昭和40年度原子力平和利用研究費補助金交付概要


1.原子炉用圧力容器の溶接加工技術に関する試験研究

 三菱重工業(株)

(研究目的)
 軽水冷却型発電炉の圧力容器は、超厚肉超重量構造(250mm厚さ、総重量370~600トン)のため、現在は溶接、熱処理、揚重などの製作設備からいずれも容量不足および超重量圧力容器の運搬制限を受ける。この2つの問題の解決策として、圧力容器の工場内製作、さらに現地組立を可能にする溶接施工技術を開発し、施工法を確立する。

(研究内容)
 継手溶接に消耗電極使用スラグ溶接を、肉盛溶接には板状電極使用サブマージドアーク肉盛法を、局部熱処理には誘導加熱方式を適用し、最適溶接条件、最適溶接施工法を得るために、下記の試験を行なう。
(1)消耗電極使用スラグ溶接法の開発
 溶接条件、溶接材料(消耗電極材、ワイア、フラックス)、熱処理条件などを検討するとともに、溶接部の性能をユニオンメルト溶接、エレクトロスラグ溶接と比較する。
(2)板状電極使用サブマージド肉盛溶接法の開発
 現在行なわれている手溶接のサブマージドシリーズ肉盛溶接の高能率化のために新たに板状電極を使用しさらに特殊走行装置付の新しい肉盛施工法を開発する。
(3)上記(1)(2)の試験で得られた最適施工法を大型モデル材について実際に施工し、容量効果などについて検討する。
(4)局部熱処理実験
 特殊誘導加熱法により局部の高温熱処理施工法を検討する。
(5)検査法に関する実験
 簡易検査法としてマルチプルプローブ方式すなわち多数の採触子を組合せ併用し欠陥を全板厚にわたって同時に検出しうる超音波探傷を実施する。

2.軽水冷却型動力炉用制御棒の製造に関する試験研究

 住友電気工業(株)

(研究目的)

 本研究はB4C粉末をステンレス鋼被覆管中に充填し、これを十字型に組合せた制御棒の製造基礎技術を確立することを目的としている。

(研究内容)
(1)B4C粉末のステンレス鋼被覆管への充填、封入B4C粉末を振動充填法によって、ステンレス鋼被覆管中へ充填し、両端に端栓を溶接する。B4C粉末の粒度、粒度配合を変えて、約25~35%のガススペースを有するような振動充填の最適条件を決定する。端栓溶接を不活性ガス雰囲気中で行ない、X線透過試験、Heリーク試験、寸法測定を実施し、実用性能を検討する。
(2)制御棒の組立
 制御棒の組立に関しては上下の支持部の設計製作を行ない、B4Cを充填したステンレス鋼被覆管をステンレス鋼シースで包み、十字形に組合せ、固定する。
(3)制御棒の試験検査
 支持部引張強度試験、振動耐久試験、落下試験を実施し、設計安全資料を得る。また、X線試験、過電流試験、超音波試験を実施する。

3.軽水冷却型動力炉用燃料集合体の組立加工および特性に関する試験研究

 住友電気工業(株)

(研究目的)
 現在実用に供されている軽水型動力用原子炉燃料の出力条件に近い燃料集合体を設計、製作し、照射実験に供しうる燃料集合体の組立、加工技術を確立することにより国産化の推進を図る。

(研究内容)

(1)燃料集合体の設計研究
 燃料棒の配列は、次の設計規準と関連しジルカロイ被覆8×8本全長1.6mとする。
 最高熱流束 約450,000Btu/hr-ft2
 熱料棒中心温度 (運転出力)≦約2000℃
 冷却水入口流速 約1.8m/sec
 また、燃料棒の振動防止、流量調整構造についても研究を行なう。
(2)燃料集合体の製造研究
 燃料棒、スペーサー、タイプレート、ベース、チャンネルボックスについて、上記設計条件に見合った設計、試作を行ない、強度試験および流水抵抗測定などを実施して良好なる形状を決定する。
(3)燃料集合体の試作
 照射実験に使用するものと、同一寸法の天然UO2ペレットを用いた模擬燃料集合体を試作し、製造条件を総合的に検討する。
(4)燃料集合体の試験
 炉外評価に必要な流水的、熱的、機械的試験を行なう。

