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動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査について(答申)


52原委第301号
昭和52年5月20日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和50年7月29日付け50原第6609号をもって諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


 動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設かの低レベル廃液の海への放出に関し、同事業団が提出した「再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る安全性に関する書類」(昭和50年7月24日付け提出及び昭和52年3月1日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、別添の核燃料安全専門審査会の報告書のとおり、本再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

(別添)

昭和52年4月25日
原子力委員会
   委員長 宇野 宗佑 殿
核燃料安全専門審査会
会長 山本 寛

動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る詳細な審査について(報告)

 本審査会は、昭和50年7月29日付け原委第395号をもって審査を求められた標記の件について、次のとおり結論を得たので報告します。

 T 審査結果

 動力炉・核燃料開発事業団(以下、「事業団」という。)の再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に関し、事業団が提出した「再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る安全性に関する書類」(昭和50年7月24日付け提出及び昭和52年3月1日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、「U審査内容」に示すように、本再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。

 U 審査内容

 事業団の再処理施設からの低レベル廃液の海への放出に係る安全性についての検討結果は以下のとおりである。

 なお、本報告においては昭和44年に行った再処理施設の設置に係る安全審査(以下、「44年安全審査」という。)の内容との相違点についても、言及することとした。

1 自然環境及び社会環境

(1) 昭和44年以降に実施された調査の経緯

 事業団が提出した書類は、昭和44年以降実施された東海地先海域に関する多くの調査結果を踏まえて作成されており、本審査は、これらの調査の結果得られた新しい知見を中心に検討を行った。

 これまでに実施された主な調査の概要は次のとおりである。

 @ 昭和41年から(財)原子力安全研究協会(以下、「原安協」という。)に放射性廃液の海洋放出調査特別委員会(以下、「海放特委」という。)が設けられ、関係研究機関の研究者を結集して、東海地先海域に関する総合的な調査研究が5ヵ年計画で実施され、その成果は、昭和47年に報告されている。

 A 昭和42年には、茨城県那珂湊市に放射線医学総合研究所(以下、「放医研」という。)の臨海実験場が設置され、以後、海産物による放射性核種の濃縮に関する実験的研究が実施されている。

 また、引き続き、事業団及び茨城県公害技術センターにより、東海地先海域における海水、海底土、海産物等の核種分析等を含めた放射能水準の測定が実施されている。

 B 昭和45年1月から5月まで水産庁により、海洋環境調査(拡散実験を含む。)、生物資源調査、漁業実態調査等の東海地先海域に関する総合的な調査が実施されている。

 C 昭和47年以降、事業団により海中放出管の放出口(以下、「放出口」という。沖合約1.8qに設置)周辺について、流動調査、海底地形調査等各種の調査が実施されている。

 D 昭和49年12月、昭和50年4月及び同年7月に、事業団により再処理施設の海中放出管を使用した染料拡散実験が、実施されている。

 E 海産物消費実態調査に関しては、前記の水産庁の調査及び海放特委の調査に引き続き、昭和50年まで事業団の委託を受けて原安協により実施され、茨城沿岸住民の海産物の摂取状況が把握された。更に、昭和51年度から、放医研により引き続き調査が実施されている。

(2) 調査結果の概要

 以上の諸調査結果のうち、特に、本審査との関連において重要と考えられる事項をまとめると、次のとおりである。

 @ 海象

  イ 海流及び潮流

 東海地先海域には、鹿島灘沖を北東に向って流れる黒潮本流と釧路沖から金華山沖を南下する親潮との混合水域があり季節によって多少の流路の変動がみられる。

 同海域の流向・流速については、昭和44年以降も引き続き調査が行われ、特に昭和47年以降は放出口付近を含めた調査が行われている。流向については、「44年安全審査」においては南北方向、特に、北方向が多く、東西流は非常に少ないと評価していたが、その後のデータを加えて評価すると、海岸線にほぼ平行した北向き及び南向きの流れがおよそ同じ頻度で卓越しており、東西流は少ない。また、進行ベクトルダイヤグラム等による流動解析の結果から、この海域の海水は全体として移流しており、長期間海水の停滞する海域ではないとみられる。流速については、平均10〜15p/秒程度であり、流速の変動は比較的大きく40p/秒以上の流速も観測されている。

 また、この海域の平均流速の場所による変動については、大きな差は認められない。なお、流向・流速は、深さに関し一様ではないことが認められる。

  ロ 海水温度及び塩素量

 表面水温と塩素量の変化については、昭和50年1月から昭和51年12月までの東海地先海域のデータによると、水温は9月に最高となり、その値は22℃であり、最低は2〜3月で7〜9℃である。

