昭和40年度原子力平和利用研究委託費交付概要


1.原子炉用圧力容器のノズル取付部および支持スカート取付部の構造強度とその材料の高応力疲労に関する試験研究

 (社)日本機械学会

(研究目的)
 原子炉用圧力容器の構造設計基準に必要な資料を得るため、38、39年度にひきつづいて、ノズル取付部スカート取付部等の不整個所について内圧、外荷重による応力ならびに高応力疲れ強さに関する理論解析および実験強度の解析および設計法の評価を行なう。

(研究内容)
(1)原子炉圧力容器ノズル取付部およびスカート取付部の構造強度に関する理論的解析ノズル取付部およびスカート取付部の内圧、外荷重、熱応力にとる実験資料の解析および理論解析を行なう。
(2)原子炉圧力容器スカート取付部形状の光弾性実験2次元光弾性試験によりスカート取付部の各種肉厚形状のものについて引張、曲げ試験を行なって最適形状を求め、さらに最適形状のものについて3次元光弾性試験を行ない、自重、水平外力、内圧による応力分布を確認する。
(3)鋼製原子炉圧力容器模型によるノズル取付部の強度実験
 ① 39年度製作した鋼製圧力容器模型(応力測定実験用に対し高応力疲れ試験を行ない静的応力分布と動的強度との関係を求める。
 ② ノズル取付部の応力集中係数の異なるノズル部をもつ小型容器の低サイクル高応力疲れ実験を行なう 。
  また、3種類の取付部形状の疲れ実験を合せて行ないS-N曲線を求める。
(4)鋼製ノズル局部模型による強度実験
 鋼製ノズル局部模型取付平板による繰返し応力実験を行ない、(2)の光弾性実験との比較を行なう。
(5)材料の高応力疲労実験
 (3)で行なわれた低サイクル高応力疲れ実験結果と材料そのものの高応力疲れ実験結果との対応をつけるためA302BおよびSF60材(一部溶接部を含む)について疲れ実験を行なう。

2.原子炉圧力容器の製造熱履歴によるぜい化ならびにノズル取付部の放射線検査に関する試験研究

 (社)日本溶接協会

(研究目的)
 原子炉圧力容器の加工時における熱履歴がぜい性に及ぼす影響を明らかにして圧力容器の設計製造に関する安全性の資料を得るとともに圧力容器ノズル部欠陥の放射線試験法を確立する。

(研究内容)
(1)熱履歴と材料強度に関する試験
  圧力容器の材料および溶接部に熱履歴を与えて、劣化した材料を作り、材料試験、脆性試験、破断試験、疲労試験を行なって、熱履歴と材料強度との関係を求める。

(2)放射線透過試験に関する試験
  鋼板についてベータトロン、60Coγ線、X線を使用した場合に最高識別度を得るための濃度範囲ならびに許容板厚範囲を求める。ついで、ノズル取付部の試験品について試験部の厚さの差を求め、許容範囲をこえる場合の厚さの補償方法を求める。

3.バーンアウト機構に関する試験研究

 (社)日本機械学会

(研究目的)
 水冷却型動力炉の熱設計において、信頼性の高い設計を行なうために、燃料体表面からの熱除去能力の突然の喪失であるバーンアウト現象の要因を究明し、バーンアウトの信頼性を評価する。

(研究内容)
 バーンアウト試験施設に環状流路をもつ同一材料、同一形状、同一加工の発熱体をもつ試験部を使用し、下記の実験を行なって燃料体流路以外に起因するバーンアウトの未知の支配要素を究明する。

(1)低圧バーンアウト実験
  常圧付近で、流量と試験部に流入する水のサブクーリング(飽和温度と水温の差)を数種類選びバーンアウトを生ずる熱流速を測定する。

(2)高圧バーンアウト実験
  (1)の実験結果の実用性を裏付けするため60kg/cm2程度の圧力で(1)と同様の試験を行なう。

4.軽水冷却型動力炉の安全性に影響を及ぼす燃料被覆管の不全に関する試験研究

 (財)原子力安全研究協会

(研究目的)
 軽水冷却型動力炉の安全性を検討する場合に、燃料被覆管の表面、内面キズ、偏肉その他の不全で被覆管の耐圧強さに影響を及ぼすほどのものは、事故時の燃料の安全確保上重要な問題である。
 当研究は事故時の安全性からみて問題とすべき被覆管のキズの種類と程度を決める研究を行ない、この角度から燃料被覆管の検査基準確立のためのデータを提供することを目的とする。

