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柏崎・刈羽原子力発電所原子炉の設置に係る文書意見に対する報告書


昭和52年8月
原子力委員会

はじめに

 当委員会は、昭和50年4月1日に東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所原子炉設置に関し、内閣総理大臣から諮問を受け、同年5月23日に原子炉安全専門審査会に対して、検討の指示を行った。以来、厳正な安全審査を続けてきたが、本年8月12日付けで原子炉安全専門審査会から、本件原子炉設置に係る安全審査の報告を受け、本年8月23日に本件原子炉の設置に関する当委員会の意見を内閣総理大臣に対して答申した。

 当委員会は、この間において、本件原子炉の設置に係る地元利害関係者の意見を文書により聴取することとし、昭和51年7月5日から同年8月4日まで受付けを行った。この間に提出された文書意見数は、524通であり、これらの意見のうち、本件原子炉の安全審査に関連する事項については、これを原子炉安全専門審査会に伝達するとともに、当委員会が内閣総理大臣に対する答申を行うに際しては、提出された文書意見を反映して慎重な検討を行った。

 本報告書は、原子炉安全専門審査会の検討結果について、これらの文書意見を係るものを中心にとりまとめたものである。

 また、本件原子炉の安全審査に関連する事項を除く事項については、昨年12月14日に当委員会をはじめ関係行政機関、地方公共団体、原子炉設置許可申請書の基本的な考え方をとりまとめ、これを中間報告書として明らかにしたところであり、今回の報告書と併せて参照されたい。

 なお、文書意見の中には、原子炉施設の安全設計の基本的考え方について審査する安全審査会の審査事項以外の詳細設計や運転管理に関する規制の場において審査される事項や、原子炉等規制法に基づく原子炉の設置許可における審査事項でないものもあった。この報告書においては、これらの事項についても、中間報告書において触れなかった点について、それぞれ所管する関係行政機関の意見を聴取し、また、特の環境影響の問題に関する事項については、電源開発調整審議会の基本計画策定に当って関係省庁が行った環境審査結果等に基づき、当委員会においてまとめ、併せて記載することとした。ただし、明らかに原子炉設置者等の措置すべき問題、その他原子力委員会として答えることが適切でないと思われる事項については、本報告書においては、含まれていない。

Ⅰ 柏崎・刈羽原子力発電所の概要

 東京電力(株)柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉施設は、熱出力約3,300MW(電気出力約1,100MW)の低濃縮ウラン・軽水減速・軽水冷却沸騰水型原子炉であり、現在同社が建設中の福島第一原子力発電所6号炉、福島第二原子業発電所1号炉と基本的に同じ設計である。

1 柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の構造

 柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の構造

 柏崎・刈羽原子力発電所が採用することにしている沸騰水型原子炉の構造について、その概要を説明する。

 本原子炉に使用される燃料は、第1図に示すように、ウラン-235を2~3パーセント含む二酸化ウランを焼き固めたペレットを、ジルコニウム被覆管の中に密封して燃料棒とし、これを8行8列の正方格子に組み立て、チャンネルボックスに収めた燃料集合体からなり、炉心は、この燃料集合体764体で構成されている。

 燃料の核分裂反応を制御する制御棒は、中性子吸収材を内蔵し、燃料集合体間にそう入されており、これによって核分裂反応を制御する。これら燃料集合体及び制御棒は、第2図に示すように高温高圧に耐える鋼鉄製の原子炉圧力容器の中に収められている。

 圧力容器は、冷却材と減速材の役目を果たす軽水が入れられ、この軽水は、核分裂反応によって生じた熱によって高温の蒸気となり、主蒸気管を通ってタービンに送られる。また、圧力容器には、冷却材再循環系配管が接続され、炉心で発生した熱を効率的に取り出すため冷却材を強制的に循環させるとともに、その循環流量を調整することにより発生する蒸気量を加減している。

 圧力容器は格納容器の中に収められ、外部に通ずる主蒸気管は格納容器を貫通する部分で隔離弁によって遮断できるようになっている。

 前述したように、原子炉で発生した蒸気は、タービンにおいて、その熱エネルギーの一部が回転エネルギーに変換され、発電機により発電を行う。発電機は110万KWの電力を発生し、この発生電力は500KV送電線2回線で送電される計画である。

第1図 燃料集合体の構造図

第2図 本原子炉構造の概要

2 柏崎・刈羽原子力発電所の主要構築物の配置と機器の概要

 発電所の全体配置は、第3図に示すように敷地南側丘陵地帯の一部を標高約5mに整地造成して、主要構築物を設置する計画とされている。タービン建家は海岸線にほぼ平行に設置され、タービン建家の東側に原子炉建家、南側に主変圧器が設置される。原子炉建家の北側には、サービス建家が配置され、発電所本館入口が設けられる。

 その他、敷地内には、排気筒、開閉所、固体廃棄物貯蔵庫、海水淡水化装置建家、海水機器建家、水処理建家等が設けられる。

 また、発電所前面海域の南側及び北側に防波堤が構築され、タービン復水器冷却水は防波堤内側より取水され、防波堤の外側に放水される。

 以下に原子力発電所の主要機器の概要を示す。

① 原子炉
型式 濃縮ウラン・軽水減速・軽水冷却型〔沸騰水型〕
熱出力 3,300,000KW

② 燃料
種類 二酸化ウラン焼結研磨ペレット(一部ガドリニアを含む)
濃縮度 (1)初装荷燃料集合体平均
  約2.2wt%
(2) 取替燃料集合体平均
  約2.7wt%
燃焼度 (1)初装荷燃料集合体平均
  約21,000MWd/t
(2) 取替燃料集合体平均
  約27,500MWd/t
ウラン装荷量 約140t

③ 原子炉圧力容器
種類 鋼製たて型円筒形
最高使用圧力 87.9kg/cm2g
最高使用温度 302℃

第3図 発電所一般配置図


④ 原子炉の制御方式
  制御棒位置調整及び原子炉冷却材再循環流量調整の2方式を併用

⑤ 原子炉格納施設
  原子炉格納容器
種類 圧力抑制形
設計圧力 2.85kg/cm2g

⑥ 蒸気タービン
種類 くし型6流排気式
出力 1,100,000KW
主蒸気止め弁入口圧力 66.8kg/cm2g
主蒸気止め弁入口温度 282℃
回転数 1,500rpm

⑦ 発電機
種類 横軸円筒回転界磁3相同期発電機
容量 1,300,000KVA
電圧 19,000V
相数 
周波数 50Hz
回転数 1,500rmp

Ⅱ 原子炉施設の安全性


1 原子炉施設の安全性の確保

 原子力発電所の原子炉施設は、通常運転時はもとより、万一の事故を想定した場合にも、一般公衆及び従事者の安全が確保されるように所要の安全設計が講じられなければならない。

 東京電力(株)柏崎・刈羽原子力発電所においては、このことを確認するため、以下に述べるような事項を重点として、原子炉施設の基本設計の妥当性が審査された。

(1) 原子炉施設が設置される場所の地盤、地震、気象、水理等の自然事象及び交通等の入為事象によって原子炉施設の安全性が損われないような安全設計が講じられること。

(2) 平常運転時に放出される放射性物質による一般公衆の被曝線量が許容被曝線量以下に抑えられることはもちろんのこと、さらに、それをできるだけ少なくするような安全設計が講じられること。

(3) 平常運転時において、従事者が許容被曝線量を超える線量を受けないような放射線の防護及び管理が講じられること。

(4) 原子炉の運転に際し、異常の発生を早期に発見し、その拡大を未然に防止するような安全設計が講じられること。

(5) 原子炉の運転に際し、機器の故障、誤操作等が発生しても、燃料の健全性、冷却材圧力バウンダリの健全性等が損われないような安全設計が講じられること。

(6) 原子炉冷却材を包含している冷却材圧力バウンダリの健全性が損われ、冷却材が喪失するような事故、炉心の反応度を制御している制御系の健全性が損われ、反応度が異常に上昇するような事故等の発生を仮定しても、事故の拡大を防止し、放射性物質の放出を抑制できるような安全設計が講じられること。

(7) 重大事故及び仮想事故を仮定しても、その安全防護施設との関連において、一般公衆の安全が確保されるような立地条件を有していること。

 なお、本原子炉施設の安全性に関する種々の意見については、次節以降、逐次項目を追って述べることとする。

2 燃料の安全性

 燃料ペレット及び被覆管は核分裂により生成した放射性物質を封じ込める第一の防壁となっているので、燃料の健全性は安全上重要な要素の一つである。

 燃料の安全性に関しては、何らかの原因により燃料が爆発する可能性はないか、チャンネルボックスの損傷対策が原子炉に悪い影響を及ぼすことはないか等について意見が提出された。

(1) 燃料の爆発の可能性

 本原子炉の燃料はウラン-235を2~3%に濃縮した二酸化ウランが用いられる。このような低濃縮度のウラン燃料を用いた原子炉には、急激な反応度が加わり燃料ペレットの温度が高くなると、逆に原子炉の反応度を低下させるような固有の性質(これを一般にドップラ効果という)があるので、原子炉の出力が無制限に上昇して核爆発を起こすようなことは本質的にあり得ない。また、本原子炉は軽水を減速・冷却材として用いるので、出力が上昇するに従って蒸気泡の発生が多くなり、このため中性子が減速されにくくなって核分裂反応が低下し、出力は抑制される方向に作用するのである。

