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5-2 科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報体系の整備と国民への提供

 原子力委員会は2016年12月、理解の深化に向けた根拠に基づく情報体系の構築についての見解を取りまとめました。同見解では、国民が自らの関心や疑問に応じて自ら検索し、必要に応じて専門的な情報までたどれるように、一般向け情報、橋渡し情報、専門家向け情報、根拠等の各階層をつなぐ情報体系を整備することの必要性を指摘しています(図 5-1)。
 また、同見解では、国民の関心が大きく、原子力政策の観点でも重要な分野から着手するべきとしており、特に「地球環境・経済性・エネルギーセキュリティ(3E)」及び「安全・防災(S)」については、原子力関係機関による情報体系の具体化が進められています。加えて、原子力委員会が2023年2月に改定した「基本的考え方」においては、ポータルサイトなどによる情報へのアクセシビリティの向上が重要である旨を記載しています。


理解の深化~根拠に基づく情報体系の整備について~

図5-1 理解の深化~根拠に基づく情報体系の整備について~

(出典)原子力委員会 「理解の深化~根拠に基づく情報体系の整備について~(見解)」(2016年)


 原子力機構は、原子力に関連した科学的かつ客観的な情報提供を行う「原子力百科事典ATOMICA2」の再構築を行っています。2022年度には、「高温ガス炉による核熱エネルギー利用」等の一部の記事が更新されました。
 一般財団法人日本原子力文化財団は、エネルギーや原子力に関する網羅的な情報を提供するウェブサイト「エネ百科3」や「原子力総合パンフレット4」を運営しています。これらでは、原子力やエネルギーに関するさまざまな情報を子ども向けコラムや原子力防災に関するコンテンツ等も含め提供されています(図 5-2)。


原子力総合パンフレット トップページ

図5-2 原子力総合パンフレット トップページ

(出典)一般社団法人日本原子力文化財団 「原子力総合パンフレット2021年度版」を基に作成


 そのほかにも、一般向けから専門家向けまで、各原子力関連機関による情報発信が行われており、電気事業連合会を中心に、それらのコンテンツ間で階層構造を整理し、互いにURLを掲載するなど、全体として情報体系を整備する取組が進められています(図 5-3)。


各原子力関連機関のコンテンツ間の接続イメージ

図5-3 各原子力関連機関のコンテンツ間の接続イメージ

(出典)第11回原子力委員会資料1-2号電気事業連合会「根拠に基づく情報体系整備状況について」(2018年)を基に一部内閣府修正


コラム ~原子力に関する世論調査~

 これまでも科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報体系が整備され、継続的に国民へ情報提供が行われていますが、国民における原子力や放射線に関する情報に対する理解は十分に深まっていないのが実態です。「原子力に関する世論調査(2022年度)」によると、原子力分野(ここでは原子力発電分野を指す。)において「あなたが『聞いたことがある項目』」に関する設問と「あなたが『他の人に説明できる項目』」に関する設問(複数回答可)では、「どの項目も聞いたことがない」を選択する人は全体の20.8%(2018年度調査では23.7%)でしたが、「どの項目も説明できない」を選択する人は全体の83.3%(2018年度調査では85.1%)でした。また、放射線分野についての同様の設問においても、「どの項目も聞いたことがない」を選択する人は全体の13.6%(2018年度調査では16.6%)でしたが、「どの項目も説明できない」の選択者は82.3%(2017年度調査では83.6%)でした。この結果から、原子力や放射線に関する情報を聞いたことはある人や、他者に説明できる程度に理解している人は増えてきてはいるものの、未だ少ないことが推察されます。原子力のメリット、デメリットに関して、科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報体系に基づいて国民一人一人が理解を深めた上で自らの意見を形成していけるような環境の整備や教育の実施を今後も継続的に実施していくことが必要です。


原子力分野(左図)、放射線分野(右図)の情報保有量に関するアンケート結果

原子力分野(左図)、放射線分野(右図)の情報保有量に関するアンケート結果

(出典)一般財団法人日本原子力文化財団「原子力に関する世論調査 (2022年度)調査結果」




  1. https://atomica.jaea.go.jp/
  2. https://www.ene100.jp/
  3. https://www.jaero.or.jp/sogo/

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