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動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の一部変更に係る安全性について(答申)


52原委第105号
昭和52年2月22日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和52年1月20日付け52安(核規)第213号及び昭和52年2月4日付け52安(核規)第278号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。


 動力炉・核燃料開発事業団が設置する再処理施設に係る安全性に関し、同事業団が提出した「再処理施設の一部変更に係る安全性に関する書類」(昭和52年1月17日付け及び昭和52年2月2日付け提出)に基づいて審査した結果、別添の核燃料安全専門審査会の報告書のとおり、安全上支障がないものと認める。


(別添)

昭和52年2月14日
原子力委員会
   委員長 宇野 宗佑 殿
核燃料安全専門審査会会長 山本 寛

動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の一部変更に係る安全性について

 本審査会は、昭和52年1月25日付け52原委第25号及び昭和52年2月8日付け52原委第65号をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

 Ⅰ 審査の結果

 動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設の一部変更に関し、同事業団が提出した「再処理施設の一部変更に係る安全性に関する書類」(昭和52年1月17日及び昭和52年2月2日付提出)に基づいて審査した結果、「Ⅲ 審査の内容」に示すとおり、再処理施設の一部変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

 Ⅱ 変更の内容


1 プルトニウム製品貯槽の増設

 プルトニウム製品の貯蔵能力を増すため、以下の変更が行われる。

(1) 分離精製工場地下にあるウラン製品貯蔵セルをプルトニウム製品貯蔵セル及び弁操作室に転用するため改造する。

(2) プルトニウム製品貯蔵セルに約500lの貯槽4基及びドリップトレイを設ける。

(3) 弁操作室には、グローブボックスを設置し、製品貯槽に対する硝酸プルトニウム溶液の出入れは、当該ボックス内の弁を経由して行う。

2 溶解廃気用廃ガス貯蔵系の一部変更

 溶解廃気用廃ガス貯蔵系の安全性をより向上させるため以下の変更が行われる。

(1) 溶解廃気用廃ガス貯槽及びその周辺配管の材質を、炭素鋼からステンレス鋼に変更する。

(2) 当該貯槽のための圧縮機を1基増設し、既設のものと合わせ2基とする。

 Ⅲ 審査の内容

 本変更に当たっては、以下のとおり適切な配慮がなされているので、変更に伴う安全性は確保されるものと判断する。

1 プルトニウム製品貯槽の増設について

(1) 施設の安全性

① 耐震性

 プルトニウム製品貯槽及びその付属配管等は、耐震分類A類で設計され、また、プルトニウム製品貯蔵セルと弁操作室との仕切壁及びプルトニウム製品貯槽支持造体等は、耐震分類B類で設計されることになっている。

② 臨界防止

 プルトニウム製品貯槽は、製限濃度安全形状寸法により設計され、また、ドリップトレイには中性子吸収材としてボロン入りガラスを置くことになっている。

③ 遮蔽性

 プルトニウム製品貯蔵セルと弁操作室の間の壁は、弁操作室への作業員の立入りを考慮して厚さ50㎝の鉄筋コンクリート製にすることになっている。

④ 耐蝕性

 プルトニウム製品貯槽及びドリップトレイ等は耐蝕性を考慮し、ステンレス鋼を材料として製作することになっている。

 以上のとおり、本変更に係る施設は再処理施設の設計の基本方針に基づいて設計されることになっており、施設の安全性は確保される。

(2) 周辺環境への影響

① 平常時における影響

 増設されるプルトニウム製品貯槽の廃気は、既設のプルトニウム製品貯槽の廃気と同様に、槽類換気系及びセル換気系を経て処理された上で主排気筒から放出されることになっており、プルトニウム製品貯槽が増設されても、プルトニウム製品貯槽系からのプルトニウムの放出量は、再処理施設から放出される全放出量に比べ無視し得る程度であり、周辺環境への影響は、認められない。

② 事故時の影響

 本施設の変更に当たっては、十分な安全設計及び安全対策が講じられることになっており、臨界事故等施設内の従業者及び敷地周辺の公衆に影響を与えるような事故の発生は考えられないが、仮に新設のプルトニウム製品貯槽において臨界事故が発生したとして評価しても、その影響は既設のプルトニウム製品貯槽における臨界事故の場合とほぼ同様であり、本再処理施設において既に評価している溶解槽における臨界事故の場合に比べ小さい。

2 溶解廃気用ガス貯蔵系の一部変更について

(1) 施設の安全性

 廃ガス貯槽及び周辺配管の材質を現在の炭素鋼からステンレス鋼に改め、従来どおり耐震分類A類で設計することは、施設の安全性の向上を図る上で妥当な配慮である。

 また、圧縮機1基を既設の圧縮機の万一の故障に対応できるよう並列に増設することも、施設の安全性の向上を図る上で妥当な配慮である。

(2) 周辺環境への影響

 本変更は、溶解廃気用廃ガス貯蔵系の本来の機能を変更するものではなく、周辺環境への影響は生じない。

 Ⅳ 審査の経過

 本審査会は、昭和52年2月14日の第4回審査会において前記変更について審査を行い、同日本報告書を決定した。

 このうち、プルトニウム製品貯槽の増設については、昭和52年1月29日の再処理部会における審議を経ている。

 なお、同部会の委員は次のとおりである。

部会委員

(部会長)高島 洋一 東京工業大学
青地 哲男 日本原子力研究所
伊沢 正実 放射線医学総合研究所
市川 龍資 放射線医学総合研究所
伊藤 直次 日本原子力研究所
稲垣 道夫 金属材料技術研究所
清瀬 量平 東京大学
坂上 治郎 お茶の水女子大学(名誉教授)
左合 正雄 東京都立大学
鈴木 正敏 金属材料技術研究所
内藤 奎爾 名古屋大学
林 正夫 電力中央研究所
日野 幹雄 東京工業大学
藤井 正一 芝浦工業大学
益子洋一郎 前工業技術院東京工業試験所

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