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動力炉・核燃料開発事業団人形峠鉱業所における核燃料物質の使用の変更(ウラン濃縮パイロットプラントの新設)に係る安全性について(答申) 53原委第140号
昭和53年3月28日
科学技術庁長官 殿
原子力委員会委員長
昭和52年10月17日付け52安(核規)第1801号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。 記 当該変更に係る安全性については、別添の核燃料安全専門審査会による審査結果報告書のとおり十分確保されるものと認める。 (別添)
昭和53年3月6日
原子力委員会
委員長 熊谷 大三郎 殿
核燃料安全専門審査会
会長 山本 寛
動力炉・核燃料開発事業団人形峠鉱業所における核燃料物質の使用の変更(ウラン濃縮パイロットプラントの新設)に係る安全性について
当審査会は、昭和52年10月18日付け52原委第620号(昭和53年2月22日付け53原委第110号で一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告します。 Ⅰ 審査の結果 動力炉・核燃料開発事業団人形峠鉱業所における核燃料物質の使用の変更(ウラン濃縮パイロットプラントの新設)に関し、同事業団が提出した「核燃料物質使用変更許可申請書」(昭和52年9月30日付け申請、昭和53年2月17日付け一部補正)について審査した結果、「Ⅲ審査の内容」に示すとおり、本使用の変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。 Ⅱ 申請の内容 本件は、動力炉・核燃料開発事業団が遠心分離法によるウラン濃縮技術開発の総合試験として、パイロットプラントによりウラン濃縮試験を行うため、以下の建家及び設備を、岡山県苫田郡上斎原村の人形峠鉱業所(敷地約50万㎡)に設置しようとするものである。 1 建家
(1) 主棟
一部地上2階、延床面積約9,000㎡、鉄骨、鉄筋コンクリート造りの建家を建設し、遠心機室、UF6操作室、補修調整室、排気機械室、電源室、放射線管理室等を設ける。 (2) ウラン貯蔵庫
床面積約1,000㎡、鉄骨、鉄筋コンクリート造りの建家を建設し、ボンベ貯蔵室、排気機械室等を設ける。 (3) 廃水処理棟
一部2階建、総床面積約300㎡、鉄筋コンクリート造りの建家を建設し、廃水化学処理装置を設ける。 (4) その他の建家
廃水処理の塩化鉄、苛性ソーダ、硝酸等の薬品類を収容する薬品貯蔵庫及び油脂類を収容する屋内危険物貯蔵所及び技術管理棟を建設する。 2 施設
(1) 使用施設
遠心分離機を配列し、配管で接続したカスケード設備、駆動用電源、電源制御装置等からなる遠心分離機駆動設備、カスケード設備への六フッ化ウランの供給、回収等に使用するUF6処理設備、プラントの運転制御を行うための計装制御設備、ユーティリティ設備等からなるウラン濃縮設備を設ける。 また、遠心分離機等の補修に必要な補修調整設備、分析用設備等を設ける。 (2) 貯蔵施設
ウラン貯蔵庫内に、供試用天然ウラン、製品の濃縮ウラン及び廃品の劣化ウランをいずれも六フッ化ウランとしてボンベ(米国ANSI規格30B)に収容して貯蔵するための架台、クレーン(2.9トン)、ボンベ搬出入用台車を設ける。貯蔵能力はボンベ219本である。 (3) 廃棄施設
i) 気体廃棄施設
主棟の給排気設備は、建家屋上に設ける地上高約17mの排気筒のほか、給気用送風機、エアウオッシャ、フィルタユニット、排風機等からなる4系統の給排気設備及びUF6処理設備を収容するフード内の非常時排気を行うための局所排気処理装置からなる。このうち遠心機室、補修調整室及び機器保管室の排気を行う2系統には、排気を一部再循環するための循環送風機等を設ける。 ウラン貯蔵庫の給排気設備は、建家屋上に設ける地上高約10mの排気筒のほか、給気用送風機、エアウォッシャ、フィルタユニット、排風機等からなる。 廃水処理棟の給排気設備は、建家屋上に設ける地上高約14mの排気筒のほか、給気用送風機、フィルタユニット、排風機等からなる。 また、主棟及びウラン貯蔵庫の排気筒には、それぞれ排気モニタを付設する。 ii) 液体廃棄施設
主棟及びウラン貯蔵庫内にそれぞれから生ずる液体廃棄物を集め、放射性物質濃度を分析、管理するための廃水ピットを設ける。また、廃水処理棟内に廃水化学処理装置を設ける。 iii) 固体廃棄物処理設備