 塩素量については、最高及び最低はそれぞれ1.9%及び1.6%である。

 また、躍層は年間を通して、ほとんどみられない。

 なお、東海地先海域においては、しおめの発生がみられることがある。

  ハ 海底地形

 東海地先海域の底質は、主に砂質であり、水深に関しては、久慈川から磯崎に至る海域において放出口が設置された等深線20m付近までは、比較的単調に深くなり、そこより沖合では45m深位までは、やや起状がみられる。

  ニ 潮位

 満潮時の潮位については、これまでの最高として、東京湾中等潮位から約1.41m(大洗港にて観測)であることが記録されており、また、津波による潮位の上昇については、最高1.06mであることが記録されている。

  ホ 拡散

 染料溶液を海面又は排水溝から放流し、その希釈拡散状況を観測する実験は、昭和36年を除き、昭和32年から昭和41年まで、日本原子力研究所により毎年実施されている。

 また、昭和45年には、水産庁東海区水産研究所により染料の連続放流実験が行われている。

 更に、事業団は、海中放出管を用いて、昭和49年12月、昭和50年4月及び同年7月に染料溶液の連続放出実験を行い、その希釈拡散状況を観測している。本実験では、放出口先端から海面へ至る間の希釈倍率の平均は、約630であった。また、鉛直方向の染料溶液の分布については昭和49年12月の実験では10m以深まで、昭和50年7月の実験では5ないし8mまでほぼ均一濃度であることが示されている。

 A 海産生物

  イ 浅海生物

 茨城県沿岸について行われた調査によれば、久慈以北と磯崎以南に、ワカメ、アラメ、アワビ、ウニが分布している。

 また、近年、沿岸地域一帯に東海地先海域を含め、コダマガイの発生がみられている。

 同海域の砂浜地帯については、砂粒粒度が粗いこと等により、生物種類数及び1種類当たりの個体数は少ない。

  ロ 沿岸生物

   (イ)魚類

 東海地先海域は、春季には南から黒潮系水、秋季には北から親潮系水の影響が強くなり、海況的に極めて変化に富んでおり、それに伴って魚類相も豊富である。

 水深40m位までの東海地先海域に棲息する魚類の種類は、約200種であり、カタクチイワシ等の稚魚(シラス)も棲息している。

   (ロ)ベントス(底生生物)

 東海地先海域の棲息が認められているベントスは約300種に及んでいる。貝類を除くベントスでは、エビ類、カニ類が主要な種類であり、タコ、イカも棲息が認められている。

 また、放出口周辺の海底調査において認められた主な生物種は、ヒトデ、ウミサボテン、ヤドカリ類であり、個体数は貧弱である。

 B 漁業

 茨城県は約1,300隻の漁船を有し、年間約12万トンの漁獲を挙げている。

 東海村周辺における主な沿岸漁業の種類は、シラス曳網、エビ板曳、イナダ流し網、磯建網、中小型まき網、スズキ一本釣、タイ一本釣、ヒラメ曳釣、タコ樽流し等であり、また、久慈浜、磯崎の海岸では、ワカメ、ヒジキ、アワビ等の海ソウ類、貝類の採取が行われている。しかし、これらの漁業に用いられる漁船は10トン程度までであり、漁業規模は大きくない。

 東海村沿岸は大洗以南と並んでこの海域におけるシラスの主漁場となっており、漁業者の操業時間に関する調査データによると、シラス漁業者がシラス漁業に従事した場合の最高の時間は、年間1,710時間で、そのほかに兼業としてタイ釣、カツオ・メジ釣、イナダ流し網、エビ板曳及びその他の漁業に従事している。

 また、ソイ・メバル一本釣についても漁場は磯崎から北に広く形成され、その漁業従事時間の最高は、年間1,550時間となっている。

 C 海産物消費実態

 我が国における海産物の消費実態は厚生省の国民栄養調査によると、昭和39年度は1人1日当たりの魚介類及び海草類の摂取量は全国平均でそれぞれ83.6g及び4.7gであったが、昭和48年度は魚介類及び海草類の消費量はそれぞれ96.0g及び4.5gであり、特に大きな変動は認められない。

