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日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更(放射性廃棄物処理施設の変更)について(答申)


52原委第339号
昭和52年6月7日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和52年3月22日付け52安(原規)第86号(昭和52年5月18日付け52案(原規)第163号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。



① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)

昭和52年5月20日
原子力委員会
  委員長 宇野 宗祐 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更(放射性廃棄物処理施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和52年3月22日付け52原委第185号(昭和52年5月18日付け52原委第325号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。


Ⅰ 審査結果


 日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更(放射性廃棄物処理施設の変更)に係る安全性に関し、同研究所が提出した「東海研究所原子炉設置変更許可申請書」(昭和52年3月11日付け申請、同年5月11日付けをもって一部補正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更内容


1 概要

 本変更は、放射性廃棄物処理施設の変更であり、その内容は中高レベル廃液蒸発処理設備(以下「蒸発処理設備」という)、アスファルト固化装置(以下「固化装置」という)、乾式焼却処理設備(以下「焼却設備」という)及び中高レベル固体廃棄物処理設備(以下「固体処理設備」という)を2棟の廃棄物処理棟を建てその中に設けるものである。

 また、汚染除去施設を増設し、一方、現在設置されているイオン交換樹脂処理装置を撤去する。


2 蒸発処理設備

 本設備は、中高レベル廃液の蒸発減容を行うための施設で、処理前廃液貯槽、蒸発濃縮処理装置、凝縮水貯槽、濃縮廃液貯槽等から構成される。蒸発缶や濃縮廃液貯槽等の主要部分はコンクリートセル内に収納される。

 本設備の処理能力は約0.7m3/hで、除染率は缶液基準で105以上となるように設計される。

 処理に伴って発生する凝縮水及び濃縮廃液はそれぞれ貯槽に回収され、凝縮水については放射性物質の濃度を確認した上排出される。一方、濃縮廃液については固化装置で処理される。本設備からのオフガスは、第2廃棄物処理棟の排気筒から排出される。


3 固化装置

 本装置は、発生する固化体の減少をはかるための設備で、アスファルト混和蒸発装置、熱媒装置、アスファルト供給装置、アスファルト・ドラム詰装置等から構成される。本装置の主要部分もコンクリートセル内に収納される。

 固化される濃縮廃液やスラッジ等は、鉱油を熱媒とした間接加熱方式のアスファルト混和蒸発装置によりアスファルトと混合、加熱され水分を蒸発し溶融混合物にされる。その処理能力は約0.1m3/dである。

 混合物はドラム缶等に注入し冷却され、固化体として保管廃棄施設に貯蔵される。濃縮廃液等から分離された蒸気は、復水器で復水となり放射性物質の濃度を確認した上排出される。本装置のオフガスは、蒸発処理設備と共用のオフガス処理装置で処理された後第2廃棄物処理棟の排気筒から排出される。


4 焼却設備

 本設備は、低レベル固体廃棄物の焼却減容をはかるための設備で、焼却物の投入器、焼却炉、乾式排気除塵設備、焼却灰取出装置等から構成される。

 焼却炉は、耐火性能を有する自然式であるが予熱及び助燃のための灯油燃焼式の予熱器も有し、廃油も灯油と一緒に燃焼できる。焼却対象物は投入器により間けつ的に焼却炉内に投入の上焼却処理され、その処理能力は約50㎏/hである。

 焼却灰は焼却灰取出装置によりドラム缶に入れられる。焼却に伴う排気は、1次、2次のセラミックフィルタで除塵と排気中の未燃分の2次燃焼が行なわれた後冷却され高性能フィルタでろ過後、地上高約30mの焼却設備排気筒から排出される。本設備の除染係数は系統全体で106以上となるように設計される。


5 固体処理設備

 本設備は、中高レベル固体廃棄物の一部をコンクリート固化体とするための設備で、移送装置、切断装置、圧縮装置、封入装置、線量測定装置及びコンクリート注入装置等から構成される。これら装置の主要部分はコンクリートセル内に設置される。

 処理対象の固体廃棄物は、本設備により切断、圧縮等の減容処理をするか、処理が不可能な廃棄物はそのままコンクリート容器等に封入される。本設備の処理能力は約0.2m3/dである。処理に伴うセルの換気は、高性能フィルタを通した後第2廃棄物処理棟の排気筒から排出される。


6 廃棄物処理棟

 廃棄物処理棟は2棟建設される。第1棟は汚染除去場の東側に設置され、地下1階、地上2階の鉄筋コンクリート造である。同棟には焼却設備の他廃棄物一次置場が設けられる。管理区域の換気は高性能フィルタを通した後、放射性物質の濃度を監視しながら焼却設備排気筒から排出される、処理棟内の床ドレン等の廃水はピットに回収し処理施設へ送れるように設計される。

 また、第2棟は液体処理場と保管廃棄施設の中間に設置され、地下1階、地上2階の鉄筋コンクリート造である。同棟には、固体処理設備を設ける各種セル、固化装置を設けるアスファルト固化セル及び蒸発処理設備を設ける濃縮セルが中央部に設置される。各設備の排気やセル内の換気等管理区域の排気は、高性能フィルタを通した後、放射性物質の濃度を監視しながら地上高約30mの第2処理棟排気筒から排出される。放射性廃液は液体処理場との間に設ける共通ダクト内の配管により移送の上処理される。


