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関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)について(答申)


52原委第498号
昭和52年8月26日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和51年11月16日付け51安(原規)第156号(昭和52年6月16日付け52安(原規)第185号及び昭和52年8月9日付け52安(原規)第229号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。

① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)

昭和52年8月12日
原子力委員会
   委員長 宇野 宗佑 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和51年11月16日付け51原委第962号(昭和52年6月16日付け52原委第389号及び昭和52年8月9日付け52原委第489号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について、結論を得たので報告する。

 Ⅰ 審査結果

関西電力株式会社高浜発電所の原子炉設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「高浜発電所原子炉設置変更許可申請書(昭和51年11月2日付け、申請及び昭和52年6月9日付けと昭和52年8月1日付け、一部補正)」に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

 Ⅱ 変更内容


Ⅱ-1 燃料集合体設計の変更

 本変更は、従来の燃料集合体(以下A型燃料集合体という。)と設計の異なる燃料集合体(以下B型燃料集合体という。)を高浜2号炉の取替燃料として使用するものであり、A型燃料集合体とB型燃料集合体は炉心内で混在して使用される。

Ⅱ-1-1 燃料棒

 従来の燃料棒(以下A型燃料棒という。)は低濃縮二酸化ウラン焼結ペレットをジルカロイ-4被覆管に挿入し、上部にステンレス鋼のコイルバネを入れ、両端にジルカロイ-4端栓を溶接した密封構造のもので、ヘリウムを加圧封入している。これに対し新しい設計の燃料棒(以下B型燃料棒という。)は、燃料棒上部プレナムのほか、燃料棒下部にもプレナムを設け、ここにはニッケル・クロム・鉄合金のコイルバネを使用する。被覆管の肉厚はA型燃料棒のものより約6%厚くなっており、その分だけ燃料ペレット直径が小さくなっている。また、ディシュのほかチャンファもつけたペレットが内蔵され、燃料棒内部は、空気を抜いた後A型燃料棒と同様にヘリウムが加圧封入される。その他の燃料棒設計仕様はA型及びB型で同一としている。

Ⅱ-1-2 燃料集合体

 A型及びB型燃料集合体は、15×15の正方配列を形成する燃料棒204本、炉内計装用案内シンブル1本、制御棒クラスタ案内シンブル20本、支持格子7個、端板付上部ノズル及び下部ノズル各1個から構成される。

 A型燃料集合体は20本の制御棒クラスタ案内シンブルとこれに接合された7個のバネつき支持格子とによって骨格を形成し、燃料棒及び炉内計装用案内シンブルを挿入した後、上部及び下部ノズルを取付けて燃料集合体を組立てるのに対し、B型燃料集合体では、7個の支持格子に炉内計装用案内シンブル、燃料棒及び20本の制御棒クラスタ案内シンブルを挿入し、骨格を形成した後上部及び下部ノズルを取付けて、燃料集合体を組立てることとしている。なお、最上部と最下部を除く支持格子は、ある幅で上下に動き得る設計となっている。

 また、A型燃料集合体では燃料棒と上部及び下部ノズル間に、それぞれ約20mmの間隙がある、いわゆるボトム・オフ構造であるのに対し、B型燃料集合体では燃料棒と下部ノズル間に間隙を設けない、いわゆるボトム・オン構造であり、燃料棒と上部ノズル間には約40mmの間隙が設けられている。