 したがって、たとえ内部又は外部から何らかの衝撃を加えても本原子炉が核暴走を起こすとか核爆発するというようなことは原理的にあり得ない。

(2) チャンネルボックスの損傷対策

 燃料集合体を取り囲んでいるチャンネルボックスとチャンネルボックスの間には、原子炉の出力状態を監視するための中性子検出器が取り付けられているが、これが冷却材の流れによって振動を起こし、チャンネルボックスをわずかに損傷させるという現象が先行炉において発見された。この具体的な防止対策として、チャンネルボックス間を流れる冷却材の流量を炉心全体で均一化するとともに、流れの方向を改良することにより振動を防止する等の方法が検討され、すでに先行炉では、この改善によりチャンネルボックスの損傷を防止できることが確認されており、また、これらの対策が原子炉の特性に悪い影響を及ぼすことはないことも確認されている。

 本原子炉でもこのような実績並びに模擬燃料集合体による実験結果を踏まえて、詳細設計において振動防止のための改良された設計が採用されることになっている。

3 原子炉冷却材圧力バウンダリ等の健全性

 原子炉冷却材圧力バウンダリ等の健全性に関しては、配管クラックの発生が大事故へ発展する可能性はないか、故障やトラブルの再発防止について十分な対策を講じられたい等の意見が提出された。

 原子炉施設の安全性が保証されるためには、通常運転中において常に施設の健全性が確保されなければならない。このためには、適切な運転管理を行うとともに、日常の保守点検や定期的な試験検査により、機器等の欠陥や異常を早期に発見し、所要の対策を講じる必要がある。原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性は、原子炉施設の安全確保のうえで、特に重要な要素の一つである。

 なお、第4図に示すように、原子炉圧力容器及びこれに接続され外部に通ずる主蒸気管の隔離弁の内側までの部分、並びに冷却材を強制的に循環させる再循環配管を総称して「原子炉冷却材圧力バウンダリ」といっている。

 この原子炉冷却材圧力バウンダリは、原子炉の通常運転時に原子炉冷却材を内に収め、原子炉と同じ圧力条件となり、運転時及び事故時の苛酷な条件下で圧力障壁を形成するところから他の部分とは区別し、重要に扱われている。

第4図 原子炉冷却材圧力バウンダリの範囲

(1) 配管クラックの大事故への発展の可能性

 原子炉冷却材圧力バウンダリとなる系統の機器、配管は、通常運転中は70気圧程度の圧力状態にあり、温度も280℃程度になっているので、これらの条件を考慮し、さらに、事故時の圧力上昇等をも考慮して健全性が維持されるよう強度設計がなされる。また、原子炉冷却材圧力バウンダリを流れる冷却材中には、放射性物質が含まれるため、万一、バウンダリに欠陥又は亀裂等が発生して冷却材が漏洩するような事態に至っても、これらが大量に系外へ放出されることがないよう、早期にそれを検出できるような漏洩検出系が設けられる。

 原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する主要な配管の材料には、ステンレス鋼又は炭素鋼が使われるが、一般に金属材料の性質は温度、金属組織の状態等により変わるものである。このため、詳細設計においては、使用材料の管理、使用圧力・温度の制限、供用期間中の検査等を考慮した設計がなされる。さらに、製作段階での検査、運転開始前の検査及び運転開始後における監視点検によってその健全性が確認される。

 最近、先行炉において発生したステンレス鋼配管のクラックは、供用期間中の検査によって、非常に小さいうちに発見されており、このようなクラックが急速に進展して配管の破断に至ることは、これまでの事例からも考えにくいものである。もし、運転中にクラックが進展して冷却材が漏洩する場合には、原子炉格納容器に設けられる漏洩検出系により、それを検知し、配管の破断に至る前に十分な対策を行うことが可能であり、原子炉の冷却能力に影響を及ぼすことはない。したがって、先行炉において発生したような配管クラックが冷却材喪失事故に発展する可能性は考えられない。

(2) 原子炉施設における故障等の未然防止対策

 原子炉施設の故障・トラブル等の発生を未然に防止する対策として、原子炉施設の安全上重要な系統及び機器は、その健全性及び能力を確認するために、運転中に試験・検査ができるか、又は定期点検時等に適切な方法等により試験・検査ができるように設計されていなければならないが、本原子炉施設の系統、機器については以下に述べるような設計上の配慮がなされている。

 ① 原子炉冷却材圧力バウンダリとなる系統、機器については、供用期間中の検査を可能にするため、その対象となる原子炉圧力容器、冷却材再循環ポンプ、各種弁類及び配管の溶接部について検査箇所へ検査機器等が接近できるように、機器、配管の配置を考慮する。

 ② 原子炉圧力容器については、母材、溶着金属の試験片を原子炉圧力容器内に挿入して、ほぼ同様な条件下で照射し、中性子照射による材質等の変化を定期的に試験できるようにする。

 ③ 原子炉建家の気密試験、原子炉格納容器の漏洩試験、原子炉格納容器貫通部の漏洩試験、原子炉格納容器隔離弁の機能試験を可能にするため、試験に必要な器具の取付け等を考慮して設計する。

 ④ 格納容器スプレイ系、残留熱除去系、非常用炉心冷却系は、テストラインを用いて作動試験を行うことができるように設計する。

 ⑤ ディーゼル発電機は、定期的に起動試験を行うことができるように設計する。

 ⑥ 安全保護系は、原子炉の運転中にも各チャンネルが独立に試験できるように多重性を持たせた設計とする。

 このような配慮と合せて、運転員の誤操作や外部電源喪失によるトラブルを防止するために、運転員の誤操作を阻止するようなインターロック・システム(例えば、間違った制御棒引抜き操作をした場合には、制御棒の引抜きが阻止されるなど)の採用並びに外部電源喪失に対し、安全上重要な系統、機器については、非常用電源設備でバックアップするとともに、系の電源喪失があっても、その系が不安全側にならないように現状維持となるか、あるいは安全側に作動するように設計される。

(3) 原子炉施設における故障等の再発防止対策

 原子炉施設の故障・トラブル等の再発を防止する具体的な対策としては、それぞれ基本設計、詳細設計あるいは運転管理の段階において以下のような手段がとられている。

 ① 応力腐食割れによる配管等のクラックについては、問題となる箇所の配管の材料を腐食等の問題も考慮して可能な範囲でステンレス鋼から炭素鋼に取り替えることが検討されており、また、溶接技術の改良がなされている。さらに、冷却材の水質管理等運転管理にも注意が払われている。

 ② 制御棒駆動水戻り配管のノズル部におけるクラックの問題については、温度の低い水が直接圧力容器内に入らないようにする設計変更がなされている。

 ③ 燃料被覆管の損傷の問題については、主要な原因である燃料棒内の湿分を除去する等設計製作上の改良、起動・停止時の運転方法の改善が図られ、また良好な使用実績を有する8行8列型燃料集合体が採用されている。

 ④ チャンネルボックスの損傷の問題については、すでに述べたような対策に基づき、改良された設計が採用されている。

 ⑤ 米国等で問題となった火災については、火災の発生防止、早期火災報知、早期消火及び必須の安全機能が火災により損われないことを設計の基本的な方針として、可能な限り不燃性、難燃性材料を使用すること、必要箇所へ火災報知器及び消火設備を設置すること、安全上重要な系統、機器の独立性の確保を図ること等、火災に対する安全防護対策上の配慮がなされている。

4 大事故発生の可能性

 大事故発生の可能性に関しては、非常用炉心冷却系の働くような事故が原発寿命中に起こり得るか、万一事故が発生した場合に住民の安全性は確保されるか等の意見が提出されている。

 原子炉施設の安全性については、すでに述べたような設計上の配慮、故障の防止対策等により十分確保しうるものと考えられる。したがって、非常用炉心冷却系が作動するような事故が原子炉の寿命中に発生する可能性は極めて少ないが、万一の事故発生を想定して、非常用炉心冷却系の機能や、災害時の公衆の安全性に関して次のように評価されている。

(1) 非常用炉心冷却系の機能

 非常用炉心冷却系は、冷却材喪失事故を想定した場合に、燃料被覆管の重大な損傷を防止し、水-ジルコニウム反応による燃料被覆管の酸化量を無視し得る程度に局限し、炉心の残留熱を長期にわたって除去するために設けられるものである。

 本原子炉施設の非常用炉心冷却系は、低圧炉心スプレイ系、低圧注水系、高圧炉心スプレイ系及び自動減圧系からなり、冷却材喪失事故等の場合原子炉水位低またはドライウエル圧力高の信号(ただし、自動減圧系は両方の信号)により自動的に起動する。これらは、第5図に示すように、外部電源のほか、低圧炉心スプレイ系、低圧注水系は独立2系統の母線及びディーゼル発電機に、高圧炉心スプレイ系は専用のディーゼル発電機に、また自動減圧系は蓄電池にそれぞれ接続されるので、外部電源喪失時にも電源が確保される。

 ① 低圧炉心スプレイ系は、電動機駆動ポンプ1台、スパージャ、配管、弁類及び計測制御装置からなり、大破断事故時には低圧注水系及び高圧炉心スプレイ系と連携して、中小破断事故時には低圧注水系とともに自動減圧系と連携して炉心を冷却する。

 この系は、サプレッション・プール水を炉心上部に取付けられたスパージャ・ヘッダのノズルから燃料集合体上にスプレイすることによって炉心を冷却する。

 ② 低圧注水系は、電動機駆動ポンプ3台、配管、弁類及び計測制御装置からなり、原子炉停止時の崩壊熱の除去を目的とする残留熱除去系のうちの一つのモードとして使用される。