4.加圧水型動力炉用無側板式燃料集合体の組立加工に関する試験研究

 三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 加圧水型燃料集合体を国産化するには、燃料集合体の寸法精度の向上および燃料集合休の構造を簡単化してステンレス鋼使用量を低減した組立法を開発しなければならない。本研究は電子ビーム溶接を使用し、ばね格子板を燃料棒と同一寸法の管に溶接して、燃料支持構造とし側板を省略した燃料集合体の製作技術を確立するものである。

(研究内容)
(1)ばね格子集合体の電子ビーム溶接
 打板、曲げ用のパンチングレスを用いてサクストンPWR型のばね格子板を製作し、これに電子ビーム溶接を使用してばね格子に組立てる際の電子ビーム溶接の最適条件を検討する。
(2)燃料支持構造体の製作
 上記のように組立てられたばね格子集合体に支持管を挿入して、電子ビーム溶接でばね格子集合体に組立てる。これをロー付法と側板の点溶接法とで組立てた燃料支持構造と比較を行ない、寸法精度、機械的強度を検討する。
(3)無側板型燃料集合体の製作
 上記の燃料支持構造に、天然二酸化ウランペレットを挿入した燃料棒を挿入して上下ノズルを点溶接し、製作されたサクストン加圧水型原子炉燃料集合体と同じ寸法の無側板型燃料集合体を製作し、寸法精度、機械的強度、流水試験の比較検討を行なう。

5.沸騰水型動力炉用燃料集合体の組立加工および特性に関する試験研究

 東京芝浦電気(株)

(研究目的)
 BWR型動力炉用燃料要素を実用化するため、設計、製作、検査および照射試験の全般にわたる開発研究を目的とし、特に最近米国GE社のBWR燃料要素に近いものを考えて最高熱流速400,000Btu/hr-ft2(3/2cal/seccm2)燃焼率15,000MWD/T程度を目標とした燃料アセンブリの組立を行ない、その性能に関する試験研究を実施する。

(研究内容)
 新鋭沸騰水型動力炉の燃料集合体(6×6、全長1.6m)を設計し、製作し、炉外評価試験を行なう。
(1)燃料集合体の設計
 JPDR-IIのテストアセンブリと類似なものは避け、JPDR炉心に容易に受け入れられるようなものにして、GE社が第1次装荷分として納入したものに近いものを対象とする。
(2)燃料集合体の製作
 天然二酸化ウラン約80kgを使用してペレットを作る。集合体は燃料棒6×6に燃料棒をベースに組み入れ、インコネルロイヤスペーサー2個およびタイプレートで固定し、チャンネルボックスをはめて集合体1個製作する。
(3)検査ならびに試験
 構成品の製作過程においてはペレットならびに燃料棒について各種欠陥検査を、集合体組立後には流水ループ試験、オートクレープ試験、その他、曲り、ねじりの検査など、照射に必要な各種試験を行なう。

6.軽水冷却型動力炉用薄肉燃料棒被覆管の溶接に関する試験研究

 (株)日立製作所

(研究目的)
 軽水型原子炉に使用する燃料の被覆管として原子炉の経済性および核的条件から薄肉のステンレス鋼管の採用が要望されている。このため0.2~0.3mm程度までの薄肉ステンレス鋼被覆管の封かん溶接技術を確立しようとするものである。

(研究内容)
(1)自動プログラム制御TIG溶接装置の試作
 被覆管が薄くなるほど端栓との間の熱容量差がはなはだしく、厳密な入熱制御を行なう必要があるため、入熱制御可能な自動プログラム溶接装置を試作する。
(2)封かん溶接開発の設計的検討と溶接結果の対応比較管と端栓の熱容量差を溶接時に等しくする方法を検討する。
(3)自動溶接装置による最適自動TIG溶接プログラムの検討アーク、スタート電流を各種開先形状に応じて最適溶接ができるプログラムについて検討する。
(4)溶接部の試験検査
 寸法、強度、腐食、X線透過、ヘリウムリーク、金属組織などの試験により欠陥との関連を調べる。

7.ガス冷却型動力炉用ヘリングボーン式燃料要素の製造に関する試験研究

 古河電気工業(株)

(研究目的)
 ガス冷却型動力用マグノックス炉はその経済性の改善、燃料要素の比出力の向上のためヘリングポーン式燃料要素の開発が要請される。すなわち、熱伝達性能がよい、チャンネル内安定性がよい、付属品を減らし単純かつ丈夫な構造となしうるなどの利点がある。したがって、この製造に関する諸問題を検討し、国産製造技術の開発に資するに必要な基礎データを得る。