固体廃棄物を保管するため、既設(製錬事業所としての)の廃棄物貯蔵庫を用いる。 Ⅲ 審査の内容 本変更にあたっては、以下のとおり適切な配慮がなされているので、変更に伴う安全性は確保されるものと判断する。 1 施設の安全性
(1) 敷地環境
敷地は、岡山県と鳥取県の県境中国山脈の背陵地帯に位置し、海抜700~750mの準高原地帯にある。敷地から約150mの人形峠に位置する数軒の家屋を除けば、最寄の赤和瀬地区まで約2.4㎞、岡山県津山市および鳥取県倉吉市までの距離はそれぞれ約45㎞および約30㎞である。 基礎地盤は、花崗岩類であり、その上に堆積層がある。 ボーリング及び弾性波試験を行った結果、大部分の基礎地盤となる切土部の風化花崗岩は、N値50以上を示す均一な地盤からなっている。 この地域の月別平均風速は、3.6m/secであり、最大積雪量は、2.6m程度である。 (2) 在来施設との関連
人形峠鉱業所全体の敷地は約50万㎡で昭和31年からウランの探鉱・採鉱および製錬の各種試験を行っている施設がある。受変電設備、非常用電源設備、廃棄物貯蔵庫等は、上記の各施設と共用される。 (3) 建家
i) 耐震耐火性
中国地方は過去大地震が比較的少なく、河角の震度期待図によると施設周辺の100年期待値は最大加速度100gal、200年期待値で同じく100~150galである。 建家の基礎は地盤である花崗岩に支持させる。 主棟、ウラン貯蔵庫及び廃水処理棟は、建築基準法の定めによる地盤及び地域による緩和係数を適用せず水平震度02で設計することとしている。 また、これらの建家は、鉄骨、鉄筋コンクリート造りで主要部材は、すべて不燃材を使用することとしている。 (4) 使用施設
i) 耐震性
カスケード設備は、遠心機、ヘッダ配管及びそれらの間を繋ぐ枝管がほぼ平面状に配置される。 遠心機自体及びヘッダ配管は、水平震度0.24で設計することとしている。枝管は、遠心機及びヘッダ配管の水平力による変位の合成変位を受けても耐えられるものとすることとしている。 UF6処理設備は、カスケード内へ六フッ化ウランを送り込むためのUF6発生槽、カスケード以降のコールドトラップ、ケミカルトラップ、製品及び廃品の六フッ化ウランを回収するUF6回収槽からなる。これらのうち、発生槽及び回収槽は、秤量計の上に油圧でクランプされ水平震度0.3に耐えられるよう設計することとしており、配管等との間は、フレキシブル配管で接続することとしている。コールドトラップは、回収槽と同様油圧でクランプすることとしている。 以上の他、六フッ化ウランと直接接することのない計装制御設備、ユーティリィティ設備、電気設備、補修調整設備等も水平震度0.24で設計することとしている。 ii) 耐火性
カスケード設備及びUF6処理設備は、すべてステンレス鋼等の金属及び不燃材で構成され、その他の設備も主としてステンレス鋼もしくは炭素鋼で構成される。 iii) 負圧管理
主棟内は、管理区域及び非管理区域に区分され、管理区域内は、汚染の可能性の程度に応じて各区域の負圧値を定め、汚染の可能性の低い区域から高い区域へと空気が流れるよう管理される。 また、UF6発生槽、UF6回収槽等のウランの漏洩の可能性のある個所は、フードで覆われ、負圧管理される。また、フード内の非常時排気に備え局所排気処理設備も設置することとしている。 (5) 貯蔵施設
i) 耐震性
供試用天然ウラン及び供試後のウランを収納したボンベは、耐震性を考慮して横置き1段で貯蔵することとしている。 ii) 耐火性
ウラン貯蔵庫内の各設備は、主として鋼板等の不燃材で構成される。 iii) 負圧管理
ウラン貯蔵庫では、ウランは密閉されたボンベ内にあり、ボンベから漏洩することは殆んど考えられないが管理区域を設け、給排気設備によって負圧管理することとしている。 (6) 廃棄施設
i) 耐震性
給排気設備は、それぞれの建家に付設する設備として耐震性が考慮されている。 排気筒は、建家屋上に付設されるため水平震度0.3で設計することとしている。 廃水化学処理装置の槽類等は、廃水処理棟に付設するものとして水平震度0.24で設計することとしている。 ii) 耐火性
排気設備、排気筒、廃水化学処理装置等は、鋼板、コンクリート等の不燃材で構成することとなっている。 2 臨界管理
本施設において臨界安全性の配慮を要する場所としては、製品濃縮ウランが捕集された製品第1段コールドトラップ、製品濃縮ウランが充填された貯蔵ボンベ及びそれらのボンベが収納される貯蔵庫である。 これらの場所における臨界管理は、濃縮度5%の場合の未臨界減速条件(H/U235≦10)に保つことにより行うこととしている。すなわち、カスケード設備及びUF6処理設備については、質量分析装置を用いて常時測定する等によりH/Uが0.088(濃縮度4%の時H/U235=2.2に相当)以上にならないように管理される。 また、製品第1段コールドトラップ及び濃縮ウランを貯蔵する製品ボンベは、浸水の恐れのない地形に建設される主棟及びウラン貯蔵庫にそれぞれ設置及び保管し、万一の火災時も消火用に水を用いない等によりボンベ内への水分の侵入を防ぐこととしている。 3 放射線管理