(研究内容)
(1)人工内面キズ加工装置の試作
  ジルカロイ管およびステンレス鋼管で問題とすべき内面キズの種類と程度を人工的に作って耐圧試験を行なうため、内面キズ加工装置を試作する。
(2)燃料被覆管の耐圧強さに及ぼす内、外面キズおよび偏肉の影響
  内、外面キズおよび偏肉の非破壊試験の結果と耐圧強さの関係、また人工欠陥の大きさと耐圧強さの関係を各種類について調べる。
(3)燃料被覆管の耐圧強さに及ぼす不均一性の影響
  加工組織の異なるジルカロイ管について、拡管試験高温引張試験および耐圧試験を行なって、バローの式の係数と加工組織の関係を調べる。またステンレス鋼溶接引抜管と継目無し管について上記と同様な試験を行なう。

5.原子炉施設の地震時における振動特性に関する試験研究

 (社)日本建築学会

(研究目的)
 39年に引続き、原子炉施設の構築物の地震時における振動特性を推定するために必要な資料を実験的に求め、これを解析して、動的耐震設計法を確立するための基礎資料を得る。

(研究内容)
(1)試験体の振動特性
 ① 砂利層上に設置した試験体
  39年度の委託研究にひきつづき、さらに研究を発展させるために、より大きな地震を含んだ多くの地震および強制振動による試験体の振動、特性を得て、この結果を用いて解析を行なう。
  解析は、次の順序で行なう。
 (a)支持地盤の弾性波速度および密度
 (b)強制振動系:振動数-振幅特性、振動モードの作成、振動系モデル、各振動素子の算定
 (c)自然地震系:自然地震をinputとして振動系モデルに関する相対加速度応答および絶対加速度の算定、地震動による振動モードの対照、地震応答における各振動素子の換算
 ② 岩盤上および関東ローム上に設置した試験体
  試験体を岩盤上および関東ローム上に設置し、地層の影響の差異について試験体の振動特性を得て、(1)と同様の解析を行なう。

(2)JPDRの振動特性
 前年度にひきつづき自然地震による振動特性の計測を行ない地震動スペクトルの解析、各測定点における相互相関、レスポンスの理論解析と実測との比較、試験体とJPDRの結果との比較を行なう。
 さらに配管系の自然地震についてもその応答を調査する。

6.軽水冷却型原子炉冷却材喪失事故時における安全防護施設の有効性評価に関する試験研究

 (株)日立製作所

(研究目的)
 軽水冷却型原子炉の最大仮想事故と考えられる冷却材喪失事故時に格納容器から大気中に放出される放射性物質の量を推定する方法を確立する。

(研究内容)
(1)冷却水喪失事故に関する解析
 38、39年度の試験研究成果およびその他の資料を用いて、冷却水喪失事故時に大気中に放出される放射性物質の量を推定する方法を理論的に求め、各種の要因による放射性物質の放出に及ぼす効果および模型実験結果との差異を評価する。
(2)活性炭フィルタによる沃素吸着性能の試験
 原子炉施設にもうけられる大型フィルタの構成の最小単位をもちい、数種の活性炭について沃素の吸着量を比較測定し、さらに温度、沃素濃度、水蒸気量、通気速度をパラメータとして事故時の吸着効果を求める。
(3)冷却水流出に関する試験
 冷却水の流出に関し、39年度にひきつづき冷却水の流出位置および管径、管長をパラメータとして臨界流量を求める。
(4)炉心スプレー冷却効果に関する試験
 冷却水喪失事故を模疑する。すなわち、炉心スプレー水が圧力容器下部にたまる状態を考慮した炉心スプレー冷却効果を求め、さらに、炉心スプレー冷却効果および炉心スプレー水量、作動開始時間等が格納容器圧力に及ぼす効果を求める。

7.軽水冷却型動力炉の炉心スプレーおよび圧力抑制装置の機能に関する試験研究

 日本原子力事業(株)