 その他の燃料集合体の設計仕様はA型及びB型燃料集合体で同一としている。

Ⅱ-2 固体廃棄物処理設備の変更

 現在、1号及び2号炉に係る固体廃棄物置場として、A廃棄物庫及びB廃棄物庫とが設置されている。

 本変更は、廃棄物貯蔵累積量が次第に増大してくるのに伴い貯蔵能力を強化するため、固体廃棄物置場を増設するものである。

 増設施設はC廃棄物庫と称し、2階建で容量はドラム缶で約2万本の貯蔵保管が可能であるとしている。

 Ⅲ 審査内容


Ⅲ-1 燃料集合体設計の変更

 本変更の審査にあたっては、今後も同様な変更申請があると予想されることから、できるだけ一般的に検討を加えることとした。

 また、本変更では異なる二種類の燃料集合体が炉心に共存することとなるため、その共存性についても検討を行った。

Ⅲ-1-1 燃料の機械設計

 燃料の機械設計においては、以下に示す事項を満足することが必要である。

 ① 燃料最高温度は二酸化ウランの融点未満であること。

 ② 被覆管の円周方向引張り歪の変化量は各過渡変化に対して1%以下であること。

 ③ 被覆管内圧は1次冷却材外圧(157kg/cm2g)以下であること。

 ④ 被覆管応力はジルカロイ-4の耐力以下であること。

 ⑤ 被覆管の累積疲労損傷係数は設計疲労寿命を越えないこと。

 ⑥ 輸送及び取扱い時において、燃料集合体は6Gの荷重に対して安定であること。

 このため審査に当っては、下記の事項について検討を加えた。

(1) A型燃料集合体とB型燃料集合体の共存性

 燃料集合体の使用材料及び寸法は、A型及びB型燃料集合体について同一になっていることから、構造上の共存性については問題ない。ただし、B型燃料集合体の支持格子は、燃料棒の熱膨張及び照射成長に伴って、A型燃料集合体の支持格子と相対的位置にずれを生ずる。

 その影響を評価したところ、ずれの量は支持格子側板の高さが38mmあるのに対し、燃料寿命を通じて最大でも約10mm程度にとどまるので、地震時も含め検討したが、安全上問題ないことを確認した。

(2) 燃料設計計算コード

 B型燃料棒の設計に用いられる燃料設計計算コード(FPAC)は、燃料棒諸元、冷却材入口温度、流量、物性値及び出力履歴を入力とし、燃料棒の全長にわたって2次元(R,Z)の解析計算を行うものである。本コードは燃料挙動に係る各種モデルを含み、燃料温度、ペレット-被覆管ギャップ寸法、FPガス放出量、燃料棒内圧、被覆管の変形、被覆管応力などを燃焼度の関数として求めることができる。

 本コードは実測データとの比較及び本コードに基づき設計製造された燃料の実績から判断して十分な信頼性があり、B型燃料棒の設計に使用されることは妥当なものと考える。

(3) 被覆管の応力

 被覆管応力として、燃料棒の内外圧差による応力、ペレットとの接触圧による応力、熱応力、地震による応力及び水力振動による応力について検討したが、B型燃料棒ではA型燃料棒と同じく、これらの応力を組合わせた場合でもジルカロイ-4の耐力を十分下回っており、問題ないものと考える。

(4) 被覆管の歪

 燃料被覆管は、解析結果によると内外圧差のため使用初期からクリープダウンによる外径減少を示し、第2サイクル中期から末期にかけてペレットと接触し、以降ペレットのスエリングとともに徐々に径が増加する。このために生ずる歪量はA型燃料棒とB型燃料棒では同程度であり、運転時の異常な過渡変化時を考慮しても1%以下の歪量であるので安全上問題ないものと考える。

(5) 燃料棒下部プレナム・スプリング

 燃料棒下部プレナム・スプリングはペレットと被覆管が接触して力学的に相互作用を起こした場合、接触位置より下の部分の燃料スタックと被覆管の間に生ずる伸びの差を吸収するために使用される。

 このスプリングのバネ定数は上部プレナム・スプリングに比し大きく設計されているため、燃料寿命初期における変位量は小さいが、照射によるスプリングのクリープのため燃料寿命末期ではわずかな変位が生じ、上述の伸び差を吸収する能力が低下する可能性がある。この燃料寿命末期でのスプリング変位による伸び差吸収能力の低下を評価したが、この低下はわずかでありスプリングの機能上問題ないものと考える。