7 汚染除去場

 汚染除去場は、必要により原子炉施設等の部品の放射性汚染を除去する施設であり、液体処理場の北側にある現在の施設を拡張する。

 除染作業に伴う放射性廃液は、処理施設に送られまた、換気についても排気設備から排出される。


Ⅲ 審査内容


1 蒸発処理設備

 本設備の機器は耐食性を考慮した材料を使用し、腐食による漏洩がないように設計されるが、万一の漏洩時にも独立した区画や周辺のせきによりサンプに回収し処理できるように設計される。蒸発缶内の圧力や水位等は監視されており、蒸気や廃液の供給弁を自動閉止するインターロックや安全弁等が設けられる。また、放射性廃棄物処理の方法も妥当であるので本設備の安全性は確保されるものと判断する。


2 固化装置

 本装置では熱媒によりアスファルトを加熱するが、熱媒及びアスファルトとも可能性物質であることから熱媒の加熱はそれぞれの引火点により低い温度で制御される。また、系統の電気器具は全て防爆型のものを使用し引火防止がはかられる。熱媒の漏洩の可能性のあるところは漏洩防止をはかった設計とされるので、熱媒がアスファルトや大気中に漏れる可能性は低く、万一漏れた場合でも漏洩検知器による監視により爆発に至る恐れはないと判断する。

 本装置の設けられるアスファルト固化セルは防火扉や換気系の温度感知式ダンパ等によって隔離できるように設計されるほか、万一の火災に備え、要所に火災報知器、水噴霧装置、消火栓等が設けられる。

 また、放射性廃棄物処理の方法も妥当であるので本装置の安全性は確保されると判断する。


3 焼却設備

 本設備の主要材料は、耐火性能と耐食性を十分考慮して設計される。一方、本設備の系統内の温度を監視して異常に高くなった場合には燃焼物の供給を自動停止したり、焼却炉内圧の異常高の場合に燃焼物と燃焼用空気の供給が自動停止するよう設計される。焼却炉は破損防止のため圧力逃し弁も設けられる。

 本設備は、運転中は焼却排ガスや灰が系統外へ漏洩したり飛散するのを防止するため内部を負圧状態となるように設計される。

 また、セラミック・フィルタの差圧監視やその他放射性廃棄物の処理の方法は妥当であるので、本設備の安全性は確保されると判断する。


4 固体処理設備

 本設備の主要装置は遮蔽を考慮したセル内に設けられる。このセルは非常用電源にもつながる排風機によってセル内を負圧にするよう設計され、また、セル内の放射線量率が高い場合にはセルの扉が開かれるのを防止するインターロックも設けられる。

 セル内の換気や廃水等の放射性廃棄物の処理の方法も妥当であるので本設備の安全性は確保されると判断する。


5 廃棄物処理棟

 廃棄物処理棟のうち特に第2棟はコンクリートセルのような重量物が内部に設けられるので、支持地盤の地耐力を十分配慮した設計とするほか、高放射性物質に関連する建物・構築物は建築基準法に基づく水平震度の1.5倍(機器・配配については1.8倍)を水平震度とする地震に耐えるように設計される。その他の施設については、建物等は1倍(機器等は1.2倍)の水平震度で同様に設計される。支持構造物と機器等が共振する恐れがあるものについては機器等で動的な検討も行うことにしており、これら耐震設計の方針は妥当と判断する。

 セル等の遮蔽設計についても、従事者の各区域への立入頻度や滞在時間などを考慮して場所を区分して設計基準線量を定めている。この設計方針は妥当と判断する。

 その他、処理棟につながる共通ダクトについても配管は漏洩の可能性を少くするようにし、漏洩時にも回収できるように設計されるので、処理棟等の安全性は確保されるものと判断する。


6 汚染除去場

 本設備から発生する放射性廃液等の処理方法は妥当であり、また、床面等は除染性を考慮して設計されるので本設備の安全性は確保されると判断する。


7 放射線管理等

 管理区域の出入口にはチェンジングルームを設け出入管理や汚染管理が行われる。必要な個所にはエリアモニタを配慮し、プロセスモニタの記録と一緒に監視室で監視できるように設計される。その他放射線管理に必要な各種測定器も設けられる。

 排気筒から排出される放射性物質の発生源としては固体処理設備から排気系に流入する塵あいと、焼却設備の焼却排ガス及び蒸発処理設備と固化装置の廃液蒸気が考えられる。しかし、これら放射性物質が環境へ排出される量は無視できるほど少ない。

 また、排水口から排出される放射性物質についても同様に無視できるほど少なく、従って平常運転時における一般公衆の被ばく評価は変更前と変らない。


8 その他

 イオン交換樹脂処理装置が撤去されても低ベレル蒸発濃縮処理装置で処理が可能であるので、問題はないと判断する。


Ⅳ 審査経過


 本審査会は、昭和52年3月25日の第157回審査会において審査を開始し、同年5月20日の第159回審査会において審査を行い、本報告書を決定した。


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