 また、原安協による茨城県沿岸の久慈、東海、大洗等の周辺住民の海産物消費に関する実態調査が、漁業及び非漁業の世帯別並びに海産物別に行われ、その結果によれば、漁業世帯は非漁業世帯よりも海産物を多く摂取しており、大洗の漁業世帯の平均摂取量は1人1日247gである。これらの調査の結果は、回遊魚、沿岸魚、沖の底魚、甲殻類、頭足類、貝類及び海草類に分類され整理されている。

2 低レベル廃液の海への放出に係る影響評価

 (1) 低レベル廃液の放出
  @ 放出の方法及びモード

 本再処理施設から海洋に放出される低レベル廃液は、

   イ 溶媒洗浄液等の低放射性の廃液を蒸発缶で処理した凝縮液

   ロ 中放射性の廃液を酸回収蒸発缶で処理した酸回収凝縮液

   ハ 除染廃液等の低放射性の廃液を化学処理し、更にろ過した上澄液等より構成されており、いったん、施設の廃棄物処理場内の放出廃液貯槽に貯留され、放出のつどモニタリング試料が採取される。採取された試料については、放射性物質の核種と濃度を測定し、低レベル廃液が放出条件を満足していることを確認した後、海中放出管を通して沖合約1.8qの海中(放出口の水深約16m)に放出される。

 なお、海中放出管については、昭和44年当時の計画によれば沖合約1q(放出口の水深約10m)の予定であったものを、その後、より大きな拡散効果を得るために延長されている。

 放出される低レベル廃液の量は、1バッチ約200m3で1日当たり1〜2バッチの放出が行われ、1バッチ当たりの放出の時間は約4時間である。

  A 放射性物質の放出量及び核種組成

 本再処理施設から放出される低レベル廃液中の放射性物質の量については、濃縮度4%、燃焼度28,000MWD/T、比出力35MW/T及び冷却日数180日の燃料を、1日当たり0.7トンで年間300日処理した場合、トリチウムを除き年間で260Ci以下、3カ月で65Ci以下、1日当たり最大1Ci以下及び1日平均約0.7Ciである。放出される放射性物質の核種組成の平均的役割を別表1に示す。

 トリチウムの放出量は1日当たり約140Ciである。また、別表1に示す「その他」の中には、プルトニウム及び放射性よう素も含まれ、その年間放出量は、プルトニウムについては6.2×10-2Ci(α)、よう素−129については2.4×10-1Ci及びよう素−131については2.3Ciである。

 なお、放射性物質の核種組成は、個々の放出において変動するので、被ばく計算においては対象とする被ばく器官ごとに考えられる最悪の核種組成を想定して年間の放出量としている。

 (2) 放射性物質の拡散

 染料拡散実験結果より、流れの軸上濃度の計算に当たっては、「44年安全審査」において用いた式を使用することに特に支障となる事実は認められない。ただし、「44年安全審査」で考慮した放出模型実験の結果と、放出口を延長したため水深が増加した効果とを勘案し、鉛直混合層の厚さは4.6mとし、また、拡散源の幅については2mとしている。これらの数値は、前述の拡散実験により安全側であることが確認されている。

 (3) 被ばく線量の計算

  @ 内部被ばく線量の計算

   イ 被ばく計算に用いる海産物の採取地点

 被ばく計算に用いる海産物の採取地点を決めるに当たっては、原則として、これまでに得られている海産物調査及び漁業実態調査の知見を基にしている。

    (イ)稚魚(シラス)

 東海地先海域でとれる魚類のうち、シラスは海流に乗って海を移動するが、計算上は、廃液の放出口直上に達したシラスが、廃液の流れに乗って軸上で流されると仮定し、シラスの放射能濃度が最大となる海域を採取地点としている。

    (ロ)成魚

 成魚の主たる漁場は、東海地先海域を含む茨城県沿岸沖合に広く分布しているが、成魚は放出口付近を回遊するものと仮定し、放出口付近の直径1qの円状海域を採取地点としている。

    (ハ)カッソウ(ワカメ等)、紅ソウ(ノリ等)

 カッソウ及び紅ソウは、それぞれ磯崎等実際に産出される地点のうちで、放出口からの距離と流向頻度を考慮して海水中放射能濃度が最大になる海域を採取地点としている。

    (ニ)貝類

 貝類は、年によっては海岸付近で産出することもあるが、採取実態を考慮し、海岸線にほぼ平行な沖合300メートルの南北線上で産出すると仮定し、この線上で放出口からの距離と流向頻度を考慮して海水中放射能濃度が最大となる海域を採取地点としている。

