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動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の一部変更に係る安全性について(答申)


52原委第548号
昭和52年9月20日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

 昭和52年7月4日付け52安(核規)第1687号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 動力炉・核燃料開発事業団が設置する再処理施設に係る安全性に関し、同事業団が提出した「再処理施設の一部変更に係る安全性に関する書類」(昭和52年6月13日付け)に基づいて審査した結果、別添の核燃料安全専門審査会の報告書のとおり、安全上支障がないものと認める。

(別添)

昭和52年9月12日
原子力委員会
  委員長 宇野 宗佑 殿
核燃料安全専門審査会会長
山本 寛

動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の一部変更に係る安全性について

 本審査会は、昭和52年7月26日付け52原委第415号をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

Ⅰ 審査の結果

 動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の一部変更に関し、同事業団が提出した「再処理施設の一部変更に係る安全性に関する書類」(昭和52年6月13日付け提出)に基づいて審査した結果、『Ⅲ、審査の内容」に示すとおり、再処理施設の一部変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。

Ⅱ 変更の内容

1 ウラン貯蔵所の増設

 ウラン製品の貯蔵能力を増すため、下記の第二ウラン貯蔵所を設ける。

(1)建家及び設備

 第二ウラン貯蔵所の建家は、一部2階建て、建築面積約2,200㎡の鉄筋コンクリート構造(但し屋根は鉄骨構造)であり、1階には貯蔵室、保守区域、トラックヤード等を、2階には制御室、給気室等を設ける。

 本建家には、遠隔自動制御方式の搬送設備及びバードゲージを収納する鉄骨製の貯蔵棚等を設置する。

(2)貯蔵能力

 第二ウラン貯蔵所の貯蔵能力は、1.6%の低濃縮ウラン約500トン(金属ウラン換算)である。

2 放出廃液油分除去施設の設置

 放出廃液中の油分を除去するため、下記の放出廃液油分除去施設(以下C-施設と略称する)を設ける。

(1)建家及び設備

 C-施設の建家は、地下1階、地上3階、建築面積約700㎡の鉄筋コンクリート構造であり、地下1階には、廃液受入貯槽、放出廃液貯槽、スラッジ貯槽等を、地上1階には活性炭吸着塔室(2階まで吹抜け)、安全管理分室等を設ける。また2階には制御室、分析室等を、更に3階には給気室、排気室等を設ける。

(2)工程

 廃棄物処理場又は極低放射性廃液蒸発処理開発施設建家内の中和処理設備で中和された廃液は、C-施設内の廃液受入貯槽に受入れ、まづ砂濾過器で浮遊物質を除去し、次いで活性炭吸着塔で油分を除去する。油分除去した廃液は放出廃液貯槽に受入れ、モニタリングした後海洋に放出する。

 石濾過器、活性炭吸着塔は処理済廃液で逆洗浄し、逆洗廃液はシックナーでスラッジと上澄液に分離して、上澄液は砂濾過器に返送すると共に、スラッジは施設内のスラッジ貯槽に送り貯蔵する。油分を吸着した廃活性炭は、処理済廃液により廃炭貯槽に移送し、貯蔵する。スラッジ貯槽、廃炭貯槽の上澄液はシックナーへ返送する。

Ⅲ 審査の内容

 本変更に当たっては、以下のとおり適切な配慮がなされているので、変更に伴う安全性は確保されるものと判断する。

1 ウラン貯蔵所の増設について

(1)施設の安全性
① 耐震性

 第二ウラン貯蔵所の建家は、既設のウラン貯蔵所と同様に耐震分類C類で設計されることになっている。

 また貯蔵棚は、貯蔵容器を固定したバードケージが当該貯蔵棚から落下しないよう設計されることになっている。

② 臨界防止

 ウラン製品(UO3粉末)は、全濃度安全形状寸法の貯蔵容器に納められ、かつ、当該容器の保管にあたっては、臨界に達しないように、貯蔵容器をバードケージに固定した貯蔵棚に置くことにより、容器相互の間隔が保持されることになっている。

③ 放射線の遮蔽及び放射線の被ばく管理

 第二ウラン貯蔵所は鉄筋コンクリートによる遮蔽構造で設計され、建家外壁面における放射線量率は、1週30ミリレムを下まわるように設計されることになっている。

 また本施設では、従事者の作業環境を常に監視して安全を確認するとともに、放射線レベルの異常な上昇を迅速に発見し、その事態にすみやかに対処できるように、固定式の放射線監視装置が設置されることになっている。

