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日本原子力研究所東海研究所における核燃料物質の使用の変更(ラジオアイソトープ製造棟の変更)に係る安全性について(答申)


52原委第66号
昭和52年2月15日

科学技術庁長官 殿
原子力委員会委員長

 昭和51年10月26日付け51安(核規)第2211号(昭和52年1月27日付け52安(核規)第211号で一部補正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。


 当該変更に係る安全性については、別添の核燃料安全専門審査会による審査結果報告のとおり十分確保されるものと認める。


(別添)

昭和52年2月4日
原子力委員会
   委員長 宇野 宗佑 殿
核燃料安全専門審査会
会長 山本 寛

日本原子力研究所東海研究所における核燃料物質の使用の変更(ラジオアイソトープ製造棟の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和51年10月26日付け51原委第904号(昭和52年1月27日付け52原委第49号で一部補正)をもって、審査を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。

 Ⅰ 審査の結果

 日本原子力研究所東海研究所における核燃料物質の使用の変更(ラジオアイソトープ製造棟の変更)に関し、同研究所が提出した「核燃料物質使用変更許可申請書」(昭和51年10月16日付け申請、昭和52年1月17日付け一部補正)について審査した結果、「Ⅲ審査の内容」に示すとおり、本使用の変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。

 Ⅱ 変更の内容

 本変更は、汎用ケーブでの使用済燃料再処理廃液の1回最大使用量を、80キュリーから3,000キュリーに増加するとともに、アルファ放射体の分離を可能とするためのものであり、その概要は、次のとおりである。

1 311~312号室02汎用ケーブの改造を行う。

2 上記汎用ケーブの地下に、再処理廃液、分離した放射性物質等を一時的に貯留するため、タンク6基を新設する。

3 上記汎用ケーブ専用の高性能フイルタを1段増設する。

 Ⅲ 審査の内容

 本変更にあたっては、以下のとおり適切な配慮がなされているので、変更にともなう安全性は確保されるものと判断する。

1. 施設の安全性

(1) ケーブの改造

i) 気密性

 アルファ放射体の分離を、新たに行うことを可能とするため、ケーブ内にステンレス鋼ライニングを施し、気密性を高めるとともに、二重蓋式の固体廃棄物取出口を設け、ケーブを開放することなく固体廃棄物を取出すことができる構造とすることとしている。

ii) 耐震耐火性

 本変更は、既存ケーブの耐震性に影響を及ぼすものではなく、ライニング及び固体廃棄物取出口の部材は、不燃性及び難燃性の材料で構成することとしている。

iii) 遮へい能力

 ケーブの遮へい体は、重コンクリート、鉛ガラス、鉄等で構成されており、ケーブ内の1回最大使用量が増加したことにより、線源強度は大きくなるが、その遮へい能力は、十分であることを計算値で示している。

(2) 付属タンクの新設

i) 耐震耐火性

 タンク及びその遮へい体は、水平震度0.3に耐える耐震構造とすることとなっており、配管もこれに相応した耐震構造とすることとなっている。また、部材は、すべて不燃性のものを使用することとしている。

ii)遮へい能力

 タンクは、鉄及びコンクリートで構成された遮へい体内部に設置され、その遮へい能力は、ケーブ内での1回最大使用量の再処理廃液を貯留した場合においても、従業員の被ばく線量を、低く管理しうるものとすることとしている。

iii)漏洩防止対策

 タンク及び配管が、万一破損した場合でも受皿が設置されており、放射性廃液が建家内に拡がることを防ぐ構造となっている。また、受皿には漏洩警報設備を設置することとしている。

(3) 排気フィルタの増設

 改造するケーブ専用の高性能フィルタを、1段増設する。これにより既存のフィルタと合せて4段の高性能フィルタで放射性じん埃を捕集することとなり、捕集能力を高めることとしている。

2. 放射線管理

(1) 内部被ばく

 再処理廃液の分離作業は、気密構造で、かつ操作室に対し常時負圧に維持されているケーブ内で行われ、またタンク、配管等は、洩れの起らない構造とし、適切な管理を行うこととしているので、作業者の内部被ばくについては問題ない。

(2) 外部被ばく

 再処理廃液の使用量は増加するが、ケーブの遮へい能力は十分であり、作業者がケーブ周辺に常時立入っても、その被ばくについては問題ない。増設タンク周辺における作業は、配管、バルブ等の保守・点検のみであり、立入りを制限する等必要な管理を行うこととしているので、作業者の被ばくについては問題ない。

3. 臨界管理

 使用する再処理廃液は、ウラン及びプルトニウムを抽出した残りの溶液であり、ウラン-235及びプルトニウムの量は、臨界量に比べごく微量であり、臨界の可能性はない。

 なお、既有の核燃料物質とは、同一箇所で同時に取り扱わないこととしている。

4. 平常時における周辺環境への影響

 気体廃棄物については、既存施設からの放射性物質の放出量と、再処理廃液の使用に伴う放射性物質の放出量を、同時に放出したとして、周辺監視区域境界での被ばく線量を評価した結果、その線量は十分小さいと判断される。

 液体廃棄物のうち高レベルのものは、気密構造の容器内で固体廃棄物とする。それ以外の廃棄物は、放射性物質濃度が放出基準値以下であることを確認した後、施設外に放出し、放出基準値を超えるものは、廃棄物処理場へ送液し、処理することとしている。

 なお、本変更により液体廃棄物の発生量が増加しても廃棄物処理場の現処理能力で十分である。

 固体廃棄物は、廃棄物処理場において保管することとしている。

5. 事故時の評価

 本施設の変更にあたっては、十分な安全対策が講じられており、放射性物質の環境への放出を伴う事故は、現実には考えられないが、再処理廃液使用時に、同廃液の1回最大使用量の全量が、ケーブ内床面に漏洩する事故が仮に発生したとして、環境への影響の評価を行った結果でも、一般公衆の被ばく線量は、十分小さいと判断される。

 Ⅳ 審査の経過

 本審査会は、次表のとおり、昭和51年11月1日第3回審査会において審査を行い、引き続き加工・使用部会において昭和51年11月20日、同12月22日及び昭和52年2月1日に審査を行い、本報告書を決定した。

 なお、同部会の委員は、次のとおりである。

部会委員

(部会長)三島 良績 東京大学
伊沢 正実 放射線医学総合研究所
岡島 暢夫 中部工業大学
清瀬 量平 東京大学
筒井 天尊 京都大学
松岡 理 放射線医学総合研究所
山本 寛 東京大学名誉教授
吉沢 康雄 東京大学

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