 この系は、3台のポンプごとに別々の3ループになっており、サプレッション・プール水を直接圧力容器シュラウド内に注入する。

 ③ 高圧炉心スプレイ系は、電動機駆動ポンプ1台、配管、弁類及び計測制御装置からなり、復水貯蔵タンク水あるいはサプレッション・プール水を炉心上部に取付けられたスパージャ・ヘッダのノズルから燃料集合体上にスプレイすることによって炉心を冷却する。この系は、中小破断事故時には単独で炉心を冷却できる。

 ④ 自動減圧系は、逃がし安全弁18個のうち7個がその機能をもち原子炉蒸気をサプレッション・プールへ逃がすことによって原子炉圧力をすみやかに低下でき、低圧注水系あるいは低圧炉心スプレイ系による早期注水を可能にするものである。

 このように、非常用炉心冷却系は、低圧系、高圧系及び自動減圧系を組合せることにより、中・小配管の破断事故時はもちろん、最大口径の再循環回路配管の完全破断を仮定する最も厳しい冷却材喪失事故時にも、炉心を冷却することができる。

 本原子炉施設についてもこれら非常用炉心冷却系の性能については、当原子力委員会が定めた「軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の安全評価指針」に基づいて冷却材喪失事故を想定した解析が行われている。

 冷却材喪失事故の解析においては、これら非常用炉心冷却系のうち、最も影響の大きい系の不動作を仮定し、解析条件も結果が厳しくなるように評価されている。解析の結果によれば燃料被覆管の最高温度は1,200℃よりも十分低く、燃料の破裂も生じないので、燃料破損による核分裂生成物の放出はないことが示されている。

第5図 非常用炉心冷却系系統概要図

(2) 災害評価

 すでに述べたように、原子炉施設の安全設計、故障の防止対策等により、非常用炉心冷却系をはじめとする各種工学的安全施設の作動を必要とするような事故が発生する可能性は極めて少ないが、万一、そのような事故が発生したとしても、原子炉施設の安全性は確保できることが示されている。

 しかしながら、災害評価においては、本原子炉施設の安全性をさらに確認するために、非居住区域が十分とられているか、低人口地帯とすべき範囲が十分であるか等その立地条件について、適否の評価が行われている。

 評価の方法としては、当原子力委員会が定めた「原子炉立地審査指針」に基づき、重大事故及び仮想事故を想定し、これらの事故によって放出される核分裂生成物の量を厳しい仮定を用いて算出し、敷地境界付近の放射線被曝線量が評価されている。

 重大事故及び仮想事故を想定するに当たって事故の種類は、核分裂生成物の放出量が大きくなる可能性のある冷却材喪失事故及び主蒸気管破断事故が選定されている。

 これらの事故についての解析結果は、下表に示すように、いずれの場合でも敷地境界付近において「原子炉立地審査指針」に示される評価の「めやす線量」を十分下回っている。

 なお、本原子炉施設の設置予定敷地は、これまでに設置された他の原子炉施設の場合と同様に、「非居住区域」及び「低人口地帯」とすべき範囲を含んでおり、このような重大事故及び仮想事故を想定した場合でも周辺公衆の安全性は十分確保される。


Ⅲ 放射線被曝管理

 ウラン-235の核分裂によって生じた核分裂破片は、放射線を放出する物質で、核分裂生成物又は単に放射性物質といわれている。放射性物質は、ベータ線、ガンマ線等の放射線を放出し、もしそれが人間や生物に多量に照射されると生物学的影響を与えるので、原子力発電所を安全に運転するためには、放射性物質を厳しく管理することが必要である。

1 原子力発電所から放出される放射性物質

 原子力発電所から放出される放射性物質については、環境に放出される放射性物質の低減化に努めること、放射性物質の規制は濃度規制から総量規制に移行すべきであること等の意見が提出された。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、以下に述べるように気体廃棄物及び液体廃棄物中に含まれる放射性物質を減衰又は除去することによって、環境に放出される放射性物質をできるだけ少なく抑えるように設備が設けられ、また、原子炉の運転に際しては、被曝線量に大きく寄与する放射性物質の年間放出量を放出管理目標値として設定し、これを超えないように努めることとしている。

(1) 放射性物質の発生機構

 原子力発電所から放出される放射性物質は、気体廃棄物中に含まれるものと、液体廃棄物中に含まれるものとに区分される。

 原子力発電所で発生する放射性物質は、主として炉心燃料中に含まれるウラン-235の原子が核分裂を起こしたときに生ずる核分裂生成物である。これらの核分裂生成物は、通常、燃料の中に閉じ込められているので、燃料が健全であれば環境中に放出されることはないが、原子炉を運転する際には、わずかであるが燃料に損傷を生ずることがあるので、このような場合に放射性物質が冷却材中に移行し環境に放出されることになる。この場合の放射性物質は、放射性希ガス及び放射性よう素が主体であり、気体廃棄物の主因となる。

 放射性物質が発生するもうひとつの機構は、炉心燃料を冷却している冷却材中に含まれる不純物が、炉心を通過する際に中性子の照射によって放射性物質に変わる場合である。

 原子炉を冷却する冷却材は、ろ過装置やイオン交換装置を通して得られた純水であるが、原子炉-主蒸気管-タービン-給水設備-原子炉と循環しているうちにこれらを構成している機器、配管から移行した微量の鉄成分等が不純物として含まれるほか、空気の成分である酸素、窒素、アルゴンも不純物として含まれる。これらの不純物は、中性子に照射されて放射性物質に変わるが、この放射性物質は、放射化生成物とも呼ばれ、核分裂生成物と区別されることがある。放射化生成物は、液体廃棄物の主因となることが多い。

(2) 気体廃棄物の処理及び放射性物質の推定放出量

 放射性気体廃棄物は、主として、原子炉から運ばれてきた放射性物質を含む蒸気がタービンを回転させたあと、蒸気を水に戻すタービン復水器に入り、ガス状成分を分離するときに生ずる。

 すなわち、タービン復水器は真空に保つ必要があるので、タービン復水器中のガスを主復水器空気抽出器で連続的に引き抜く必要がある。

 タービン復水器に入った蒸気は、水に戻され再び原子炉の冷却材として回収される。一方、空気抽出器系に移行した放射性物質を含むガスは、水素-酸素ガス再結合器等を通過した後、減衰管に導かれ、ここで減衰管を通過する間に極めて短い半減期の放射性物質は減衰して少なくなる。

 減衰管から出た放射性物質は、多量の活性炭を充填した活性炭式希ガス・ホールドアップ装置に導かれる。

 活性炭は、物質を吸着する性質が強いので、活性炭に入った放射性物質は、かなりの時間ここでとどまり、又は除去される。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、活性炭の量は約70㌧が設備され、放射性希ガスの構成成分であるキセノン及びクリプトンが、それぞれ27日間以上及び40時間以上保持されるものと評価されている。

 したがって、この間に比較的短半減期の放射性希ガスは、減衰してしまうので、活性炭式希ガス・ホールドアップ装置を出た時には、入ったときにくらべ、放射能は約400分の1になると評価されている。

 活性炭式希ガス・ホールドアップ装置を出た放射性物質は、高効率フィルタを通した後、地上高約150mの排気筒から大気中に放出される。

 以上述べた主復水器空気抽出器系排ガスの処理は、沸騰水型原子炉施設の気体廃棄物の処理の中心であるが、このほかにも放射性物質が放出される経路がある。

 すなわち、原子炉が停止した場合、復水器の真空が維持されなくなるので、原子炉を再起動する場合には、真空ポンプにより復水器中の空気を排出しなければならない。復水器中に残留する放射性物質は、この真空ポンプの運転によって直接排気筒から排出されることになる。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、このような事態に対処するため、起動用空気抽出器を設け、原子炉が停止した場合、主空気抽出器に代わって運転することとしている。起動用空気抽出器排ガスは、活性炭式希ガス・ホールドアップ装置に導かれるので、主復水器に残留する希ガス及びよう素は少なくなる。したがって、真空ポンプを運転する場合には、放出される希ガス及びよう素の量は少なくなるものと期待される。

 もうひとつの放出経路は、原子炉建家、タービン建家、廃棄物処理エリア等の換気に伴って放出される経路である。この経路から放出される放射性物質は、原子炉建家、タービン建家等に格納されている機器、配管からわずかに漏洩する蒸気又は冷却材に起因するものである。微量の放射性物質を含むこれら換気系空気はフィルタでろ過して排気筒から放出することとしている。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、以上の放出経路によって排気筒から大気中に放出される放射性物質の量は、炉心燃料の損傷割合、気体廃棄物処理設備の設計条件等をもとに評価した結果、放射性物質の年間放出量は、放射性希ガスについては、約5万キュリー、放射性よう素-131及び放射性よう素-133については、約2.1キュリー及び約3.4キュリーとそれぞれ評価されている。

(3) 液体廃棄物の処理及び放射性物質の推定放出量

 液体廃棄物中に含まれる放射性物質は、炉心燃料から冷却材中に漏洩した核分裂生成物と冷却材中に含まれる不純物が中性子照射を受けて生成した放射化生成物である。

 液体廃棄物は、原子炉建家、タービン建家等に格納されている機器、配管からわずかに漏出する冷却材、冷却材を純水にするために使用するイオン交換樹脂を洗浄した廃液、保護衣類や機器を洗浄した廃液が主体である。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、発生する液体廃棄物は、その性状によって低電導度廃液系、高電導度廃液系、除染廃液系、油ドレン系、シャワードレン系、洗濯廃液系に区分し、それぞれ処理が行われることとされている。

