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九州電力株式会社玄海原子力発電所の原子炉の設置変更(2号原子炉施設の変更)について(答申)


52原委第338号
昭和52年6月7日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和52年4月4日付け52安(原規)第101号(昭和52年5月18日付け52安(原規)第162号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第28条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)
昭和52年5月20日
原子力委員会
  委員長 宇野 宗祐 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

九州電力株式会社玄海原子力発電所の原子炉の設置変更(2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和52年4月5日付52原委第215号(昭和52年5月18日付52原委第323号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。


Ⅰ 審査結果


 九州電力株式会社玄海原子力発電所の原子炉の設置変更(2号原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「玄海原子力発電所原子炉設置変更許可申請書」(昭和52年3月25日付け申請、昭和52年5月11日付け一部補正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更内容


1 出力分布調整用制御棒クラスタ駆動装置の変更

 出力分布調整用制御棒クラスタ駆動装置の駆動方式をローラ・ナット式から磁気ジャック式に変更する。


2 気体廃棄物廃棄設備の変更

 水素廃ガス処理系統の制御方式を循環式から濃縮式に変更する。


3 固体廃棄物廃棄設備の変更

 廃液蒸発装置濃縮液のドラム詰処理をセメント固化方式からアスファルト固化方式に変更する。


Ⅲ 審査内容


1 出力分布調整用制御棒クラスタ駆動装置の変更

 現在、出力分布調整用制御棒クラスタ駆動装置(以下P/L CRDMと言う)はローラ・ナット式が使用されている。

 今回の変更は、これをトリップ防止型として開発した磁気ジャック式P/L CRDMに変更するものである。

 磁気ジャック式P/L CRDMはトリップを防止するためにロック機構が付加されており、駆動電源が喪失した場合でも出力分布調整用制御棒を現位置に保持するので、炉心の安全性に影響を与えないように配慮されている。

 実証試験としては、連続作動試験及び電源喪失試験を実施しており、十分な信頼性を確認している。

 以上のことから磁気ジャック式P/L CRDMを使用しても原子炉の安全性は確保できるものと判断する。


2 気体廃棄物廃棄設備の変更

 水素廃ガス処理系統は、水素をキャリヤとしてパージされた廃ガスを水素分離装置で放射性ガスと純水素とに分離し、放射性ガスは水素廃ガス減衰タンクに貯留するものである。

 本変更は、水素廃ガス処理系統の制御方式として水素分離装置で分離された放射性ガス水素廃ガス減衰タンクに送り、再び水素分離装置へ循環させていたものを、ブリードガス制御装置を設置して放射性ガスを再循環させることなく水素廃ガス減衰タンクに貯蔵する濃縮方式とするものである。

 ブリードガス制御装置の主要部分であるベローズについては設計作動回数の3倍以上の耐久試験で破損を生じないことが確認されている。

 また、万一ベローズが破損した場合でも放射性ガスが系統外に流出することはなく、ブリードガス制御装置入口圧力高などの警報及びN2タンクガスの定期サンプリングにより故障が早期に検知できるように設計されている。

 以上のことから、本変更に係る安全性は確保できるものと判断する。


3 固体廃棄物廃棄設備の変更

 アスファルト固化装置は廃液濃縮液をアスファルトと混合加熱し、水分を蒸発分離して固化体とするものである。

 本装置は、アスファルト混和機、熱媒加熱器、アスファルト貯蔵タンク、アスファルト供給タンク、廃液タンク等により構成される。

 アスファルト混和機で廃液濃縮液から分離された蒸気は復水器で復水とし液体廃棄物として処理される。

 また、処理過程で発生する復水器及び廃液タンク等の排ガスはよう素用フィルタを含むフィルタ系で処理した後、補助建家換気設備に送る。

 アスファルト固化方式ドラム詰装置は、アスファルト混和機の局部加熱を防止するため、熱媒による間接加熱方式とし、熱媒の運転温度はアスファルトの引火点より十分低い温度で制御される。

 アスファルトの貯蔵、供給系統については蒸気加温を行い局部加熱を防止するなど、防火対策の配慮がなされている。

 建屋側の防火対策としては防火壁、防火扉、火災報知器などが設けられる。

 放射線防護対策としては、本装置の操作による放射線被曝を少なくするために十分な遮蔽を行うとともに遠隔操作が可能なように設計されている。

 以上のことから、本変更に係る安全性は確保できるものと判断する。


Ⅳ 審査経過


 本審査会は、昭和52年4月19日第158回審査会及び同年5月20日第159回審査会において審査を行い、本報告等を決定した。


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