(研究内容)
(1)ヘリングボーン式被覆管の製造法の研究
 ヘリングボーンフィン切削加工装置を導入し、切削加工法によってマグノックス素材にヘリングボーンフィンを加工する研究を行なう。マグノックス素材は外径50mm内径28mmの管。切削実験にあたっては切削カッターの形状などの加工条件とマグノックス材の切削速度に対して、得られるフィンの加工精度などの関係を検討する。
(2)ヘリングボーン式燃料要素の被覆組立法の研究
 ヘリングボーン燃料要素組立のプレッシャライジング条件、焼鈍条件について検討する。実験用材料は、上記(1)の研究により製作された被覆管およびステンレス鋼芯材被覆管である。実験条件として、プレッシャライジングの温度、保持時間ならびに焼鈍温度、時間などにより得られる被覆の結晶粒度および安定性の関係について検討する。

8.原子炉安全回路の信頼度向上に関する試験研究

 日本原子力事業(株)

(研究目的)
 動力炉の安全性および稼動率を向上させるため、安全回路入力が正常な時に出力は常に交流、あるいは繰返しパルス信号を出し、出力信号が無くなった時にスクラムする方式をもちいたfail-safeな半導体回路を試作し、その実用性を確かめる。

(研究内容)
(1)fail-safeな半導体化安全回路の試作
 安全回路は中性子束レベルに関する直流信号を受け論理演算を行なうのに適当な形の信号に変換する回路と論理演算を行なういわゆる論理回路とその出力信号で原子炉制御棒の挿入動作などを行なわせる機構の電力供給部分を制御する回路とからなるが、これらの回路を試作して、中性子計測回路と組合せる。
(2)炉外試験
 安全回路と直流増幅器などを組合せた系について、入力に擬似電流を与えた試験を行ない、種々の系から出てくる雑音の影響などを調べる。
(3)炉による試験
 炉外試験を行なった後、中性子検出器をTTR-1の炉心の近くに固定して試験を行なう。
 さらに炉外試験と同様、擬似信号を与えて安全回路の信頼性におよぼす影響を調べる。

9.制御板等価反応度のパルス法による実験的解析に関する試験研究

 日本原子力事業(株)

(研究目的)
 軽水型動力炉の制御板の形状、配置の決定にさいし、核設計上問題となる等価反応度を正確に評価するため、軽水格子中の制御板の等価反応度をパルス中性子法によって測定し、その結果を現在設計計算に使用されている種々の計算法と比較検討して、その信頼度、適用限界などを解明する。

(研究内容)
(1)等価反応度の測定
 軽水型臨界実験装置(NCA)に制御板を次の組合せで挿入する。
(イ)板状制御板1枚
(ロ)1本の十字形制御板
(ハ)2本の十字形制御板による相互作用
(ニ)ユニットセルに4本、9本、16本の十字形制御板パルス中性子により中性子減衰モードから減衰定数を定め、これと一定の関係式で結ばれている負の反応度を求める。
(2)設計計算コードの評価
(1)で得られた資料と既存の少数組拡散コードにより境界条件の扱い方、制御板の相互干渉などの問題を明らかにし、より大きい制御板格子系に対する外挿の可能性、および計算方式を検討する。

10.焼損熱流束に対する冷壁効果に関する試験研究

 三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 原子炉の性能を向上し、安全性、経済性を高めるために、焼損熱流束に対する冷壁効果を解明し、さらに積極的に冷壁効果を減少させて、焼損熱流束を上昇させる設計に必要な資料を得る。

(研究内容)
 既設の熱伝達実験装置を使用し、圧力、温度、流量などの流体条件と側板形状などの流路条件を変えた場合の焼損熱流束に及ぼす影響について試験を行なう。
 試験は流路条件の影響について重点をおき、冷壁効果が流路の冷壁側に形成される境界層に起因する観点から境界層を積極的に乱すような形状として、側壁の周囲に長円形の孔を開けたもの、流路にグリッドおよびミキシングプロモータを追加したもの、流路隅に変流板を追加したものなどの効果を求める。
 さらに、これらの効果に関する焼損熱流束に対する実験式を作成する。