④ 火災・爆発の防止

 本施設は主として鉄筋コンクリート構造で建設され、また火災・爆発をおこしやすい薬品等は使用しないので、火災・爆発の恐れはないが、一般的火災対策として消防法に定める消火設備、火災報知器が設置されることになっている。

⑤ 腐食の防止

 ウラン製品貯蔵容器は耐食性を考慮し、ステンレス鋼を材料として製作されることになっている。以上のとおり、本変更に係る施設は、再処理施設の設計の基本方針に基づいて設計されることになっており、施設の安全性は確保される。

(2)周辺環境への影響

 第二ウラン貯蔵所においては、ウラン製品はステンレス鋼製の堅牢な密閉容器に封入することになっているので、第二ウラン貯蔵所の設置は平常時において周辺環境に影響を及ぼすものではない。

 なお本施設については、十分な安全設計及び安全対策が講じられることになっており、施設内の従業員及び敷地周辺の公衆に影響を与えるような事故の発生は考えられない。

2 放出廃液油分除去施設の設置について

(1)施設の安全性
① 耐震性

 C-施設の建家、並びに主要な機器(廃液受入貯槽、放出廃液貯槽、スラッジ貯槽、活性炭吸着塔、砂濾過器等)及び放射性の液体配管は耐震分類B類で、またその他の機器及び配管は耐震分類C類で設計されることになっている。

② 放射線の遮蔽及び放射線の被ばく管理

 C-施設は、鉄筋コンクリート構造であり、建家の構造設計上の壁厚は、遮蔽設計上必要な壁厚より十分大きいので、放射線は十分に遮蔽される。

 また本施設では、従事者の作業環境を常に監視して安全を確認するとともに、放射線レベルの異常な上昇を迅速に発見し、その事態をすみやかに対処できるように、固定式の放射線監視装置が設置されることになっている。

③ 火災・爆発の防止

 C-施設の建家、機器等は、主として鉄筋コンクリート、ステンレス鋼等により構成され、また火災・爆発をおこしやすい薬品等は使用しないので、火災・爆発の恐れはないが、一般的火災対策として消防法に定める消火設備、火災報知器が設置されることになっている。

④ 腐食の防止

 C-施設の主要な機器及び配管は、耐食性を考慮しステンレス鋼を材料として製作されることになっている。

 以上のとおり、本変更に係る施設は、再処理施設の設計の基本方針に基づいて設計されることになっており、施設の安全性は確保される。

(2)周辺環境への影響

 C-施設の槽類から槽類換気へ移行する放射性物質の量は微量であり、しかも槽類換気はアブソリュートフィルター等で濾過したのち建家換気と合流し、再度アブソリュートフィルター等を通して局所排気口より環境中へ放出されるので、C-施設の換気系から放出される放射性物質の量は無視し得る。

 C-施設は放出前廃液の油分を除去するための施設であり、C-施設の設置により、その設置前に比べ放出廃液中の放射能量が増加することはない。

 また、C-施設で発生する固体廃棄物のうち、廃炭、スラッジについては、それぞれC-施設建家内の廃炭貯槽、スラッジ貯槽に貯蔵され、その他の固体廃棄物については廃棄物処理場で適切な処理が施され、低放射性固体廃棄物貯蔵場で貯蔵されることになっている。

 上記のようにC-施設の設置により、その設置前に比べ環境中へ放出される放射性物質の量が全体として増加することはないので、C-施設の設置は、平常時において周辺環境に影響を及ぼすものではない。

 なお、本施設については、十分な安全設計及び安全対策が構じられることになっており、施設内の従業員及び敷地周辺への公衆に影響を与えるような事故の発生は考えられない。

Ⅳ 審査の経過

 本審査会は、昭和52年9月12日の第7回審査会において、前記変更について審査を行い、同日本報告書を決定した。これらの変更については、昭和52年8月8日の再処理部会における審議を経ている。

 なお、同部会の委員は、次のとおりである。

部会委員
(部会長)高島 洋一 東京工業大学

青地 哲男 日本原子力研究所

伊沢 正実 放射線医学総合研究所

市川 龍資 放射線医学総合研究所

伊藤 直次 日本原子力研究所

稲垣 道夫 金属材料技術研究所

清瀬 量平 東京大学

坂上 治郎 お茶の水女子大学(名誉教授)

左合 正雄 東京理科大学

鈴木 正敏 金属材料技術研究所

内藤 奎爾 名古屋大学

林 正夫 電力中央研究所

日野 幹雄 東京工業大学

藤井 正一 芝浦工業大学

益子洋一郎 前工業技術院東京工業試験所

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