(6) 燃料棒内圧

 A型及びB型燃料棒は、被覆管内径、ペレット直径にペレットデイッシュ形状、プレナム形状等に多少の相違があるが、ほぼ同一の燃料棒内自由体積を有し、また、製作時の燃料棒内加圧量もほぼ同程度であることからB型燃料棒はA型燃料棒とほぼ同一の内圧挙動を示し、運転時の異常な過渡変化時を考慮しても、燃料棒内圧は燃料棒外圧を上まわることはないので、燃料棒内圧過大による燃料棒損傷はないものと考える。

(7) 被覆管の累積疲労

 B型燃料被覆管の累積疲労についてランガーオドンネルの方法を用いた評価結果によると、B型燃料被覆管は、燃料寿命中に予想される出力変動による累積疲労に対し、十分な疲労寿命を有しており、燃料の健全性は十分保たれるものと考える。

(8) その他の燃料棒挙動

 燃料ペレット焼きしまり、内外圧差に基づく被覆管遍平化等についても検討を行ったが、B型燃料棒はA型燃料棒と同等ないしそれ以上の性能を有しており、問題ないものと判断する。

(9) 燃料集合体寸法形状の安定性

 B型燃料集合体は、輸送及び取扱い時並びに使用中の寸法形状の安定性を保つため、次の様な配慮がなされている。

 ① 輸送及び取扱い時に燃料集合体に6Gの荷重が加わっても、これに耐え得る設計とする。

 ② 炉内における熱膨張、照射成長に起因する燃料棒と制御棒クラスタ案内シンブルとの相対変位は、A型燃料集合体では、燃料棒が支持格子をすべることにより吸収されるのに対し、B型燃料集合体では、支持格子は燃料棒の動きに追従するため、支持格子が制御棒クラスタ案内シンブルをすべることにより吸収されるようになっている。

 ③ A型燃料集合体では、燃料棒と上部及び下部ノズル間にそれぞれ約20mmの間隔をとり燃料棒が上下に伸びても上部及び下部ノズルに接触しないようにしているが、B型燃料集合体では、ボトム・オン構造とし、燃料棒上部と上部ノズル間に約40mmの間隔をとって燃料棒の伸びを吸収するようにしている。

 ④ 冷却材の流路は支持格子と制御棒クラスタ案内シンブルで形成される構造により常に維持される設計となっている。

 したがって、B型燃料集合体においてはA型燃料集合体と同じく、輸送及び取扱い時並びに使用中の寸法形状の安定性は、保たれるものと判断する。

(10) 燃料棒の曲り

 燃料棒の曲り対策として、B型燃料集合体では、いわゆるボトム・オン構造ではあるが、支持格子が制御棒クラスタ案内シンブルに固定されていないこと(フローティング・グリッド)、ペレット形状を改善すること、燃料被覆管の偏肉管理、被覆管肉厚の増加、燃料棒下部プレナム・スプリングの採用等がなされている。

 このように燃料棒の曲り低減について十分配慮されており、燃料棒の曲りは実用上問題ない程度にとどまるものと判断する。

(11) フレッティング腐食

 B型燃料集合体における支持格子の燃料棒保持力は、A型燃料集合体の場合よりもさらに強くなっており、燃料棒のフレッティング腐食については、問題ないものと考える。

 以上のことからB型燃料の機械設計については安全上問題ないものと判断する。

Ⅲ-1-2 核設計

 核設計においては、以下に示す事項を満足することが必要である。

 ① 高温零出力で最大反応度効果を有する制御棒クラスタが完全に引き抜かれた状態で挿入できない場合でも、0.01ΔK/K以上の反応度停止余裕が確保されること。

 ② 制御棒クラスタの最大反応度添加率は、一次冷却材圧力バウンダリの健全性を損なわず、炉内構造物が炉心冷却の機能を果たせる様な値以下であること。

 ③ 炉心が負の反応度フィードバック特性を有するように、ドプラ係数は負であり、減速材温度係数は、高温出力運転状態で負であること。

 ④ 通常運転時において、FQ×Pが2.32以下に保持されること。ここでFQは熱流束熱水路係数であり、Pは相対出力である。

 ⑤ 通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において、燃料棒の最高線出力密度が、ペレット溶融を生じない値であること。