 これら系統の廃液の処理は、廃液の性状に応じてろ過装置、イオン交換装置、蒸発濃縮装置、クラッド除去装置、油除去装置等を用いて行われ、廃液中の放射性物質はできる限り除去される。

 このうち、低電導度廃液系、高電導度廃液系、除染廃液系、油ドレン系の処理済液は、復水貯蔵タンクに回収され、原則として原子炉の冷却材として再使用される。

 また、洗濯廃液系及びシャワードレン系の廃液は、通常、放射性物質濃度が低いので、収集タンクに収集した後、放射性物質濃度が十分低いことを確認してから放出される。

 処理水に含まれる放射性物質の種類は、原子炉の運転状況によって変化するが、沸騰水型原子炉施設の場合には、通常、マンガン-54、鉄-59、コバルト-60等の放射化生成物の比率が多い。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、発生廃液量、発生廃液中の放射性物質濃度、処理設備の除去効率等の設計条件を用い、かつ処理水の運用等を考慮して、処理水を放出する際の放射性物質の年間放出量を評価した結果、放射性物質の年間放出量は、トリチウムを除いて1キュリーと評価されている。

(4) 放射性物質の放出管理

 原子炉施設の運転に際しては、前述した放射性物質の年間放出量のうち被曝線量に大きく寄与する放射性物質の年間放出量を放出管理目標値として設定し、これを超えないように放出管理が行われる。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、気体廃棄物中の放射性物質に対しては、放射性希ガス5万キュリー及び放射性よう素-131 2.1キュリーを、液体廃棄物中の放射性物質に対してはトリチウムを除く放射性物質1キュリーを、それぞれ年間の放出管理目標値とし、これを超えないように放出管理が行われる。

 以上のように、柏崎・刈羽原子力発電所においては、環境に放出される放射性物質の量を低くする努力が払われており、また、放射性物質の放出管理についても濃度で抑えるだけでなく、放射性物質の年間放出量でも管理することになっている。

(5) 廃棄物の貯蔵

 液体廃棄物処理設備で発生した濃縮廃液、使用済樹脂、雑固体廃棄物等については、その性状及び放射性物質濃度に応じて、ドラム詰するか、又はタンク貯蔵ができるように、貯蔵タンク、固化装置、圧縮減容装置等が設けられる。使用済樹脂は、放射能レベルが極めて高いので、タンク等に長期貯蔵し、放射能を減衰させ、その後ドラム詰め可能なようにされる。濃縮廃液、雑固体廃棄物等はドラム詰めされ固体廃棄物貯蔵庫に貯蔵保管される。固体廃棄物貯蔵庫の貯蔵能力は約2年分であるが、必要に応じて増設できるよう、十分なスペースが確保されている。廃棄物の処理及び貯蔵保管に当たっては、従業員の放射線被曝を少なくするため、十分な遮蔽を設けるとともに、液体廃棄物が管理区域外へ漏出することを防止するために区画堰等が設けられる。

2 原子力発電所から放出される放射性物質による一般公衆の被曝線量

 原子力発電所から放出される放射性物質による影響については、放射性物質によって空気汚染されることがあるのか、海産物その他を食べても十分安全であるのか等の意見が提出された。

 原子力発電所周辺における放出放射性物質による影響評価については、放射性物質が放出する放射線に着目し、人体に対する被曝線量についての評価が行われる。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、Ⅱ、1に示した放射性物質の年間放出量をもとに、それらが環境中に放出されたときの挙動を考慮して被曝線量の評価が行われている。

(1) 気体廃棄物中の放射性物質による被曝線量

 大気中に放出される放射性物質は、主としてクリプトン、キセノン等の放射性希ガス及び放射性よう素であるので、放射性希ガスと放射性よう素の物理的・化学的性質を考慮して被曝線量を求めている。

 放射性希ガスは、化学的に不活性であるので、物質に付着したり取り込まれたりすることがほとんどないため、食品等を介して人体内に摂取されることはない。

 したがって、放射性希ガスによる被曝線量は、排気筒から放出されたあとに空気中に拡散し、風下方向に移動するときに放出されるガンマ線に着目し、人体がそのガンマ線によって外部から被曝する場合の線量が評価されている。

 これに対し、放射性よう素は、物質に付着したり取り込まれたりする性質がある。放射性よう素が人体に取り込まれる経路は多く、また、人体内に取り込まれた場合も特徴的な挙動を示す。

 すなわち、放射性よう素は、排気筒から放出されたあと空気中に拡散するばかりでなく、地上に沈着し葉菜や牧草等に付着する。

 したがって、原子力発電所周辺では、これらの葉菜を摂取したり、牧草で飼育される乳牛が存在すれば、その乳牛から分泌される牛乳を飲むことになるので、これらの葉菜や牛乳を通じて放射性よう素が人体に取り込まれることとなる。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、放射性よう素による被曝線量は、呼吸により、及び葉菜、牛乳を介して人体に摂取される放射性よう素に着目し、また、人体に摂取される放射性よう素は、甲状腺に選択的に取り込まれることを考慮して、甲状腺の被曝線量が評価されている。

 なお、排気筒から放出される放射性物質の大気中の拡散については、敷地における1年間の風向、風速、大気安定度の観測結果等を用いて、空気中の濃度が求められている。

 以上のことを考慮して求められた敷地境界外における被曝線量は、全身に対して年間約0.3ミリレム、甲状腺に対して年間約1.4ミリレムと評価されている。

(2) 液体廃棄物中の放射性物質による被曝線量

 液体廃棄物中の放射性物質が海に放出された場合、その放射性物質が人体に取り込まれる経路は、海産生物が放射性物質を濃縮し、その海産生物を摂取した場合である。

 海産生物が放射性物質を取り込む量は、海産生物の種類、放射性物質の種類及び海水中の放射性物質濃度によってそれぞれ異なるが、海産生物の濃縮係数がわかれば計算することができる。

 濃縮係数は、海水中の放射性物質の濃度に対する海産生物中の放射性物質の濃度の比を意味する。

 したがって、海産生物の濃縮係数と海水中の放射性物質の濃度がわかれば、海産生物中の放射性物質の量を知ることができる。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、放射性物質の年間放出量をタービン復水器冷却水の年間水量で除した値を海水中の放射性物質濃度とし、この濃度と海産生物の濃縮係数を用いて海産生物中の放射性物質濃度を求めている。

 この場合の海水中の濃度は、海洋における拡散希釈の効果を見込んでいないので、海水中の放射性物質濃度は、かなり厳しい評価となっていると考えられる。

 人体の被曝線量は、このようにして求めた海産生物中の放射性物質濃度と毎日摂取する海産生物の量とを用いて評価した結果、全身に対して年間約0.2ミリレム、甲状腺に対して年間約0.05ミリレムと評価されている。

 これらの線量は、現行法令に定められている一般公衆の許容被曝線量年間500ミリレムにくらべて極めて低い値であり、また、当原子力委員会が定めた線量目標値(全身に対して年間5ミリレム、甲状腺に対して年間15ミリレム)を十分下まわる値である。

 柏崎・刈羽原子力発電所において評価された一般公衆の被曝線量は一般公衆の被曝に最も大きく寄与するものをとり上げて行われたものであるが、厳密にいえば、このほかにも、一般公衆の被曝に寄与するものはないとはいえない。

 例えば、気体廃棄物中の放射性物質は、放射性希ガス、放射性よう素のほかにコバルト-60、セシウム-137等の粒子状放射性物質がわずかながら含まれるので、これらによる被曝もあり得るし、また、放射性希ガスからのベータ線による皮膚被曝、あるいはまた海水浴中に受ける被曝や、漁業活動中に受ける被曝も考えられる。

 しかし、これらによる被曝線量は、小さい寄与しかもたらさないので、これらの線量を考慮に入れても一般公衆の許容被曝線量にくらべるとはるかに小さい線量に抑えられるものと考えられる。

 以上のように、柏崎・刈羽原子力発電所においては、原子炉施設の平常運転時に出される放射性物質の影響は、法令に定めている許容被曝線量よりはるかに小さな被曝線量しかもたらさず、これらの放射性物質が原子力発電所周辺の生物資源や、人間の健康及び活動に有害な影響を及ぼすものではないと考える。

3 放射線監視

 放射線又は放射性物質の監視については、放射線レベルを精密に調べて無害であることを確認してから放出するよう措置すること、線量目標値の5ミリレムはどうやって測定するのか、モニタリング・ポスト等で測定できなければ意味がないのではないか等の意見が提出された。

 原子力発電所から放出される放射性物質による被曝線量は、Ⅲ、2で述べたように自然放射線にくらべて極めて小さい。

 このように低いレベルの放射線又は放射性物質をモニタリング・ポスト等で監視することは、技術的に難しい面がある。

 そこで、環境中に拡散したあとの低いレベルの放射性物質又は放射線を直接測定して監視することよりも、放出源である排気筒や排水口における測定を通じて監視する方法がとられる。

 すなわち、気体廃棄物については、排気筒における放射性物質の測定データ及び気象観測によって得られた気象データを拡散式に適用して原子力発電所周辺の空気中の濃度を求め、この濃度と被曝線量計算式とから被曝線量が推定される。

