前頁 | 目次 | 次頁

関西電力株式会社大飯発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)について(答申)


51原委第438号
昭和51年6月1日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和50年5月20日付け50原第4373号(昭和51年1月22日付け51原第571号及び昭和51年5月14日付け51安第3767号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。



① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)
昭和51年5月17日

原子力委員会
委員長 佐々木 義武 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

関西電力株式会社大飯発電所の原子炉施設の設置変更(1、2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和50年5月20日付け50原委第228号(昭和51年1月22日付け51原委第104号及び昭和51年5月14日付け51原委第435号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。


 Ⅰ 審査結果

 関西電力株式会社大飯発電所の原子炉の設置変更に関し、同社が提出した「大飯発電所原子炉設置変更許可申請書(昭和50年5月14日付け申請、昭和51年1月14日付け及び昭和51年5月10日付け一部補正)」に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。


 Ⅱ 変更内容

1 敷地等の面積の変更

 敷地の面積を海面埋立地を含めて約1,650,000㎡、隣接する地役権設定区域等の面積を約250,000㎡とする。(従来は敷地面積約1,700,000㎡地役権設定区域面積約200,000㎡)

2 燃料集合体の変更

 炉心に装荷する燃料集合体を17×17型燃料集合体とする。(従来は15×15型燃料集合体)

3 使用済燃料貯蔵設備の変更

 使用済燃料貯蔵設備は、1、2号炉共用であるが、その貯蔵能力を約11/3炉心相当分に変更する。(従来は約5/3炉心相当分)

4 非常用冷却設備の変更

 1次冷却材の喪失の際に炉心にほう酸水を注入して炉心の冷却を行う非常用炉心冷却系に炉心上部注入系を増設する。


5 原子炉停止回路の変更

 原子炉停止回路の作動信号に、中性子束変化率高(出力領域)を追加する。


6 制御棒の吸収材の種類等の変更

 制御棒の吸収材の種類を、銀、インジウム、カドミウムに変更し1クラスタ24本構成とする。(従来はボロンカーバイド1クラスタ20本構成)

7 固体廃棄物の廃棄設備の変更

 固体廃棄物の廃棄設備の廃樹脂貯蔵タンクを3基増設する。


8 原子炉格納施設の変更

 原子炉格納施設に格納容器可燃性ガス濃度制御設備を増設する。


 Ⅲ 審査内容

1 敷地等の面積の変更

 敷地及び地役権設定区域等の面積が変更されるが、後述の平常時被曝評価及び災害評価のとおり、原子炉の安全性確保上問題はない。


2 燃料集合体の変更

 15×15型燃料集合体に代えて17×17型燃料集合体で本原子炉の炉心を構成する場合には、減速材温度係数及びドプラ係数が僅かではあるが負側に移行することによって核的安全性が増加すること、ならびに、燃料棒数の増加及び燃料棒表面積の増加によって炉心平均線出力密度及び炉心平均熱流束が低下し熱的安全性が増加するという利点が認められる。なお、本原子炉は基底負荷運転の他に系統上の要求によっては、最小負荷を50%、かつ、最大出力変化率を、0.28%/分とする日負荷追従運転を行うこととしているので、このような運転による燃料への影響についても検討した。


2-1 燃料集合体の構造

 17×17型燃料集合体は、断面寸法、全長、炉心有効長等が従来用いることとなっていた15×15型燃料集合体と同一であり、本原子炉に本燃料集合体を採用するに当っては、制御棒クラスタ案内管、制御棒クラス及びバーナブルポイズンの構造を変えるのみで炉心構成が可能である。

 本燃料集合体の構造についての詳細及び構造設計についての評価は、原子炉安全専門審査会が昭和51年2月16日に採択した「加圧水型原子炉に用いられる17行17列の燃料集合体について」(以下「17×17燃料検討報告書」という)に記載のとおりである。


2-2 核設計

 本燃料集合体の採用によっても、最大価値を有する制御棒クラスタ1本が未そう入の状態であっても、常に炉心を未臨界とし、かつ、その状態で反応度係数は常に負であり減速材温度係数も運転状態では正とならないようにすること等の核設計の方針は保たれることになっている。本原子炉に17×17型燃料集合体を用いた場合の核設計及びアキシャルオフセット一定制御運転についての評価は、「17×17燃料検討報告書」に記載のとおりである。


