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東京電力株式会社福島第一原子力発電所の原子炉の設置変更(1号、2号、3号、4号、5号及び6号原子炉施設の変更)について(答申)51原委第993号 昭和51年12月7日
内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長
昭和51年6月8日付け51安(原規)第1号(昭和51年7月13日付け51安(原規)第27号、昭和51年10月16日付け51安(原規)第122号及び昭和51年11月25日付け51安(原規)第165号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。 記 ① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については、適合しているものと認める。 ② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。 (別添)
昭和51年11月26日
原子力委員会
委員長 前田 正男 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄
東京電力株式会社福島第一原子力発電所の原子炉の設置変更(1号、2号、3号、4号、5号及び6号原子炉施設の変更)に係る安全性について
当審査会は、昭和51年6月8日付け51原委第511号(昭和51年7月13日付け51原委第694号、昭和51年10月16日付け51原委第882号及び昭和51年11月25日付け51原委第987号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。 Ⅰ 審査結果 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の原子炉の設置変更(1号、2号、3号、4号、5号及び6号原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「福島第一原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(昭和51年6月1日付け申請、昭和51年7月3日付け、昭和51年10月12日付け及び昭和51年11月16日付け一部補正)」に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。 Ⅱ 変更内容 1 濃縮度の変更
1号原子炉の第5回取替燃料集合体のウラン235濃縮度を約2.2wt%に変更する。(変更前は、約2.6wt%)
2 原子炉格納施設の変更
4号及び5号原子炉格納施設に可燃性ガス濃度制御系を設置する。 3 タービン建家の換気系及び排気系の変更
1号、2号、3号、4号、5号及び6号原子炉のタービン建家換気系の一部を変更する。 2号、3号及び4号原子炉のタービン建家の換気は、それぞれ独立した筒身からなる集合排気筒を設けて排気するように変更する。また、1号、2号、3号、4号、5号及び6号原子炉のタービン建家のルーフベンチレータを廃止する。(変更前の2号、3号及び4号原子炉のタービン建家換気系の空気は、各ユニットのタービン建家側壁に取付けられた局所排気筒により排気)
4 使用済燃料の貯蔵能力の変更
1号原子炉の使用済燃料プールの貯蔵能力を約156%炉心分に変更する。(変更前は、約150%炉心分)
Ⅲ 審査内容 1 濃縮度の変更
本変更は、1号原子炉の第5回燃料取替時に初装荷燃料等を通常の取替量より多く取出すため、濃縮度を下げた8×8型燃料集合体を採用するものである。 この取替燃料集合体は、1号原子炉の従来の燃料設計方針に従い設計されるものであり、燃料の健全性に問題はないものと判断する。 本原子炉の取替炉心においては、最大反応度価値を有する制御棒が1本全引抜の状態であっても、常に炉心を臨界未満にすることができること、及びボイド係数とドップラ係数等による十分な負の反応度効果を有すること、などから核熱水力設計は従来の方針に適合している。 以上のことから本変更は問題がないものと判断する。 2 可燃性ガス濃度制御系
本変更は、原子炉格納容器内の可燃性ガスの発生源として、冷却材喪失事故後における非常用冷却水の放射線分解をも考慮し、これらの可燃性ガス濃度を余裕をもって制御するためのものである。 本系統は、冷却材喪失事故が発生した後に原子炉格納容器内零囲気中の水素ガス濃度を4vol%以下あるいは酸素ガス濃度を5vol%以下に維持するように設計される。水素または酸素ガスの燃焼限界に関する各種の実験結果によれば、水素または酸素ガス濃度のいずれか一方が前述の制限値以下に維持されるなら、燃焼反応は生じない。 本系統の可燃性ガス制御容量を定めるにあたっては、十分な安全余裕をもった前提条件が用いられている。水の放射線吸収量に対する水素ガス及び酸素ガスの発生割合としてはG(H2)=0.5(分子/100eV)及びG(O2)=0.25(分子/100eV)が用いられているが、この値は水の放射線分解に関する各種の実験結果からみて十分な安全余裕をもったものである。 これらの条件のもとに、冷却材喪失事故後における原子炉格納容器内可燃性ガス濃度の時間変化を解析した結果によれば、本系統は、原子炉格納容器内の可燃性ガス濃度を制限値以下に抑制できる。 なお、本系統は、工学的安全施設と同等の設計条件を満たしている。また、再結合器の耐久性について検討した結果、特に支障をきたすおそれはない。 以上のことから、本変更は特に問題がないものと判断する。 3 タービン建家の換気系及び排気系
本変更は、2号、3号及び4号原子炉に既設主排気筒と同じ高さのタービン建家換気系排気筒(以下、排気筒という。)を設置し、平常運転時における一般公衆の被ばく線量を低減させるためのものである。 この排気筒は、地上高約120mの集合排気筒であり、4号原子炉の南側に隣接した場所に設置される。当該原子炉のタービン建家内の換気系の空気は、この排気筒から排気される。 なお、1号、2号、3号、4号、5号及び6号原子炉のタービンフロア天井に設置されている排気用ルーフベンチレータは廃止されるが、これは建家からの直接排気を防止するものであり、原子炉施設周辺の被ばく低減の観点から、本変更は問題がないものと判断する。 4 使用済燃料貯蔵プールの貯蔵能力
本変更は、従来からの使用済燃料プールの基本的な設計方針を変えない範囲で、使用済燃料設備の貯蔵能力を増加させるために、既設制御棒ラックに耐震Aクラスで設計されるアダプタを設けて使用済燃料を貯蔵するものである。 この貯蔵ラックに、仮りに新燃料を装荷しても、未臨界性は保たれる。また、使用済燃料貯蔵プール水温度は、既設冷却系により十分冷却される。 以上のことから、本変更は問題がないものと判断する。 5 平常運転時における原子炉施設周辺の被ばく線量評価
タービン建家換気系排気筒の設置に伴い、平常運転時に放出される放射性気体及び液体廃棄物中の放射性物質による原子炉施設周辺の被ばく線量評価を行った。 評価に際しては、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針」に基づいて行った。 その結果、敷地境界外で放射性希ガスからのγ線による全身被ばく線量が最大となる地点は、1号、2号原子炉共用主排気筒から南方約1,340mの敷地境界であり、その地点における全身被ばく線量は、液体廃棄物中の放射性物質の寄与を含めて1号、2号、3号、4号、5号及び6号原子炉合計で年間約3.1mremである。 また、気体廃棄物中の放射性よう素に起因する甲状腺被ばく線量が最大となる地点は、1号、2号原子炉共用主排気筒の南方約1,400mの敷地境界附近であり、その地点における年間被ばく線量は、液体廃棄物中の放射性よう素の寄与を含めて1号、2号、3号、4号、5号及び6号原子炉合計で約13mrem(幼児)である。 これらの評価結果は、いづれも「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」に示される線量目標値を下まわっている。 Ⅳ 審査経過 当審査会は、昭和51年6月14日第149回審査会において、次の委員からなる第125部会を設置した。
同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行うこととし、昭和51年7月9日に第1回部会を開催した。 以後、部会及び審査会は審査を行ってきたが、昭和51年11月22日の部会において部会報告書を決定し、同年11月26日第153回審査会において本報告書を決定した。 | |||||||||||||||||||||||||||
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