    (ホ)頭足類(タコ、イカ)

 頭足類は移動性があり、放出口付近で産出することもあるので放出口付近の直径1qの円状海域を採取地点としている。

    (ヘ)甲穀類(エビ、カニ)

 甲穀類(エビ、カニ)は移動性があり、放出口付近で産出することもあるので、放出口付近の直径1qの円状海域を採取地点としている。

 なお、(イ)〜(ヘ)のうちで、貝類、頭足類(タコ、イカ)及び甲穀類(エビ、カニ)については、「44年安全審査」後の海産物消費実態調査の結果を踏まえ、被ばく計算の対象として新たに追加されたものである。

   ロ 濃縮係数

 昭和44年度以降、東海地先海域における海水及び各種海産物の放射性核種の実測値が得られたので、原則としてこれらの実測値に基づき算出された濃縮係数を採用している。ただし、海ソウ類の濃縮係数のうち、ルテニウム、セリウム、ジルコニウム・ニオブ及びプルトニウムについては、英国ウインズケール再処理工場近傍海域における実測値から算出された値を採用している。

 また、海産物のよう素に対する濃縮係数は、安定よう素の実測値を基に算出される値を採用している。

 別表2にこれらの濃縮係数を示す。

   ハ 海産物摂取量

 「44年安全審査」においては、厚生省国民栄養の気向に基づいて、海産物1人1日当たりの摂取量として、シラスを200gとし、藻類を15gとしている。

 本審査においてはその後の海産物消費実態調査及び放出口よりの距離等を勘案し、海産物摂取量としては、その摂取による被ばくが最も大きくなると予想される漁業世帯の平均摂取量及び内訳を参考としている。すなわち、全摂取量を1人1日当たり260gとし、その内訳として稚魚(シラス)50g、成魚120g、カッソウ38g、紅ソウ2g、貝類10g、頭足類(タコ、イカ)30g、甲殻類(エビ、カニ)10gとしている。

 なお、放射性よう素による被ばく線量を計算する場合については、海産物の摂取に伴う安定要素の取込みによる放射性よう素の希釈を考慮しているので、安定よう素が多く含まれているカッソウ及び紅ソウの摂取量については、海産物消費実態調査を勘案して、それぞれ1人1日当たり7g及び1gとしている。

   ニ 被ばく線量の計算

 内部被ばく線量は、海水中放射能濃度と濃縮係数より算出される海産物中の放射能濃度とその摂取量とを用いて放射性物質の体内取込量を求め、国際放射線防護委員会勧告ICRP publication 2及び6に示されている水中最大許容濃度及び最大許容線量との比較による計算法により計算している。

 また、被ばく計算を行う器官としては、再処理施設から放出される核種を考慮して、胃腸管、骨及び全身を対象としている。

 ただし、放射性よう素による甲状腺被ばく線量については、放射性よう素の安定よう素に対する割合を考慮し、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針」(昭和51年9月原子力委員会決定)に用いられている式を準用して計算している。

  A 外部被ばく線量の計算

 昭和44年以降、引き続き漁業実態、海岸砂の汚染等に関し調査が行われているが、基本的には、「44年安全審査」の考え方を変えるような知見は得られていない。

 外部被ばく線量は放射能により汚染した物体から身体が受けるベータ線及びガンマ線による被ばくについて計算している。また、被ばくの形態としては、東海地先海域の海浜利用、漁業等の実態を考慮のうえ、海岸の砂からの被ばく、漁網からの被ばく、海面からの被ばく、海水中での被ばく、船体からの被ばく及びトリチウムによる被ばくに区分している。

   イ 海岸の砂からの外部被ばく線量の計算

 放出口周辺の沿岸である阿字ケ浦等においては、海水浴等の海浜利用があるので、海岸の砂からの被ばく線量が計算されている。計算上、放出口からの距離及び流向頻度を考慮し、阿字ケ浦に相当する場所として放出口より南南西方向の距離5.5qの位置の海岸を想定している。砂の放射能濃度は、海水中放射能濃度に汚染係数を乗じて計算している。

 ここで、砂の汚染係数として、ストロンチウム、ルテニウム、セシウム、セリウム及びジルコニウム・ニオブに対してそれぞれ10、1000、100、1000及び500を、また、被ばく時間として、年間500時間を用いている。