 また、液体廃棄物については、放出時の放射性物質濃度を求め、この濃度を被曝線量計算式に適用して被曝線量が推定される。

 原子力発電所周辺の被曝線量が法令に定める許容被曝線量や線量目標値を超えていないことの確認は、以上の理由から放出源における放射性物質の測定を通じて行われる。

 柏崎・刈羽原子力発電所においても、このような方針が踏襲されており、このため、第6図に示すような放射性物質が環境に放出されるまでの放出経路、排気筒、排水口にそれぞれモニタが設置されることになっている。

 排気筒モニタの場合は、排気筒から放出中のガスをサンプリングし、まず最初に粒子用フィルタで粒子状放射性物質を捕集し、次にチャコール・フィルタで放射性よう素を捕集した後、シンチレータ測定器で放射性希ガスを測定することとしている。

 粒子状放射性物質及び放射性よう素を捕集したフィルタは、定期的に交換されて、ガンマ線スペクトロメータで測定される。

 また、液体廃棄物中の放射性物質については、海洋に放出する処理水は、いったんサンプルタンク等に貯水し、そこから処理水を試料として採取し、ガンマ線スペクトロメータ等により測定され、濃度が確認される。

 放出線でのモニタにより、環境中における放射線又は放射性物質のレベルは十分推定されるが、さらに周辺公衆の被曝線量が許容被曝線量を超えていないことを確認すること、環境における放射性物質の蓄積傾向を把握すること等のために、環境放射線モニタリングが実施される。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、周辺監視区域境界に9か所のモニタリング・ポストが設けられ、空気中の放射線(ガンマ線)の線量率を連続的に測定することになっているほか、陸上植物、海産生物、海水、海底土等の試料を定期的にサンプリングし、それに含まれる放射性物質を測定監視することとされている。

 このように、大気中又は海洋中に放出される放射性物質については、放出源における厳重な測定監視と周辺環境における監視とがあいまって、柏崎・刈羽原子力発電所周辺環境の安全を常に確認することができるものと考える。

第6図 プロセス放射線モニタ配置図

4 従業員の被曝管理及び被曝低減化

 従業員の被曝管理及び被曝低減化について、運転保守の経験に照らして改善し、被曝の低減を図るべきこと、従業員の被曝低減を図る研究及び技術開発を進めること等の意見が提出された。

(1) 原子炉施設の業務に従事する従業員の放射線防護被曝管理は、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下、「原子炉等規制法」という)及び「労働安全衛生法」を遵守し、従業員が許容被曝線量を超えて被曝しないように行われる。

 すなわち、「原子炉等規制法」は、原子炉の安全確保の観点から原子炉設置者に対して、また、「労働安全衛生法」は労働者の安全と健康の確保の観点から、事業者に対してそれぞれ原子炉の運転、保修等に従事する者の被曝管理を厳重に行うことを義務づけている。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、従業員の放射線防護は、ガンマ線、中性子線等の外部放射線に対しては、防護遮蔽により、また、放射性物質の空気汚染による内部被曝に対しては、換気等により行うこととされ、必要な設備が設けられる。

 被曝管理は、外部放射線量及び空気中の放射性物質濃度等が「原子炉等規制法」で定める線量及び濃度を超えるおそれのある場所を管理区域として設定し、人の出入管理を行うとともに、これらの区域においては、外部放射線量、空気中の放射性物質濃度等を監視し、その結果を作業環境の改善等に反映することとされている。

 従業員の被曝線量については、フィルム・バッジ、ホール・ボディ・カウンタ等により測定評価するとともに、定期的に健康診断を実施し、従業員の身体の状態を把握することとされている。

 これらの放射線防護及び管理は、請負業者に雇用されている従業員についても同様に行われるほか、原子炉設置者は関係請負業者及びその従業員に対して適切な被曝管理を指導することとされている。

(2) 被曝の低減化については、先行炉の運転経験をもとに種々の対策が実施される。その代表的な例をあげれば次のとおりである。

 第1は、原子炉で生じた放射性物質が冷却材とともに機器、配管系を移動しているうちに修理点検を行う可能性のある機器等に付着するので、従業員がその箇所の修理、点検を行う際、付着した放射性物質の放射線により被曝する。このような放射性物質の主なものは、機器、配管から冷却材中に移行した鉄成分等が、原子炉内で中性子によって生成した鉄-59、コバルト-60等の放射性物質であるので、冷却材中に移行する鉄成分等の発生を抑え、また、発生した鉄成分等を冷却材から除去し、従業員被曝を少なくする対策が講じられる。

 第2は、監視点検あるいは操作を必要とする機器が高線量区域にあるか、又は、それ自体高放射能であるものについては、操作の速隔化、自動化の対策がより一層すすめられる。

 第3は、機器、配管に取り付けられるバルブは、放射性物質の漏洩を防止する特殊な構造とし、機器、配管系から放射性物質の漏洩を防止する対策が講じられる。

 柏崎・刈羽原子力発電所においては、このように先行炉の運転経験を生かし、それに合った放射線防護の改善を逐次実施することとされており、適切な被曝管理とあいまって従業員が許容被曝線量を超える線量を受けるおそれはないことはもちろん、さらに低い線量に抑えられるものと考える。

Ⅳ 地盤、地震問題

 原子力発電所は、潜在的な危険性を有する放射性物質を扱うため、もし発電所の供用期間中に地震が発生した場合でも、それによって放射能の防護機能が失われ、潜在的危険性を顕在化することのないよう十分な配慮がなされていなければならない。

 地盤、地震の問題に関しては、県から国へ要望された事項等について慎重に検討されたいこと、地盤については特に綿密かつ慎重な調査・審議をされたいこと、その際石油関係データなど多くのデータによる科学的な調査解明をしてもらいたいこと、地盤との関係において原子炉施設が工学的に対処できることを明らかにしてもらいたいこと、米国の基準に照らしても安全確保上十分であることを明らかにされたい等の意見が提出された。

 我が国のように一般に地質構造が複雑であり、地震の多い国では、特に地盤条件の調査及び地震に対する設計上の配慮を慎重に行う必要がある。すなわち地質・地盤の条件は、一般に設置される地域及び場所によって異なるものであり、原子力発電所の設置を計画するに当たっては、敷地周辺地域について航空写真による検討、地表踏査、諸公表文献の検討に基づき、地質構造を把握することが必要である。

 また、原子炉設置予定地については、周辺地域の地質調査よりさらに精度の高い地質調査を実施する必要があり、このために、ボーリングや試掘坑による調査等が実施される。

 敷地が原子力発電所の建設に適切であるかどうかは、これらの地質資料や基礎岩盤の物理的性質に関する資料に基づき、さらに現地調査を結果をも踏まえて敷地において原子力発電所設置後に地すべりや山津波等が発生する危険性の有無、原子炉を設置する基礎岩盤に原子炉施設を支持するために十分な支持力があるか、また、不等沈下を起こすおそれがないか等について、考察する必要がある。

 原子炉施設の基礎岩盤が原子炉施設を安定して支持できるかどうかは、地質構造と地層の物理的性質により考察する必要がある。地層の物理的性質の把握に当たっては、ボーリングコアや試掘坑内で採取した供試体を用いての室内試験及び試掘坑内における現場での載荷試験等が実施される。

 原子炉施設は、地震により放射性物質が周辺環境に放散されることがないように、一般の建築物より一層厳しい条件によって設計される必要がある。

 このため、原子炉施設の耐震設計に当たっては、原子炉施設の機器・構築物を安全上の重要度によって分類し、それぞれの施設について万全の耐震設計をすることが要求される。

 東京電力、柏崎・刈羽原子力発電所における具体的な地盤、地震の問題は以下に示すような点を重点として審査された。

1 地質関係の審査

(1) 地質について

 地質関係の審査としては、敷地内の地質と敷地周辺の地質に大別される。

 敷地内の地質では主として、敷地内に分布する地層、敷地内の地質構造及び断層の存在性について審査がなされた。

 敷地内には、新第三紀層(古い順に、椎谷層、西山層、灰爪層)及び第四紀層(古い順に、安田層、番神砂層、新期砂層)が分布することがわかった。敷地内の地層のうち、特に安田層、番神砂層の形成年代については入念に検討された。その結果、安田層、番神砂層の形成年代を推定する考え方は適切なものであるとしたが、最近の研究報告等を参考にして、いずれの地層の年代とも当初東京電力の考えていた年代より若くなり、安田層は12~14万年前の地層、番神砂層は3~8万年前の間に形成時期があるものと考えることが適切であるとされた。敷地内の地質構造については、ボーリング(コアボーリング)により調査され、新第三紀層は緩やかな褶曲を呈しているが、第四紀層は新第三紀層を不整合に覆いほぼ水平に堆積していることがわかった。新第三紀層の褶曲は、大湊地区(敷地の北部)の背斜構造(上向きに凸となる形態)と、荒浜地区(敷地の南部)の向斜構造(下向きに凸となる形態)とが確認された。この荒浜地区は、敷地北東方の真殿坂付近の地下に存在が推定されている真殿坂断層を南に延長してきた場合、ちょうどこの荒浜地区を通過することになることから、地質構造については入念に調査され、緩やかな向斜構造としたものであるが、審査の結果、この考えは適切であると判断された。

