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昭和61年原子力年報(2)



第2章 我が国の原子力開発利用の動向


1.我が国の原子力開発利用の進展状況

(1)原子力発電の状況
イ)原子力発電は、昭和61年9月末現在、運転中のものは合計32基、発電設備容量2,452万1千キロワットとなっており、これに建設中及び建設準備中のものを加えた合計は48基、発電設備容量4,069万4千キロワットとなっている。また、原子力発電は昭和60年度末現在、総発電設備容量の15.9%、昭和60年度実績で、総発電電力量の26.3%と石油火力の25%を初めて上回り、原子力発電の設備利用率は、昭和60年度には76.0%と過去最高の実績となった。

ロ)立地の推進に資するため、現在、広報活動等を積極的に実施するとともに、また立地地域の振興対策の充実を図るため電源三法の活用等が図られている。また、ソ連のチェルノブイル原子力発電所の事故に際しては、我が国の原子力発電の安全性等に係る説明会、パンフレット配布等広報が適時実施された。ハ)自主技術による軽水炉の信頼性、稼動率の向上及び従業員の被ばく低減等を目的として軽水炉の改良標準化が行われ、第3次改良標準化計画が本年7月にとりまとめられた。また、軽水炉技術について、現在の水準に満足することなく、さらに技術高度化を図っていくため、総合エネルギー調査会原子力部会において報告書がまとめられた。

ニ)廃止措置関連の技術開発については、昭和61年度より、JPDRの解体実地試験を約6年間をかけて行うこととしている。

(2)自主的核燃料サイクルの確立に向けた進展
イ)核燃料サイクルの事業化については、日本原燃サービス(株)及び日本原燃産業(株)が、現在、青森県六ケ所村における核、燃料サイクル3施設の建設を準備中であり、昭和60年6月より陸域調査及び昭和61年6月より海域調査を行っている。さらに、放射性廃棄物の廃棄の事業に関する規制を創設し、その安全規制の充実強化を図ること等を目的とした原子炉等規制法改正法案が昭和61年5月第104回通常国会において成立した。これにより、我が国の放射性廃棄物処分を円滑に推進していくために必要な枠組が明確化されることとなった。

ロ)ウラン濃縮については、昭和60年11月に、原型プラントの建設工事が開始され、昭和62年半ば頃には、部分運転を開始する予定である。一方、遠心分離法に続くウラン濃縮技術として、レーザー法の開発も進められており、原子レーザー法については、日本原子力研究所において原理実証に成功し、データベースの整備を実施している。また、分子レーザー法については、理化学研究所において、ラマンレーザーを用いた原理実証試験が進められている。原子力委員会のウラン濃縮懇談会では、特にレーザー法について、本年4月に報告書をまとめ、産学官の連携による研究開発推進、チェック・アンド・レビューの必要性等を指摘している。

ハ)再処理の技術開発は、動力炉・核燃料開発事業団を中心に進められており、同事業団東海再処理工場における昭和61年8月までの累積再処理量は、約258tに達している。

ニ)低レベル放射性廃棄物の陸地処分については、現在、青森県六ケ所村において低レベル放射性廃棄物を陸地処分する計画の具体化が図られており、日本原燃産業(株)が、施設の設置のための調査等を進めているところである。

 高レベル放射性廃棄物については、昭和65年の運転開始を目途に、ガラス固化プラントを建設するべく、所要の準備を進めている。また、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)等の貯蔵を行うとともに、高レベル放射性廃棄物の処分技術を確立するために必要な試験研究等を行うことを目的とした「貯蔵工学センター」を北海道幌延町に計画し、昭和60年11月より、同センターに係る立地環境調査を実施している。

年間発電電力量構成の推移及び見通し(電気事業用)


商業用原子力発電設備利用率の推移


我が国の原子力発電所の立地点(昭和61年8月末現在)


遠心分離法によるウラン濃縮技術の開発スケジュール


東海再処理工場における再処理実績




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