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はじめに

1. 原子力委員会について

 我が国の原子力の研究、開発及び利用(原子力利用)は、1956年に施行された原子力基本法に基づき、厳に平和の目的に限り、安全の確保を前提に、民主、自主、公開の原則の下で開始されました。同法に基づき設置された原子力委員会は、国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的運営を図るため、様々な政策課題に関する方針の決定や、関係行政機関の事務の調整等の機能を果たしてきました。

2. 原子力委員会の役割の改革

 東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故による原子力を取り巻く環境の大きな変化を踏まえ、2013年に「原子力委員会の在り方見直しのための有識者会議」が設置され、原子力委員会の役割についても抜本的な見直しが行われ、2014年に原子力委員会設置法が改正されました。
 その結果、原子力委員会は、関係組織からの中立性を確保しつつ、平和利用の確保等の原子力利用に関する重要事項にその機能の主軸を移すこととなりました。その上で、原子力委員会は、原子力に関する諸課題の管理、運営の視点に重点を置きつつ、原子力利用の理念となる分野横断的な基本的な考え方を定めながら、我が国の原子力利用の方向性を示す「羅針盤」として役割を果たしていくこととなりました。求められる役割を踏まえ、2014年に新たな原子力委員会が発足しました。

3. 「原子力利用に関する基本的考え方」の策定

 このような役割に鑑み、原子力委員会では、かつて策定してきた「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」や「原子力政策大綱」のような網羅的かつ詳細な計画を策定しないものの、今後の原子力政策について政府としての長期的な方向性を示す羅針盤となる「原子力利用に関する基本的考え方」を2017年に策定し、政府として尊重する旨が閣議決定されました。

4.「原子力利用に関する基本的考え方」の改定

 「原子力利用に関する基本的考え方」は、原子力を取り巻く環境は常に大きく変化していくこと等も踏まえ、5年をめどに適宜見直し改定するとしています。原子力委員会においては、改定に向けて約1年にわたるヒアリングや議論などを通して検討を実施し、2023年に改定し、政府として尊重する旨が閣議決定されました。
 改定に向けては、現下の原子力を取り巻く環境変化に加えて、GX1実行会議における議論や、2022年に5年ぶりに実施した原子力規制委員会と原子力委員会の意見交換会、1か月間の意見公募に寄せられた御意見(延べ2,036件)に対する委員会の場での議論も踏まえ、取りまとめが行われました。
 また、この「原子力利用に関する基本的考え方」は、その後の「GX実現に向けた基本方針」(2023年閣議決定)や「今後の原子力政策の方向性と行動指針」(2023年原子力関係閣僚会議決定)においても整合的なものになっています。

原子力利用に関する基本的考え方(2023年原子力委員会決定、閣議尊重)における基本目標
「原子力利用に関する基本的考え方」改定において踏まえた主な環境変化

(出典)内閣府作成

5.脱炭素社会の実現に向けた原子力の歩み

 「GX実現に向けた基本方針」や「原子力利用に関する基本的考え方」等を踏まえ、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)が2023年に成立し、原子力について安全性の確保を大前提とした上で、その活用を進めるための措置が講じられました。具体的には、「原子力基本法」の改正において、

  • 〇国及び原子力事業者が安全神話に陥り、東電福島第一原発事故を防止することができなかったことを真摯に反省した上で、原子力事故の発生を常に想定し、その防止に向けて最大限努力すること
  • 〇国は、電気の安定供給の確保、カーボンニュートラルの実現、エネルギー供給の自律性向上に資するよう、必要な措置を講ずる責務を有すること
  • 〇原子力事業者は、原子力事故の発生の防止や核物質防護のために必要な措置を講じるとともに、原子力事故に対処するための防災の態勢を充実強化する責務を有すること

を新たに規定するなど、エネルギーとしての原子力利用に係る原則が明確化されました。また、高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の改正)、運転期間に関する規律の整備(電気事業法の改正)、円滑かつ着実な廃炉の推進(原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律の改正2)が措置されました。

脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律【GX脱酸素電源法】の概要

(出典)内閣官房,脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案概要(第211回通常国会),内閣官房ウェブサイト(2023年)

 2025年2月には第7次「エネルギー基本計画」が閣議決定されました。同基本計画は、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に向けて、同時に閣議決定された「GX2040ビジョン 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂」及び「地球温暖化対策計画」と一体的に活用されるものとしています。これらいずれの文書においても、再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、脱炭素電源を最大限活用すべきとされています。

6. 原子力白書の発刊

 原子力委員会が設置されて以来、原子力白書を継続的に発刊してきましたが、福島第一原子力発電所事故の対応及びその後の原子力委員会の見直しの議論と新委員会の立ち上げを行う中で、約7年間休刊しました。新たな原子力委員会では、我が国の原子力利用に関する現状及び取組の全体像について国民の方々に説明責任を果たしていくことの重要性を踏まえ、平成28年版原子力白書の発刊から再開することとしました。
 原子力白書では、特集として年度ごとに原子力分野に関連したテーマを設定し、国内外の動向や、その分析・評価等を紹介しています。令和6年度版原子力白書の特集では、日常生活を支える原子力技術について紹介するとともに、原子力委員会としてのメッセージをまとめています。
 第1章以降では、「原子力利用に関する基本的考え方」において示した基本目標に関する取組状況のフォローアップの説明でもあり、基本目標の構成に基づき、原子力利用全体の現状や継続的な取組等の進捗について俯瞰的に説明しています。
 なお、本白書では、原則として2025年3月末までの取組等を記載しています。ただし、一部の重要な事項については、2025年5月までの取組等も記載しています。
 今後も継続的に原子力白書を発行し、我が国の原子力に関する現状及び国の取組等について国民に対し説明責任を果たしていくとともに、原子力白書や原子力委員会の活動を通じて、「原子力利用に関する基本的考え方」で指摘した事項に関する原子力関連機関の取組状況について原子力委員会自らが確認し、専門的見地や国際的教訓等を踏まえつつ指摘を行うなど、必要な役割を果たせるよう努めてまいります。


脚注

  1. Green Transformation: 産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換すること
  2. 本改正により名称が「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施及び廃炉の推進に関する法律」に改正
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