 ⑥ 出力分布は、キセノン振動に対して固有の安定性を持っているか、あるいはそれを確実に検出し抑制できること。

 このため審査に当っては、下記の事項について検討を加えた。

(1) 核設計解析コード

 核設計解析コードは、少数群組定数計算コード及び少数群拡散計算コードより構成される。

 核設計計算には、LEOPARD及びPANDA、HIDRAコードで構成される計算システムとNULIF及びSHARP-A、SHARP-XYコードで構成される計算システムのいずれかが使用される。

 前者のシステムの解析精度は運転中の先行プラントの実測値と比較して妥当であることが、すでに確認されている。

 後者の計算システムは、すべて新規のコードで構成されているので、前者の計算システムとの相違点などに焦点をあわせて、核設計手法の妥当性を検討した。

 主なる相違点は、速中性子の組数、熱中性子組の上限、熱中性子の組数及び散乱核等に見られた。しかしながら、後者の計算システムによる軸方向及び水平方向の出力分布並びに実効増培率等の計算結果は、臨界実験結果及び国内のプラントの運転結果と良い一致を示し、計算の信頼性が高いことを確認した。

(2) 燃料棒の線出力密度

 アキシャル・オフセット一定制御運転による通常運転時に、「ほう素の異常な希釈又は濃縮」及び「制御棒クラスタ引抜き」等による異常な過渡変化が発生した場合、通常運転時と異なった出力分布となり、一般に炉心内最大線出力密度は増加する。これらの異常な出力分布状態においても、原子炉保護設備の動作により、燃料棒の最大線出力密度は59.1kW/m以上になることはない。したがって、これらの場合でも熱水力設計の制限条件であるペレットの溶融は生じないことを確認した。

(3) アキシャル・オフセット一定制御運転

 種々の出力分布におけるアキシャル・オフセット(以下A・Oという。)と熱流束熱水路係数との対応を整理した結果によると、A・Oをある範囲内に保てば、熱流束熱水路係数を設計値以下にすることができる。

 したがって、通常運転時にA・Oを常時炉外核計装で監視し、必要があれば出力分布調整用制御棒クラスタ又はバンクD制御棒クラスタを操作して、A・Oをある範囲内に抑えることができる。

 以上のような方法により良好な出力分布が得られ、サイクル中、キセノン振動を確実に回避することができ、またFQ×Pを2.32以下に保持することができることを確認した。

(4) その他

 A型燃料集合体で構成される炉心に新たにB型燃料集合体を装荷するに際して、反応度停止余裕、反応度添加率、反応度係数等について検討を行なったが、これらはA型燃料集合体のみで構成される炉心と有意な差がなく、核設計上特に問題はないことを確認した。

 以上の各項目ごとに示した通り、核設計は妥当なものであると判断する。

Ⅲ-1-3 熱水力設計

 熱水力設計においては、通常運転時はもちろん、運転時の異常が過渡変化時においても、燃料が損傷しないように、以下に示す事項を満足することが必要である。

 ① 最小DNBRは、改良型スペーサ・ファクタを用いた「W-3相関式」で計算して1.30以上であること。

 ② 燃料最高温度は、二酸化ウランの融点未満であること。

 このため、審査に当っては下記の事項について検討を加えた。

(1) 熱水力設計解析コード

 本燃料集合体を用いる原子炉の熱水力解析には、THINCコード及び改良COBRA-3Cコードのいずれかが使用される。

 THINCコードの解析精度は、自然循環実験、強制循環実験及び模擬燃料集合体を用いた実験等と対比して、妥当であることがすでに確認されている。

 今般新たに採用された改良COBRA-3Cコードは、THINCコードと同様に、炉心全体、熱水路を含む燃料集合体及び各水路ごとに、軸方向流路に沿って、一次冷却材の密度、流量、エンタルピ、ボイド率、静圧、DNBR等が計算できる。

 本コードの妥当性は種々の実験結果及び感度解析により確認した。さらに、A型燃料のDNB設計手法(W-3/THINC)とB型燃料のDNB設計手法(W-3/改良COBRA-3C)は、両設計手法による同一DNB試験データの解析結果の比較により同等であることを確認した。

