃料集合体という。)を伊方1号炉の取替燃料として使用するものであり、A型燃料集合体とB型燃料集合体は炉心内で混在して使用される。 燃料棒
従来の燃料棒(以下A型燃料棒という。)は低濃縮二酸化ウラン焼結ペレットをジルカロイ-4被覆管に挿入し、上部にステンレス鋼のコイルバネを入れ、両端にジルカロイ-4端栓を溶接した密封構造のもので、ヘリウムを加圧封入している。これに対し新しい設計の燃料棒(以下B型燃料棒という。)は、燃料棒上部プレナムのほか、燃料棒下部にもプレナムを設け、ここにはニッケル・クロム・鉄合金のコイルバネを使用する。被覆管の肉厚はA型燃料棒のものより約6%厚くなっており、その分だけ燃料ペレット直径が小さくなっている。また、ディッシュのほか面取りをしたペレットが内蔵され、燃料棒内部は、空気を抜いた後A型燃料棒と同様にヘリウムが加圧封入される。その他の燃料棒設計仕様はA型及びB型で同一としている。 燃料集合体
A型及びB型燃料集合体は、14行14列の正方配列を形成する燃料棒179本、炉内計装用案内シンブル1本、制御棒クラスタ案内シンブル16本、支持格子7個、端板付上部ノズル及び下部ノズル各1個から構成される。 A型燃料集合体は16本の制御棒クラスタ案内シンブルとこれに接合された7個のバネつき支持格子とによって骨格を形成し、燃料棒及び炉内計装用案内シンブルを挿入した後、上部及び下部ノズルを取付けて燃料集合体を組立てるのに対し、B型燃料集合体では、7個の支持格子に炉内計装用案内シンブルを、燃料棒及び16本の制御棒クラスタ案内シンブルを挿入し、骨格を形成した後上部及び下部ノズルを取付けて、燃料集合体を組立てることとしている。なお、B型燃料集合体の最上部と最下部を除く支持格子は、ある幅で上、下に動き得る設計となっている。 また、A型燃料集合体では燃料棒と上部及び下部ノズル間に、それぞれ約20㎜の間隙がある、いわゆるボトム・オフ構造であるのに対し、B型燃料集合体では燃料棒と下部ノズル間に間隙を設けない、いわゆるボトム・オン構造であり、燃料棒と上部ノズル間には約40㎜の間隙が設けられている。 その他の燃料集合体の設計仕様はA型及びB型燃料集合体で同一としている。 Ⅲ 審査内容 本変更の審査に当たっては14行14列B型燃料集合体の検討及び異なる二種類の燃料集合体が炉心に混在(以下混在炉心という。)することとなるため、その共存性についても検討を行った。 1 燃料の機械設計
B型燃料棒の機械設計はすでにその妥当性が評価されている燃料棒設計計算コード(FPAC)を用いて行われている。 燃料棒内圧については最大内圧となる第3サイクル末期においても一次冷却材圧力以下である。 被覆管にかかる応力及び被覆管の歪については燃料ペレットと被覆管の接触が生じている状態で運転時の異常な過度変化時に最大となるが、この時でも応力は未照射材の耐力を下回っており、円周方向引張歪の変化量についても設計基準の1%より十分小さい。 疲労設計はランガー・オドンネルの方法を用いて評価したが、燃料がその寿命期間中に受ける最大想定出力変動回数を考えても設計疲労寿命を十分下回っている。 輸送時及び取扱い時の燃料集合体の健全性についても検討した結果、問題ないことを確認した。 以上のことからB型燃料の機械設計については安全上問題ないものと判断する。 2 核設計
核設計についてはLEOPARD、PANDA、HIDRAコードで構成される計算システムとNULIF、SHARP-A、SHARP-XYコードで構成される計算システムのいずれかが使用されるが、すでにコードの信頼性についは確認されている。 A型燃料集合体で構成される炉心に新たにB型燃料集合体を装荷する混在炉心での反応度停止余裕、反応度係数等について検討を行ったが、これらはA型燃料集合体のみで構成される炉心と有意な差がなく、核設計上特に問題はないことを確認した。 また、燃料棒の最大線出力密度及び出力分布の安定性について検討したが、運転時の異常な過渡変化時でも燃料棒最大線出力密度は、制限値である64kW/m以下にとどまり、また、出力分布についてもサイクル中のキセノン振動を回避できることを確認した。 以上のことから核設計は妥当なものであると判断する。 3 熱水力設計
熱水力設計についてはDNB設計手法としてW-3/THINCコード又はW-3/改良COBRA-3Cコードのいずれかが使用される。 本原子炉に使用する14行14列燃料集合体は、B型燃料についてDNB実証試験を行った体系とは、燃料棒ピッチ及び制御棒クラスタ案内シンブル外径等において多少の差異があるが、この差異が小さいこと及びDNB実証試験の結果に照らし、DNBRとして1.30以上を使用していることは十分余裕を見込んでいる。従ってW-3/改良COBRA-3Cコードの本原子炉への適用性を損うものではない。 最小DNBRは通常運転時には約1.8であり、運転時の異常な過渡変化時でも1.30以上である。 燃料最高温度の評価は通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において、それぞれ約2,000℃及び約2,400℃であり、燃料の溶融が起こらないことを確認した。 以上のことから熱水力設計は妥当なものであると判断する。 4 共存性
A型及びB型燃料集合体が混在する炉心についてはその共存性について検討する必要がある。 このため審査に当たっては下記の事項について検討を加えた。 (1)機械的共存性
B型燃料集合体の支持格子は燃料棒の熱膨脹及び照射成長に伴って、A型燃料集合体の支持格子と相対的位置にずれを生じる。その影響を評価したところ、支持格子側板の高さが38㎜あるの対し、ずれの量は最大でも約±10㎜程度にとどまり、地震時を含めて検討したが、安全上問題ないことが確認されている。 (2)核的共存性
B型燃料集合体はA型燃料集合体と核的に等価になるように設計されているが、燃料被覆管肉厚及びペレット直径が若干異なるのでこれらの核特性に及ぼす影響について検討した。結果についてはコードの計算誤差の範囲内にあるので有意な差はないと判断する。 (3)熱水力的共存性
B型燃料集合体はA型燃料集合体と熱水力的に等価になるように設計されている。 B型燃料集合体の圧損特性及び支持格子による混合特性は、A型燃料集合体と等価であることを確認した。 上記(1)で述べた支持格子の相対的位置のずれについてはずれが小さく、熱水力設計上問題とならないと考える。 A型及びB型燃料棒の燃料最高温度はB型燃料棒の方が若干高くなるが安全上問題になるような相違ではないと考える。 以上のことから、A型及びB型燃料集合体は共存し得るものと判断する。 5 安全性
混在炉心ではA型及びB型燃料集合体の核熱特性の差異が運転時の異常な過渡変化時及び事故時に原子炉施設の安全性に対してどのように影響するか検討する必要がある。 従来の炉心の安全解析で使用されるパラメータと混在炉心のパラメータとを比較検討した結果、後者は前者のパラメータの範囲内にあることを確認した。 A型燃料棒とB型燃料棒ではペレットの熱容量、ペレット出力密度、及び被覆管熱容量がわずかに相違するが、検討の結果、熱応答特性としては、ほとんど同じであることを確認した。 以上のことから混在炉心における安全性は従来の炉心と変わることはないと判断する。 Ⅳ 審査経過 本審査会は昭和53年5月23日第170回審査会及び昭和53年6月21日第171回審査会において審査を行い、本報告書を決定した。 |
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