(2) 敷地内の断層について

 上述の向斜構造には、真殿坂付近で推定されているような向斜軸部での断層化もみられないことから、真殿坂断層は敷地内にまで連続しているものではないかと判断された。真殿坂断層は敷地内に存在しないが、他にいかなる断層が存在するかについては、試掘坑内の調査や地表に露出している地層の調査によってまとめられた。その結果、試掘坑内では、小断層が認められたが、現地調査の結果いずれも地震発生と結びつく性格のものではなく、多くのものは、西山層が堆積して固結するまでの間に形成されたものであって、将来活動するおそれはないと判断された。しかしこれらのうち一部の小断層には断層面が開離している部分が認められたことから、東京電力(株)に対して追加の詳細調査が要求された。その結果、試掘坑内の小断層相互の関係を調べ、相対的に規模が大きく、かつ、活動時期の最も新しいと考えられたほぼ等しい走向の2本の小断層について、試掘坑の追加掘削による追跡調査が実施された。調査結果については、現地調査を実施して、いずれの小断層とも断層の傾斜がほぼ垂直であること、著しい破砕部は伴っていないこと、1本の小断層は安田層堆積以降、他の1本の小断層は番神砂層堆積以降動いていないことが確認された。

 試掘坑内の断層は、番神砂層の堆積後動いていないこと、地震発生と結びつくような性格ではないこと、また、後述するように当該地盤が地震力に対して十分な安全性を有してること等から、総合的にみて将来動くおそれはないと判断された。

 また、敷地地表部でも、敷地中央部に安田層と番神砂層を境する断層及び第四紀層の露頭に小断層が認められているので、それらの成因が調査された。その結果、いずれの断層も各地層が堆積した当時の谷の斜面方向と断層の傾斜方向が一致していること等から、地すべりや地形の影響で地表部に発達したものであると判断された。現在の敷地内の地形・地質からみて、原子炉施設に被害を与えるような地すべりや山津波が発生するおそれはないと判断された。

 なお、敷地近傍の第四紀層中にも小断層が存在するが、現地調査の結果敷地内のものと同じ成因によるものと判断された。

(3) 敷地周辺の断層及び広域地殻変動について

 敷地周辺の地質については、敷地周辺の地質構造を検討して断層の存在性を把握し、各断層の活動性から、どの程度の地震を発生させる可能性があるかについて検討を行い、さらにその結果に基づいて耐震設計上考慮する必要のある断層が存在するかどうかが検討された。敷地周辺の地質構造は、新第三紀層と第四紀層のうち古い地層の一部とが褶曲構造を呈し、褶曲の背斜部は地形上の丘陵部となっている。断層は背斜の翼部に存在する場合が多く、石油探鉱資料等によって、西山丘陵の椎谷付近及び真殿坂付近、中央丘陵西縁部、長岡平野の信濃川左岸部及び柏崎平野下高町付近に断層の存在が推定されている。いずれの断層も地表において断層面を確認することはできないものであり、石油探鉱資料や地形・地質上の特徴から各断層の第四紀後期の活動性を検討し、さらに耐震設計上考慮する必要があるかどうかが検討された。その結果、西山丘陵部の断層と柏崎平野下の断層は、いずれも活動性は小さく、原子炉設置上考慮する必要はないものとされた。中央丘陵西縁部の断層は存在することも明確ではないが、地下深部に存在する可能性は否定できないという性格のものである。その断層が存在し、地震を伴う活動があることを想定しても、その活動の可能性は信濃川左岸部の断層(気比ノ宮断層と仮称)の活動の可能性よりはるかに小さいものと評価された。気比ノ宮断層は、信濃川左岸部に発達する段丘が長岡平野側に著しく傾斜していることから、その活動度は大きいと考え、断層の長さと地震の規模についての経試式からみてマグニチュード6.9の地震を想定し、耐震設計上考慮する必要があると判断された。

 敷地周辺地域は、羽越活褶曲帯に属しており、広域の地殻変動があるとされている。この地殻変動がどのようなものであるかを考察するために、これまで20年間の輪島、柏崎の験潮記録及びこれまで約80年間にわたる柏崎周辺の水準測量結果が検討された。その結果、柏崎付近は広域的には安定しているが、柏崎から長岡に至る水準ルートでみると平野部で沈降し丘陵部で隆起するという傾向が認められた。この丘陵部の隆起速度は1mm/年を超えるものではなく、褶曲運動が近年も継続しているとしても、丘陵部と平野部間の地盤傾動速度は最大に見積っても年10-6以下のオーダーであり、原子炉施設の設置に際して広域の地殻変動を特に考慮する必要はないと判断された。

2 地盤関係の審査

 地盤関係の審査については、東京電力(株)の実施した岩盤、岩石物性の諸試験の妥当性及びこれらの試験結果に基づく、不等沈下、支持力、水平地震力によるすべりに対する安全性及び地盤の圧密、クリープ変形について検討が行われた。

 柏崎・刈羽原子力発電所は、原子炉建家の基礎を西山層としているので、岩盤、岩石物性の試験は西山層の塊状泥岩、縞状泥岩及び凝灰岩はさみ層に対して行われた。実施された試験としては、試掘坑内での載荷試験、岩盤せん断試験、クリープ試験、ボーリングコアによる一軸及び三軸圧縮試験、物理試験、試掘坑から採取した供試体による一軸及び三軸圧縮試験、引張試験、クリープ試験、圧密試験であり、これらの試験方法は適切なものであった。

 この基礎岩盤は、強度上特に著しいばらつきや場所的な強弱の目立った傾向を示さず、原子炉建家の荷重7km/cm2の約4.8倍の荷重に対して、永久的に耐えうるものであることが明らかになった。また、すべりに対する安全性は、建築基準法に定められた水平震度の3倍を原子炉建家に与えた場合でも、なお十分確保されている(安全率は、3.2)ことが明らかになった。さらに原子炉建家を設置したのち、すなわち7kg/cm2の荷重を載荷したときに、圧密沈下を生ずるおそれがあるかという点については、荷重がおよそ45kg/cm2以下では著しい圧密沈下を生ずることはなく、一般的なクリープ現象を呈するに留まることが明らかとなった。

 これらの結果から、原子炉設置予定地の西山層は、原子炉建家を設置する基礎岩盤として十分な支持力と地震に対するすべりに十分な安全性をもち、また、不等沈下や圧密現象による著しい沈下は生じないと判断された。

3 耐震設計について

 原子力発電所の重要な建物、構築物は原則として剛構造に設計され、岩盤で直接支持されることとなっている。柏崎・刈羽原子力発電所では西山層がその基礎岩盤となっている。

 原子力発電所の耐震設計法については、これまでの原子力発電所に用いられてきた手法と同様の手法が踏襲されている。

 原子炉施設は、安全上の重要度に基づき、A、B、Cの3クラスに分類されるが、具体的には、Aクラスの施設とはその機能喪失が原子炉事故をひき起こすおそれのある施設及び周辺公衆の災害を防止するための緊要なものであり、原子炉建家、原子炉格納容器、原子炉圧力容器、非常用炉心冷却系統である。Bクラスの施設とは、高放射性物質に関連するAクラス以外のものであり、タービン建家、原子炉補助設備等である。また、Cクラスの施設とは、Aクラス及びBクラス以外の施設である。

 各施設の耐震設計法は、基本的には建築基準法に定められている震度に基づいた静的解析により得られる地震力、または、基盤に設計用地震動を与える動的解析によって求められる地震力に対して安全であるように設計される。

 静的解析に用いる静的震度は、建物、構築物と機器・配管系により、また、A、B、Cのクラス毎に異なる。Aクラスの建物、構築物は、「水平震度」「鉛直震度」の3倍を静的震度として用い、機器・配管系では、建物、構築物に対する静的震度の1.2倍を用いている。Bクラス及びCクラスに対する静的震度は水平震度を考慮し、建物、構築物と機器・配管系の関係はAクラスの場合と同一であるが、水平震度をそれぞれAクラスの1/2及び1/3としている。

 動的解析では設計用地震動から水平地震力を算定するが、この設計用地震動は、過去の地震や敷地周辺地域の断層のうち耐震設計上考慮する必要性を認めたものからの発生を想定した地震に基づき検討される。柏崎・刈羽原子力発電所の場合は、前述の気比ノ宮断層に発生を想定した地震による基盤加速度(約220ガル)にさらに余裕をもたせた、設計用地震動を考察している。

 動的解析は、Aクラスの施設に対し用いられ、Bクラスの機器・配管系のうち支持構造物の振動と共振するおそれのあるものに対しても検討される。

 以上のような設計条件のもとに、Aクラスの施設では、静的解析または動的解析により得られる水平地震力のうち、いずれか大きい方の水平地震力と、静的解析により求める鉛直地震力とが同時に、不利な組合せで作用するものとし、これに耐えるように設計される。また、B、Cクラスの施設は、静的解析により得られる水平地震力に耐えられるように設計される。

 なお、Aクラスの施設のうち、特に一般公衆の安全を確保するために、安全対策上緊要な施設に対しては、設計用地震動の1.5倍(柏崎・刈羽原子力発電所では450ガル)の加速度が基盤に生じた場合でも、それらの機能が保持できることが確認される。

4 米国の基準との関係について

 日本列島の地質をながめてみると、地域差のある複雑な地質構造となっているので、原子力発電所の敷地及び敷地周辺の地質に関する条件は、設置される場所及び地域によって異なることが多い。このため、原子力発電所の新設にあたっては、特に敷地周辺地域について、空中写真による検討、地表踏査、諸公表文献の検討に基づき、最も妥当と考えられる地質構造を把握する必要がある。柏崎・刈羽原子力発電所の場合も、上述の調査が実施されている。