11.二酸化ウラン燃料の照射に関する試験研究

 (株)日立製作所

(研究目的)
 動力炉用燃料として実用化するためには、現在の動力用原子炉の使用条件を上回った高熱定格下での高燃焼度の照射を行ない、燃料設計の資料を得るとともに製造方法に対する確性を行なう必要がある。
 以上の理由から本試験研究では、高熱定格動力原子炉用焼結UO2燃料の高燃焼度照射試験を行ない、燃料設計ならびに製造方法に関する資料を得てUO2燃料の国産化に役立てることを目的とする。

(研究内容)
 本試験研究は日本原子力研究所、原子燃料公社の協力をえて、民間5社が共同研究で行なうものである。

(1)燃料棒試料の設計製作と試験
 ステンレス鋼またはジルカロイ被覆UO2ペレット型燃料棒3本ならびにステンレス鋼およびジルカロイ-2被覆UO2ペレット燃料(Burnable poisonを配置したもの、および含有したもの)燃料棒2本、計5本の試料を製作する。
 各試料は照射前にUO2のO/U、重量、密度、化学分析値、組織などおよび被覆管の化学分析値、機械的強度などを測定しておく。また燃料棒組立後のヘリウム漏洩試験、X線透過試験、オートクレーブ試験などを行なう。

(2)照射試験
 上記の燃料棒を外国の材料試験炉で照射し冷却後日本へ返送する。照射条件は熱発生率約50W/cm、熱中性子束1013~1014個/cm2、燃焼度20,000~25,000MWD/Tである。

(3)照射後試験はそのほとんどを国内(原研)において行なう。

12.原子炉圧力容器用高張力鋼の中性子照射に関する試験研究

 (社)日本鉄鋼協会

(研究目的)
 昭和38~39年度と2年間にわたり原子炉圧力容器用ASTM A302B鋼の母材ならびに溶接部の照射試験を行なってきたが、本研究ではこれらを基礎としてさらに高張力鋼材(主として国産の70~80kg/mm2級)の照射試験を行ない、今後の国産動力炉の建設ならびに開発に資することを目的とする。

(研究内容)
 本試験研究は日本鉄鋼協会、日本溶接協会、日本学術振興会の3者で構成している鉄鋼照射試験研究合同委員会が、日本原子力研究所の協力のもとに行なうものである。
(1)高張力鋼厚板の照射試験
 数種の母材メーカー、溶接棒メーカーおよびファブリケーターによって70~80kg/mm2級高張力鋼を中心とする数種の高張力鋼板の母材および溶接部よりシャルピー衝撃試験片、引張試験片などを採取し照射試験を行なう。
 なお、これらの試験は何れも国外の材料試験炉で照射し、かつ国外の研究所で照射後試験を行なうものである。
(2)照射前試験
 上記試料の素材鋼板およびその溶接部について予め十分な確性試験を行ない、照射試験結果の判定、解析に役立たせるものとする。

13.炉物理測定実験用多元パラメータ解析装置の試作に関する試験研究

 松下電器産業(株)

(研究目的)
 39年度に多元パラメータ解析装置の基礎研究にひきつづきMultiparameter Analyzer方式による多数個の放射線検出器のデータ処理ができ、また限られた記憶容量、実験目的に応じて数倍に拡大するなどの特徴をもつ多元パラメータ解析装置を開発する。

(研究内容)
 Multiparameter Analyzerは測定ユニット、入力信号制御ユニット、主制御ユニット、記憶ユニット、表示ユニットおよびデータ読出制御ユニットで構成される。
(1)設計研究
(イ)入力制御ユニットについて、2つのパラメータの解析とこのユニットを多数用いた場合のデータの選出方式。
(ロ)主制御ユニットについてはchannel Identifi-cation方式およびchannel reduction方式
(ハ)データ読出制御ユニットについて設計する。
(2)試作
 入力制御ユニット、主制御ユニットおよびデータ読出制御ユニットの試作を行なう。
(3)性能試験
 試作した各ユニットの性能をテストし、これを39年度に試作したユニットと総合して、多元パラメータ解析装置としての総合的な性能試験を行なう。

14.ダイナパックによる高密度二酸化ウラン粒子の製造に関する試験研究

 東京芝浦電気(株)

(研究目的)
 UO2ペレット型燃料では密度を95%TD以上にすることが可能であるが、UO2粉末充填型燃料ではペレット型ほどの高密度化は困難である。これを高密度化するためには、充填条件を良くするほかに、使用するUO2粉末の密度を高くすることが必要である。
 この高密度化の方法として、ダイナパックによる粉末の圧縮が考えられるので、この方法について試験研究を行ない、高密度粉末の製造技術を確立することを目的とする。