2-3 燃水力設計

 本燃料集合体の採用によっても、過渡現象を含む通常運転時において、最小DNB比は1.30以上であること、燃料最高温度は二酸化ウランの溶融点未満であること、燃料棒の熱除去に有効な冷却材流量が熱設計流量の95.5%以上であること等の熱水力設計の方針は保たれることになっている。本原子炉に17×17型燃料集合体を用いた場合の熱水力設計についての評価は、「17×17燃料検討報告書」の記載のとおりであるが、最小DNB比の判定の基礎となるW-3相関式については更に検討を行ったほか、本原子炉について解析を行っている各過渡現象にW-3相関式を適用することが妥当であることを確認した。


3 使用済燃料貯蔵設備の変更

 本変更は、従来の使用済燃料貯蔵設備の設計方針を変更しない範囲で、使用済燃料の貯蔵能力を増加させるために使用済燃料ラックの中心間隔を短縮させるものである。

 この燃料ラックの中に仮りに新燃料を貯蔵能力まで貯蔵し使用済燃料ピットの水のボロンの効果を無視したとしても未臨界性は十分に保たれる。また、使用済燃料を全容量貯蔵した場合でも使用済燃料ピットの水の冷却は十分に確保される。

 以上のことから本変更は問題はないと判断する。


4 非常用冷却設備の変更

 非常用炉心冷却系としては、従来から蓄圧注入系、高圧注入系及び低圧注入系が設備されていたが今回炉心上部注入系を増設し、1次冷却材喪失時の炉心冷却効果を増大し、運転余裕の増強を図るものである。

 炉心上部注入系は、1次冷却材喪失事故時、1時冷却系の圧力低下によって自動的に蓄水タンクのほう酸水を原子炉容器のふた部に設けた4個のノズルから注入するものである。

 炉心上部注入系は、2基の蓄圧タンク(窒素ガスタンク及び蓄水タンク)、サージタンク、隔離弁、逆止弁及びこれらをつなぎ原子炉容器ふた部のノズルに至る配管から構成される。通常運転中、蓄水タンクは直列に2個設けられる逆止弁によって1次冷却系から隔離される。1次冷却材喪失事故時に1次冷却系の圧力が低下し蓄水タンクの保持圧力(約83㎏/㎝2g)以下となると窒素ガスタンクの圧力によって蓄水タンク内のほう酸水が隔離弁及び逆止弁をとおして原子炉容器ふた部のノズルから注入される。蓄水タンクの容量の51m3のうち約28m3の蓄水タンクの水が注入された時点で炉心に加圧用窒素ガスの流入を防ぐために蓄水タンク水位信号で隔離弁が閉じるようになっている。

 なお、本系統を増設することによって上部炉心支持板の構造が変更されるほか、注入水を炉心に導く流路として制御棒案内管に加え、112本の上部炉心注入用支柱が上部炉心支持板と上部炉心板の間に設けられる。

 本系統は、工学的安全施設として耐震設計Aクラスで設計される。また、本系統の隔離弁は、動的機器の単一故障を仮定した場合でも所定の機能も果たし得るように蓄水タンクから原子炉容器に至る2本の配管に直列に2個計4個設けられており、その作動に必要な電源も電源喪失に対して非常用電源に接続するなどの配慮がなされている。なお、隔離弁及び逆止弁は、定期的にその作動が確認できるようになっている。

 以上のこと及び後述の1次冷却材喪失事故の解析結果から本系統の設計は妥当であると判断する。


5 原子炉停止回路の変更

 原子炉停止回路の作動信号に、出力領域における中性子束変化率高信号を加えることについては、中性子束が異常に変動した場合に原子炉を停止するためのものであって、従来から設けられている原子炉停止のための中性子束高信号がバックアップするものとして、また、制御棒落下時に原子炉を安全に停止するものとして妥当であると判断する。