本施設においては、低濃縮、天然及び劣化ウランのみを取扱うため、内部被ばくの管理を中心に行うこととしている。 遠心機室、UF6操作室等ウランを取扱う区域を管理区域とし、従事者等の出入管理を行うこととしている。 主棟、ウラン貯蔵庫及び廃水処理棟内は、エア・スニッファ、アルファ線ダストモニタ等によって空気中の放射性物質の濃度を常時監視することとしており、管理区域内は、表面汚染密度を、定期的に測定することとしている。 従事者の被ばく管理は、内部被ばくは定期的に行うバイオアッセイにより、外部被ばくは個人被ばく線量計により行うこととしている。 遠心機室等の室内排気を再循環する場合は、フィルタによるろ過前の排気中の放射性物質濃度を排気モニタにより常時監視し、フィルタの捕集効率を考慮して、再循環用空気中の放射性物質濃度が管理区域内の許容濃度より十分低いことを確認することとしている。 なお、補修調整室等における作業で従業員が長時間滞在する場合及び上記モニタで放射性物質濃度が一定値以上の場合は、関連給排気系統はワンススルー方式に切換えられることとしている。 4 廃棄物処理
i) 気体廃棄物
カスケード設備、UF6処理設備等の濃縮工程内からの気体廃棄物は、通常コールドトラップ2段、ケミカルトラップ、高性能フィルタを経て排気筒から放出される。 ウラン貯蔵庫及び廃水処理棟の気体廃棄物は、それぞれの排気設備を経て、各棟に付設される排気筒から放出される。 主棟及びウラン貯蔵庫の排気にあたっては、各排気筒に付設されている排気モニタで放射性物質の濃度を常時監視することとしている。 ii) 液体廃棄物
本施設における液体廃棄物は、濃縮工程からは発生せず、除染等の附帯作業に伴うもののみである。 液体廃棄物は、主棟及びウラン貯蔵庫にあるそれぞれの廃水ピットに一時貯留し、放射性物質濃度を測定し、規定値以下であることを確認した後、廃水処理棟へ送液し、必要に応じ廃水化学処理装置により凝集、沈澱処理を行い、周辺監視区域外の許容濃度以下であることを確認して、鉱業所内の沈澱池に送液することとしている。ブースタポンプ、ロータリーポンプ等から生ずる廃液は、耐食性を有する鋼製の容器に収納し、廃棄物貯蔵庫に保管することとしている。 iii) 固体廃棄物
本施設自体は、所定の運転期間中は、原則として部品の交換を行わないよう設計することとしているので固体廃棄物としては、ケミカルトラップの吸着剤、フィルタ、除染に用いたウェス等であり、これらは可燃物、不燃物の区分をし、プラスチックシートに密封するか、ドラム缶等の容器に収納し、廃棄物貯蔵庫に保管することとしている。 5 平常時における周辺環境への影響評価
濃縮設備の系内が真空状態にあること及び系内のウラン回収作業に伴う回路切換えにおいても、作業に誤りのない限り、外部へのウランの流出は考えられない。 系内のウランは、2段のコールドトラップ、ケミカルトラップ及び高性能フィルタを経て施設外へ放出される。その濃度は、3.8+10-18μCi/cm3程度と計算されるが、モニタの検出能力等から、管理目標値を5×10-14μCi/cm3以下とする。 液体廃棄物については、廃水処理棟で1×10-7μCi/cm3以下であることを確認した後、鉱業所の沈澱池へ送液し、それ以降鉱業所全体で管理される。 6 事故時における周辺環境への影響評価
本施設は十分な安全対策が講じられており、放射性物質の環境への放出を伴う事故は考えられないが、周辺環境に及ぼす影響の最も大きいものとして、カスケードの配管の一部に亀裂が生じカスケード全体の六フッ化ウランが室内に解放され、1時間以内に排気筒から放出されたと仮定し、排気筒出口濃度を計算した結果、その値は周辺監視区域外における許容濃度を下まわる。 Ⅳ 審査の経過 本審査会は、昭和52年12月12日第8回審査会並びに昭和52年10月25日、同11月8日、同11月15日、同12月5日、同12月7日、昭和53年1月17日、同2月1日、同2月14日、同2月28日及び同3月6日の加工使用部会において審査を行い、本報告書を決定した。 なお、同部会の委員は次のとおりである。 部会委員
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