(2) 最小DNBR

 Β型燃料集合体の支持格子は、B&W社型支持格子に、混合羽根を取付けたもので、A型燃料集合体と類似のものであるが、B型燃料の熱水力設計で改良型スペーサ・ファクタを使用した「W-3相関式」を使用するに当り、B型燃料試験体を用いた混合試験結果とDNB試験結果からその妥当性を確認した。すなわち熱拡散係数については、実測値が0.0464であるのに対して、DNB評価上は、0.019を使用しており、十分余裕が見込まれている。

 また、最小DNBRについては、95%信頼度の95%確率の実測値が1.01であるのに対し、DNB評価上は1.30を使用しており、十分余裕が見込まれている。

 これらのことからA型及びB型燃料集合体が共存した炉心において、改良型スペーサ・ファクタを用いた「W-3相関式」で計算された最小DNBRが1.30以上であるという設計基準は妥当であり、かつ、A型及びB型燃料のDNB設計手法はどちらも安全上問題なく、A型及びB型燃料集合体が共存した炉心の熱水力設計に適用できるものと考える。

 また、Ⅲ-1-4共存性に示すように、A型及びB型燃料集合体の熱水力上の共存性は問題ないこと等から、A型及びB型燃料集合体が共存した炉心でも最小DNBRの設計基準は十分満足され得るので、問題ないと考える。

(3) 燃料最高温度

 燃料最高温度の評価は、前述した「燃料設計計算コード(FPAC等)」により行われている。

 通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において、計算された燃料最高温度は、それぞれ約2,100℃及び約2,300℃であり、未照射二酸化ウランの融点の約2,800℃及び二酸化ウランの融点の評価の上限値2,600℃より十分低い温度である。

 なお、前述の燃料最高温度の上限値2,600℃は二酸化ウランの融点の燃焼に伴う低下、計算モデルの不確定性及び燃料棒の製造誤差を考慮して決定されている。

 したがって本燃料は、通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において溶融が起こることのないことを確認した。

(4) その他

 A型燃料集合体で構成される炉心に新たにB型燃料集合体を装荷するに当って、熱水力設計に用いる水平方向出力分布、軸方向出力分布及びバイパス流量等について検討を行なったが、これらにはA型燃料集合体のみで構成される炉心と有意な差がないので熱水力設計上特に問題はないと判断する。

 以上の各項目ごとに示した通り、本B型燃料の熱水力設計は妥当なものであると判断する。

Ⅲ-1-4 共存性

 A型及びB型燃料集合体が共存する炉心については、核的共存性及び熱水力的共存性の観点から検討した。

(1) 核的共存性

 本B型燃料集合体は、従来のA型燃料集合体と核的特性が等価なように設計され、基本的なパラメータである燃料濃縮度、燃料棒外径、燃料棒ピッチ等は同一である。

 しかしながら、B型燃料集合体はA型燃料集合体に比べて、燃料被覆管肉厚及びペレット直径が若干異なるので、これらの核特性に及ぼす影響について検討した。

 A型及びB型燃料集合体の無限増倍率の差は、NULIFコードによる計算結果では0.1%ΔK/K程度である。

 反応度係数の差については、ドプラ係数で0.01×10-5ΔK/K/℃程度であり、減速材温度係数で1.0×10-5ΔK/K/℃程度である。

 これらはいずれも本コードの計算誤差の範囲内にあるので有意差はないと判断する。

(2) 熱水力的共存性

 A型及びB型燃料集合体は、熱水力特性が等価なように設計され、基本的なパラメータである燃料棒外径、燃料棒ピッチ、上部及び下部ノズル並びに支持格子部における圧損、支持格子による混合特性、支持格子間隔等は同一である。