6 制御棒の吸収材の種類等の変更

 制御棒クラスタに用いる中性子吸収材の種類をボロンカーバイドから銀、インジウム、カドミウム合金に変更するのは、先行炉が有している銀、インジウム、カドミウム合金製の制御棒の実証性を尊重した結果であり妥当である。なお、17×17型燃料集合体の採用に伴い制御棒クラスタの形状が20本クラスタから24本クラスタに変更されるが、これと吸収材の種類の変更を考慮しても制御棒の有する反応度制御価値はほぼ同等であり、その機能が変ることはないので問題はないと判断する。


7 固体廃棄物の廃棄設備の変更

 本変更は廃樹脂貯蔵タンクを3基増設し、既設の廃樹脂タンクと合せて4基とし発生する廃樹脂の約3年分を貯蔵保管可能とするものである。

 廃樹脂貯蔵タンクは原子炉補助建屋内の廃樹脂貯蔵室内に1基づつ分離して配置され配管系と共に耐震設計Bクラスとして設計される。廃樹脂貯蔵室は、タンク内容物が万一系外に漏洩した場合でも液体状の放射性物質及び廃樹脂の放散が起らず容易に回収できるような構造とすることとしている。これらの設計方針は妥当である。


8 原子炉格納施設の変更

 原子炉格納施設に格納容器可燃性ガス濃度制御設備を増設する目的は、冷却材喪失事故時に金属-水反応及び水の放射線分解によって発生する水素の格納容器内の濃度を4vol%以下とするためである。水素と酸素の燃焼限界に関する実験結果によれば、水素濃度が4vol%以下に維持されるならば燃焼反応は生じない。

 本設備は、100%容量の電気式水素再結合装置2台よりなり格納容器上部コンパートメントに設置され、必要な電源は非常用電源から供給することもできるようになっている。また本設備の電気式水素再結合器の性能については、種々の試験によって確認されている。本設備の設計の妥当性を判断するために冷却材喪失事故時に計算されるジルコニウム-水反応量の全炉心平均値の0.3%以下という値を1.5%と仮定するほか水の放射線吸収量に対する水素の発生割合を0.5分子/100eVとして解析を行った。解析結果によれば格納容器内の水素濃度が最高値に達するのは、事故後8日目であってその値は2.4vol%である。なお、格納容器内雰囲気は、エヤリターンファン系統によって循環されることから局所的な水素濃度の上昇は生じないものと判断する。

 以上のことから本設備の設計は妥当であると判断する。


9 平常運転時における原子炉施設周辺の被曝線量評価

 本原子炉施設の周辺監視区域は、従来、地役権設定区域を含む敷地を予定していたが、今回管理の便を考慮し敷地境界をもって周辺監視区域境界とすることとしている。このことによって原子炉から周辺監視区域境界までの距離が短縮されたので、平常運転時に放出される放射性物質による本原子炉施設周辺の被曝線量評価を行った。

 その結果周辺監視区域境界外で放射性希ガスによる全身被曝線量が最大となる地点は、1、2号炉心から南々東方向の周辺監視区域境界(1号炉心から約520m、2号炉心から約500m)であって、その被曝線量は年間約0.6mremである。また、地役権設定区域境界外で全身被曝線量が最大となる地点は、1、2号炉心から南方向の地役権設定区域境界(1号炉心から約830m、2号炉心から約780m)であってその被曝線量は、年間約0.3mremである。気体廃棄物中の放射性よう素による甲状腺被曝線量が最大となる地点は、上記と同じ1、2号炉心から南方向の地役権設定区域境界であってその被曝線量は、年間約3.5mrem(幼児)である。なお、液体廃棄物の寄与を含めても評価結果は、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」に定める目標値を下まわっている。


10 過渡現象解析

 17×17型燃料集合体の採用に伴い、動的機器の単一故障あるいは誤動作及び運転員の単一誤操作によって引き起される種々の異常な過渡状態を想定して解析を行い、燃料被覆管の損傷限界に至らないこと(最小DNB比≧1.30)、及び原子炉冷却材圧力バウンダリの圧力が設計圧力の1.1倍(192.5㎏/㎝2g)を超えないことを確認した。