(研究目的)
 軽水冷却型動力炉の安全対策ならびに事故評価に資するため、39年度に引き続き冷却材喪失事故時の原子炉および圧力抑制装置内の諸現象および圧力抑制効果ならびに圧力下のスプレー効果を求める。

(研究内容)
(1)圧力抑制装置の機能に関する試験
 39年度にひきつづき、新たに空気を含む蒸気の水中凝縮現象について基礎試験を行ない、水中凝縮における不安定現象を求める。
 また、破損口の位置の影響:ドライウェルスプレーおよび炉心スプレーの圧力抑制装置内の圧力、温度に及ぼす影響を求める。
 試験で得られた結果を推算するモデルを検討する。
(2)炉心スプレーによる定常圧力下の熱伝達特性に関する試験
 実規模程度の加熱棒集合体を用いて定常圧力下の蒸気雰囲気におけるスプレー熱伝達特性を求め、一方理論解析により、圧力下の加熱棒温度の変化を求めて、実験結果と比較する。

8.格納容器スプレーによる沃素および沃素化合物の水洗効果ならびに冷却材喪失事故時のブローダウンに関する試験研究

 三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 本試験研究は軽水冷却型動力炉の安全対策ならびに事故評価に資するため、格納容器スプレーによる沃素および沃素化合物の水洗効果ならびに加圧小型原子炉の冷却材喪失事故を模疑した噴出実験による水洗効果を求めるとともに沃素および沃素化合物の事故時の一次冷却系からの噴出の過程を求める。

(研究方法)
(1)格納容器スプレーによる沃素および沃素化合物の水洗効果に関する試験39年度に引きつづき新たに各種沃素化合物の系壁への吸着効果およびスプレーによる水洗効果を求めるとともに沃素および沃素化合物の水洗効果に及ぼすスプレー水への添加剤の影響および効果を求める。
(2)一次冷却系からの冷却水噴出過程に関する試験
 加圧水型の条件(140kg/cm2、300℃)の水について臨界流量を求めるとともに噴出機構の解明を行なう。

9.核過熱型発電用原子炉の解析に関する研究

 (株)日立製作所

(研究目的)
 39年度の分離型および混合スペクトル型の核過熱型動力炉の炉心の解析に引き続き、核過熱型原子力プラントの開発および実用化を評価するため、プラントの基礎的総合解析を行ない、プラント特性を求めて本型式発電用原子炉の他炉型との位置づけおよび開発の方向づけのための基礎資料を得る。

(研究内容)
(1)炉心特性の解析
 混合スペクトル型の最適炉心を求め、これと39年度でもとめた分離型過熱最適炉心について、さらに最適値近傍の詳細な核計算、熱計算を実施する。これに相対コスト計算を加えて、炉心各部寸法、燃料重量、燃料本数、高温点因子、燃焼特性、熱流束分布、反応度係数等の炉特性を求める。
(2)安全性の解析
 分離型および混合スペクトル型原子炉の安全性を検討するため、圧力容器の中性子束の限界値、燃料棒破損限界、制御棒引抜き事故、フラッディング事故、冷却材喪失事故等の事項につき計算を行ないその結果を検討する。
(3)制御特性の解析
 炉心設計およびプラントの概念設計研究の結果得られた設計計画値から核過熱型プラントの動特性を算出し、この数値を用いて上記設計研究で定める運転状況におけるプラントの制御特性を反応度外乱に対する応答の形で求め、その制御性を検討する。また、必要な設定値を求めるとともに問題点の摘出整理を行なう。
(4)概念設計
 解析研究で得られた炉心に基づき、一例として分離型およびスペクトル型原子力プラントの概念設計を行ない必要な図面を作成する。この過程で得られた問題点を整理し、今後の研究開発および他炉型との位置づけのための基礎資料を得る。

10.高比出力黒鉛減速炭酸ガス冷却型発電用原子炉の総合解析に関する研究

 富士電機製造(株)

(研究目的)
 39年度のマグノックス形動力炉の総合解析に引きつづき、比出力をさらに上げるための板状燃料または内部冷却形環状燃料を用いた改良マグノックス炉、およびAGRを対象とした高比出力ガス冷却動力炉につき原子炉部を主体として総合解析を行なう。これとあわせてわが国にこの炉を建設する場合の技術的問題点を摘出し、高比出力ガス冷却炉の位置づけのための基礎資料を得る。

