昭和34年度原子力平和利用研究費補助金
および研究委託費の追加交付決定

  昭和34年度の原子力平和利用研究委託費ならびに同補助金については、さきに交付決定一覧表(本誌第4巻第9号55ページ)ならびに試験研究の概要(本誌第4巻第10号22ページ)を紹介したが、これらと並行して審査を行なっていた「教育訓練用小型原子炉の試作研究」(補助金-(株)日立製作所、東京芝浦電気(株))および「トーラス型放電による超高温プラズマの研究」(委託費-東京芝浦電気(株))は、慎重な審議検討の結果このほど科学技術庁庁議においてそれぞれ38,528千円(2件)、8,280千円(1件)の交付を決定した。
 「教育訓練用小型原子炉の試作研究」は、特に運転に際しての安全性に主眼を置き、相当なる日時を費やして詳細設計あるいは設計変更等を行ない慎重な検討をかさねた結果、ここに交付決定してさしつかえないと認められるに至った。なお、今後運転に至るまでには、引き続き規制法上の厳しい審査ならびに検査が行なわれることになっている。
 また、「トーラス型放電による超高温プラズマの研究は、33年度委託費による「大電流環状放電による超高温プラズマに関する研究」の継続研究であり、同研究の成果を待って交付する運びとなっていたが、このほど34年11月末に装置が完成し、引き続き行なった実験結果から、当初の目標を達成しうるものと判明したも
のである。
 試験研究の概要はそれぞれ下記のとおりである。

(注)①被交付者、②研究期間、③研究費総額、④補助金交付額、「教育訓練用小型原子炉の試作研究」は、2本立の交付を行なった関係上②、④についてはそれぞれについて記載する。


〔原子力平和利用研究費補助金〕

 (1)プール付タンク型教育訓練用小型原子炉の試作研究

 ① (株)日立製作所   ③ 73,950千円
 ② 34. 8.1~35. 3.31 ④ 10,052千円
   34.11.1~35.10.31   10,712

 目的:研究、教育訓練、アイソトープ生産に適し、かつ、安全度が高く、外国炉と類似点のできるだけ少ない軽水減速冷却型原子炉の設計、試作、運転を行ない、原子炉国産化のための研究開発を促進する。

 内容:試作する原子炉は、プール型原子炉にさらにタンク型原子炉を折衷複合した濃縮ウラン軽水減速冷却型、強制循環、熱出力最大100kWの原子炉である。燃料は約10%濃縮の酸化ウランセラミック、アルミニウム被覆で、初期装填量(含予備)はU-235約3.Okg(臨界量U-235約2.4kg).炉心はクラスター構造の燃料要素9本を囲むダミー要素、黒鉛反射体により形成する。熱中性子束は炉心平均約2×1012n/cm2secで、中性子源にはPo-Beを使用する。また、制御棒はシム安全棒3本(ボロン・ステンレススチール)、調整棒1本(ステンレススチール)を使用し、生体遮蔽はAl製のプールタンクの周囲を普通コンクリートで囲む構造である。実験設備としては、水平実験孔4本、水平貫通孔1本、垂直照射孔3本、アイソトープトレン2本のほかRI製造設備、サーマルコラム、気送管、遮蔽実験用プール、各1式がある。
 この原子炉につき、①原子炉本体、実験設備、制御計測装置、水循環装置の設計、製作研究を行なう。②燃料要素の設計ならびにUO2からセラミック加工、アルミニウム被覆までの試作研究を行なう。③これらを総合して据付組立を行なった上、燃料挿入から運転までの各種試験を行ない、その結果を検討する。


 (2)プール型教育訓練用小型原子炉の試作研究

  ①東京芝浦電気(株)   ③ 62,925千円
  ②34. 8. 1~35. 3.31 ④  8,376千円
   34.11. 1~35.10.31    9,378 〃
 目的:研究、教育訓練、アイソトープ生産等に適し、かつ、安全度の高い教育訓練用原子炉の設計、製作、運転を行ない、原子炉国産化のための研究開発を促進する。
 内容:試作する原子炉は、濃縮ウラン軽水減速冷却プール型不均質熱中性子炉で、自然循環、熱出力は最大100kWである。燃料は約20%濃縮のU-Al合金でU-235約3.5kg(臨界量U-235約3kg)、炉心は角型の燃料要素25本をAl被覆黒鉛の反射体要素で囲み、プール上部のブリッジで懸垂している。熱中性子束は炉心平均的7.5×1011n/cm2sec、中性子源はアンチモンベリリウムを使用する。制御板は安全板2本(ボロンスチール)、粗調整板1本(ステンレススチール)、微調整板1本(ステンレススチール)を使用し、Al製のプールの周囲を軽コンクリートで囲む構造である。また、実験設備としては、黒鉛熱中性子柱実験装置1式、放射孔2本、気送管2本のほか遮蔽実験用プール、中性子照射装置、訓練用臨界未満実験装置各1式を施設する。

 この原子炉について、①原子炉本体、燃料要素(輸入)、実験設備、制御計測装置、水浄化装置の設計、製作を行なう。②これらを総合して据付組立を行ない、燃料挿入から運転までの各種試験を行なって試作結果を検討する。

〔原子力平和利用研究委託費〕

 (1)トーラス型放電による超高温プラズマの研究

  ① 東京芝浦電気(株)  ③ 8,280,000円
  ② 35.1.21~35.10.31 ④ 8,280,000円
 目的:大電流環状放電装置に高周波加熱装置を付加
 して超高温プラズマの保持機構および加熱機構を究明するとともにこの型の将来性を評価する。
 内容:①高周波加熱装置(50kVA;1MC~25MC)を製作し、33年度委託費により製作したスキャロツプ型放電管に取り付ける。従磁界およびオーム加熱によりプラズマを発生させさらに高周波加熱を加えプラズマの安定をはかる。
 ②放電管の模様あるいは時間的変化を高速度カメラにより記録するとともに干渉分光器等によりプラズマの温度その他の物理量を測定し封入気体圧力と高周波加熱効果等の関係を求め超高温発生に必要な条件を見い出す。