 米国で定められている地質関係の基準としては、「10CFR Part100」にその基本的な事項が示されており、さらに具体的な事項については同条項の付則にその内容が示されている。この付則では、地震発生と関連するような断層が敷地周辺に存在するかどうかを許細に調査することを要求しており、敷地からの距離に応じて調査対象とする断層の最小の長さが示されている。

 米国の基準をそのまま適用するには検討を要するものであるが、敷地内に大規模な断層が存在しないこと、敷地周辺地域について地震発生と関連するような断層の存在性を調査すること、という基本的な考え方は我が国の場合にも共通している概念である。

 柏崎・刈羽原子力発電所の設置許可申請にあたっては、文献調査、空中写真判読、地表踏査により敷地中央部を中心とし、半径約30kmの範囲の地質が調査され、また、敷地内においても多数のオールコアボーリング及び試掘坑によって詳細な調査がされており、断層に関する調査が十分になされている。さらに安全審査の過程において、柏崎平野東縁部についてはより精度を上げた調査が実施されている。このように、柏崎・刈羽原子力発電所はその周辺の地質について、断層の存在性を入念に調査しており、その点では米国の基準に示されている基本的な考え方にも合致していると考える。

Ⅴ 環境保全

 原子力発電所に対しては安全性の確保と並んで、周辺の環境保全を図ることについて社会的にも極めて強い要請があり、これに十分こたえなければならない。

 周辺の環境保全を図るに当たっての課題の一つに、温排水の放出による環境への影響に対する措置対策があげられる。

 柏崎・刈羽原子力発電所の冷却水は、その全量を直接前面海域より取水され、放水口より外海に放出されるが、これにより漁民の生活基準の侵害や、海洋環境へ多大の変化を与えるようなことは避けなければならない。このため、その放出に当たっては環境への影響を十分に配慮することが必要である。

 このほか、海岸に構築物を設置することに伴う周辺海岸に及ぼす影響、発電所工事に伴う樹木の伐採等が考えられるが、これらについても周辺環境に対する影響の軽減、自然との調和、自然の再生産力の維持を図ることが求められる。

 柏崎・刈羽原子力発電所に対する環境調査は、前述のように安全審査の範ちゅうに属しないが、地元からの意見はこのような分野についても提示されているので、当委員会は通商産業省の環境保全に関する審査結果等に基づき寄せられた意見に対する回答をまとめた。

1 温排水による影響

 温排水の環境に与える影響については、海の生態系への影響を十分に検討して欲しい、気象等への影響を十分に検討して欲しい、将来温排水に関する定量的な基準の制定を必要とする場合は慎重に検討すべきである等の意見が提出されている。

 柏崎・刈羽原子力発電所では、タービン復水器の冷却水として海水が使用される。その取水量は約76m3/秒と計画されているが、この冷却水は、南・北両防波堤の先端部より取水口を経て取水路開渠に至り、ポンプ室に導入され、循環水ポンプにより鋼鉄製管路でタービン復水器に圧送される。この圧送された海水は、復水器の冷却細管を通る間に昇温し放水管に排出され、放水口を経て外海に放出される。

 このほかに、原子炉補機・タービン補機等を冷却するため、約2m3/秒の海水が取水されるが、この海水も熱交換器により昇温され、タービン復水器からの冷却水と合流して放水口を経て外海に放出される。

 柏崎・刈羽原子力発電所の海水取放水系統の概略は第7図に示す通りである。

(1) 温排水による温度上昇の影響範囲

 本原子炉設置に係る冷却水は約78m3/秒で、前面海域に築造する防波堤の内側から深層取水し、その外側へ表層放流する計画であり、放水口における水温上昇値は、原子炉の最大出力運転時で約7℃とされる。温排水の拡散範囲の予測については、当地点の気象、海象及び海岸形状を考慮した数理モデルによるシミュレーション解析により行なわれている。解析の結果、温排水の影響する範囲は、海表面の温度が3℃以上上昇する範囲(放水口から沖合方向の距離)は、冬期約1.3km、夏期約1.1km、また2℃以上上昇する範囲は、冬期約1.9km、夏期約1.7kmと予測されている。

 また、温排水の放出による前面海域での流速は放水口から1km離れた位置で最大2cm/秒程度におさまると計算されている。

 解析結果による夏季及び冬季の海表面の温排水の拡散予測範囲は第8図に示すとおりである。

第7図 取放水系統図

第8図 温度上昇範囲図

(2) 温排水による海生生物への影響

 温排水の放出による海生生物に対する影響については、周辺海域の漁業の実態、新潟県水産試験場「原子力発電所温排水漁業影響調査報告書」及びその他の調査・実験結果等から次のように考えられている。

 ① プランクトン、卵・稚仔に対する影響

 当海域のプランクトンについては、新潟県水産試験場による昭和45、46年の調査によれば、当海域のプランクトンの出現種は、動物性プランクトン、植物性プランクトンを合わせ百数十種で、動物性プランクトンで多く出現したのは節足動物であり、植物性プランクトンでは珪藻類が主体である。

 また、当海域の卵・稚仔については、昭和45年から昭和47年にかけて、表層から水深10m層までの曳網で行われた結果によれば、採集された卵は十数種で表層浮性卵が圧倒的に多く、大半はカタクチイワシ卵である。

 また、稚仔は約50種類で、最多出現種は卵と同様カタクチイワシである。

 これらの卵・稚仔調査からみて、当海域の主な卵・稚仔はカタクチイワシ、キス、マサバ、トビウオ科魚類、メバル類と考えられる。また、これら卵・稚仔の出現場所については、カタクチイワシは沖合部に多く出現する傾向はあるが、沿岸から沖合にかけても出現している。他の魚種の卵・稚仔は多少のバラツキはあるが、全体的にみると、沿岸から沖合までほぼ同じ割合で出現している。

 プランクトンへの影響については、東京電力(株)による福島第一原子力発電所における温排水のプランクトンへの影響に関する調査、実験(昭和46年~48年)の例がある。

 それによれば、

   温排水拡散域内外のプランクトン調査(沈澱量の分布調査)では、拡散域内外では特に差があるとは認められない。

   取放水口間でのプランクトンの生残率調査では、放水口で若干の低下がみられた。

   昇温接触実験からは、発電所冷却水の温度上昇程度では、昇温とプランクトン生残率との間には明らかな関係があるとは認められない。

等が明らかにされている。

 これらの調査・実験等から推定すると、温排水によるプランクトンへの影響はあまり大きくないものと考えられる。

 また、卵・稚仔は、沿岸から沖合にかけて同程度に分布しており、当地点は外洋に直接面して海水混合も良いことから、温排水による卵・稚仔への影響は小さいものと考えられる。

 ② 魚類に対する影響

 当海域の主な魚種は、漁業統計や新潟県水産試験場の調査によれば、ハタハタ、ヒラメ、カレイ類、タイ類、ブリ類、サバ等である。温排水拡散域内では、これら魚種の棲息、分布等に多少の影響も考えられるが、当海域の漁場図等からみて、成魚の分布は沖合海域まで広がっており、これらの魚種は、主として移動・回遊性魚であることからみても、その影響の程度は小さいものと考えられる。

 ③ 磯根資源に対する影響

 新潟県水産試験場の昭和45、46年の調査によれば、当地点周辺海域の有用海藻として、アオサ、ワカメ、モズク、テングサ、イワノリ等があり、当地点北側の観音岬を中心とした岩礁海域と当地点南側の番神岬以南の岩礁海域に生育している。

 当地点前面海域では、有用海藻として、主にモズクが生育している。

 海藻類の多くは胞子の発生が夏期から秋期にかかるため、一般的にその時期の海水温度とそれに加わる水温上昇の程度によっては、影響があると考えられている。

 温排水による影響について考察すると、

   当地点周辺海域の有用海藻は、観音岬、番神岬の岩礁地帯を中心として生育しており、この海域は、温排水の拡散域より相当離れているので影響を受けることはほとんどない。

   地点前面海域の有用海藻は、生育域の一部が温排水の拡散域に分布しているので、拡散域内では影響を受けることがあり得る。

   アワビ、サザエについては、観音岬以北、番神岬以南の岩礁地帯に生存するとされているが、この海域は温排水の拡散域より相当離れているので、影響を受けることはほとんどないと考えられる。

(3) 局部気象に与える影響

 温排水が冷たい空気に触れると霧が発生することが考えられる。この霧は“蒸気霧”と呼ばれるもので、一般には冬期などにおいて、風がほとんどなく、湿度が高く、かつ気温が水温よりかなり低下した時に、水面付近に発生するものであって、その規模は小さいものである。

 当地点においては、温排水が気温よりかなり高くなる冬期は、北西の季節風が発達するため、大規模な霧発生はほとんどないと考えられる。

(4) 流れによる影響

 温排水は、南防波堤基部に設ける放水口から流速約1m/秒で外海表層に放出されるが、流速分布計算によれば、放水口から500m離れた位置で温排水の最大流速は約4cm/秒、1km離れた位置で約2cm/秒となる。

 一方、当地点前面海域における流況調査によれば、表層における10cm/秒以上の流れの出現率は、全体の約75%を占めている。

 以上のことから、温排水の流れが海域の環境に与える影響はほとんどないものと考えられる。

(5) 温排水のモニタリング計画

 運転開始前後において水温及び生物相の実態を把握するため東京電力(株)によるモニタリング計画が立てられている。水温については運転開始前後の発電所周辺海域の水温構造を比較するため、夏期及び冬期について、船による温排水拡散調査を実施し、水温の水平分布及び鉛直分布を把握する。生物相については、運転開始前後の変化の程度を把握するため、有用魚介藻類を主とする海生生物の分布範囲、その量等を継続的に調査されることになっている。