 すなわち、最小DNB比の点で厳しい解析結果を示すのは、出力運転中に最大反応度価値を有する2つの制御棒クラスタバンクが異常に連続的に引き抜かれ、反応度添加率として約4×10-4(ΔK/K)/sが加えられる場合であって、この時の最小DNB比は1.32である。また、原子炉冷却材圧力バウンダリの圧力の点で厳しい解析結果を示すのは、負荷喪失時に原子炉の停止が遅れ、かつタービンバイパス弁及び主蒸気逃し弁の作動なりびに加圧器の圧力抑制効果を無視した場合であるが、この場合でも原子炉圧力は、加圧器安全弁設定圧力の175㎏/㎝2gに上昇するのみである。

 なお、急激な反応度が印加されることとなる未臨界状態からの制御棒クラスタバンクの異常な引き抜きを想定した場合でも燃料の有するエンタルピによって燃料被覆管の損傷に至ることはない。


11 事故解析

 17×17型燃料集合体の採用及び非常用炉心冷却系に炉心上部注入系を増設することに伴い、種々の事故を想定して炉心の大破損に至らないこと及び大量の放射性物質の周辺への放出には至らないことを確認した。以下に原子炉圧力バウンダリ及び炉心燃料に厳しい結果を与える1次冷却材流量喪失事故、制御棒クラスタ抜出し事故及び1次冷却材喪失事故についての評価結果を示す。


11-1 1次冷却材流量喪失事故

 原子炉の出力運転中に、1次冷却材ポンプの故障を想定すると炉心の冷却能力の低下によって1次冷却材温度の上昇及び燃料温度の上昇が考えられる。1次冷却材流量喪失を引き起こす原因としては種々のものが考えられるが炉心に最も厳しい結果を与える条件として次のように想定した。

 原子炉出力運転中に1次冷却材ポンプ4台のうち1台が軸固着を起こすものとし、加圧器の圧力抑制効果及びタービンバイパス弁の動作は無視し、さらに原子炉停止後の蒸気発生器への給水は行われないものとする。

 解析結果では、原子炉圧力の最大値は184㎏/㎝2gであり、燃料被覆管最高温度の最大値は1103℃にとどまり、ジルコニウム-水反応量も少ない。以上のことからこのような事故を想定しても炉心の大破損に至ることはないと判断する。


11-2 制御棒クラスタ抜き出し事故

 原子炉の運転時に制御棒クラスタ駆動装置の圧力ハウジングの破断を想定すると制御棒クラスタは短時間のうちに炉心から抜け出し、急激な反応度が加わることとなる。原子炉の状態としては定格出力運転及び零出力運転状態について、炉心寿命初期及び末期における解析を行っているが燃料に最も厳しい結果を与えるのは炉心寿命末期に定格出力運転中に最大の制御棒価値を有する制御棒クラスタ1本が許容そう入限界位置から飛び出すと想定した場合である。

 この場合でも、高温点の燃料ペレットの平均温度の最大値は、2277℃であり、燃料ペレットの平均エンタルピは180cal/gUO2となる。これらの結果から炉心の冷却能力を損なうような燃料の破損に至ることはないと判断する。


11-3 1次冷却材喪失事故

 1次冷却系配管の破断を想定し、増設されることとなる炉心上部注入系を含み非常用炉心冷却系の機能及び性能の評価を行った。評価に当っては「軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の安全評価指針」(以下「ECCS評価指針」という。)が満足されることを条件とした。

 解析に用いられた手法は、従来からウェスチングハウス社の加圧水型炉の非常用炉心冷却系の機能及び性能の解析に用いられていたものと基本的に同じであるが、炉心上部注入系の増設等に伴い解析手法に修正が加えられている。

 解析手法の修正の1つとして、冷却材挙動を解析するモデルにコントロールボリューム及びジャンクションの追加ならびにコントロールボリュームの細分化がなされている。これらは炉心上部注入系及びその流路を模擬するためと、冷却材の挙動をより正確に把握するためであって妥当なものと判断する。また、炉心上部注入系によって炉心上部に冷却水が注入されることから、従来の解析手法に組み込まれていた熱伝達相関式の変更がなされているほか、再冠水過程以前における燃料被覆管のクエンチを認める基準を新しく設定することが行われた。これらについては、その根拠が十分に実験との対応によって示されており使用は妥当であると判断する。