(研究内容)
 既有の620Cダイナパック装置を使用してUO2粉末を高密度化する条件をみいだすために以下の検討を行なう。
 ①原料の検討 ②原料粉末充填容器の検討 ③加熱温度、時間、封入条件の検討 ④ダイナパック条件の検討 ⑤製品取出し方法の検討 ⑥粉末方法の検討
 さらに製品の核燃料としての適応性を調べるために、製造条件の差による常温および高温における粒度、結晶構造の解析を行なって、高温衝撃加工の影響を検討する。

15.高温ガス冷却型動力炉用分散型燃料の製造に関する基礎的試験研究

 古河電気工業(株)

(研究目的)
 将来の高温ガス炉燃料として有望視されているSiC-UC分散型燃料の製造条件と成形体の性質の関係を検討し高温ガス中で安定な分散型燃料の開発に資することを目的とする。

(研究内容)
(1)製造条件の検討
 まず製造目標とする燃料体は重量にしてUC20~30%程度のものをSiC中に分散させた長尺物であり、これをSiCの鞘とともに同時押出し、高温焼成によって製造せんとするものである。
 本研究の主体は、原料粉末を押出加工によって長尺棒に成形することであり、押出加工上問題となるのは粉末に可塑性を与える添加剤である。この添加剤の種類、添加量、原料粉末の種類などをパラメータとして適切な製造条件を求める。
 また、押出した棒は空気中で乾燥してから真空焼結するのであるが、乾燥時間、加熱速度、加熱温度および時間と製品の密度との関連を検討する。
(2)物性測定
 各種製造条件で得られた試料のbending test、圧縮強度測定を行ない、製造条件との関連を求める。高温の性質としては、主として熱伝導度の測定を行なう。

16.UN、UC系核燃料物質の製造および評価に関する基礎的試験研究

 三菱金属鉱業(株)

(研究目的)
 UO2燃料の低熱伝導性、低核分裂密度を克服する核燃料将来の担い手はUN、U(N、C)、UP、US等面心立方構造をもつ物質、あるいはそれらの固溶体などであると予想されている。本研究はUN、U(N、C)系燃料物質につき、高密度にして、均質な試料を経済的に得るため加アンモニア分解反応とアーク溶融法の組合せによる新しい製造方式確立のための基礎資料を得ることを目的とするとともに製造面より見たこれら物質の評価を行なうことを目的とする。

(研究内容)
(1)加アンモニア分解反応による窒化試験
 各種組成のU-C系物質を原料とし、温度、圧力、反応時間などを変えて加アンモニア分解反応を行なわせて、生成窒化物および未反応残留物を解析することにより目的組成の物質な得るための適正条件を見出す。
(2)高圧窒化物の熱分解試験
 低温窒化反応で得られた過剰の窒素を含む生成物を高温で熱処理することにより、面心立方構造をもつ化合物の析出をうながすための適正条件を求め、反応生成物を解析する。
(3)評価試験
 粉末状UNを原料として焼結法により製造したペレット型核燃料試片と高圧アーク溶融による塊状UNを原料として振動充填法およびスウェージ法により製造した粉末充填型核燃料試片につき、熱伝導および高温挙動試験ならびに高温安定性試験を行ない、窒化ウランの原料と加工様式に対した評価を行なう。
 なお、本研究は三菱原子力工業(株)と共同で実施する。

17.バーナプルポイズン入り二酸化ウラン燃料体の評価に関する試験研究

 三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 原子炉燃料の燃焼度限界を増長することおよび制御棒の本数を減らすことのためにバーナブルポイズン入りUO2燃料体は、有望視されている。
 バーナブルポイズンの高温挙動と中性子照射によるヘリウムガスの発生が、バーナブルポイズン入りUO2燃料体の炉中挙動の重要な問題点であって、本研究では、このうち高温挙動について各種の炉外試験を行ない、炉中挙動の推定に資することを目的とする。

(研究内容)
(1)バーナブルポイズン粉末分散型UO2燃料体
 ZrB2、WB、HfB、TiBなどの高融点ボロン化合物のバーナブルポイズン粉末を分散させたUO2燃料体を製作し、バーナブルポイズンの分布状況について物性試験を行なうとともに、この試験試料の1500~1700℃の高温における挙動を把握するため、中心部加熱実験を行ない、高温における状態を組織学的に研究する。
 また、バーナブルポイズンを分散させたことによる熱伝導率の影響を研究する。