   ロ 漁網からの外部被ばく線量の計算

 漁網からの被ばく計算に当たっては、漁網の操作によりベータ線の照射を受ける時間は2000時間、漁網からガマン線の照射を受ける時間は1000時間としている。ここで漁網の汚染係数として4000を、漁網操作海域の海水中放射能濃度として放出口付近の直径1qの円状海域の平均濃度を用いている。

   ハ 船体からの外部被ばく線量の計算

 汚染海水による船内、甲板等の表面の汚染からの被ばく計算に当たっては、被ばく時間として年間3000時間、汚染係数として10p及び海水中放射能濃度として放出口付近の直径1qの円状海域の平均濃度を用いている。

 (4) 被ばく線量の評価

 以上の被ばく線量を評価するに当たって用いた諸因子、計算法等の諸条件についての考え方は、東海地先海域におけるこれまでの調査結果を反映させ、できる限り現地の実態に即した評価を行うという観点等からみて妥当なものと考えられる。これらの考え方に基づいて計算されたすべての経路からの1年当たりの被ばくを想定すれば、内部被ばくについては、胃腸管に対して12ミリレム、骨に対して7ミリレム、全身に対して0.7ミリレムとなる。また、放射性よう素による内部被ばくは、甲状腺(乳幼児)に対して1ミリレムとなる。

 なお、骨に対する被ばくのうちプルトニウムによるものは、0.1ミリレムとなり、全身に対する被ばくのうちトリチウムによるものは0.04ミリレムとなる。

 外部被ばくについては、皮膚(ベータ線)に対して11ミリレム、特に手の皮膚(ベータ線)に対して85ミリレム、全身(ガンマ線)に対して5ミリレムとなる。

 なお、海面からの被ばく、海水中での被ばく及びトリチウムに起因する被ばくは無視し得る。

 これらの値は、いずれも「44年安全審査」の際の評価値を上回るものではなく、周辺公衆の被ばく線量は、国際放射線防護委員会(ICRP)に示す公衆の構成員に対する線量限度を十分に下回っており、昭和44年2月6日付けの放射線審議会の答申にも適合する。

 なお、被ばく線量評価に当たっては、摂取量に関する市場希釈効果等の被ばくを低減化させる要因が考えられるが、ここでは、必ずしも十分なデータが得られていないので考慮していない。

 また、放射性物質の海底土への移行蓄積の影響については、将来の環境監視により確認されることとなるが、ここで用いた濃縮係数には、過去における蓄積の影響も含まれており、また、被ばく線量計算の各段階において十分安全側の評価が行われていることを勘案すれば、将来においても上記の被ばく評価値を上回ることはないと考えられる。

 更に、東海村地域は複数原子力施設が存在することから、他施設からの寄与による影響について検討したが、特に被ばく評価の結果に影響を及ぼすものとは考えられない。

別表1 放出される放射性物質の核種組成

別表2 本審査に採用した濃縮係数


V 審査経過

 本審査会は、再処理施設安全審査専門部会において、昭和50年9月17日の第38回専門部会以降別表のとおり行われていた本件に係る審査を、昭和51年5月22日の第1回審査会以降継続することとなり、以後、再処理部会、同部会施設関係分科会及び環境関係分科会において別表3のとおり審査を重ねてきた。

 同部会は、昭和52年4月14日の第8回部会において部会報告書を決定し、本審査会は同部会報告書に基づき、昭和52年4月25日の第5回審査会において本報告書を決定した。

 なお、再処理部会の委員は次のとおりである。

部会委員

高島 洋一 (部会長、施) 東京工業大学
青地 哲男 (施) 日本原子力研究所
伊沢 正実 (環) 放射線医学総合研究所
市川 龍資 (環) 放射線医学総合研究所(昭和51年2月21日から参加)
伊藤 直次 (環) 日本原子力研究所
内田 秀雄 (施) 東京大学(昭和51年3月2日まで参加)
稲垣 道夫 (施) 金属材料技術研究所
清瀬 量平 (施) 東京大学
佐伯 誠道 (環) 放射線医学総合研究所(昭和50年10月4日まで参加)
坂上治郎 (環) お茶の水女子大学(名誉教授)
左合 正雄 (環・主査) 東京理科大学
鈴木 正敏 (施) 金属材料技術研究所
内藤 奎爾 (施・主査) 名古屋大学
林 正夫 (施) (財)電力中央研究所
日野 幹雄 (環) 東京工業大学
藤井 正一 (施・環) 芝浦工業大学
益子洋一郎 (施) 元工業技術院東京工業試験所

注)(施)は施設関係分科会
  (環)は環境関係分科会

別表3


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