 なお、炉心上部注入系という新しい考え方の非常用炉心冷却系統が増設されることに伴い、とくに関西電力株式会社が三菱重工業株式会社高砂研究所において炉心上部注入系の冷却水の炉心への落下現象実験を行い解析手法の妥当性の裏付けを行ったほか、日本原子力研究所東海研究所がROSA-Ⅱ試験装置を用いて試験を行った結果を参考とした。

 非常用炉心冷却系の機能及び性能の評価に当っては、1次冷却系配管の両端安全破断から小口径配管破断までを想定し上述の解析手法を用い、解析前提として重要な因子であるピーキング係数は2.32として解析を行った。

 解析結果では、1次冷却系低温側配管の両端完全破断の0.6倍の断面積を想定した場合が燃料被覆管の温度上昇及びジルコニウム-水反応量が最大であり、燃料被覆管の最高温度は1035℃、局所的最大ジルコニウム-水反応量及び全炉心平均ジルコニウム-水反応量はそれぞれ1.9%以下及び0.3%以下となる。

 これらの結果から本原子炉施設の非常用炉心冷却系の機能及び性能は、「ECCS評価指針」を満足するものと判断する。


12 災害評価

 今回の設置変更時点において、本原子炉施設の立地条件の適否を判断するために「原子炉立地審査指針」に基づき、重大事故及び仮想事故を想定して行われる解析条件が次のとおり変更されたため再解析を行った。


(1) 事故時に燃料被覆管の損傷を想定する場合に、燃料と被覆管の空隙部から格納容器内に放出される核分裂生成物の炉心内蔵量に対する割合を従来の希ガス3%及びよう素1.5%から希ガス2%及びよう素1%とした。


(2) 1次冷却材中の放射性物質濃度の算出根拠となる燃料被覆管の損傷率を5%から1%とした。

 解析条件の変更のうち(1)については、17×17型燃料集合体の採用によって燃料の温度分布が従来の15×15型燃料集合体の場合よりも低い方に移行しており、これによって燃料と被覆管の空隙部に蓄積される核分裂生成物の量を上記のように仮定しても妥当であることが解析の結果示されている。また(2)については、これまでの加圧水型炉の運転経験からも上記の燃料被覆管の損傷率に基づく1次冷却材中の放射性物質の濃度を採用することは妥当であると判断する。なお、この1次冷却材中の放射性物質濃度は、運転中定期的に監視されこの濃度以下に保たれることになっている。

 重大事故及び仮想事故についてそれぞれ冷却材喪失事故及び蒸気発生器細管破損事故を想定して解析した結果、いずれの場合においても敷地境界及び地役権設定区域境界外において被曝線量が最大となるのは、2号炉心から南方約780mの地役権設定区域境界であって、最も線量が高くなるのは仮想事故の冷却材喪失事故の場合である。この場合の被曝線量は甲状腺(成人)に対し約7.8rem全身に対しγ線約2.5rem(β線約1.8rem)である。

 解析結果は、「原子炉立地審査指針」に示されるめやすとしての線量を十分に下まわっているものである。なお、国民遺伝線量の評価のための仮想事故時の全身被曝線量の積算値も「原子炉立地審査指針」にめやすとして示されている参考値を十分下まわっていることを確認した。


 Ⅳ 審査経過

 当審査会は、昭和50年5月23日第137回審査会において、次の委員からなる第119部会を設置した。


(審査委員)
西脇 一郎(部会長) 宇都宮大学
青木 成文 東京工業大学
秋山 守 東京大学
武谷 清昭 日本原子力研究所
浜田 達二 理化学研究所
望月 恵一 動力炉・核燃料開発事業団

(調査委員)
石川 迪夫 日本原子力研究所
佐藤 一男 日本原子力研究所
斯波 正誼 日本原子力研究所
福田 整司 動力炉・核燃料開発事業団
宮園 昭八郎 日本原子力研究所

 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行うこととし、昭和50年6月9日に第1回部会を開催した。

 以後、部会、PWR新型燃料検討会、非常用炉心冷却系に関する検討会及び審査会において審査を行ってきたが、昭和51年5月17日の部会において部会報告書を決定し、同年5月17日第148回審査会において本報告書を決定した。


前頁 | 目次 | 次頁