(2)バーナブルポイズン挿入型UO2燃料体
 UO2燃料体の一部にUO2に代って、バーナブルポイズン入りペレット(たとえばZrB2を分散させたZrO2のペレット)を入れた燃料体を製作し、評価試験研究を行なう。特にバーナプルポイズンペレットと隣接するUO2ペレットとの反応あるいは、バーナブルポイズンペレットのクラックなどを研究する。

18.有機化合物の新トリチウム標識法の開発に関する試験研究

 大阪府

(研究目的)
 トリチウムは比較的安価に入手でき、有機化合物を標識することも比較的容易であることから各方面においてトレーサとしての使用が激増している。しかし、なお精製法の困難な場合などの問題が残っており、本研究では今までの標識法では純粋に調製できなかった有機化合物を中心として新しい標識法などによってトリチウム標識化についての研究を行なう。

(研究内容)
 次の2つの有望と考えられるトリチウム標識法をとりあげて、不飽和結合化合物をはじめとして芳香族化合物異節環状化合物などについて標識を試みて、その取扱、精製の難易標識化率などについて比較検討を行なう。
(1)燐酸3フッ化ボロン法 広く基礎的な化合物および医学生物学上主要な化合物、たとえば医薬、殺菌剤、ビタミンなどの標識反応を行ない、生成物の純度、収量、標識化率、副生成物などの検討を行なう。
(2)トリチウム化シボレン法 脂肪族または芳香族の2重結合または3重結合を有する化合物を他の化合物と置換してトリチウム標識不飽和化合物をつくり、標識生成物の純度、収量、標識化率などを検討する。

19.ロータリーキルン内原料の動息角および充填率の測定に関する試験研究

 宇部興産(株)

(研究目的)
 60Coを用いてセメントロータリーキルン内の原料の動息角を測定して移動速度や物性変化との関係を調査するとともに、原料の充填率の変動を測定し、生産合理化に資するための放射線計測制御の基礎研究を行なう。

(研究内容)
 キルンの回転軸をはさんで一方にγ線源を、反対側に検出器を配置して両者をキルンの回転軸のまわりに回転させ、線源の回転角度と放射線透過量の関係を示す波形から充填物の動息角や充填率の変化を知る。放射線源としては60Co1キュリーを使用し、ロータリーキルンの原料送入側、中央部、焼成帯付近の適当な2ヵ所において原料の充填率あるいは動息角の測定方法を確立する。

20.放射性トレーサ法および放射化分析法を用いた河川の水質汚濁調査法に関する研究

 東京都

(研究目的)
 河川の水質汚濁防止の対策をたてるための調査手段としての放射性トレーサ法の実用化のため、水中における放射能測定の能率化の研究を行なうとともにさらに放射性トレーサ法および放射化分析法を用いて河川の自己浄化作用の検討など衛生工学上の問題点を解決し、将来原子力発電所冷却用水による河川の汚染調査や工程管理にも適用し得る技術の確立をはかる。

(研究内容)
(1)水中放射能測定法の研究
 河川の流水追跡、稀釈率測定のためのトレーサ法の技術確立のため次の研究を行なう。
 1)シンチレーション水中検出器の効率改善
 2)プラスチック・シンチレータを用いた新型水中検出器の開発
 3)濃度変化曲線から流量を算出する方法の研究
(2)自己浄化作用の研究放射性トレーサ法および放射化分析法を用いて次の研究を行なう。
 1)河泥、浮遊物、河床による自己浄化作用の検討
 2)水質汚濁に対する土壌の浄化効果の検討

21.放射線こよる重合反応機構に関する試験研究

 (財)日本放射線高分子研究協会

(研究目的)
 放射線化学のうち工業化が有望であると目されている放射線重合技術の開発のためには基礎的な重合反応機構の解明が必要である。そこで、質量分析法、電気伝導度測定法、吸収スペクトル法などにより、放射線重合の初期に生成する活性分子種を固定し、その変化を追跡して重合反応機構の考察を行なう。

(研究内容)
 バンデグラーフ型加速器60Co照射装置などを用い、電離性放射線を対象分子にあて、質量分析法で低圧下で生成するイオンを捕え、電気伝導度測定法により主に液体中のイオン濃度を測定し、それらの結果の解析を総合して、その分子より生成している活性種の同定、定量を行ない、反応機構の解明を行なう。本年度は研究対象モノマーとして、トリオキサン、スチレンを選ぶ。