 B型燃料集合体の圧損特性及び支持格子による混合特性は熱流動試験の結果を検討したところ、A型燃料集合体と等価であることを確認した。

 またⅢ-1-1(1)に記載したように、支持格子の相対的位置にずれを生ずる恐れがあるが、このずれは小さく熱水力設計上問題とならないと考える。

 さらに、A型及びB型燃料棒の燃料最高温度は、FPACコードによる解析結果によると、最高線出力密度59.1kW/mの時、被覆管内面で約5℃、ペレット中心で約10℃程度、B型燃料棒の方が高くなる。しかしこれらの相違は、安全上問題ないと判断する。

 以上の各項目ごとに示した通り、A型及びB型燃料集合体は十分共存し得るものと判断する。

Ⅲ-1-5 安全性

 A型及びB型燃料集合体が混在して装荷された炉心の場合、運転時の異常な過渡変化時及び事故時に対する原子炉施設の安全性について、次の2つの方法によりA型燃料集合体で構成される従来の炉心の場合と比較検討した。

(1) 従来の炉心の安全解析で使用された炉心核特性パラメータとA型及びB型燃料集合体混在炉心のパラメータとの比較
(2) A型及びB型燃料の運転時の異常な過渡変化時及び事故時における熱応答特性の比較

 検討の結果、A型及びB型燃料集合体混在炉心の核特性パラメータは、従来の炉心で使用された核特性パラメータの範囲内にあり、炉心の応答特性は従来の炉心と変ることはない。

 A型燃料棒とB型燃料棒とはペレット直径及び被覆管肉厚がわずかに異なるため、ペレットの熱容量、ペレット内出力密度及び被覆管熱容量にわずかな相違が生ずると予想される。しかしながら、B型燃料の熱応答特性はA型燃料とほとんど同じであり、B型燃料集合体を装荷した炉心の特性が従来の炉心と特に変わることはないと判断する。

 以上の各項目ごとに示した通り、A型及びB型燃料集合体が混在して装荷された炉心における安全性は、従来の炉心と変わることはないと判断する。

Ⅲ-1-6 使用実績

 本B型燃料集合体の設計のもととなった米国のB&W社型燃料は、同国内のPWRにおいて相当の実用例があり、その実績は十分評価できると考える。

Ⅲ-2 固体廃棄物処理設備の変更

 放射性固体廃棄物を貯蔵する設備は発生する固体廃棄物を貯蔵する容量が十分であるとともに、貯蔵による敷地周辺の空間線量率を実用可能な限り低減できる設計であることが必要である。

 このため審査に当っては放射性固体廃棄物の発生量、貯蔵庫の貯蔵能力及び遮蔽能力について検討を加えた。

 今回増設を計画しているC廃棄物庫の貯蔵容量は放射性固体廃棄物の発生量を高浜発電所自身の実績及び先行炉の実績から推定して、約7年分を貯蔵保管する能力があり、また将来増設可能な敷地が確保されている。

 廃棄物の貯蔵による敷地周辺の直接線量及びスカイシャイン線量は、従来評価している原子炉格納容器及び既設廃棄物庫等によるものと増設予定のC廃棄物庫によるものとを合計して、人の居住の可能性のある発電所敷地境界外において年間5mR以下となるように蔽遮等が行われることとなっている。なお、放射性固体廃棄物を最終的に処分する場合には、関係官庁の承認を受けることになっている。

 以上のことから、放射性固体廃棄物貯蔵設備は、十分な容量を持つとともに敷地周辺の空間線量率を低く抑える設計となっており、妥当なものと判断する。

 Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和51年11月26日第153回審査会において、次の委員よりなる第128部会を設置した。

(審査委員)
三島良績(部会長) 東京大学
秋山 守 東京大学
武谷清昭 日本原子力研究所
(調査委員)
石田泰一 動力炉・核燃料開発事業団
大久保忠恒 上智大学
藤家洋一 大阪大学
森島淳好 日本原子力研究所

 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行なうこととし、昭和51年12月13日第1回会合を開き、審査方針等の検討を行なった。以後、部会及び審査会において、審査を行なってきたが、昭和52年8月12日の部会において、部会報告書を決定し、同8月12日第162回審査会において本報告書を決定した。



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