2 一般環境に与える影響

(1) 海岸の保全

 海岸の保全については、港湾施設設置による周辺海岸形状への影響の有無を十分監視すべきであり、周辺海岸の侵食防止対策についての配慮が望ましい。港湾工事に伴う海岸汚濁等の影響を与えないよう配慮が必要である。浚渫土砂、敷地造成の残土を有効利用した養浜の造成、公共的な大海岸施設の建設を考慮されたい等の意見が提出されている。

 ① 防波堤築造に伴う漂砂の影響を調べるため、東京電力(株)は、東京大学工学部港湾研究室に漂砂調査を委託している。この結果によると、漂砂の卓越方向は鯖石川を境にして、以北は北向き、以南は南向きであり、当海岸の主たる漂砂源は鯖石川と考えられるが、河口付近汀線の出入りが他の場所に比べ特に大きい変化はないことから、漂砂供給量は多くないと推定される。また、漂砂源からの供給量及び発電所前面を移動する漂砂量は、昭和37年以降の汀線航測図を比較すると、敷地前面では、特に侵食あるいは堆積といった傾向はみられず、当海岸では漂砂の流出・供給バランスが保たれているとみられる。

 これから当海岸における汀線方向の漂砂移動量は特に大きいものでなく、防波堤構造による漂砂への影響は少ないものと考えられる。

 また、波浪による防波堤基部の侵食については、防波堤の配置が洗掘を生じないよう配慮されているが、万一このような現象が生じた場合でも、離岸堤、護岸等により十分対策が講じられることから、問題は少ないと考えられる。

 ② 防波堤の築造に伴う周辺海岸形状への影響を予測するため、東京電力(株)による海象、気象の観測、深浅測量、汀線変化測量、底質調査、浮遊砂調査、漂砂源及び漂砂の移動方向調査、既往資料調査等の各種の調査が実施され、海岸形状への影響を極力少なくするよう設計面での配慮がなされているが、着工後も引き続き航空写真測量、深浅測量等による調査が行われることとなっている。

 ③ 東京電力(株)は、港湾工事の実施に当たって、海中に投入する捨石は、あらかじめ土砂類と分離することとし、浚渫土は敷地内に排土し、耕土中の土粒子を海生生物に無害な凝集剤で強制沈澱させて海域の汚濁を防止することとしている。

(2) 発電所用淡水の取水について

 発電所用淡水の取水については、淡水取水の農業用水、生活用水及び工業用水への影響について十分検討すること等の意見が提出されている。

 本原子炉設置に係る淡水使用量は、通常運転時で最大1,000m3/日(ただし、建設工事中は最大約2,000m3/日)と見込まれており、東京電力(株)は信濃川から取水した淡水及び海水淡水化装置により精製された淡水を使用することとしている。なお、生活用水及び工事中の用水は、柏崎市上水道から供給を受けることとしている。

 信濃川から取水することについては、取水量は河川流量に比較してわずかであり、これが下流の利水に悪影響を及ぼすことはないと考えられる。

(3) 植生保護その他について

 植生保護その他については、植生による環境保全と伐採樹木の有効利用を図ること。保安林解除に伴う飛砂現象の発生に対する防護計画が必要である。建設工事による地下水、湧水等への影響が生じないよう対策を講じること等の意見が提出されている。

 ① 発電所工事による植物への影響としては、発電所設備、工事用仮設備、道路等の土地造成による樹木の伐採等があげられる。

 敷地内の工事対象区面積は、約143万㎡で、発電所敷地の約34%に相当する。

 この工事対象区域内はクロマツ、アカマツ、コナラ、ニセアカシア等の林及び田跡地、草木地、砂丘などからなっている。

 ② 発電所配置計画は、本設備、工事用仮設備を含め自然環境の保存に重点を置き、樹木の伐採を必要最小限にとどめるよう配置するとともに、建設工事の進捗に伴って可能なところから緑化を行い、自然環境の保全を図る計画となっている。この緑化は、従来の造園的手法に加えて、植物生態学的手法を導入して行うこととしている。

 なお、実施に当たっては、工事実施上やむなく伐採する範囲の樹木で移植可能なものは極力移植し、あわせて景観の維持に努める。土捨場は景観を損なわないようにできるだけ中央砂丘地を利用し、その法面には種子吹き付けを行うとともに、土捨場上面は、建設工事終了後、早期に緑化を図る。

 掘削工事に当たっては、できる限り表土の保存に努め、環境緑化に有効活用を図る等の配慮が行われることになっている。

 ③ 発電所工事に当たっては、自然景観に与える影響に留意し、可能な限りの自然保存と積極的な緑化により、自然景観の維持向上を図ることとしている。

 ④ 建設工事による地下水、湧水等への影響については、定期的な地下水水位、湧水量の観測等によって、地下水の状況を把握するとともに、必要に応じて、敷地周辺の地下水に支障をきたさないような対策を講じることとしている。

おわりに

 会回の文書による地元利害関係者の意見の聴取は、当委員会としては、初の試みであった。寄せられた524通の文書意見の内容は、既に中間報告書において紹介したように、原子力開発利用に係る諸般の問題のみならず、自然環境に係る問題、地域開発、地域社会に係る問題等広範にわたるものであった。これらの意見には、原子炉の設置許可手続上、許可すべきか否かの判断基準として規定されている事項に直接関連のないものもみられたが、中間報告書においては、これらについても関係者の基本的な考え方は、できるだけ明らかになるように努めたところである。

 原子力行政体制については、文書意見でも多くの発言がみられたほか、各界から諸種の改革意見が提出されてきているが、政府は本年2月原子力安全委員会の設置と安全規制の一貫化を内容とする「原子力基本法等の一部を改正する法律案」を上程し、行政体制の改革強化を図っているところである。本法律案の概要は、次のとおりである。

原子力基本法等の一部改正について

第1 原子力安全委員会の設置(原子力基本法及び原子力委員会設置法の一部改正)

 原子力の安全確保体制を強化するため、現行原子力委員会の機能のうち、安全規制を独立して担当する原子力安全委員会を設置する。

(1) 任務

 原子力委員会:安全規制の実施に関することを除き、原子力の研究、開発及び利用について所掌する。

 原子力安全委員会:原子炉の設置等に関する安全規制等、安全の確保に関する事項を所掌する。

(2) 組織
 原子力委員会:委員長(科学技術庁長官)、委員4人(うち、2人を非常勤とすることができる。)
 原子力安全委員会:委員長は委員の互選により選任、委員5人(うち、2人を非常勤とすることができる。)

(3) その他、両委員会から報告を受けたときの内閣総理大臣の尊重義務、内閣総理大臣を通じての関係行政機関の長への勧告権など、現行原子力委員会と同趣旨の規定を設けるとともに、両委員会は、相互に緊密な連絡をとる旨の規定を設ける。

第2 原子炉の設置、運転等に関する規制の一貫化(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正)

 行政機関における安全規制行政の一貫化を確保し、その責任を明確化するため、次の措置をとる。

(1) 原子炉の設置及び運転に関する規制は
  実用発電炉については通商産業大臣
  実用舶用炉については運輸大臣
  研究開発用原子炉については内閣総理大臣

 が行うものとし、原子炉の設置許可の際、両委員会の意見を聴くものとする。

(2) 通商産業大臣又は運輸大臣は、実用発電炉又は実用舶用炉について許可をしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣の同意を得なければならないものとする。

(3) 実用発電炉、実用舶用炉、研究開発用原子炉の区分については、両委員会の意見を聴くものとする。

(4) 原子炉に関する規制の一貫化に関連して、次のとおり必要最小限の改正を行うものとする。

 ① 事業所内で行う核燃料物質等の廃棄及び運搬については前記(1)の区分による主務大臣が定める基準に従って行う。

 ② 事業所外で行う核燃料物質等の廃棄については、内閣総理大臣が定める基準に従って行う。

 ③ 事業所外で行う核燃料物質等の運搬(船舶及び航空機による場合を除く。)については、運搬物は内閣総理大臣、運搬方法は運輸大臣が定める基準に従って行う。

 ④ 上記②及び③に関し、特に政令で定めるものについては、基準の適合について主務大臣の確認を受ける。

 ⑤ 国際規制物資の使用に関する記録、報告徴収、立入検査等保障措置の実施については内閣総理大臣が行う。

 以上のような新しい行政体制の下での公開ヒアリングのあり方については、まず、電源開発基本計画案を電源開発調整審議会において決定する前に、原子力発電所設置に係る諸問題について、通商産業省が関係省庁とともに公開ヒアリングを実施し、次に通商産業省が作成した原子炉安全審査報告書案をダブルチェックするに当たり、原子炉の安全性の問題について、原子力安全委員会が公開ヒアリングを実施することとされ、これらの公開ヒアリングは、地元知事の協力を得て開催されることが考えられている。

 今回の文書による地元意見の聴取の実施は、本件に係る公聴会の開催が諸般の事情により断念せざるを得なかったことを踏まえてのものであったが、当委員会としては、本文書意見聴取の実施に関して御協力をいただいた新潟県、柏崎市等関係者各位に改めて感謝の意を表したい。


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