(研究内容)
 板状燃料使用改良マグノックス炉、環状燃料使用改良マグノックス炉およびAGRの3型式の原子炉部を主体として下記のような総合解析を行なう。
(1)性能の予備解析とパラメトリックスタディ
 3形式原子炉につき性能改善すなわちガス圧の上昇、原子炉内機器の配置、燃料体等の技術改善の方向と限界について予備検討を行ない、つぎにそれぞれの炉の核的サーベイ計算、熱的サーベイ計算、構造サーベイ計算を行ない、この結果にもとづき最適化計算を行なう。
(2)原子炉部の概念設計
 (1)の結果に基づき各炉形式の代表的なケースにつき原子炉部を主体として核設計、熱設計、燃料要素設計、構造設計および動特性解析を行なう。
(3)性能に関する総合的検討
 (1)および(2)の結果に基づき3炉形式につき性能に関する検討、評価を行ない技術的問題点の摘出をする。
(4)耐震性の検討
 炉心およびプレストレストコンクリート圧力容器を含めた構造物について動的解析をとり入れた耐震性の検討をを行なう。

11.間接サイクル軽水冷却型船舶用原子炉の解析に関する研究

 (社)日本造船研究協会

(研究目的)
 軽水冷却インテグラル型式の舶用炉を想定し、これについてプラント概略設計、核設計、熱設計を実施して、その適否を検討し今後の研究開発のための基礎的資料を得る。

(研究内容)
(1)予備解析
 熱出力約200MWの熱交換器内装型間接サイクル方式の舶用炉についてその改良の方向および重点をどこに置くべきかを文献調査するとともに、わが国における原子力船の運航採算から定まる舶用炉への要請、境界条件等を解析する。
(2)プラント概略設計
 炉心の核、熱を含む静的な基本的検討およびプラントとしての熱的検討を実施して、プラントの概略設計を行なう。
(3)核設計
 (2)の概略設計の結果と資料を基とし、必要と思われる若干の変更を加えてその実現可能性を確かめるため、数例の炉心形状について単位セル、制御棒配列、領域配分等を比較検討し、最適炉心を求める。
(4)熱設計
 (3)で選定された炉心について定常熱水力計算の検討、自然および強制循環熱除去計算、水力学的安定性予備検討、加速度に対する安定性予備検討等を行なう。

12.液体金属ナトリウム用機械式ポンプに関する試験研究

 (株)日立製作所

(研究目的)
 高速増殖炉の冷却材として、除熱能力のすぐれた液体金属(Na)の大容量循環装置として遠心ポンプの開発を行なう。

(研究内容)
1.理論的解析
(1)危険速度の解析
 ポンプの回転振動系モデルによって危険速度を計算する式を解析する。
(2)シール部からの漏洩量の解析
 理論式によって漏洩量を予測する。
 流量1m3min、揚程40m相当の遠心ポンプを軸受軸封部に重点をおいて試作する。
3.水による試験
(1)水による特性試験
 水によって流量-圧力-回転数の関係を求める。
(2)回転軸の振動の測定
 振動系モデルで計算した値と、実際に水中で回転させたときの危険速度とを比較検討する。
4.3の試験結果よりナトリウムを使用した場合の特性の検討を行なう。

13.放射性廃棄物の海洋投棄用容器に関する試験研究

 (社)土木学会

(研究目的)
 放射性廃棄物の最終処分方法として適切な方法による海洋投棄が考えられているが、これに使用する容器は所定の深度の海底に投棄された場合、長期間にわたって内容物が洩漏せず十分安全性が保たれることが必要であり、また取扱いの容易性および製造原価の低廉性が要求される。これらの条件からコンクリート、または鉄筋コンクリート製が適当と考えられるが、安全性の面からこの容器の力学的性質および水密性で試験し、十分安全な容器の製造方法を確立する。

(研究内容)
 38、39年度における研究を基礎にし、密閉式容器、弁式容器および粘性層を有する容器の3種類の実物大容器につき、想定加圧速度下における水庄試験ならびに大気中における落下試験を別途に実施し、それぞれにおいて応力測定を行ない、両者を加算して容器が海底に衝突する時の応力状態を検討し、容器の安全性を確かめる。

