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動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉の設置変更(高速実験炉原子炉施設の変更)について(答申)


51原委第1041号
昭和51年12月24日
内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和51年10月9日付け51安(原規)第114号(昭和51年12月18日付け51安(原規)第194号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については、適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)
昭和51年12月20日

原子力委員会
委員長 前田 正男 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉の設置変更(高速実験炉原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和51年10月12日付け、51原委原862号(昭和51年12月18日付け51原委第1038号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。


Ⅰ 審査結果


 動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉の設置変更(高速実験炉原子炉施設の変更)に関し、同事業団が提出した「原子炉設置変更許可申請書(高速実験炉原子炉施設の変更、その5)(昭和51年10月4日付け申請及び昭和51年12月10日付け一部補正)」に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更内容


1 使用済燃料貯蔵建家を新設して新燃料集合体及び使用済燃料集合体の貯蔵能力を変更する。

(1)新燃料集合体の貯蔵能力を134体に変更する。(変更前は、70体)
(2)使用済燃料集合体の貯蔵能力を800体に変更する。(変更前は、200本)

Ⅲ 審査内容


1 使用済燃料貯蔵建家

 燃料貯蔵能力を増加するための使用済燃料貯蔵建家は、地上1階、地下2階の鉄筋コンクリート造りであり、原子炉建家の南西方向約100mの地点に耐震Aクラスで設計し、設置される。また、この建家に隣接して地上高25mの排気筒が設置される。

 この建家内には、使用済燃料集合体600体を貯蔵する水冷却池、新燃料集合体64体を貯蔵する新燃料貯蔵室(地下1階の装填燃料貯蔵室を含む)が設けられる。この他、燃料移送機、キャスク洗浄ピット、キャスク置場、排風機室及び廃液貯蔵タンク室などが設置される設計になっている。

 なお、既に設置されている原子炉付属建家内の新燃料集合体貯蔵設備及び使用済燃料集合体貯蔵設備の貯蔵能力は、変更がない。

(1)燃料貯蔵設備の未臨界性

 炉心からの使用済燃料集合体の取出しについては、60日間冷却したのち既設の使用済燃料貯蔵設備において缶詰缶に密封される。缶封された使用済燃料集合体は、使用済燃料貯蔵建家へ運ばれ、約32㎝間隔の貯蔵ラックに貯蔵される。

 このような配列により、新燃料集合体を貯蔵したとしても実効増倍率は、0.90以下であり臨界に至ることがない。

 新燃料集合体は、地上1階の新燃料貯蔵室のコンクリート床面から地下1階の装填燃料貯蔵室に林立した状態で取付けられた約40㎝間隔の収納管に収納されるので臨界に至ることがない。

 これらのことから、両貯蔵設備の未臨界性は十分に維持することができるものと判断する。

(2)冷却能力及び浄化能力

 使用済燃料貯蔵設備の水冷却池は、浄化脱塩塔、冷却器、冷却水循環ポンプなどから構成された設備により冷却される設計になっている。

 通常の燃料交換計画(炉心内にて60日冷却した交換燃料、15体/3ケ月)により全使用済燃料貯蔵ラックに貯蔵した場合の水冷却池の平均温度は、42℃を越えることがない。また、約500体貯蔵してあるところへ最高燃焼度(25,000MWd/T)の交換燃料が1炉心分相当貯蔵されたとしても46℃を下まわる設計になっている。

 水冷却池の浄化は、冷却系に設置された浄化脱塩塔及びフィルターにより電気伝導度10μ/㎝以下に維持される。また、水質管理は、定期的にサンプリングして化学分析を行い、水質、濁度などを確認することになっている。

 なお、万一水冷却池の水が漏洩した場合でも漏洩を早期に検知できるような設計になっている。

 これらのことから、冷却能力及び浄化能力は、特に問題がないものと判断する。

(3)換気設備

 使用済燃料建家の空気は、フィルターを介し、モニタリングしながら使用済燃料建家排気筒から排気する設計になっている。

 この排気筒からの放射性気体廃棄物に起因する敷地境界外の一般公衆の全身被曝線量及び甲状腺被曝線量の評価結果は極めて少なく、無視することができる程度である。

 以上の観点から、本変更に係る安全性は、十分確保し得るものと判断する。


Ⅳ 審査経過


 本審査会は、昭和51年10月18日第152回審査会及び昭和51年12月20日第154回審査会において、審査を行い本報告書を決定した。



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