22.原子炉放射線(n、γ混合放射線)利用によるエチレンの水素添加反応および工業的水素化反応への応用 に関する試験研究

 (株)東京原子力産業研究所

(研究目的)
 原子炉内放射線照射のもとで固体触媒によるエチレンの接触水素添加反応を高温高圧で行ない、原子炉利用による接触水素添加反応工業化に関する知見を得るとともに原子炉内における工業的高圧気体接触反応装置の開発に関する化学的知見を得ることを目的とする。

(研究内容)
 38、39年度の試験研究に使用したHTR原子炉内常温常圧気体接触反応装置を高温高圧用に改造し下記の試験を行なう。
(1)Zn系、Ni系、Fe系、Cr系の一元触媒を充填した反応容器にエチレンと水素を送入し、炉内放射線(n、γ混合放射線)照射のもとに常温から300℃までの温度、常圧から15kg/cm2までの圧力の範囲内で水素添加反応を行なわせ、温度、圧力、空間速度、ガス組成および線量率、照射時間を変えた場合の反応率、反応生成物の組成を測定して非照射時との比較から反応に対する放射線の影響を調べる。
 照射による触媒の物性変化を電気伝導度、X線回折、面積等の測定で調べ、反応率の相関を検討する。
(2)高温高圧気体反応装置の製作運転により、装置および触媒の誘導放射能、漏洩線量など装置の製作、運転上の放射線安全に関する知見を得る。

23.大出力電子線加速器の発生する放射線の測定法に伴う諸問題の研究

 大阪府

(研究目的)
 大出力電子線加速器使用に際して解決すべき問題点として電子線の電流、エネルギーその他の諸特性の監視測定装置の開発の他にも各種の測定に重大な影響を与える未解決の問題、あるいは測定法改善上研究不可欠な問題などがある。これらに対する研究を推進し、その解決を図り加速器の円滑な活用に資する。

(研究内容)
 大出力電子線加速器の発生する放射線の測定法に伴う諸問題を解決するための研究を行なう。

(1)被照射電流測定法の改善に関する研究
 真空中におかれた厚いターゲットに電子線が入射する時放出される2次電子電流の入射電子電流に対する割合と、後方散乱される電子線の電流の入射電流に対する割合を各種ターゲット、各エネルギー、各入射角について測定し、2次電子および散乱電子電流によって被照射電流が影響されることに対する補正資料を揃え精度の向上改善を計る。
(2)測定器中の2次電子放出率定化の研究
 2次離電子高エネルギー成分の性質を調べ、加速器の迷走電子に妨害されることなくそれをビーム条件に影響されない安定な2次電子利用監視装置に利用し得る方法を開発する。

24.放射線に対し非破壊性の放射線しゃへい用ガラスの開発に関する試験研究

 日本光学工業(株)

(研究目的)
 放射線しゃへいガラスの破壊はわが国で、すでに5例に及んでおり、ガラスの組成を改良しかかる現象を起こさないガラスの開発は各方面から要望されている。このため放射線による電荷の蓄積に基づく破壊を生じない大型非着色性γ線しゃへいガラスの開発を目的とする。

(研究内容)
 現在の放射線しゃへい用ガラスの組成を改良し放射線による電荷の蓄積に基づく破壊を生じないガラスを製造するため次の実験を行なう。
(1)ガラス溶解
 54種類のガラスの組成を決め試験ガラスを溶解し、放射線による破壊性とガラス組成との関係を解明する。 現在のF36Nガラスを基礎組成とし、酸化セリウム含有量、ガラス網目構造成分の置換、ガラスの修飾イオン成分の置換、原子価変動元素の添加、水分の影響、特殊元素の添加の因子と、破壊性との関係を解明する。
(2)耐破壊性試験
 (1)で溶解したガラスについて耐破壊限界および破壊に伴う現象を調べるため次の試験を行なう
 (イ)放射線照射ガラスの静的加圧破壊試験
 (ロ)放射線照射ガラスの衝撃破壊試験
 (ハ)高電圧印加ガラスの衝撃破壊試験等
(3)破壊現象に関係のある基礎的物性測定
 (イ)電気伝導度ならびに耐電圧測定
 (ロ)誘電特性の測定
 (ハ)非着色性の測定等