14.放射性廃棄物の海洋投棄処分による放射能溶離後の海水中における放射能の挙動および分布に関する試験研究

 (学)近幾大学

(研究目的)
 放射性廃棄物の海洋投棄処分の対象となる廃棄物容器が破損を受け、その内容物の一つである高レベル放射能の使用済イオン交換樹脂が海中に流出した場合、放射性物質が海水中にどの程度溶離され、最終的に水産生物を通じて人体に対してどの程度影響するかが問題となるので昨年度の測定結果を基として、溶離後の放射性物質が海中浮遊懸濁物質に対していかなる挙動、分布するかを明らかにする。

(研究内容)
 39年度における試験研究においては、海水中における静止イオン交換樹脂および攪拌状態のイオン交換樹脂から問題となる放射性核種の溶離の難易を究明したが、この研究結果を基にしてこれら核種が海水中の浮遊懸濁物全体および生物性浮遊懸濁に対してどのような挙動および分布を示すかをこれら懸濁物質の分画、定量および放射能の吸着、蓄積量の測定、ラジオオートグラフィによる観察をとおして明らかにする。

15.泡沫分離法による放射性廃液処理に関する試験研究

 (株)荏原製作所

(研究目的)
 低レベル放射性廃液処理を泡沫分離法によって行なう場合泡沫から水を十分脱水すること、濃縮率を上げることとさらに界面活性剤の回収率を高めることが経済性からも重要な問題である。本研究においては新たに泡沫脱水装置を付加して全体の処理の除染係数と活性剤回収率の向上をはかり、またオリフィスを通す真空法による泡沫破壊の方法を合わせて検討し放射性廃液処理方法を確立する。

(研究内容)
 以下の連続的操作により、適切な廃液処理方法を研明する。
 廃液貯槽から泡沫分離濃縮塔に廃液を送り、一方界面活性剤を添加し、ガスを送って泡沫を発生させ泡沫上に放射性核種を集める。
 この泡沫を脱水装置で水分を脱水した後、泡沫破壊装置で被壊する。一方、処理液を回収塔に送る。ここにおいて処理済液に空気を送り、泡沫上に界面活性剤と残存する放射性核種を集めて処理済液中の界面活性剤濃度を下げるとともに全体の除染係数を向上させる。
 また、泡沫の破壊のため回収塔からとり出される泡沫をオリフィスを通じて真空ヘッダーに接続して破泡する方法を検討する。

16.不溶性塩類を含む放射性廃棄物の処理材に関する試験研究

 石川県

(研究目的)
 精製した珪藻泥岩を用い、その放射性物質の吸着作用および濾過作用によって無機塩類を多量に含む低レベル放射性廃液を低コストで、迅速に処理する方法を開発する。

(研究内容)
 珪藻土を精製して濃厚または低レベル放射性廃液の処理試験を実施する。
1.珪藻土精製試験
 原土を精製し粒度別に分級を行ない、これらの各種の珪藻土について粒度分布、比重、化学組成の測定等を行なう。
2.濾過性能に関する試験
 上記のごとく精製した珪藻土について以下の試験を行なう。
(1)90SrおよびF.P.の放射性核種を用い、キャリヤーの有無(塩化ストロンチウム等)、イオン濃度(0~1,000ppm)、液性の変化(pH9~14)共存イオン濃度(カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄、アルミニウム等)等と除去率の関係ならびに、廃液の物理化学的状況の変化による除去率の変化を研究する。
(2)実験室で実際の廃液を試料として炉過試験を行ない、さらに日本原子力研究所において大量試験を行なって最適処理条件を求める。

17.放射性核種の体外排泄装置の開発に関する試験研究

 (学)五島育英会

(研究目的)
 原子力施設および核燃料の再処理などにおける事故時に体内に摂取された放射性核種の体外排泄を急速に行なうための人工排泄系に関し、電気透析系に対するイオン交換膜の並用についての検討を行なうとともに、除去効率および使用方法について研究し、血液中の放射性核種の体外排泄方法を確立する。

