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日本原子力発電株式会社東海第二発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)について(答申) 52原委第337号
昭和52年6月7日
内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長
昭和52年3月22日付け52安(原規)第88号(昭和52年4月18日付け52安(原規)第118号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。 記 ① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1号各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。 ② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。 (別添)
昭和52年5月20日
原子力委員会
委員長 宇野 宗佑 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄
日本原子力発電株式会社東海第二発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)に係る安全性について
当審査会は、昭和52年3月22日付け、52原委第183号(昭和52年4月18日付け、52原委第252号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。 Ⅰ 審査結果 日本原子力発電株式会社東海第二発電所の原子炉設置変更(原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「東海第二発電所の原子炉設置変更許可請書(昭和52年3月11日付け、申請及び昭和52年4月11日付け、一部補正)」に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。 Ⅱ 変更内容 1 熱的制限値の変更
新しい炉心熱特性評価方法を採用することに伴い、熱的制限値を変更する。 最小限界出力比
1)第3サイクル末期までの期間、及び第4サイクル以降の各サイクルについて、サイクル初期から、サイクル末期よりさかのぼって炉心平燃焼度で1,000MWd/t手前までの期間(早期炉心)
1.19
2)上期以外の期間(平衡炉心心末期)
1.26
(変更前は、最小限界熱流束比 1.9以上)
2 固体廃棄物貯蔵設備の使用方法の変更
本発電所の固体廃棄物置場を東海発電所と共用するように変更する
Ⅲ 審査内容 1 熱的制限値の変更
新しい炉心熱特性評価方法を採用することに伴い、熱水力特性及び過渡現象解析結果の検討を行って熱的制限値の妥当性を確認した。 (1)熱水力特性
本変更は、新しい炉心熱特性評価方法を採用することに伴うものであるが、この手法の詳細は、原子炉安全専門審査会が昭和51年2月16日に採択した「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法について」(炉心熱設計検討報告書)に記載のとおりである。 本原子炉の熱水力特性を同検討報告書に基づいて評価した結果、問題はないと判断する。 (2)過渡現象解析
通常運転時の熱的制限値を定めるため過渡現象解析に基づき最小限出力比(以下MCPRという)の変化(以下ΔMCPRという)を評価し、最大のΔMCPRを生ずる過渡変化を確認した。 この解析の詳細は、原子炉安全専門審査会が昭和52年2月23日に上記検討報告書の追補として採択した「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法の適用について」に記載のとおりである。 本原子炉において最大のΔMCPRを生ずる過渡変化は、早期炉心については給水加熱喪失と出力運転中の制御棒引抜き、また平衡炉心末期については発電機負荷しゃ断(タービン・バイパス弁不動作)でありΔMCPRはそれぞれ0.12及び0.19である。したがって通常運転時のMCPR制限値をそれぞれ1.19及び1.26とすることにより、過渡変化時のMCPRは限界値1.07を下まわらない。 また解析前提条件の変更に伴い原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性についても確認した。 その結果、原子炉圧力が最大となるのは発電機負荷しゃ断(タービン・バイパス弁不動作)であり、早期炉心での最大圧力は約79.8㎏/㎝2g、また平衡炉心末期での最大圧力は約80.1㎏/㎝2gである。これらの値は設計圧力の1.1倍の圧力(96.7㎏/㎝2g)を下まわっており、原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性は維持される。 2 固体廃棄物貯蔵設備の使用方法の変更
本変更は、東海発電所から発生する固体廃棄物(ドラム缶詰、年間発生本数約800本)を本発電所固体廃棄物置場に貯蔵するようにするものである。 この固体廃棄物置場の貯蔵能力は、ドラム缶詰したものを約25,000本貯蔵することができる能力を持っており、本発電所から発生する固体廃棄物(ドラム缶詰、年間発生本数約3,200本)と東海発電所からの固体廃棄物とを合せて貯蔵しても5年分の貯蔵能力に余裕がある。 3 平常運転時における原子炉施設周辺の被ばく線量評価
今回の変更申請に伴い、本原子炉施設が「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」(以下、「線量目標値に関する指針」という)に適合していることを確認するため、平常運転時に放出される放射性気体及び液体廃棄物中の放射性物質による原子炉施設周辺の被ばく線量評価を行った。評価は、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針」に基づいて行った。 その結果、周辺監視区域境界外で放射性希ガスからのγ線による全身被ばく線量が最大となるのは、本発電所排気筒の西方向約660mの地点である。その地点における全身被ばく線量は、液体廃棄物中の放射性物質の寄与を含めて年間約0.5mremである。 また、気体廃棄物中の放射性よう素に起因する甲状腺被ばく線量が最大となるのは、排気筒の西方向約1.3㎞の地点であり、その地点における甲状腺の年間被ばく線量は、液体廃棄物中の放射性よう素の寄与分を含めて約0.4mrem(幼児)である。 これらの評価結果は、いずれも「線量目標値に関する指針」に示される線量目標値を下まわっている。 なお、東海発電所からの放射性希ガスの寄与分を含めた場合の全身被ばく線量が最大となる地点は、本発電所排気筒の西南西方向約980mの地点であり、その地点における全身被ばく線量は、液体廃棄物中の寄与分を含めても年間約1.8mremである。 4 その他
本変更では、逃がし安全弁の即応逃がし機構を廃止し、タービントリップ時又は発電機負荷喪失時に原子炉冷却材再循環ポンプをトリップさせる機構が設けられる。 この機構の変更に伴う運転時の異常な過渡変化解析の結果より、本変更は原子炉の安全性に影響を及ぼすことはないものと判断する。 Ⅳ 審査経過 本審査会は、昭和52年3月25日第157回審査会において、審査を開始し、昭和52年5月20日第159回審査会において審査を行い、本報告書を決定した。 |
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