令和6年度版原子力白書の公表に当たって
原子力委員会委員長 上坂 充
我が国における原子力の研究、開発及び利用(原子力利用)は、原子力基本法にのっとり、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩、産業の振興、地球温暖化の防止を図り、人類社会の福祉と国民生活の水準向上に寄与することを目的としています。また、原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨とし、民主的な運営の下に自主的に行い、成果を公開し、進んで国際協力に資するという基本方針の下に行われています。
原子力白書は原子力行政のアーカイブであるとともに、「原子力利用に関する基本的考え方」や原子力委員会決定・見解の内容をフォローする役割も担っており、毎年作成しています。今回の白書は、おおむね令和6年度に起きた原子力に関する事柄を取りまとめています。
今回の特集では、「日常生活を支える原子力技術」について取り上げました。例として紹介した原子力・放射線の技術は、既に私たちの暮らしで身近に利用されていると同時に、今後の研究開発により更なる飛躍が期待されるものでもあります。エネルギー分野では、2050年ネットゼロに向けて、AIやDXの発展に伴う電力需要の増加などを背景に、新たな安全システムを組み込んだ革新軽水炉の実現が期待されています。また、高速炉やさらには核融合炉などにおける技術革新が大いに期待されます。医療分野では、放射性医薬品等による核医学治療は、これまで治療が難しかった種類のがんに対し効果的な治療法として世界各国でも期待され、研究開発が進められています。さらに、農林水産業やその他の産業分野での利用も進むなどしており、様々な原子力・放射線の技術が私たちの日常生活に貢献しています。
原子力・放射線の技術は、日々の日常生活で手に取るものにも一般的に使われている日常的な技術です。そして、リスクについて知っていただくことはもちろんのこと、原子力・放射線は適切に扱うことで、私たちの現在の生活や将来に大いに貢献するというベネフィットの側面についても知っていただきたいと考え、今回の白書を作成しました。
原子力白書が、原子力政策の透明性向上に役立つことを期待するとともに、原子力利用に対する国民の理解を深めていただく際の一助となれば幸いです。