(研究内容)
 自然排泄による腎臓の放射線障害を防止し、核種を急速に体外排泄させるために、昨年度に電気透析系の人工排泄装置を試作した。
 これらを用いて次の研究を行なう。
(1)イオン交換膜の検討
 電気透析型人工排泄系にイオン交換膜を並用した場合について牛血を用いてイオン交換膜の無害性を確認し血中有害放射性核種の除去効率を透析膜のみ使用の場合と比較する。
(2)牛血を用いて血中におけるZr、Ru、Hgの血中成分との結合状態を研究するとともに、血中に添加してこれら核種の除去効率、を改善するような複合化合物の探索を行なう。
(3)牛血を用いて透析膜のみを用いたZr、Pu、Hgの除去効率試験を行い除去効率を求める。
(4)生きた犬を用いて(1)および(3)と同様の試験を行ない赤血球の検索および体重ならびに全身所見についての試験を行なう。

18.放射線障害防護薬剤の開発に関する試験研究

 (財)原子力安全研究協会

(研究目的)
 原子力施設および核燃料の再処理施設などの事故時における放射線による外部および内部被曝による障害を阻止または減少する放射線防護薬剤を開発するため合成化学ならびに薬理効力試験についての基礎および臨床的な研究を行なう。

(研究内容)
(1)放射線防護薬剤の合成研究
 昨年度の研究成果を検討した結果、システインを骨格とする基本化合物とその関連化合物を有効な薬物となるべき構造をもつと推論したので、これらを合成研究するとともに、同様の薬理作用をもつその他の物質の化学構造についても併行的に研究する。

(2)防護薬剤の効力に関する研究
 外部照射防護薬剤について放射線防護作用の有無強弱に関する効力試験を行なうとともに適切な投与量を決定するための毒性を測定する。
 体内汚染排除剤の効力試験として、放射性ヨードに対する抗甲状腺剤の効果を研究する。なお、過塩素酸塩の効果をも検討する。

(3)以上の研究を合成化学グループと薬理研究グループの学識経験者などで構成する委員会で組織的共同研究を行ない、有効な防護薬剤を開発促進しようとするものである。

19.核原料物質鉱山のラドンとその娘元素の除去に関する試験研究

 (学)早稲田大学

(研究目的)
 核原料物質鉱山におけるラドンとその娘元素の放射線による危険性に対する基本的な考え方はまだ確定せず大別して2種類となる。その一つは、凝結核に付着していない218Poが上部呼吸器官に付着し、β崩壊を起こす方が危険であるというもの、他は全娘元素の幾割かが肺に沈着する方が危険であるというものである。
 何れの立場に対しても、正確に評価できる測定法を確立するとともに、両者を満足させるような除去法を実施する必要がある。このため、ウラン鉱山坑内のラドン濃度をそれほど下げることなく、娘元素の値を低下せしめることのみによって放射性物質を許容し得る限度まで減少させる方法を開発する。

(研究内容)
(1)問題となる粒子の基本的性質と凝結核に及ぼす影響についての研究
 問題となる粒子の基本的測定法の効果について調査し、抗内の放射線的危険性の評価法を確立するとともに、投入凝結核の形状、凝結核への娘元素の付着状態、荷電状態、とくに凝結核の投入方法、種類、状態による娘元素の凝結効果について実験する。
(2)除去方式の研究
 除去用の濾過材について、適当な濾過材を組合せ、たとえば、プレフィルタと電気集塵機や電圧を与えたカバーウールやカバーメッシュフィルタ等の組合せについて、(1)で開発された方法によってその効果を評価しながら実験する。

20.透過形ベータ線厚み計の安全性に関する試験研究

 (社)日本電気計測器工業会

(研究目的)
 RI応用計測器の内、普及度の最も高い透過形ベータ線厚み計について放射線障害防止の観点から線源部の安全性についての基礎的資料を得る。

(研究内容)
(1)85Kr密封線源の安全度の研究
 85Kr線源に機械的構造を類似させた線源模型を製作し、これに対する耐熱試験を実施する。
(2)線源容器の安全性に関する試験研究
 ベータ線厚み計の使用等の際における想定事故を検討し、その事故時に厚み計の線源部に加わる振動および衝撃について解析し、これらの条件に対応する線源部の安全性を試験する。
 なお、この研究は、委員会組織で行ない、安全性に関するあらゆる分野の専門家によって、多角的に検討し、一般性のある資料を得ることが最適であると考えられるので、(社)日本電気計測器工業会に放射線安全対策小委員会を設置して研究、検討を行なう。