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核融合研究開発の次段階構想について

核融合会議



 核融合の研究開発は着実な進展を見せており、JT-60の臨界プラズマ条件達成による核融合の科学的実証が昭和62年末頃と見込まれる状況に至っている。また、欧米では次期装置設計チームがすでに活動を始めるとともに、次期装置共同建設の可能性が検討されている。このような状況を踏まえて、原子力委員会核融合会議は昭和60年4月から、JT-60以降の次の段階における核融合研究開発の進め方について検討を開始した。同会議は、3つの分科会(基本問題、次期大型装置及び炉工学)を設けて、全体計画及びその技術的可能性について国内の専門家による検討を1年半に亙って行い、このほどその結論を得るに至った。

 その検討に当っての基本的考え方及び結論の概要は、以下のとおりである。

1.基本的考え方

1)次段階の研究開発の目標については、現行の長期計画(昭和57年6月)において、「1990年代後半に自己点火条件を達成」することとし、「当面、トカマク方式を想定して、実験炉についての研究開発を進める」としている。今回の作業に当っては、この長期計画の見直しも含めて、計画の中心となる次期装置の具体的な仕様、建設計画等とともに炉工学技術の開発及び国全体の研究体制等についても検討を行う。

2)サミット協力等の場で次期装置共同建設の可能性が検討されており、我が国としても、将来計画を諸外国に明確に示す事が不可欠である。従って、JT-60による臨界プラズマ条件達成を前提として、最新の技術レベルを踏まえた次期装置の仕様等を明確にする。

3)次段階計画の中核となる次期装置については、国内建設を念頭に置いて、JT-60の臨界プラズマ条件達成後に所定の評価を踏まえて設計及びR&Dを行い、諸条件が整えば建設を開始する。また、これと並行して国際的な共同建設の検討にも積極的に参加する。

4)核融合の研究開発は、未踏未知の超高温核燃焼プラズマと、多岐に亙る革新的炉工学技術を包含する複合システムの開発である。我が国は、昭和40年代から、これをナショナル・プロジェクトとして積極的に推進しており、今や世界の最先端をリードする立場に立っている。科学技術による世界的貢献を目指す我が国としては、若い研究者にチャレンジングな目標を与えるという観点からも、今後の科学技術開発の重要なテーマとして、核融合次段階計画を積極的に進めるべきである。

2.次段階計画の骨子

1)基本的枠組
(1)JT-60に続き、トカマク方式による次期大型装置の建設を1990年代前半に開始する。

(2)その主要目標は、重水素・三重水素反応による自己点火・長時間燃焼の達成であり、炉工学技術の総合化については、上記目標達成に不可欠な項目を最優先し、装置本体と独立に開発できる項目については、できる限り別途開発して装置の大型化、複雑化を避ける。

(3)大学においては、学術審議会の報告に基づき、環状磁場系の外部導体系大型ヘリカル装置による計画を実施し、トカマク並みのデータベースの確立を図るとともに、各種閉じ込め方式について研究を継続する。

(4)トカマクとトカマク以外の閉じ込め方式の路線選択の時期は、次々期装置の計画決定時を目指す。

(5)炉工学技術については、日本原子力研究所、大学及び国立試験研究機関の協力・連携による総合的な研究開発を実施する。

(6)国際協力については、日本がイニシアチブをとって、新しい国際協力プロジェクトを立案することも検討する。
2)次期大型装置
(1)次期大型装置は、重水素・三重水素反応による自己点火と、800秒程度の長時間燃焼を行うとともに、テスト・モジュールによるトリチウム増殖及び発電用高温高圧ブランケット照射等の炉工学試験を行う。(参考-1)

(2)電流駆動、超電導磁石、トリチウム取り扱い等の炉心及び炉工学の各分野において、装置開発に必要な予備的研究開発(R&D)を行う。

(3)技術リスク軽減のために、トリチウムを使わない装置機能確認及びトリチウムを使った燃焼実験並びに本格運転の3段階に分けたフェーズド・オペレーション(段階的建設・運転)を行う。

(4)装置規模の縮小、設計最適化、今後のR&Dの成果の取り込みによって、装置建設費を4,000億円程度と試算した。設計作業及びR&Dを早急に開始すれば、1990年代前半の建設開始及び2000年前後の完成が可能である。(参考-2)
3)炉工学技術
(1)今後の炉工学研究開発を次のように大別し、日本原子力研究所、大学及び国立試験研究機関の協力・連携により総合的な研究開発を実施する。(参考-3)
  ①次期大型装置の建設に必要な研究開発
  ②将来の実証炉開発に必要な研究開発
  ③基礎的・先駆的な研究
 これらの研究開発には、約900億円を要する。(文部省関係を除く)

(2)上記①の研究開発を通じて、1990年代前半の次期大型装置着工に必要な技術レベルの達成は可能となる。

(3)研究開発の実施に当たっては、核融合会議において十分な連絡調整を行うとともに、施設共同利用等の新たな研究交流の場の整備を検討すべきである。

(4)国内計画の補完・強化の観点から重要な国際協力については、材料分野等これに適した技術分野において、我が国が主導的役割を果たすことに積極的に取り組む。
3.次段階計画のスケジュール

 次段階計画は、上記した結論を踏まえて、JT-60の臨界プラズマ条件達成(昭和62年末と想定)後の評価作業を経て発足することとする。昭和63年度から次段階計画を開始するとすれば、その実施には昭和80年代前半までの約20年間を要し、主なマイルストーンは次のとおりである。
昭和67年頃 次期大型装置着工
昭和74年頃 次期大型装置完成
昭和76年頃 自己点火条件達成
昭和78年頃 長時間燃焼達成

(参考-1)

次期大型装置の主要仕様

(参考-2)

次期大型装置の全体計画

(参考-3)

表3 核融合炉工学技術開発長期計画(Ⅰ)

昭和61年10月

表3 核融合炉工学技術開発長期計画(Ⅱ)

昭和61年10月

表3 核融合炉工学技術開発長期計画(Ⅲ)

昭和61年10月



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